『COSMOS』第2話は「宇宙の音楽」。現代はONE VOICE IN THE COSMIC FUGUEで、直訳すると「宇宙の遁走曲(フーガ)の一つの声」になります。
セーガンは宇宙には知的生命体で満ちているという前提で、様々な知的生命体の存在を「フーガ」にたとえています。フーガは1つのテーマを複数の声部で構成する手法のことで、おそらくセーガンは宇宙のたくさんの生命をフーガにたとえ、われわれ地球の生命もその一つなのだ、といっているのでしょう。
ここでも、セーガンの強い主張が見られます。
冒頭のイラストは、昔描いた生物進化カレンダーの一コマです。これも知識としては古いですが。
第2話 宇宙の音楽
【番組のアウトライン】
・宇宙にも私たちのような生物がいるのか。宇宙には私たちと同じタイプの有機物がある。生命の誕生と進化は宇宙の必然かもしれない。
・地球は生命の唯一の歌なのか、それとも、宇宙には何千もの生命の歌があるのか。
・12世紀。日本、壇ノ浦。平家は源氏との戦いに敗れ、滅びた。その後、平家の武士(番組ではサムライ・ウォリアー)がカニに憑依して海をさまよっているといわれるようになる。甲羅にサムライの顔が浮かぶヘイケガニがそれだ。
・遺伝の変異には様々なものがある。たまたま武士の顔に似た甲羅のカニが生まれ、漁師に気味悪がられて海に戻された。それが繰り返されるうち、そのカニが増えてきた。人為淘汰(日本語字幕では「人為選択」となっていたが、「人為淘汰」の方がいいのでは?)されたのだ。
・人為選択がこれほど短い期間に行われたのだから、より長い時間がある自然淘汰では、どれほどのことができるだろう。
・進化は自然淘汰で起きるというのが、ダーウィンとウォーレスの発見だ。(日本ではウォーレスのことはあまり知られていないが、ダーウィンと同じ時期に同じ結論にたどり着いた人)
・進化と自然淘汰の考えは、多くの人を怒らせた。複雑な生物は神の存在なしには生まれないと。(これは特にアメリカでは深刻な問題)
・宇宙の歴史を1年にした宇宙カレンダーでは、生命の誕生は9月のこと。DNAは自分の複製を作り出した。「性」は11月に生まれた。12月1日、葉緑体が酸素を作った。青空は植物がつくったのだ。12月15日、カンブリア爆発が起こる。(膨大な種類と数の節足動物などが激増したことをいう)
・12月30日には人間に似た生物が生まれ、12月31日には人類が誕生した。文字の歴史は31日の最後の10秒だ。
・ここで、生物の進化をなぞるアニメーション。(線画のアニメーションだが、できのいいアニメーション)
原始のスープ、疎水性と親水性の分子が集まり、内部を守る石鹸の泡のような丸い殻を作る。泡の中でDNAの先祖が安定し、最初の細胞ができる。それが酸素を出す植物に進化するまで長い時間がかかる。
細胞の内外で違う働きをする機能分化が起こり、食指で未発達な口に餌を運ぶヒトデの先祖が登場。5億5千年前、食物を濾すエラのような切れ目ができた。これはギボシムシになった。
やがて海を泳ぎ回るものが生まれ、背骨が発達した。
5億年前、ヤツメウナギに似た顎のない魚が出現し、徐々に目と顎ができてくる。速く泳ぐ魚が生き残り、顎は食べるため、エラは呼吸するために使われた。
夏になると池の水は干上がる。原始的な肺で呼吸するものが現れた。脳も大きく発達する。
雨が降らないと別の池に移動するものも現れた。魚の尾を残した最初の両生類が誕生する。魚のように水中に卵を生んだ。
やがて硬い殻の卵が登場し、これで陸に住めるようになった。爬虫類のカメはその頃登場する。爬虫類は水に戻らなかった。恐竜になったものもいる。
飛ぶ羽を発達させた種もいる。現在、恐竜の子孫は鳥だけだろう。
巨大な恐竜は、6500万年前、謎の絶滅を遂げた。
一方、恐竜の先駆者が別方向で進化していた。小さな身体でちょろちょろ動く、母親の胎内で育つ動物だ。
有袋類や哺乳類の子は生まれてすぐは弱く、生き延びることを学ばなければならない。それで脳が発達した。
トガリネズミの種が哺乳類の先祖だろう。
木に住んだ種は機敏になり、よく利く目と脳を持ち、好奇心が高まる。サルと人類は共通の祖先を持つ。骨、筋肉、分子の点で、双方に重大な違いはない。チンパンジーと違い、私たちの祖先は直立し、自由な手で様々なことができた。より賢くなり、言葉を話し始める。
人類の系統の多くは、この数百万年で絶滅した。脳と手を操れる私たちが生き残ったのだ。
進化の歴史の糸は、延々と切れずにつながっている。
