第1629回「ブラームスはヘビメタだ!久石譲&FOCによるブラームス交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、久石譲&フューチャー・オーケストラ・クラシックス(ナガノ・チェンバー・オーケストラ)によるブラームスの交響曲全集です。「ベートーヴェンはロックだ!」というキャッチフレーズを聞いたベートーヴェン交響曲全集は大きな話題を呼びましたが、今回ついにブラームスの交響曲全集が誕生しました。室内楽編成やピリオド楽器による演奏がまだ数少ないブラームスの録音としては貴重な演奏となるかもしれません。


「久石譲指揮/フューチャー・オーケストラ・クラシックス」

ブラームス作曲:
交響曲第1番 ハ短調作品68

交響曲第2番 ニ長調作品73

交響曲第3番 ヘ長調作品90

交響曲第4番 ホ短調作品98



 「ベートーヴェンはロックだ!」久石譲さんとフューチャー・オーケストラ・クラシックス(ナガノ・チェンバー・オーケストラ)が2016年に取り組んだベートーヴェン・ツィクルスから年月が経ち、今回ついにブラームスの交響曲全集が完成した。ベートーヴェンとは違い、ブラームスは聴覚的に感じる1拍目が実際の1拍目ではなく、裏拍が多いので緊張感がある。それとしても、テンションを保つリズムの要素があるので、リズムから追い込んでいく久石さんのスタイルは変わらない。同じリズムだけども性格が違う。重い。それに故に「ブラームスはヘビメタだ!」とライナーノーツにて述べている。


・ブラームス:交響曲第1番

録音:2023年5月10〜11日

・・・両者によるブラームスの交響曲第1番は、2020年2月12〜13日に東京オペラシティコンサートホールにて行われたライヴ録音が存在している。本来ならば2020年録音を全集に組み込むのだが、今回の全集発売のために、2023年5月10,11日に長野市芸術館メインホールにてセッション録音された第1番が収録されている。第1番だけ再度録音し直したのは、速いテンポで論理的に扱い過ぎたために、歌っていないことを気にされたようだ。そのため、第1楽章冒頭はやや快速調のテンポながら、前回のライヴよりもテンポを遅くしたとライナーノーツには記載がある。室内楽編成による演奏スタイルが貫かれた演奏となっていることもあって、細かい溜めはさほどない。しかし、細部まで細かくこだわり抜かれた分聴こえ方が大分良い。作曲家だからこそ作り出せる世界観に広がっている。FOC(フューチャー・オーケストラ・クラシックス)のサウンドも全体的に響きをほとんど無くした引き締めた演奏となっている。しかし、固すぎず、筋肉質になり過ぎていないという点も考えると、以前よりも歌い上げているブラームスを余すことなく聴くことが演奏であると言えるだろう。また、SACDハイブリッド仕様の高音質盤ということもあってダイナミック・レンジの幅広さが増している。そのため、ダイナミクス変化にはより細かく変化するようになっており、その際のスケールやティンパニの存在感は非常に素晴らしいものとなっている。


・交響曲第2番

録音:2021年7月8日(ライヴ)

・・・今回の交響曲第2番に関してもテンポは他の演奏や録音と比べても類を見ないくらいに速い。しかし、各楽章ごとにそれに適した旋律の歌い方であったり、第1主題と第2主題それぞれの違いを明確化するために、音の処理やアーティキレーションなどの細かい変化を行いながら演奏している。また、この曲に関しても溜めはほぼなく、エネルギッシュに感じられるくらいの推進力を感じ取ることのできる演奏が行われているので、躍動感も合わせて味わえるようになっている。音の抜けも良いが、オーケストラ全体としてもバランスがよく取れた演奏を聴くことができるようになっているのは非常に素晴らしいとしか言いようがない。


・交響曲第3番

録音:2022年2月9日(ライヴ)

・・・元々この交響曲第3番自体それほど演奏時間の長い演奏ではないのだが、今回はさらにコンパクトになった印象を受ける。それでも、各楽章ごとに個々の楽器がピックアップされており、それぞれの楽章に適したサウンド、音色や響きをたっぷりと聴き込むことができるようになっている。有名な第3楽章では、やや早めの前向きなテンポの中演奏が展開されており、甘さもありながらどこかクールな歌われ方をした音色となっている印象が強い。第4楽章では引き締まったやや固めのサウンドを奏でる金管楽器が決めどころを逃さないパワフルな演奏をきかせている。


・交響曲第4番

録音:2022年7月14日(ライヴ)

・・・今回の演奏に関しては「第1楽章、第2楽章」と「第3楽章、第4楽章」という形で分けることができる演奏であると私は考えた。というのも、第1楽章から第2楽章にかけては、溜めもほとんどない中で輪郭がここまではっきりとしている演奏は中々ないと思う。特に第1楽章冒頭で、演奏されている流れが細かいダイナミクス変化によって大きな違いをもたらす流れを見事に作り上げている。音色は冷酷でクールなサウンドながらその旋律を奏でる瞬間は鳥肌が立つくらいの凄みを肌で感じ取ることができる。第3楽章から第4楽章にかけては、金管楽器もガンガン鳴らしており、テンポも大分加速している。そのためオーケストラ全体として高いテンションを維持した状態で演奏を突き進めることができるようになっている。これもダイナミック・レンジの幅広さがSACDハイブリッド仕様の高音質盤で増しているからこそ、ダイナミクス変化を豪快に大きく変化させたことによってインパクトある破壊力のある演奏を聴くことができるようになっているのだろう。いずれにしても、各楽章ごとに驚かされる演奏が随所に隠されているのは間違いない。


 確かにベートーヴェンやシューベルトなど、室内楽編成やピリオド楽器による演奏は今日において盛んに取り上げられつつある時代となったが、ブラームスはどうだろう。振り返ってもまだまだ定着していないように思える。同じような演奏とすれば、パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンが思い当たる。しかし、休刊となってしまった「レコード芸術」などを見てもカラヤンやフルトヴェングラーなどの往年の時代におけるブラームス録音が多数取り上げられており、室内楽編成などの録音はあまり見受けられない。今回の全集はそれに一石を投じる代物になると私は考える。気づいたら繰り返し聴いてしまう。そんな魅力が久石さんとFOCのブラームスにはあるのだろう。次はどの作曲家を取り上げるのか、楽しみで仕方がない。


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