子どもの教育のための書物であるはずなのに、「世界図絵」井ノ口淳三訳 平凡社 「112 節制」につぎのような記述がある。
「節制は食べ物と飲み物の限度を教示し、欲求を手綱のように抑えます。
そしてあまりに生じすぎないように、すべてのものをほどよくします。
大酒飲みは酔っ払って、ぐらつき、吐き戻し、けんかをします。
酩酊から好色が生じ、ここから女郎やお引きずり女の間にあって、
くちづけし、なでさわり、抱擁し、踊るようなみだらな生活が始まるのです。」
下線の部分
原文:E Crapula oritur Lascivia
井ノ口淳三訳:酩酊から好色が生じ
英訳:from Drunkenness proceedeth Lasciviousness
英訳の和訳:泥酔からみだらなことにいたる
ロシア語訳:от пiянства происходить похмелье
ロシア語訳の和訳:泥酔からふつかよいが生じる
ごんざ訳:екърочкара джераръ камьно итаго
いぇくろちから ぢぇらる かみの いたご
ごんざ訳の現代語訳:泥酔から でる 頭の いたみ
リーダーズ英和辞典「lascivious みだらな、好色な;挑発的な。」
岩波ロシア語辞典 「похмелье 1宿酔、二日酔。2迎え酒を飲むこと。3酔い。」
ラテン語の原文は
「泥酔すると好色になる」とかいてあるのに、
ボグダーノフ師匠のロシア語は
「泥酔するとふつかよいになる」というようになっていて、「ふつかよい」と「好色」がうまくつながらない。
ごんざ訳はボグダーノフ師匠の「похмелье」をさらに具体的に説明して「泥酔すると『かみのいたご』(頭のいたみ)(『かみ』は「頭」『いたご』は「いたみ・病気」)になる」とかいているので、これも「好色」にはうまくつながらない。
ボグダーノフ師匠は、泥酔しても好色にはならず、ふつかよいになるタイプで、ごんざが「похмелье」(ふつかよい)に『かみのいたご』(頭のいたみ)という訳語をかいたということは、ごんざはのみすぎると頭がいたくなるタイプだったんだな。
おもいだした!
「世界図絵」の「72 居間と寝室」で、寝室に尿瓶があるという記述があって、原文は
「しびんは膀胱を軽くするのに役立ちます」なのに、ボグダーノフ師匠のロシア語訳は
「便座は胃袋を軽くするのに役立ちます」になっている。
もしかすると、ボグダーノフ師匠は大便をするためではなく、ふつかよい対策のために寝室に「便座」(便器)をおいていたんじゃないだろうか。
ボグダーノフ師匠のふつかよいは、ゲロをはく(胃袋を軽くする)タイプだ。