「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」『ごんざ訳』
「высЕваю」(vysevayu) 「篩う」 『ふる』
「дрожу」(drozhu) 「震える」 『ふる』
(篩でふるう)と(ふるえる)のどちらにも、ごんざは『фуру』(furu)『ふる』という訳語をかいている。
ごんざの別の著作の『簡略文法』の中の日本語動詞の語尾リストの中に「у」(u)でおわる日本語の動詞は「–ку」(-ku)「–ク」例「учку」(uchku)「ウチク」「うちくう」と「–огу」(-ogu)「–オグ」例「ногу」(nogu)「ノグ」「ぬぐう」のふたつの形しかでていないけど、ごんざの辞書の中には
「су」(su)「すう」
「ому」(omu)「おもう」
「ну」(nu)「ぬう」
「у」(u)「おう」
「соку」(soku)「そくう」(のりづけする)
「кару」(karu)「かるう」(せおう)
など、現代日本語で長母音や二重母音でおわる動詞がでてきて、『фуру』(furu)『ふる』もこのグループだとおもう。
「篩う」の方はこのグループだとしても、「震える」の方は「すえる」『すゆる』や「うえる」『うゆる』のように、ごんざのことばでは(ふるゆる)になるんじゃないか、とおもって日葡辞書をみたら、(ふるゆる)はなくて「ふるう」があった。
邦訳日葡辞書
「Furui,ru,uta. フルイ,ゥ,ゥタ(震・振ひ,ふ,うた)寒さや恐ろしさのためにふるえる。Coyega furu.(声が震ふ)恐ろしさなどのために声がふるえる。」
「Furui,u,uta. フルイ,ゥ,ゥタ(篩ひ,ふ,うた)篩で篩う。」
ごんざの訳語は正確だ。