日本語の「たくみ」ということばには「いい方策」と「わるい方策」の意味があるらしい。
日本国語大辞典 「たくみ(工・匠・巧) 二②いろいろ思いめぐらして、見つけ出したよい方法。工夫。趣向。手段。③はかりごと。たくらみ。計略。策謀。」
ごんざの辞書には「いいたくみ」が5例、「わるいたくみ」が8例でてくる。
「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
「いいたくみ」
「заедино」(zaedino) 「同意見で、一緒に」 『ふとつたくみ』
「единодушiе」(edinodushie) 「一つ考え、同意」 『ふとつたくみ』
「единодушнО」(edinodushno) 「1つ考えで、同意して」『ふとつたくみ』
「единодушный」(edinodushnyi) 「同じ考えの、同意の」 『ふとつたくむのと』
「единодушствую」(edinodushstvuyu)「同意する」 『ふとつたくみする』
「わるいたくみ」
A「Злоковарствую」(zlokovarstvuyu)「狡猾な企てをする」 『わるかたくみする』
B「Зломудрствую」(zlomudrstvuyu)「奸智をはたらかせる」『わるかたくみする』
C「Зломыслю」(zlomyslyu) 「悪だくみする」 『わるかたくみする』
D「Зломыслiе」(zlomyslie) 「悪い企て」 『わるかたくみ』
E「Злокозленный」(zlokozlennyi) 「奸計をめぐらせたる」 『わるかたくみのと』
F「Зломыслинный」(zlomyslinnyi) 「悪だくみの」 『わるかたくみのと』
G「ЗлосовЕтный」(zlosovetnyi) 「悪く思慮するところの」『わるかたくみのと』
H「Зломудрый」(zlomudryi) 「奸智にたけたる」 『わるかたくみんと』
A,B,Cが動詞、Dが名詞、E,F,G,Hが形容詞だけど、なぜかHだけちょっとちがう形になっているので、鹿児島県立図書館にあるコピーをみてみると、HもE,F,Gとおなじように『わるかたくみのと』になっていた。
村山七郎教授のうつしまちがいだ。