物理ネコ教室018運動方程式 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

マンガ・イラスト&科学の世界へようこそ。

 

 高校生が最初に物理でつまづくのは、運動方程式。

 今はどの教科書も「教習」的なページがついていて、だれでも方程式が立てられるように工夫されていますが、以前はそういう特集がなく、物理を学ぶものにとっては、鬼門でした。

 

 愛知物理サークルの「受ける力で考えよう」という統一的な「教習」方法は、非常に優れていたのでしょう。今ではどの教科書でのそれに準じた「教習」がなされています。

 

 では、運動方程式の「教習」に入ります。

 といっても、力のつりあいの式の「教習」をこなした人にとっては、やることがあまり変わりません。一番間違えやすいのは力の矢印を正しく書き込み、それを見て合力の式を立てるところです。そこは、力のつりあいの式でも運動方程式でもほとんど同じですからね。

 

 

 1の手順をみていただくと、力のつりあいの式の手順とほとんどかわらないことがわかります。

 違うのは、手順2のx軸の取り方です。複数の物体が連動して動くケースが多いので、加速方向にx軸をとり、それに垂直な方向にy軸をとるというやり方を採用しています。(これはぼくが考えた方法です)

 本当は、どんな向きに軸をとろうとよいのですが、初心者は軸の向きに応じて柔軟に式を描いていくことができないので、「だれにでもできるようにする」ために、このようなやり方を推奨しています。

 あとで出てくる実例を見ていただけば、この方式の効果がわかると思います。

 

 手順2と連動して、手順3では、x軸方向(加速している方向)は運動方程式、y軸方向(加速していない方向)は力のつりあいの式、としています。

 

 =の右側は、運動方程式では「0」のかわりに「ma」と変わりますが、この変更はさしてむつかしいことではありません。加速しているから運動の法則の式にしただけの話です。

 

 2は、初心者向けに、非常に単純な例にしてあります。

 

 

 3〜4は、典型的な運動方程式の問題です。

 この辺が自在に解けるようになれば、運動方程式はオッケーですね。

 

 では、描きこみを見ていきましょう。その方が、具体的なポイントがわかるはずです。

 

 

 2の(2)(3)を比較すると、やり方がわかります。力のつりあいのときは、上向きを正として式を立てることが多いのですが、加速運動をしている場合は、加速方向を正として式を立てます。

 もちろん、加速と逆方向を正として式を立てることもできますが、その場合は、力Fと同様にベクトルである加速度aについても、向きを正負で表して代入する必要があるのです。初心者はこれに気がつかないので、式をうまく立てることができません。

 

 そこで、「加速方向にx軸をとり、加速方向を正として式を立てる」というやり方が効果を発揮します。これなら、加速度aはいつも正のまま式を立てることができるので、うっかりミスが防げるのです。

 

 

 4の最初の例題では、思いがけないミスが生まれます。

 

 ミスの1つめは、BがAから押される力Pを、最初から12(N)としてしまうことです。

 これは、感覚的な間違いです。

 手がAを12(N)で押しているのだから、当然Bにもまた12(N)の力がかかっているはずだ、という思い込みです。

 そんな保証はありませんし、間違っています。

 もし本当にそうなら、作用反作用により、AがBから逆向きにおされる力Pも12(N)になります。そうすると、Aは手からもBからも同じ大きさの力を逆向きに受けることになりますから、そもそも動き出すことが出来ませんね?

 

 ミスの2つめは、Bの式を立てるときに、P=3aではなく、P+12=3aなどと描いてしまうことです。

 これは、Bにかかる力はPだけのはずなのに、なんとなく手の力12もBにかかっているはずだと誤解することにより生じる間違いです。

 図を見ると、12の矢印は赤い矢印ですから、Aにしか働いていません。Bが加速方向に受ける力は、青い矢印、つまりPだけです。

 

 この手の間違いをする人の各図を見ると、矢印の形はすべて同じ。物体ごとに矢印の形を変えていません。

 さいしょにポイント3で示した初心者向けのアドバイス、物体ごとに力の矢印の形や色を変えていれば、混乱が防げたはずです。

 

 他の問題は、描きこみを見てください。ここまで「教習」をこなしてきた人には、比較的たやすく、理解することができるはずです。

 

 これで、基本的な「教習」は終了。あとは応用となります。

 

 

関連記事

 

旧版

物理ネコ教室014力と慣性1
物理ネコ教室014力と慣性2

物理ネコ教室015力のつりあい

物理ネコ教室016作用反作用とつりあいの力1

物理ネコ教室016作用反作用とつりあいの力2

物理ネコ教室017力のつりあいの式

物理ネコ教室017-2力のつりあい演習

物理ネコ教室018運動方程式

物理ネコ教室18-1運動方程式演習

物理ネコ教室019滑車のあるときの運動方程式

物理ネコ教室19-1運動方程式総合演習

物理ネコ教室019-2力三角関数演習
物理ネコ教室020弾性力と摩擦力

物理ネコ教室021さまざまな力の原因

物理ネコ教室022空気や水からうける力その1空気抵抗力

物理ネコ教室022空気や水からうける力その2浮力

物理ネコ教室023水圧と気圧

 

新版

物理ネコ教室014力と慣性1(改訂していない)

物理ネコ教室014力と慣性2(改訂していない)

物理ネコ教室015力のつりあい(一部改訂して上書き/2022.9.9)

物理ネコ教室016作用反作用とつりあいの力1(一部改訂して上書き/2022.9.9)

物理ネコ教室016作用反作用とつりあいの力2・改訂版(全面改訂/2022.9.10)

物理ネコ教室017力のつりあいの式・改訂版全面改訂/2022.9.11)

物理ネコ教室017-2力のつりあいの式演習・改訂版(全面改訂/2022.11.10)

物理ネコ教室018弾性力・改訂版(全面改訂/2022.9.29)

物理ネコ教室019運動方程式・改訂版(全面改訂/2022.10.29)

物理ネコ教室019-2運動方程式演習・改訂版(一部改訂/2022.11.11)

物理ネコ教室020滑車のあるときの運動方程式・改訂版(一部改訂/2022.10.30)

物理ネコ教室021摩擦力(全面改訂/2022.11.4)

物理ネコ教室021-2摩擦力演習(新規/2022.11.5)

物理ネコ教室022さまざまな力の原因・改訂版(全面改訂/2022.11.6)

物理ネコ教室023空気や水からうける力その1・改訂版(全面改訂/2022.11.15)

 

(以下、随時更新)

物理ネコ教室力学改訂版・更新情報

 

 

物理学の系譜〜その3ニュートン1

物理学の系譜〜その4ニュートン2

 

 

〜ミオくんと科探隊 サイトマップ〜

このサイト「ミオくんとなんでも科学探究隊」のサイトマップ一覧です。


ぼくの物理の講座とプリントを公開しています。

 

 

***   お知らせ   ***

 

日本評論社のウェブサイトで連載した『さりと12のひみつ』電子本(Kindle版)

Amazonへのリンクは下のバナーで。

 

 

 

『いきいき物理マンガで冒険〜ミオくんとなんでも科学探究隊・理論編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。

 

 

『いきいき物理マンガで実験〜ミオくんとなんでも科学探究隊・実験編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。