「世界図絵」井ノ口淳三訳 平凡社 の「123 都市の内部」につぎのような記述がある。
ラテン語:Popinoe & Caupona
井ノ口淳三訳:宿屋、居酒屋
Popinoe & Cauponaはどちらも飲食店のことらしいけど、井ノ口淳三訳は「宿屋、居酒屋」になっている。
宿屋では食事もだすだろうから。
ロシア語訳:шинки кабаки
ボグダーノフ師匠のロシア語は「шинки」(shinki)と「 кабаки」(kabaki)だ。
岩波ロシア語辞典
「шинок 居酒屋、一杯飲み屋。」
「кабак 居酒屋、酒場。」
どっちも居酒屋で、「кабак」はごんざの辞書にもでている。
「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」『ごんざ訳』
ところが、ロシア語訳の江口泰生訳は「密造酒屋 居酒屋」になっている。
「шинок」(shinok)の派生語をみると、
「шинкарить 1居酒屋を営む。2酒を密造(密売)する。」
「шинкарь 1居酒屋の店主。2酒の密造(密売)者。」
たしかに、密造酒につながっているようだ。
現代ロシア語で「密造酒」は「самогон」(samogon)といって、主に蒸留酒らしい。
岩波ロシア語辞典 「самогон 自家製の酒、密造酒。」
ソ連科学アカデミーの和露辞書(1984)で「どぶろく」をひくと、
「doburoku 濁酒 неочищенное сакэ; самогон」「精製されていない日本酒;密造酒」
「самогон」(samogon)がでている。
ロシアでは日本よりずっと密造酒が一般的だったらしい。
ボグダーノフ師匠の「шинок」(shinok)が非合法な酒をうる店を意味することは、ごんざにもつたわっていたようで、ごんざはつぎのような訳語をかいた。
ごんざ訳:ぬすぢぇさけうるとこる さかやなんど
ごんざ訳の日本語訳:ぬすんで酒をうるところ 酒屋など
密造酒をうるのとぬすんで酒をうるのは、ちょっとちがうけど「非合法」な感じは上手に訳している。
でも、コメニウスがかきたかったのは、もっと健康的にワインやビールをのむ店だとおもう。