公務員の教科書 vol.23 職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門/松尾睦 | 公務員 島田正樹 〜仕事と私事と志事と〜

公務員 島田正樹 〜仕事と私事と志事と〜

仕事も家族・友人との私事も楽しみながら、魂を燃やして挑む“志事”で社会を変えていきたい! 地方公務員として働きながら、NPO活動、講演、執筆、ワークショップデザイナーなどに取り組む“公務員ポートフォリオワーカー”として活動しています。

 

 

 

今回、ご紹介するのは

 

職場が生きる 人が育つ

「経験学習」入門

 

です。

 

 

 

 

著者である松尾睦氏は、北海道大学大学院経済学研究科の教授であり、組織論や組織内での人の“学習”について研究されているプロフェッショナル。

 

お名前をGoogleで検索すると、多くの学術記事・論文がヒットします。

(読みたくなるタイトルの論文が数多くあり、私にとっては少々危険な領域です……)

 

 

 

 

そんな松尾先生が、私のような初学者(の入口にたったばかりの素人)にも理解できるように、平易な言葉やロジックで「経験から学ぶ」ということについて一冊にまとめたのが本書

 

職場が生きる 人が育つ

「経験学習」入門

 

です。

 

 

 

職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門

 

 

 

 

タイトルに使われている「経験学習」というのは、実際に経験したことを通じて学びを得ることを言い、

 

他者の観察や助言からの学び(20%)

書籍や講義からの学び(10%)

 

と比べて、

 

成人における学びは、直接的な経験から学ぶことが70%を占めているとも言われ、経験から学ぶことができるかどうかが、その人の成長に大きな影響を及ぼすという前提に立ち、本書は書かれています。

 

 

 

ちなみに「経験学習」という言葉については、立教大学 中原淳教授 ブログ NAKAHARA-LAB.net の記事も併せてご覧いただくと、その言葉の全体像(が掴み難いこと)がお分かりいただけると思います。

右矢印「経験学習」の中身を探る

 

 

 

 

 

 

少し前置きが長くなりました。

 

 

 

 

本書の最大の特徴は、

 

クローバー 経験から学ぶとはどういうことなのか

クローバー 経験から学ぶために何が必要なのか

クローバー 必要なことをどのように得るのか

 

ということについて、体系的に学ぶことが出来ることです。

 

 

 

 

繰り返しになりますが、

 

私のような初学者の

入口に立ったばかりの素人

 

でも理解できるように。

 

 

 

 

その分かりやすさは、本書のアウトラインを見た段階で、その構造からも窺うことができます。

 

序 章   経験から学べる人、学べない人

第1章   成長とは何か

第2章   経験から学ぶ

第3章   経験から学ぶための三つの力

第4章   「思い」と「つながり」

第5章   学ぶ力を育てるOJT

第6章   学ぶ力を高めるツール

 

 

 

 

 

特に、主に第1章から第4章の内容は、組織における経験学習について、頭の中を整理するのを大変力強く支援してくれます。

 

 

 

 

自分の頭の整理のために、こんな風にマインドマップ風に体系図にしてみました。

 

 

 

 

 

「経験学習」ということでいうと、私自身は「リフレクション」のチカラが圧倒的に不足しているという自覚があります。

 

 

 

そういう視点で本書を読み通してみると、

 

「あ~、他者からフィードバックを求める(リフレクション方略2)は、あまり積極的にできていないな」

 

とか

 

「ぐぇ~、批判にオープンになり未来につなげる(リフレクション方略3)は、ツイツイ逃げちゃうかもな」

 

などなど、リフレクションをするために、私自身に具体的に不足しているポイント(方略)が見えてきて、読みながらグサグサと流血沙汰になりました。

(でも、行為の中で内省する(リフレクション方略1)は、まぁまぁ出来ているんじゃないかな、と自分で治癒を試みたり・笑)

 

 

 

 

 

とはいえ、私が書いたこの書評を読むだけでは、

 

“行為の中で内省する”って言ったって、本で読むだけじゃ、具体的にどうやるのか、自分が出来ているかどうか、分からないですよね?

 

という声が聴こえてくる気がします。

 

 

 

 

う~ん、確かにそうなんですよね。

 

 

 

 

でも、本書の場合は“読むだけでも具体的にイメージできる”と私は思いました。

 

 

 

というのも、著者自身の調査の中で触れた様々なマネジャーの“生の言葉”が多く載せられているから。

 

 

プロフェッショナル・ファームのマネジャーの米国駐在の経験

航空会社に勤務していた新人の頃の経験

メーカーのマネジャーが語る自社のエース級人材の特徴

人材会社のマネジャーが目標設定から仕事の意義を生んだ経験

 

などなど、各章・各節でポイントとなる生の声が挿し込まれているのも本書の特徴です。

 

 

 

 

どれも長々とエピソードを描写するわけでは無いのですが、端的なコメントの中でポイントが押さえられていて

 

そっか、

 

「実際の現場では、そんな風に語られることがあるんだ」

「そういう受け止め方が、内省したことになるんだ」

「顧客とのこのエピソードは役所でもありそう!」

 

そんな風に読み進めながら、抽象度の高い概念も具体的な場面に落とし込んでイメージしながら理解することが出来ます。

 

 

 

 

 

 

先日「1 on 1」について書いたブログ記事でもお伝えしたことですが、私自身は後輩の成長を支援したいと強く思っています。

右矢印仕事で嬉しかったこと~1 on 1が次のステージへ~


 

しかしながら、

 

 

少なくとも私が勤める地方公務員という業界においては、

 

“部下や後輩の成長に対して、上司や先輩が責任を持つという文化や感覚が弱く、仕事の面倒さえ見ていれば自然と成長するものだという感覚があると感じられる”(上記ブログから引用)

 

というのが私の実感です。残念ながら他の業界との客観的な比較は難しいのですが。

 

 

 

 

 

もう少し厳密に言うと、私たちは組織に勤めながら、部下や後輩に限らず上司や先輩とも成長を“支援し合える”と私は考えています。

 

それは相手が後輩であったり部下であったり、相手より自分の方が経験が多く、知識や技術の点で優越しているかどうかに関わらず、

 

他者である時点で“互いの成長を支援し合える関係になることができる”という考え方です

 

 

 

 

脱線しましたが、

 

自分のいる地方公務員と言う業界において、一緒に働く周りの人たちの成長に関心を持ち、主体的に関わろうする文化が今まで以上に育まれたら、地域にも社会にも、いい意味で大きな影響があると思うのです。

 

だって、地方自治体の最大にして唯一の財産は、職員ですから。

 

 

“地域”にとっては、行政の不動産も住民や企業の活動も、総て大切な財産ですが、役所という法人にとってはやはり職員だと私は思います。

 

 

 

 

その財産の育成には、自らが担当する事業の成果以上に心を配ってもいいのではないでしょうか。

 

事業が栄えて人が育たず

 

そうやって今の事業で今の首長に評価されることだけを考えていたら、次の世代の職員にも、次の世代の住民にも、本当に必要な組織を遺せない気がしています。

 

 

 

目指すは、

 

総ての職員が自分の成長にも、

他の職員の成長にも関心を持つ市役所

 

 

そんな組織への変化の第一歩として、本書を手にとり、まずは自らの「経験学習」について学ぶ公務員が増えたら嬉しいですニコニコ

 

 

 

 

 

再掲ですが、こんな風に手を動かしながら読むのもおススメです!

 

 

 

職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門

 

 

 

 

 

 

 

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