物理ネコ教室016作用反作用とつりあいの力2 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 ニュートンが力の定義を明確にしたおかげで、さまざまな力学現象をきちんと解くことができるようになりました。物理学の入口をガリレオが切り開き、ニュートンがその基礎を築いたということになります。

 

 さて、19世紀まで、科学は、科学に興味のある人だけのものでした。そもそも「科学では飯が食えない」時代が長かったので、よほど物好きな、自然現象への探求心が強い人しか、科学の世界には入っていかなかったのです。

 

 ところが、現代になり、だれもが科学を学べるようになると、科学に興味のない人も科学を学ぶようになりました。

 現代は科学の時代ですので、科学の基本的な知識がないと困るようになったからです。

 

 科学に興味のある人なら、ほうっておいても自分で探究し、科学のさまざまな法則を自在に使えるようになります。ですから、法則をどのように理解させるかという教授法は必要ありません。

 

 でも、科学に興味のない人の場合は、そのままでは法則の理解も怪しいし、ましてはその法則を使いこなすことはできません。ある程度、「こうすればだれでも使えるようになる」という教授法が必要とされるようになってきました。

 

 科学に興味のない人が、物理学を学ぶとき、一番最初につまづくのが、「力のあつかい」です。

 力を矢印で表し、その矢印を使って力のつりあいや運動の法則の式を立てる、なんてことは、それなりの「教習」を受けないと不可能でしょう。

 

 力のあつかい方の「教習」については、幸い、日本には工夫の長い歴史があります。(愛知物理サークルの「受ける力で考えよう」もその1つです)

 

 ですから、今では、力のあつかい方については、かんたんなルールを身につけることで、だれでも自在に扱えるようになりました。

 

 そのルールは4つあります。(残念ながら、どの教科書にも書いてある定番、というわけではありませんが)

 

 ポイント1は、図に力の矢印を書き込むときのルール。

 前回のように、すべての力の矢印を書き込むと、式を立てるときに混乱します。

 そこで、物体ごとに受ける力だけをピックアップして描くことで、他の力を省略することができます。

 単純なことですが、初心者にとっては、非常に重要なルールですね。

 

 ポイント2は、力の矢印を漏らさず書き込むためのルールです。

 まず、直接触っていない相手から受ける力(重力や静電気力)を図に描き込みます。これは初心者でも、わりとうまく描き込めますね。

 次に、直接触っている相手を1つずつチェックして、その相手から受ける力を1つずつ描き込んでいきます。相手のチェックは、物体の縁を指でなぞるなどすれば、触っている相手を確認することができますね。これがもっとも重要です。なぜかというと、ほとんどの初心者が、直接触っている相手から受ける力を1つ2つ見逃すことで、失敗するからです。

 

 ポイント3は、力の矢印の形を変えること。

 初心者は、せっかく力の矢印を1つ残らず描けても、そこから運動方程式や力のつりあいの式を立てるときに間違えます。

 ある物体の運動方程式を立てるとき、その物体が受ける力だけを使って式を立てないと行けないのですが、初心者はその物体が受けている力以外の力まで、式に入れてしまうのです。

 力の矢印の形を変えておけば、そういうミスはかなり防げます。

 

 ポイント4は、理想的な糸と滑車が登場するときの注意事項です。

 理想的な糸は、質量が無視できて、伸びたり縮んだりしない糸です。理想的な滑車は、質量が無視できて、なめらかに回る滑車です。

 これらの理想的な糸や滑車が登場するケースでは、同じ糸の両端の張力は等しく、滑車の両側にかかる糸の張力も等しくなります。

 これをかんたんに表現するなら、「同じ糸の張力はどこでも等しい」ということになるでしょうか。

 これは、軽い糸の張力や軽い滑車の性質ですので、作用反作用の法則とか、つりあいとかで、等しくなっているわけではありません。(質量のない糸についての運動方程式を立てたり、質量のない滑車についての回転運動の方程式を立てれば、張力が等しくなることを証明できますが、煩雑になるのでやめておきます。それに滑車についての回転運動方程式は、現在の高校カリキュラムではあつかいませんし)

 

 また、理想的な軽いばねについても、同様なルールが適用されます。

 理想的な軽いばねが両端を押したり引いたりする力は、どちらの端でも力の大きさが等しい。

 これも、糸と同様に運動方程式により証明することができますが、軽いばねの力の「性質」だと理解しておいた方がはやいですね。

 

 

 描きこみプリント(といっても、マーカーで色をつけてあるだけですが)を見ておきましょう。

 

 

 さきほどのコメントのまま、マーカーで色をつけてあります。

 ここで示したルールを使えれば、どんな複雑な運動方程式も解けます。

 

 なお、力のあつかいでもっとも間違うのは、ポイント2の(2)です。触っている相手からうける力を図に描きこむとき、一つ二つ、力を見つけ損なうのです。間違う人の8〜9割が、ここで間違います。

 

 また、初心者の場合、せっかく力の矢印が正しく描けても、どの力がどの物体に働いているのか、判断ができずに、力のつり合いの式や運動方程式の合力を計算するとき、別の物体に働く力を余分に描き込んでしまうことがあります。

 これを防ぐためには、ポイント3に説明したように、物体ごとに、受ける力の矢印の形を変えたり、色分けしたりするとよいですね。

 

 では、今回はこのへんで。

 

 

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