公務員の教科書 第21弾 はこちら
『OST実践ガイド』
OSTというのは、
Open Space Technologyの略。
“「実行したいアイデア」「解決したい課題」「探求したいテーマ
」を参加者が提案し、それに賛同する人が集まって話し合うことにより、具体的なプロジェクトを生み出したり、テーマについての理解を深めたりするためのワークショップ手法です。”(本著より引用)
そう、OSTは
・ワークショップの手法
・アクションに繋がる手法
・対話の場づくりの手法
です。
人と組織の「アイデア実行力」を高める――OST(オープン・スペース・テクノロジー)実践ガイド
私が様々なところで活動する中で、最近とても関心が高まってきているのが
人の“やりたい”は
いつ、どのように生まれるのか
そして、
人はどんなタイミングで
そのイシュー(課題)の
当事者になるのか
本書を読み終えて、OSTにはそのヒントがあるように感じています。
例えば、OSTの場づくりでは、「実行したいアイデア」「解決したい課題」「探求したいテーマ」を参加者が提案し、それに賛同する人が集まって話し合いますが、その提案は“ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)”という“儀式”によって実行されます。
オープニングから輪になって座っている参加者の中から、輪の中央に自ら歩み出て、自らが話し合いたいと思うテーマを宣言するという“儀式”が“ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)”です。
輪になって座っているところから、自分が一人中央に歩み出て宣言する、そこには
「本当にこのテーマで話し合いたいのか?」
「他に価値あるテーマが提案されるのでは?」
……
「いや、それでもこのテーマで話し合いたい!」
そんな葛藤と、自らの鼓舞し、踏み出す勇気、まさに“ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)”が、すなわち、当事者として立ち上がる瞬間があるのではないかと思うのです。
本書には、OST“実践ガイド”というタイトルに相応しく、実際にOSTを実施するために必要な情報がギッシリ詰まっているので、本書を参考にするだけでOSTを実施することも可能です。
どんな情報が詰まっているのか、簡単にご説明すると
①OSTの本質が理解できる(第1章、第4章)
OSTの形だけを真似るのではなく、その本質を知ることで、自分が必要とする場づくりの中でOSTと同様に参加者の意志を引き出し、実現に繋がるプロジェクトを作り出せる。
②OST実践に必要なノウハウが得られる(第2章、第5章、付録)
OSTを実践するために必要な会場の作り方、ファシリテーターの台本など、仲間とすぐに始められる。また、実践事例も詳細に載っていて、自分が目指す場づくりに近しい事例を参考にできる。
③OSTが可能にする組織づくり、社会づくりへの示唆が得られる(第3章、終章を中心に全体)
OSTの本質的な考え方を使うことで、自発的に行動するリーダーが生まれる組織開発や地域づくりにも応用できる。
※( )内の章は、本書の中で各項目を読み取れるパートです。
OSTを実践できることも、本書からの学びのとても重要な要素ですが、それ以外に場づくりに携わるワークショップデザイナーとして、そして、その場に立つファシリテーターとしても、以下の記述からは大きな気付きを得られました。
OSTの4つの原則
1.ここにやってきた人は、誰もが適任者である
2.何が起ころうと、それが起こるべき唯一のことである
3.いつ始まろうと、始まった時が適切な時である
4.いつ終わろうと、終わった時が終わりの時なのである
今を広げる
「今を広げる」というのは、「今ここにある自分、他者、場の可能性を広げること」(中略)そのために大切なのは、「今ここ」に集中すること
スペースを開く
「スペースを開く」というのは、OSTならではの「オープンさ」や「フラットな関係性」が感じられるような場を、参加者に認識してもらうということ
「行動」ではなく「あり方」が重要
ファシリテーターは何もしなくても、存在そのものが場に影響を与えます。そのためには、ファシリテーターの「行動」ではなく「あり方」が重要
ファシリテーターは「信じる」
ファシリテーターは、混乱のなかから新しい秩序が生まれることを信じて、混乱に耐え、参加者による自主的な話し合いに任せます
(いずれも本書からの引用)
そして、何より本書で紹介されている“OSTを成り立たせている2つの仮説”は、私が取り組んでいる、公務員キャリアデザインスタジオやNPO法人二枚目の名刺での活動とも共通点が少なくありません。
仮説1
人は、自分が本当にやりたいと思ったことに取り組むとき、最大限の能力を発揮する
仮説2
参加者が内発的な動機から自発的に行動するためには、ファシリテーターはコントロールを手放して、参加者の行動上の自由度を高めなければならない
これらはOSTに限らず、業務外の様々な活動でも同じことが言えます。
雇用関係が無い2枚目の名刺(業務外の活動)でのプロジェクトでは、上司も部下も無く、人事評価もお給料も無い中で、やりたい(will)を持った人同士が繋がり合って活動します。
そういったプロジェクトの中で大切なのが、メンバーのやりたいという気持ちと、自発的な行動。
ぜひ、本書で読んだことは、早速実践していきたい! そんな場づくりと組織づくりのヒントが満載でした。
私たち公務員にとっては、個別のOSTを実施することもさることながら、この考え方を組織開発や地域づくりに活用することで、今の行政組織の変革や、公民連携・市民参画の革新につなげられるような、そんな可能性を感じます。
人と組織の「アイデア実行力」を高める――OST(オープン・スペース・テクノロジー)実践ガイド
★★★公務員の教科書 バックナンバー★★★
vol.20 AI vs. 教科書が読めない子どもたち/新井紀子
vol.18 人を助けるとはどういうことか/エドガー・H・シャイン
番外 場づくりに使うこの2冊
vol.15 場づくりの教科書/長田英史
vol.14 魂の退社/稲垣えみ子
vol.13 稼ぐまちが地方を変える/木下斉著
vol.12 新しい道徳/北野武著
vol.11 読んだら忘れない読書術/樺沢紫苑著
vol.10 人事よ、ススメ!/中原淳編著
vol.9 アイスブレイク入門/今村光章著
vol.8 それでも社長になりました!/日本経済新聞社編
vol.7 働く人のためのキャリア・デザイン/金井壽宏
vol.6 自分らしいキャリアのつくり方/高橋俊介
vol.5 7つの習慣/スティーブン・R・コヴィー
vol.4 KP法 シンプルに伝える紙芝居プレゼンテーション/川嶋直
vol.3 35歳の教科書/藤原和博
vol.2 人を動かす/D・カーネギー
vol.1 京セラフィロソフィ/稲盛和夫