征馬孤影・風塵乱舞 | お役に立ちません。

お役に立ちません。

本・漫画・映画のレビューブログ。
本は月に10冊ほど、漫画は随時、
映画はWOWOWとTSUTAYAのお気持ち次第(笑)

征馬孤影・風塵乱舞 ―アルスラーン戦記(5)(6) カッパ・ノベルス/田中 芳樹
¥880
Amazon.co.jp

隣国の王位争いを無事納めたアラスラーンはいよいよ王都奪還へ赴こうとするが、
今度は北の隣国トゥラーンが急襲してくる。
その対応に追われている間、銀仮面は王の証の宝剣を手に入れようとする。

この巻で好きなのは表紙です(笑)
知ってる人は、↑の表紙がいかにファニーかわかることでしょう。

この巻が、一番中身がドラマチックでびっくりするかも。
アルスラーンより印象の強烈な、父王アンドラゴラスの超人的活躍&冷酷な行動が。
銀仮面卿の仄かなロマンスが。

アンドラゴラスがちょっとした隙を突いて逃げ出したくだりはびっくり。
最強過ぎない?
王としての前に、人間として超人だよね…
いくらなんでも、助け出すべき人が自力で逃げてきて、しかも、主人公を放逐してしまうなんて
めちゃ意外な展開だった。
主人公の不幸で孤独な境遇は結構好き。
応援しちゃうもんね。
その次の展開も、明るい港町で、いままでの砂にまみれた世界と違って気分一新。
若干展開に飽きてきたところだったから、外伝風で楽しい。

けども、敵役がちょっと唐突で役不足かなぁ。
最強すぎるナルサスの敵役と見せかけて、全然、役不足。
まず、なんで、志を違えたのかが全く描かれていないから、説得力に欠けるし、
憎悪の強さはともかく、行動がちょっと馬鹿すぎて閉口。
体よく放逐されてしまったアルスラーンが、逆境を利用して最高の後ろ盾を手に入れるのは
歴史物なんだ、って視点から見ると、スカッとするけど、
普通の創作物語(偽史とも考えず)としてみると、ご都合主義が気になる。
そうそう上手いこと海賊とか来ないだろ?とか。
このへんから雲行きが怪しくなってくるんだよね…
散りばめられた秘密や、先行き、キャラが気になって読んでしまうけど、
物語そのものの面白さがバランスが崩れ始めて、飽きがくる。

特に、キシュワードのエピソードはやばすぎ。
強引過ぎるよ。
どれだけ突っ込めばいいんだ。

まず、キシュワードの部屋に手紙があったのはいいとしよう。
でも、なんで、あんな見つかりやすく、落ちやすいところにあったのが今まで見つからなかったのか?
そして、あんなナイスタイミングで、どうやって王妃は分かったのか?内容まで。
超能力者?超能力者なの?!
王もなんで、一緒に来てるんだ。
伏線の回収に失敗したとしか思えない。
”あの手紙は結局見つかりませんでした。”で別に普通に納得してたのに。

ラストもうひとつ。
マルヤムの王女さま。
このひとのエピソードは一途な恋で好きなんだけど、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったなぁ。
ヒルメスの対応あたりを。
どれだけクールな男なんだよ…
まぁそこが格好いいんかもしんないけど。
ヒルメスのダークヒーローっぷりってすっごくおいしいから、読者人気も高いと思うんだけど。
色恋はやっぱり読んでて楽しいから、メルレイン含めてじっくり書いて欲しかった。
まぁ、通常の作家なら相当数ページ裂きそうなこのエピソードすら、
あっさり書き飛ばしてしまうのが、田中芳樹のいいところなのかもしんないけど。

というわけで、アルスラーン戦記がすっごく面白いのは5巻までかな。