ごんざの辞書のかきかえ15「てあう」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

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1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」  『ごんざ訳』

 

「Осада」(osada)       「包囲」    『すぃゆるこ

 

 村山七郎注 cf. スユル(据ゆる)ヂンヲスユル(陣を据ゆる)陣営を設定する。シェキヲスユル(関を据ゆる)関所を設ける。大勢の人々が通る通路をせき止め押さえる。日葡。

 

 鹿児島県立図書館の原稿コピーのこの項目のところをみたら、ごんざははじめに(чеавкотъ)(cheavkot')(ちぇあうこ)とかいたのをけして(сыюркотъ)(syyurkot')『すぃゆるこ』(すえること)にかきかえていた。

 

 (ちぇあう)というのは(てあう)だろうとおもって辞書をひいても、動詞の形ではでていなくて、名詞だけがでている。

 

日本国語大辞典 「てあい(手合)①勝負をすること。手合わせ。」

 

 これだと(たたかうこと)という意味だから、(相手をうごかない状態にする)という意味なら『すぃゆる』の方がいいかな、とごんざはかんがえて、かきかえたんだろう。

 

 (ちぇあう)はほかのみだし語の訳語としてはでてこない、まぼろしのごんざ語彙のひとつだ。しかも動詞の形では日本語の辞書にもでてこないことばだ。