・私たちは木の重要さを忘れていないか。木は太陽の光と大気の二酸化炭素と大地の水から炭水化物を作り、私たちはそれを盗んで生きている。呼吸で取り込んだ酸素と結合させ、エネルギーを得ている。
・動物と植物は互いに吐き出したものを取り入れている。なんという共生関係か。太陽がこの循環を維持させている。
・地球の生物には共通点がある。
・例えば、5の数は明快だ。人間の体には5つの突出部がある。1つの頭、2つの腕、2つの脚。カモも同じだ。
・しかし、タコやムカデは異なる設計だ。
・別の星の生き物は、もっと違っているだろう。
・だが、分子レベルで見ると、より深い共通点がある。世の中には何百億種もの有機物がある。しかし、使われているのはその中の50種ほどにすぎない。様々な反応のため、同じ形の反応が巧妙に繰り返し使われているのだ。
・地球の生物の中核をなしているのは、タンパク質と、その遺伝的な指示を伝える核酸だ。この2つの分子は、すべての動物や植物に共通で、本質的に同じものだ。
・樫の木も私も、遡れば同じ祖先で、化学物質が同じなのだ。
・共通の物質、細胞の核の中身は二重螺旋構造のDNAだ。DNAの自己複製は酵素が行う。めったに無いことだが、酵素が間違いを犯すと、遺伝の指示が変化する。これが突然変異だ。
・DNAは10億個のヌクレオチドからできているが、遺伝情報を決めているのは、そのうちほんの一部だ。DNAで実現可能な人間の種類は、今まで生まれてきた人間の数より多い。未来には新しい型の人間を生み出す組み合わせが実現できるようになっているかもしれない。それは、不安な未来であり、深刻な問題だ。
・では、生命はどうやって生まれたのか。
・コーネル大学で原始大気に雷を当てる実験が行われたのは、1950年代のこと。40億年前の大気は、水素、メタン、アンモニアで、酸素はなかった。実験により、有機物は生まれたが、いまだに生命体は生まれていない。まだ実験を始めて、30年しか経っていない。(COSMOS放映当時のこと)
・隕石にもアミノ酸が含まれている。生命の物質は宇宙にもある。
・他の星の生物は、地球のとはかなり違っているだろう。(ここで、セーガンによる木星に似たタイプの惑星の生態系についての考察。省略する)
・生物学は物理学よりも歴史学に似ている。未来を知るには過去を知る必要がある。研究対象が複雑すぎるからだ。
・これまで聞いてきた音楽は一つだけだった。(地球の生命のこと)これからは別の音楽を聞けるだろう。(宇宙探索が進めば、という意味)
<コレクション版の補填>
・RNAこそ、最初の原始生命だろう。
・恐竜絶滅は、巨大彗星の衝突が原因らしい。
【第2話を観て】
ひろじ「第1話は、シリーズ全体のプロローグみたいな構成になっているからね。第2話以降が、それぞれのテーマについて、セーガンが思う存分語る内容になっている。第2話は生命がテーマだ」
えみり「ちょっと感動したな。地球以外にも生命はいるはずだってところとか」
きりる「あくまでも可能性の話だがな。地球にしか知的生命体がいない、という可能性もある。だが、それを知るすべはないな。悪魔の証明だろう」
みすみ「宇宙人がじゃあんと姿を表したら、それで決定、だけど。それが今までないのが、答かも、じゃん。それじゃ、つまんないけど」
ひな「どうして、いきなりヘイケガニの話なんですか?」
きりる「そうだな。人為淘汰の話なら、イギリスの黒い蛾の話とか、野菜の品種改良とか、いくらでも話題があるだろうに」
ひろじ「細かい事情は不明だけど、この番組は日本の朝日放送も協力しているから、日本の話題が欲しかったのかも。壇ノ浦のシーンは、実際、日本で撮影しているのか、アメリカで撮影しているのか、ちょっと分かりづらいよ」
えみり「でも、番組の放映は朝日放送じゃなく、NHKなんでしょ」
ひろじ「うーん、そのへんの事情は知らないんだけどね。まあ、なんらかの大人の事情があったんじゃないかな」
ひな「あのう、進化論のダーウィンは知っているんですけど、ウォーレスって、誰なんですか」
ひろじ「これはねえ、科学発見物語ではよくある話のひとつなんだけど・・・聞く?」
ひな「知りたいです」
ひろじ「ダーウィンは、自分の進化論を本にして発表する時、いろいろな証拠を完璧に集めてから発表しようと思っていたんだ。宗教からの攻撃が激しくなることを予想していたからね。理論を思いついてから20年間、証拠集めをしていた。ところが、ある日、ウォーレスから手紙をもらった。自分の考えている進化論の理論とほとんど同じ理論をウォーレスが考えて、それについて意見を求める手紙だったんだ」
ひな「ええーっ、すごい偶然ですね!」
