物理ネコ教室021-2摩擦力演習 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 旧版では、演習問題は運動方程式までで、摩擦力の演習問題は公開しませんでした。

 それは、ちょうど講座が摩擦力の分野に入った頃、学級閉鎖やオンライン講義がなくなって通常運転に戻ったためです。

 「原則として演習問題は公開しない」という基本方針に戻したのですね。(*)

 

(*)この原則は、演習問題まで公開すると膨大な量になるという理由で立てたものです。

 

 新版を作成するに当たり、演習問題が公開されている部分とそうでない部分が混在しているのは混乱をまねくと判断しました。そこで、力の分野に関しては、旧版で公開していなかった他の問題も公開し、統一性をもたせることにしました。

 

 では、摩擦力の演習問題です。

 

 

 1と2は重要な問題なので、いつも必ず講座の中で扱っています。

 何が重要かというと、問題2です。

 

 問題2は、力の矢印を描きこむ段階で「中世的な」感覚が間違いを引き起こしやすいのです。

 

 問題1をやってから問題2をやると、その間違いをしにくくはなりますが、それでも間違う人は一定数います。まだ、現代人になりきれていない人がいるのですね。

 

 3は通常の問題で、一般角θで解いたことのある問題ですから、さほど問題はないでしょう。

 

 

 4は摩擦力の性質を区別するのにちょうどよい総合問題です。

 3種類の摩擦力の区別がついていないと、間違えます。摩擦力をちゃんと理解しているかどうか、チェックできますね。

 

 5は、水平方向、鉛直方向の運動方程式とつりあいの式を組み合わせないと解けない、典型的な問題です。

 

 1〜5は、さほど難しい問題ではありませんので、現時点での理解度のチェックによいでしょう。描きこみの答えを見る前に、自分で解いてみてください。

 

 では、描きこみを見ながら、解説します。

 

 

 1は描きこみの通りです。今までの講座内容を一通り復習している人なら、普通に解ける簡単な問題です。全部で4本の力の矢印も、間違えずに描けたのではないでしょうか。

 

 問題は2です。

 力を描きこむとき、謎の右向きの力を余分に描いた人はいませんか?

 例年、そういう力を書き込んでしまう人が、一定数います。

 最初、物体を右向きに滑らせたので、「最初に押したときの右向きの力が残っている」とか、「右向きに進もうとする力がある」とか、考えてしまった人です。「物体が動く向きにはかならず力が働いている」という中世の誤った考えですね。

 

 これは、ガリレオ以前の人たちが考えていた、間違った考えです。

 

 ガリレオは、最初動いていた物体が動き続けるのは、力のせいではなく、物体にはそれまでの運動を続けようとする慣性という性質があるからだ、と見抜いたのです。

 

 物体が動きつづけるのは、物体の勝手、というのが、慣性の法則のポイントです。

 

 したがって、問題2の物体には右向きに働く力の矢印を描いてはいけません。

 

 力は及ぼし合う相手が必ず存在します。

 問題2の物体の場合、力を及ぼし合う相手は、地球と床しかありません。

 したがって、物体が受ける力は地球から受ける重力と、床から受ける垂直抗力と摩擦力だけです。

 

 なお、次のような疑問を感じる人もいるかもしれません。

 他の物体との間では、物体1つにつき1つの力しか受けないのに、なぜ床からだけは2つの力を受けるのだろう?

 じつは、冒頭の図のように、この垂直抗力と摩擦力は「抗力」という1つの力の成分です。

 

 そうすると、描きこみのように、x方向に運動方程式、y方向に力のつりあいの式を立てて、解くと、物体の加速度aはマイナスになります。これは、右向きだと考えて計算したのが間違いで、本当は逆向きだったことを教えてくれるマイナスです。

 したがって、答は「左向きにμ'g」となります。

 

 3は、摩擦角の問題と、斜面上の加速運動の問題です。基本的な問題ですが、摩擦力の扱いになれていないと、よく間違います。解説をよく読んで、注意するポイントをよく理解しておきましょう。

 

 

 4は絶対にやっておいてほしい問題です。

 3種類の摩擦力の区別をきちんと判断できないと、混乱してちゃんと解くことができません。

 自分の解いた答えと、描きこみの答を比べてみてください。とんでもない思い込みや勘違いをしてませんでしたか?

 

(1)では「Mが2mを超えたら滑り出した」と書かれています。ということは、M=2mのとき、摩擦力は最大摩擦力F=μNになっていて、力はつりあっています。

 

(2)では「AもBも止まっていた」としか書かれていませんから、摩擦力はただの静止摩擦力です。したがって、F=μNの式は使えません。

 

(3)では物体は滑っていますので、摩擦力は動摩擦力F'=μNとなっています。

 

この3種類の摩擦力の違いを正しく判断できれば、さほど難しい問題ではありません。

 

 5はx方向の運動方程式、y方向の力のつりあいの式を立て、それを組み合わせて解きます。

 描きこみの式を見て、自分の立てた式と比べてみてください。

 この問題の場合、式は立てられても、そのあとの計算ができない、という人もいます。描きこみの計算例は、もっとも一般的な計算の仕方になっていますので、計算が苦手な人は参考にしてください。

 

 

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