今日、時事通信社のiJAMPで「請求権乱用」で
情報公開拒否=浜松市が条例明記へ
という記事を拝見しました。
iJAMPの記事は貼り付けられないので、変わりに静岡新聞と中日新聞の記事を貼り付けておきます。
情報公開、権利乱用で拒否も 浜松市、大量請求受け条例改正検討(静岡新聞)
情報公開制度の目的は、
“市民の知る権利を保障するために(中略)もって市政に対する市民の理解と信頼を深め、公正で透明な開かれた市政の発展に寄与すること”(さいたま市情報公開条例)
それを権利濫用だと言うのはどういう事態なのか、そこまで大量の請求が明らかに理不尽になされているということなのか、浜松市の事情はあまり詳しく分かりませんが、
市民の知る権利の制限に繋がると言われかねない対応に、もしかしたら浜松市なりの止むに止まれぬ事情があるのかもしれません。(これは想像するしかないのですが……)
ちなみに、さいたま市の場合どうなんだろう? とちょっと気になって市議会の議事録を「情報公開」でキーワード検索すると、2件、気になるやり取りを見つけました。
1つ目は、平成30年3月予算委員会での土井裕之議員の発言。
「さらに情報公開における特定の個人による大量請求で、職員が長時間拘束される件も問題視されていますので、対策が求められています」
とのコメントが議事録から確認できます。
さいたま市は今の清水市長が候補者としてマニフェストにも掲げていた「情報公開日本一」を目指して、様々な取り組みをしているので、職員の拘束時間を含めいわゆる「情報公開のためのサービスコスト」がかかっていることに、正直私個人は違和感はありません。
大事だと思う政策にリソースを重点配分する、その現れとして職員の「長時間拘束」もある得るかもなと。
但し、「特定の個人による大量請求で」という言葉が少し気になります。当時の土井議員がどのような背景で、どのような情報を得て「特定の個人による大量請求」があると把握したのか私には分かりませんが、その観点で改めて市議会の議事録を見てみると、
2つ目の気になる情報。
こちらは平成29年9月定例会での冨田かおり議員の質疑とそれに対する当時の総務局長(情報公開制度の所管局長)の答弁です。
富田議員の質疑の概要は
“情報公開制度に基づく現状と対応についてお伺いする。
◆さいたま市情報公開条例に基づく
①行政情報の開示請求件数の動向と内訳
②開示請求の取扱事務に係る行政サービスコスト
について”
(さらに③職員体制についても訊ねてますが、以下の答弁からは省略してます)
この質疑に対する答弁(総務局長)は、
“情報開示請求の現状と対応についてお答えいたします。
◆行政情報開示請求の受付件数
①平成27年度:1,079件
②平成28年度:1,106件(個人から693件、法人から413件)
◆大量請求者の上位の件数(平成28年度?):
①個人:1位473件、2位33件、3位16件
②法人:1位49件、2位35件、3位24件
◆行政情報開示事務コスト(平成28年度予算ベースの試算):
総額9,318万8,639円(1件当たり7万9,785円)
※事業費、人件費、共通事務費、施設等減価償却費相当額を総コストとして、行政情報開示処理件数で割ることにより算出。”
(参考:さいたま市議会ホームページ)
この議事録を見ると、確かに全体で1,106件のうち、最も多くの請求をしている、ある個人の方からの請求が473件と、全体の約43%を占めていることが分かります。
併せて総務局長が答弁している1件当たりのコストを掛け合わせると、この個人の方の情報公開請求の対応に3,773万8,305円がかけられている計算になります。
これって結構すごい金額ですよね。
これを市民の知る権利を保障するために必要なコストだと言えば、それはそれで役所の人という鎧を着た自分の安全は保たれるのだけれど、でも、この記事を読んでいる人の多くは思うのではないでしょうか
一人の市民の情報公開に
3,700万円の税金かけてるの!?
って。
このブログ記事は、総て公開されている情報を組み合わせるだけで書いていますので、もちろん私人として市のHPから入手した情報を基に書いています。(市職員だから知り得る情報はありません)
でも、読み手の受ける印象としては、公務員としての島田と私人としての島田の境界があやふやになる可能性もあるので、上記のような公開された情報とそこからの計算はお示しするものの、それに対する私の考えはあまり積極的に示しにくいところです(笑)
ちなみに私自身は入庁してから、これまでに2~3回、情報公開請求の対応をしたことがありますが、確かに公開する書類の用意と事務手続きはそれなりに時間がかかる、つまりはコストがかかるものです。
いずれにしても、住民の知る権利を保障しながら、役所として持続可能な対応というのが、一体どんな在り方なのか、こういった話題から議論されることはいいことだと思います。