「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
「сверчекъ」(sverchek' ) 「こおろぎ、鈴虫」『すずむし』
岩波ロシア語辞典 「сверчок 1コオロギ。2(鳥)ヤチセンニュウ;センニュウ。」
みだし語は、現代ロシア語の辞書には「コオロギ」とかいてあるので、村山七郎教授は「こおろぎ」とかいて、ごんざ訳にも配慮して「鈴虫」も並記したんだろう。
ごんざ訳の『すずむし』が現代日本語の「すずむし」と「こおろぎ」のどっちをさしているのかは、よくわからない。
虫のなまえは、時代と地域による差があって、わかりにくい。
邦訳日葡辞書 「Suzumuqi スズムシ(鈴虫)こおろぎのように鳴く小虫の一種。」
日葡辞書には「すずむし」はでているけど、「こおろぎ」はでていない。
「こおろぎのように鳴く小虫の一種」とかいてあるのは、ポルトガル語を訳したものだから、ポルトガル人には「すずむし」がわからなかったのかもしれないし、16世紀の日本人は「こおろぎ」を「すずむし」とよんでいたのかもしれない。
日本国語大辞典
「すずむし(鈴虫) 1①松虫の古称。②コオロギ科の昆虫。」
「こおろぎ(蟋蟀) ①古く、秋鳴く虫の総称。②直翅目コオロギ科の昆虫。③コオロギ亜科に属する昆虫の総称。(方言)①きりぎりす。岩手県紫波郡、秋田県由利郡。②いなご。富山県。福井県坂井郡。」
「きりぎりす ①昆虫「こおろぎ」の古名。②キリギリス科の昆虫。③キリギリス科に属する昆虫の総称。(方言)①こおろぎ。岩手県紫波郡、秋田県平鹿郡、山梨県南巨摩郡、長野県諏訪、岐阜県武儀郡。②いなご。石川県鳳至郡穴水。」
この3つ、ごちゃごちゃだな。
ソ連科学アカデミーの和露辞書(1984)をしらべると、
「suzumushi (японский) сверчок」「(日本の)こおろぎ」
「korogi сверчок」「こおろぎ」
「kirigirisu 1)кузнечик 2)(уст.)сверчок」「1)きりぎりす 2)(古語)こおろぎ」
ロシア語にも「すずむし」にあたることばはないらしい。
「世界図絵」井ノ口淳三訳 平凡社 「24 昆虫」にも「こおろぎ」はでてくる。
「バッタは鳴きます」
原文は
Gryllus cantillat.
ボグダーノフ師匠のロシア語訳は
сверчекъ и кузнечикъ поетъ
こおろぎと きりぎりすは うたう
ごんざ訳は
すずむし кузнечикъち うたう
ごんざ訳の現代日本語訳は
すずむしと кузнечикъというものは うたう
ボグダーノフ師匠はラテン語のGryllus(こおろぎ)一語を「こおろぎ」と「きりぎりす」の二語にわけた。
ごんざはロシア語の「こおろぎ」を「すずむし」と訳して、「きりぎりす」はわからなかった。
井ノ口淳三訳の「バッタ」は変だとおもう。