日本語の五十音をキリル文字でどうつづるか、には、いくつかの案があって、wikipediaには「日本語のキリル文字表記」という項目まであって、何種類かの五十音図がでている。
いくつかの案のちがいは、おもに子音のつづり方のちがいで、母音については(ア段а,я)(イ段и,й,ь,i)(ウ段у,ю)(エ段е,э)(オ段о,ё)にまとまっている。
ところが、ごんざは日本語の母音をキリル文字でつづる時に「ы」(y)という文字をつかっていた。
ほかの母音とちがって、先行する子音によって、つかう頻度が全然ちがう。
たとえば、「г」(g)、「д」(d)、「т」(t)と一緒にはまったくつかわれない。
「ы」(y)はあいうえおのどれにあたるんだろうか。
1)現代日本語の二重母音の「ウ段+い」が「ы」に、「くい」が「квы」に、「ぐい」が「гвы」になっている例
『дзубыиръ』『づぶぃいる』(づぶいいる)(=づぶりと水中にはいる)
『катабычмиръ』『かたぶぃちみる』(かたぶいちみる)(=かたむいてみる)
『куродзытатъ』『くろづぃたと』(くろづいたと)(=ねついた)
『нымЕ』『ぬぃめ』(ぬいめ)(=縫い目)
『куцны』『くつぬぃ』(くつぬい)(=靴縫い)
『вары』『わるぃ』(わるい)
『фуры』『ふるぃ』(篩)
『сыква』『すぃくゎ』(すいか)
『сытафто』『すぃたふと』(すいたふと)(=すきな人)
『фытатъ』『ふぃたと』(ふいたと)(=吹いた)
『ацы』『あつぃ』(あつい)
『цытатъ』『つぃたと』(ついたと)(=突いた)
『квы』『くうぃ』(くい)(=杙)
『квыторъ』『くうぃとる』(くいとる)
『дангвы』『だんぐうぃ』(だんぐい)(=乱杙)
2)語末が「ц」(ts)である名詞に助詞「に」がつくと『ы』になる例。
『фтоцынасъ』『ふとつぃなす』(ふとつになす)(=ひとつにする)
『фтацыкиръ』『ふたつぃきる』(ふたつにきる)
3)語末が「к」(k)である名詞に助詞「に」がつくと『вы』になる例。
『кяквыавъ』『きゃくうぃあう』(きゃくにあう)(=客にあう)
『яквытацъ』『やくうぃたつ』(やくにたつ)
4)現代日本語の「す」「つ」に母音がつづくと「сы」「цы」になる例。
『сыетатъ』『すぃいぇたと』(すえたと)
『сыюръ』『すぃゆる』(=すえる)
『цыюнаръ』『つぃゆなる』(=つよくなる)
『цые』『つぃえ』(=杖)