よしもとばななさんの小説。(←このときはまだ名字がひらがななのですね)

主人公の小夜子は、事故でおなかに鉄の棒が突き刺さって、1回死んだ。でも生き返る。それから、生きているとはどんなことか、ひとつずつ確かめるように、おなかをかばいながら、そうっとそうっと毎日をやっていく。あらすじだけ書いたらただそれだけの話なんですけど、あらすじじゃないの、ばななさんの小説は!!

私はばななさんの小説を読んでいると、これは誰のために書かれたものか、もしかしてもう生きてない人を含んだ読者に向けて書いてるのでは、と思う瞬間があるのだけど、この小説はそれがいちばん強かった。

これ、単行本が発売されたのが2011年なんですね。あの震災の年。あとがきにも、「生きている人死んだ人、全てに向けて書いたものです」とある。

でも、小夜子を見ていると、人間って生きてるときでも、たとえば弱ってるときは、あっち側に近い存在になる瞬間があるの、わかるなあ。その行ったり来たりのなかで、そのまま行きっぱなしになっちゃうってことが、死ぬってことなんだなあ、とか。

あと、ばななさんの小説には、現実世界でたとえば「悲しい」とされていることと、まったく別の世界が描かれていたりするから、安心するんですよね。私もうすうす思ってた、ってことが。しかもとても自然に。

…で、ばななさんの小説を読みたくなるときって、自分があっち側に近くなってる時だなと思う。よし、ここらで私もひとあしひとあし、ゆっくり生きようっと。

 

 




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