ブルガリア語に(себе си)(sebe si)、
ロシア語に(себя)(sebya)
ということばがある。
ブルガリア語辞典 松永緑彌 大学書林 「себе си 再帰・人称代名詞・完全形」
岩波ロシア語辞典 「себя (代)(再帰)(動作が動作者自身に関係することを示して)
1自分自身」
ブルガリア語の方に「完全形」とかいてあるけど、完全形ではない短縮された形があるということだ。
ブルガリア語辞典 松永緑彌 大学書林 「се 再帰・人称代名詞・対格短形」
ロシア語にも短縮された形がある。
ここまではブルガリア語とロシア語、ほぼおなじなんだけど、ここから先はちがう。
ブルガリア語の「се」(se)は「再帰・人称代名詞」として動詞のパートナーのようなはたらきをするんだけど、ロシア語の場合は、
岩波ロシア語辞典 「-ся [後接辞]Ⅰ他動詞(および一部の非他動詞)に付加されて受身(受動相)をつくる。Ⅱ再帰動詞をつくる。後略」
「-ся」(-sya)とハイフンがついていて「動詞に付加されて」とかいてある。
つまりブルガリア語の「се」(se)が「再帰人称代名詞」として独立した存在であるのに対して、ロシア語の「-ся」(-sya)は動詞の一部になってしまって、動詞のうしろにくっついた形で辞書のみだし語になっているのだ。
そしてロシア語の「-ся」(-sya)は母音につづく時には「сь」(si)という形になるけど、ブルガリア語の「се」(se)はいつもおなじかたちだ
日本語にはないものなので、日本語にたとえていうのはむずかしいけど、無理にたとえていうと(たたかれる)とか(おもいだされる)が辞書のみだし語になっているようなものだ。
(日本語にはないもの)が辞書のみだし語になっている、ということは、辞書をつくったごんざをとてもくるしめた、ということだ。