「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
「сапою [☆саплю]」(sapoyu [saplyu])「荒い鼻息をする」『かかじる』
村山七郎注 cf. カカジル ひっかく。大分・宮崎・熊本・鹿児島。TZH.
ごんざの訳語の『かかじる』は「ひっかく」という意味ではなく、「鼻」関連の別の動詞だろうと前にかいた。
「鼻」関連の動詞、とかいたのは、みだし語がロシア語の動詞の1人称単数形の形になっているのと、村山七郎訳が「荒い鼻息をする」とかいてあるからだ。
村山七郎教授は、みだし語は「сапою」(sapoyu)ではなく [☆саплю](saplyu)だろうとかいている。
たぶんつぎのことばあたりを意識しているんだろう。
岩波ロシア語辞典
「сап (荒い)鼻息、いびき。」
「сапнуть (馬が)鼻息を出す。」
これだけでは「荒い鼻息をする」の訳語がなぜ『かかじる』(=ひっかく)になるのか説明できない。
それで、あらためてかんがえてみた。
みだし語と関連がありそうなことばをさがすと、
岩波ロシア語辞典
「сопля 1鼻汁、鼻水。2鼻汁の一滴。」
ブルガリア語辞典 松永緑彌 大学書林
「сопол сопли 洟(はな)水。」
「鼻息」ではなく「鼻汁」の方がいい。
そして「かかじる」と関連がありそうなことばをさがすと、
全国方言辞典 東条操 東京堂
「かきばな 青鼻汁。徳島県板野郡。」
「かぐ 鼻をかむ。「鼻カグ」三重県度会郡。」
「はなかけ 鼻汁。鹿児島。」
『かかじる』に直接つながる用例はみつからなかったけれど、みだし語は「鼻汁」の意味の名詞で、ごんざの訳語も「鼻汁」の意味の名詞とかんがえた方がよさそうだ。