ごんざの訳語の『ふる』『фуру』(furu)が「篩う」と「震う」に該当する、ということを前にかいた。
ところが、おなじ意味で『ふる』『фуръ』(fur')というつづりもあることがわかった
「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」 『ごんざ訳』 村山七郎注
A 「посыпаю」(posypayu)「振掛ける」 『ふる』 фуръ
B 「кадю」(kadyu) 「香炉をふる」 『ころふる』 корофуръ
C「усыпаю」(usypayu) 「振りかける」 『ふる』 фуру
D「усыпаю」(usypayu) 「振り掛ける」 『ふる』 фуру
E「Осыпаю」(osypayu) 「振りかける」 『ふる』 фуру
F「ОТтрясаю」(ottryasayu)「振って綺麗にする」『ふる』фуру
G「трясу」(tryasu) 「振る、揺る」 『ふる』 фуру
H「вытрясаю」(vytryasayu)「振って出す」『ふる』 фуру
I「высЕваю」(vysevayu) 「篩う」 『ふる』 фуру
J「дрожу」(drozhu) 「震える」 『ふる』 фуру
AとBは『фуръ』(fur')、CからJは『фуру』(furu)だけど、意味はほぼおなじだから、ふたつの表記の間でゆれがあったんだろうか。
日本国語大辞典
「ふる(振)(「ふる(震)」と同語源)①物の一端をとって、他の一端をゆり動かす。ふるう。②全体を、ゆり動かす。前後または左右に動かす。③散らしまく。まき散らす。散布する。散らしかける。」
「ふる(震)(「ふる(振)」と同語源)①ゆれる。大地や、風などがゆれ動く。ふるう。ゆらめく。震動する。」
「ふるう(振・奮・揮)①振り動かす。ゆり動かす。」
『ふる』『фуръ』(fur')の連用形は現代日本語の(ふり)だから
ごんざのことばでは(ふい)(фуи)(fui)、
『ふる』『фуру』(furu)の連用形は現代日本語の(ふるい)だから
ごんざのことばでは(ふるぃ)(фуры)(fury)
になるだろうとおもってしらべてみたら、
「перекивываю」(perekivyvayu)「首をふりかえして合図する」『ふいなをす』фуинавосъ
「усЕваю」(usevayu) 「散布する、散らす」『ふるぃだす』 фурыдасъ
「стрясаю」(stryasayu)「ふるい落とす」 『ふるぃおとす』 фурыотосъ
「Обсыпаю」(obsypayu)「周囲にふりかける」『ふるぃまわす』фурымавасъ
やっぱり両方あった。
(ふった)と(ふるった)はどうかな、とおもってしらべたら、
「ситникъ」(sitnik') 「篩った穀物」 『ふるたと』 фурутатъ
これは(ふるった)だけだった。