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 剛体のつりあいの概念は、古くはアルキメデスのテコの原理に始まり、ガリレオの『機械論レ・メカニケ』によって完成しました。アルキメデスのテコの原理を「力のモーメント」で一般化したのです。まだ、ニュートンにより、力の厳密な定義がなされるより前の話です。

 

 現代の物理ではそういう歴史順は関係なく、論理体系として矛盾のないように内容を並べていますから、高校でも大学でも、まず「力」を学び、つぎに「力のモーメント」を学ぶようになっています。

 

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 新・物理ネコ教室は次の構成となっています。

 

前半【講座プリントとその概要】講座構成の背景を解説。対象は物理学のより深い理解を目指す高校生・一般・教師の方。

後半【講座内容】高校物理の講座公開。対象は高校物理を学習したい高校生・一般の方。

 

 物理学についてより深い理解を得たい方は前半から御覧ください。高校物理の具体的な内容だけ学びたいという方は、後半だけご覧になっても構いません。

 

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【講座プリントとその概要】

 

 

 剛体のつりあいでは、教科書によっては大事な内容が省かれています。

 それが、1.の剛体のつりあいの作図のしかたです。

 多くの教科書ではこの作図法を詳しく述べず、つりあいの式を立てて数学的に解く方法が優先されているのです。

 ところが、共通テスト(旧センター試験)には、この作図方が何度も出題されているので、解き方がわからず困る受験生が続出しました。

 この作図法を知らないと、剛体に働く力の性質がなかなかわからないので、受験対策としてだけでなく、物理現象の本質を調べる上でも重要です。

 

 剛体の場合、回転を考慮する必要があるので、前回やったように、力の矢印を平行移動させる場合に「作用線上だけ移動できる」という制限が課されます。

 この制限によって、剛体でつりあう3力は、「3力の延長線上のただ一点で出会い、そこで合力をつくる」というルールが生まれます。

 

(例)棒のつりあいの問題の右側に、この図を描くときの順がしめしてあります。例題では、重力mgと張力Tについては向きがわかっていますが、抗力Rの向きがわかっていません。

 

(1)向きのわかっているmgの作用線を引く。

(2)向きのわかっているTの作用線を引く。

(3)向きのわかっていないRの作用線を、A点との2力の作用線の交点を通るように引く。この交点が3つの力の合力ができる点になる。

(4)mgをこの点まで平行移動させる。

(5)このmgにつりあう逆向きで同じ大きさの矢印を引く。

(6)この矢印がTとRの合力となるように、TとRの長さを調整して作図する。

(7)ここで求めたRをRの作用線上で平行移動させてA点に置く。これで、Rの向きと大きさがわかる。(ただし、大きさを図から直接求められるケースは少ない。この方法で確実にわかるのは、Rの向きだけである)

 

(例)この問題を各自で作図して、この作図法を練習します。

 

2.剛体のつりあいの式

 質点のつりあいの式が「力の和=0」であるのに対し、剛体のつりあいの式は「力のモーメントの和=0」です。「力のモーメントのつりあいの式」と呼ぶこともあります。

 

 力のモーメントのつりあいの式を立てるのは、本来簡単なのですが、高校生にとっては苦手な分野の一つになっています。その原因ははっきりしていて、力と腕が垂直でないときの力のモーメントの計算方法が2種類あることを忘れてしまうことです。

 力のモーメントは力と腕が垂直なときの「力×うで」で定義されます。

 そのため、垂直でないときは垂直な組み合わせを考える必要があります。(詳細は前回102剛体に働く力を参照)

 力の腕に垂直な成分を考えて計算する方法はわかりやすいのですが、もう一つ、腕の力に垂直な成分を考えて計算する方法は、力の作用線と支点の距離を「うで」と見るのが慣れないうちはやっかいで、うまく計算できない人が多いのです。

 

 まず、2.で単純なケースの力のモーメントのつりあいの式を立てる練習をしておきます。

 

 

3.均質でない棒のつりあい

 これはどの教科書にもある定番の問題です。ほんの少しだけ棒が床から浮く状態ではBで受ける張力も重心Gで受ける重力も鉛直方向で、そのためAで受ける垂直抗力Rも鉛直方向になりますが、習い始めの学生にとっては、Rが鉛直方向になるというのが理解しづらいようです。

 

4.力と腕が垂直でない場合

 先ほど書いた通り、このケースでの力のモーメントの計算方法が2種類あり、両方ともできるようにしておかないと、のちのち力のモーメントがわからなくなります。

 ここでは、特に学生の苦手な「腕を分解する」方法を身につけることを主眼に置くとよいでしょう。

 扱う問題は、とくに難しくない基本問題です。

 

【講座内容】

 

 

 前回、力のモーメントの基本的な考え方を学びました。今回は、それを使って剛体のつりあいを考える方法を学びましょう。

 