ひろじ「それで、ダーウィンは慌てて方針を変更して、進化論の本『種の起源』を、とりあえず出版することにしたんだ。慌てて作ったので、ダーウィンが当初考えていた本の5分の1くらいの分量になってしまったそうだけど」
えみり「そうね。急がないと、ウォーレスが先に発表したら、とんでもないことになるもん」
ひろじ「ただ、ダーウィンはウォーレスを無視せず、ちゃんとウォーレスと共著の形を取ったんだ。これは誠実で、なかなかできないことだよ」
みすみ「ねえねえ、複雑な生物は神の存在なしには生まれないって、どういうこと?」
ひろじ「これはね、インテリジェント・デザインという考え方で、キリスト教の創造説を、より一般化した考え方だ。『神』といわず『偉大なる知性』と表現することで、他の宗教、たとえば、ユダヤ教とかイスラム教などの信者にも受け入れやすい形にしたものだよ。進化論を否定する宗教側の理論というところかな。まあ、創造説の形を変えただけのものだと思うけど。アメリカではキリスト教保守派が大きな勢力を持っているので、政治的にもそれを無視するわけにはいかない。だから、科学的でない主張もまかりとおるんだ。もっとも、それはアメリカだけの話ではなく、日本でもどこでも、大なり小なり、似た状況があるけど。ある意味、中世のような古い時代に生きている国がアメリカって感じかな」
みすみ「なんだか、オカルトに似てるなあ」
ひろじ「あまり知られていないけど、カトリック教会も、ヨハネ・パウロ2世の頃から、科学的な知見を宗教に入れるのを積極的に行ってきている。ヨハネ・パウロ2世は、ガリレオ・ガリレイの宗教裁判は間違いだったと謝罪してガリレオの名誉回復を行ったし、進化論も否定していない。カトリック教会の方がアメリカのプロテスタントより、進歩的な発想をしているよ」
えみり「人間もカモも5でできているって、面白いね。そういえば、手の指の本数も5本でしょ」
きりる「それ、この間、議論したやつだな。突起が5つって、手や足も同じだな。ヒトデと同じってことか」
えみり「いやいや、セーガンはカモまでは同じだけど、タコやムカデは違うっていってるじゃん。ヒトデだと、もっと違う生き物だよ」
きりる「有機物のうち、生物が有用な情報として使っているのはごく一部というのが、おもしろいな。人間のDNAも、遺伝情報として使われている場所は、ほんの少しだというし」
ひな「DNAの研究とか進むと、理想的な人間とか作れるようになるんですか」
みすみ「理想的って何? どういうのが理想的なの? その発想って、危険じゃん。昔、ナチスがアーリア人種の優位性とかいってたのを同じじゃん?」
ひな「あ、そうですね」
きりる「コーネル大学の実験は、有名だな。無機物から有機物を合成したっていう。でも、生命を作る実験はまだ成功していないんだろ」
ひろじ「うーん、まだだろうね」
えみり「仮想空間では、人間みたいに反応するAIが生まれたけど、生命かというと、ちょっと違うかな」
ひろじ「セーガンはボイジャーに地球の文明がわかるCDディスクを載せた人でもある」
みすみ「それ、危険なんじゃない? 前に読んだ『三体』ってSF小説では、それをやるとより高度な文明に侵略されてしまうっていってたじゃん」
ひろじ「そうだね。人類の歴史を紐解くと、簡単に門戸を開いたところは、悲劇的な結果に陥っている。インカの例とか、アメリカンネイティブの例とか、より進んだ文明が遅れた文明を一方的に搾取している・・・平和的に交流が進んだ例ってほとんどないんじゃないかな。セーガンの発想はその観点からすると、お人好しすぎて危険、ということになるかもしれない。そういえば昔、オズマ計画とかいって、宇宙に向けて電波で地球に文明があることを送り、返事をもらおうなんてプロジェクトがあったな」
きりる「そもそも、どんなに速くても信号は光速でしか送れないんだから、となりの銀河系と通信するのだって、片道何十年とかかる。そんな状態で情報交換ができるのかな」
えみり「古い時代の手紙と似てるね。届くまでに何日もかかるし、その返事がまた届くのに同じ日数がかかるわ」
ひな「そういう話は出てこなかったですね」
ひろじ「今回のテーマは地球以外にも生命体が存在するか、という科学的なテーマだからね。底から先の話はまた、違うテーマになる。うーん、COSMOSでそういうの、扱っていたかなあ。まあ、これから順番に観ていけば、そのへんの話も出てくるかもしれない。今後の楽しみにしておこうか」
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