ごんざの「6」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

 「ろうそく」だけでなく、「6」もごんざの辞書に「до」(do)『ど』と「ло」(lo)『ろ』のふたつのつづりででてくる。

 

「ロシア語」(ラテン文字転写)        「村山七郎訳」『ごんざ訳』

 

「iюнiй」(iyunii)               「6月」  『ろぐゎつ』

「шездесятъ」(shezdesyat')        「60」   『ろくじゅ』

「шездесятыи」(shezdesyatyi)        「第60の」 『ろくじゅん

「шездесятолЕтныи」(shezdesyatoletnyi) 「60年の」 『ろくじゅねんの

「шестисотыи」(shestisotyi)        「第600の」『ろっぴゃくの

「шести лЕтныи」(shesti letnyi)      「6年の」 『ろくねんの

「шестиугол(ьн)ыи」(shestiugolinyi)     「六角形の」『ろっかくの

「шесть тысящь」(shesti tysyashchi)    「6000」  『ろくしぇん』

 

「пядень」(pyadeni)     「親指と人差指を張った長さ」『どくすん』(六寸)

 

岩波ロシア語辞典 「пядь 1.ピャージ、指尺(ロシアの古い長さの単位、元来親指と人差指を張った長さで、ふつう17.78cm)。」

 

 1寸が3cmだとすると、1ピャージが6寸であるというごんざの計算はただしい。

 

 ごんざの別の著作の『日本語会話入門』では『ろく』だけで、『どく』はない。

 

「339. loknic' shgocsurfiga,  仕事する日が6日。

   ロクニチ シゴツスルフィガ        」

 

 ここまでは「ろうそく」とおなじなんだけど、「6」には気になるのがある。

 

「шеснатцать」(shesnattsati)       「16」   『じゅろく』

 

 これも「ло」(lo)『ろ』とつづられているらしい。(ろ)が「ло」(lo)とつづられるのは語頭だけじゃなかったのか。

 語中の(ろ)が「ло」(lo)とつづられているのは、辞書全体の中でこれだけだとおもう。

 『ふろ』(風呂)も『じょろ』(女郎)も「ро」(ro)とつづられているのだ。

 語頭じゃないのに「ло」(lo)になったのは、「6」の発音が特別なのか、『ふろ』は(ふ)と(ろ)にわけられないけど、『じゅろく』は(じゅ)と(ろく)にわけられるから語頭のようなものなんだ、ということなのか。どっちだろう。