1.剛体のつりあいの作図

 まず、作図法から。

 じつは、この作図法については、高校物理の教科書の多くで、明確な記述がありません。しかし、共通テスト(以前のセンター試験)では、何度も出題されています。そのため、教科書通りに学んでいる学生にとって、解き方のわからない問題になっています。

 共通テストは大学の先生方が作る問題ですので、本質的な問題を出題する傾向にあります。しかし、今の高校物理の教科書は物理学の本質からずれている記述が多く見られます。

 その矛盾が、共通テストの場で現れることが、しばしばあるんですね。この剛体のつりあいの作図法は、まさにその典型的な例です。

 では、その作図法を学びましょう。

 

 「つりあいのときに合力が0になる」というのがつりあいの基本ですが、その大前提として、それらの力が出会う必要があります。なぜなら、剛体の場合、力は作用線上でしか移動できないからです。

 この例題を見てみましょう。

 この例題でわかっているのは、重力mgと糸の張力Tだけです。棒のA端で棒が床から受ける抗力Rについては向きも大きさもわかっていません。しかし、この3つの力はそれぞれの力の作用線上を移動して出会うことができれば、その点で合力0の図を描くことができます。

 

 その作図方が右の図です。図を見ながら、作図の順を見ていってください。

(1)と(2)では、まず、向きのわかっている2つの力、重力mgと糸の張力Tが出会う点を求めるため、2つの力の作用線を描きます。その交点が3つのちからが合力=0となる場所になります。

(3)で、いよいよA点で棒が受ける抗力Rの向きを調べます。

mgとTの作用線の交わる点をRも通るので、A点から(1)(2)の作用線の交点を結びます。これがRの作用線になります。この点でmg、T、Rの3力の和が0になる図を描くと、Rの向きが確定します。

(4)では重力mgを作用線の交点に移動させます。

(5)ではmgと同じ大きさで逆向きの矢印を描き込みます。

(6)この矢印が、TとRの合力になるはずなので、合力=0となるように丁寧に図を描けば、未知の力Rの向きと大きさが確定します。

(7)このRをA点まで移動すれば、この棒に働く3つの力の図が描けたことになります。重力mg、張力T、抗力Rです。

 

 さて、この作図法で大切なのはRの向きを見つけるまでです。

 丁寧に図を描いて数学を駆使すれば、Rの大きさも求めることができますが、ほとんどの場合、この計算は高校生が短時間でできる計算にはなりません。

 

 そこで、この作図法は「未知の力の向きを求めるためだけに用いる」と割り切っておいた方がよいでしょう。

 

2.剛体のつりあいの式

 剛体の回転についてのつりあいの式は、ある支点のまわりの力のモーメントの和=0という式になります。

 これに、質点についてのつりあいの式、力の和=0を加えれば、剛体のつりあいの式が完成します。

 

 まず、簡単な問題を解いて、この2つの式の使い方、とくに力のモーメントのつりあいの式を学びましょう。

(学生間で相談しながら、問題を解いてもらう。この段階の問題だと、かなりの数の人が成功する。その後、書き入れたように、式の解説を行う)

 

 

3.均質でない棒のつりあい

 では、もう少し進んだ応用問題を解いてみましょう。応用といっても、それほどむつかしくはありません。

 棒が均質でないので、棒の重心Gは棒の中点にはありません。そこで、Gの位置をA端からxと仮定して、力のモーメントのつりあいの式を立ててみましょう。

 

 なお、よく質問を受けることですが、A点で受ける抗力が斜めになっていないのは、他の2力が鉛直方向なので、抗力だけ斜めだと力がつりあわなくなるためです。

 

(書き込みの通り、答え合わせをする)

 

4.力とうでが垂直でないとき

 この場合の力のモーメントのつりあいの式が、一番のポイントになります。

 剛体のつりあいが苦手だという人は、ここをうまく扱えない人です。

 前回やったように、力のモーメントの計算方法は、力を分解する方法と腕を分解する方法の2種類がありましたね。力のモーメントがわからないという人の大半は、腕を分解する方法を忘れてしまっている人です。

 問題集や模試の解答などでは、腕を分解する方法で解説することが多いのですが、その説明がわからないんですね。

 みなさんは、2種類の計算方法をどちらもマスターして、力のモーメントを得意な分野にしてください。

 

(書き込みには2種類の計算の区別がわかるように色分けしてある)

 

 なお、計算により力のモーメントのつりあいの式を立てる場合、力の矢印の大きさは適当な大きさでかまいません。Rの矢印を厳密に描くのは、作図によりRを求める場合で、つりあいの式を使って解く場合には、矢印の大きさは適当でいいのです。

 

 腕を分解する方法のときは、腕の長さとして、力の作用線と支点の間の距離を使いますが、慣れない人はこれを見つけるのが難しいので、何問か練習して、慣れておきましょう。本質的には難しくない内容ですので、要するに慣れるか慣れないかの問題です。

 意識してこの方法で問題を解く練習をした人は、みんな剛体のつりあいの分野は得意分野になっていますので、みなさんもがんばってみてください。

 

 では、今回はここまで。

 

 

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