未来編では

出来過ぎ高校生として登場します、

モリシタくんこと森下賢一くん。

今回は現代設定の

小学4年生編をお送りいたします。

 

 

 

賢一くんが登場する

『ひだまりハウス』のエピソード

↓↓↓↓↓

 

 

『旅行前にもまたひとつ』

(前編後編)

 

『バレンタインの恋模様』

 

『マスクですから!』

 

『18歳』

 

『もうひとつの短冊』

 

『…翔べ!』

 

『笑顔が見たいから』

 

『受難は続くよどこまでも』

 

 

『もうひとつの噓』

 

 

 

2人の先生との

やり取りを綴った妄想を、

思いつくままに垂れ流したいと思います^^

 

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

4年生の秋に

家出をしてしまう賢一くん。

それまでの間、

この子に何があったのかを

主に本人視点で、

いくつかの話を公開予定です。

(父・賢吾さん視点の

『もうひとつの軌跡』

第6話第7話第8話の内容を

賢一くん視点で書きます)

 

 

 

この頃の経験も踏まえて、

サキちゃんや仲間と

青春を謳歌する高校生モリシタくんを

書けたらと思いながら書きますが、

辛い内容も多いと思うので、

読む読まないは無理なさらず、

お時間とお心に余裕のある場合に

お付き合い頂ければ幸いです(^^;

 

(☆第1話第2話第3話

第4話第5話第6話

第7話第8話第9話

第10話第11話第12話

第13話第14話第15話

第16話第17話第18話

第19話第20話第21話

第22話第23話第24話

第25話第26話第27話

第28話第29話第30話

第31話第32話はコチラ)

 

 

 

 

今回は第33話。

家出したあと、

『ひだまりハウス』のスタッフに

無事保護され……。

今後の方針を決めるためにも、

親と腹を割って話す事に。

 

不安いっぱいになりながら、

親の到着を待ちます。

 

 

 

******************

 

 

オリキャラ妄想

「散らばるココロ 第33話」

 

 

所長先生が母さんに連絡した結果、

父さんが来る事になったという。

到着を待つ間、所長先生は別室で

雑務に取り掛かる。

 

「…寒いか?賢一」

「ううん。大丈夫。

家出した手前、

親と会うのが気まずいだけ」

俺がいる多目的室には

隣の席のミツキ先生と二人きりという状況。

少し喋りやすくなった俺は、

自分の思った事を声にする。

「それに…何から話せばいいんだろ?

父さんは、まだ音声聴いてねえし」

「一つに絞る必要ないよ。

思った事を、全部話せばいい。

…2人暮らししてた頃のお父さんは、

賢一の話をしっかり聞いてくれただろ?」

「うん……。」

 

 

 

(そういえば。父さんとあんまり

話さなくなったの、いつからだっけ)

椅子の上で膝を抱いたまま、考える。

 

確か4年生になったばかりの頃は

寝る前に1年の抱負をいっぱい喋っていた。

それが、健児と父さんが

一緒に寝るようになってから

ひとりで寝るようになって…。

寝る時間以外でも、

父さんが健児の読み書きの勉強に

付き添っていたし

自然と話す時間が減った。

 

 

一度だけ、寝る前の読書中

英語訳について質問したくて

父さんの部屋をノックした事がある。

しかし返事がない代わりに、

1階の母さんの部屋から、

微かに両親の声が聞こえてきた。

父さんはてっきり

健児の部屋で寝ているのかと

思ったけど、母さんも混ざって

3人で寝ていたのだ。

それを知った瞬間、

胃腸風邪で死にかけたときの

とてつもなく寂しい気持ちが

蘇った事を覚えている。

 

皆がいる1階のとの間に

大きなバリアが張られているような

気がして。

わざわざ部屋まで

確認しに行った事がないから

この目で見た事はないけど、

実際はどう思われているんだろう。

でもそんな事まで、

この場で訊いてもいいのかな……。

 

 

 

 

(やっぱりまずは、

家族写真の事を聞いてみよう)

迷った結果、最初の質問だけ決まった。

 

父さんは取材の関係者の人に、

俺を雑誌に出したくない事を

はっきりと認めていた。

だから返事を聞くのは…すごく怖い。

ただ、あの家族写真の件以外では

父さんは俺の味方でいてくれたし

健児との間で何かがあったとしても、

父さんはそれぞれの意見に

耳を傾けてくれた。

そんな父さんだから、もしかすると

俺が何か思い違いをしているかもしれない

という希望が、捨てきれずにいた。

 

そして……。

本当は想像したくもない、

最悪な答えが返ってきた場合も。

この話し合いをきっかけに

あの家から合法的に

出してもらえるかもしれない。

 

先生たちもこの状況から抜け出せるよう

考えてくれると言っていたし、

少なくとも、野宿という顛末には

ならないはずだ……。

 

 

 

 

「!」

「そろそろお父さんが

着く頃だろうから、様子見て来るよ」

ふいにミツキ先生が立ち上がり、

物音で我に返った。

(…ああ。もう、そんな時間か)

やたらと音の響く胸を押さえる。

 

「緊張…してるよな」

「……っ」

気を緩めると

言葉に出来ない気持ちが溢れそうで、

口の端をキュッと結んだまま頷く。

「途中で気持ちがいっぱいになって

泣けちゃうかもしれないけど、

焦らず、ゆっくりでいいから話すんだ」

「っ」

「賢一がどんな答えを出したとしても、

その答えを尊重するから。

誰の顔色を気にせず、

自由に発言するんだ。」

「っ」

話を聞いている事は伝えたくて、

こくこくと頷く。

 

 

 

ミツキ先生が出て行ったそのあと、

先に所長先生が入室。

深呼吸で落ち着かせてみるものの、

いざ父さんが入って来ると気まずくて、

視線は自然と机に向かう。
「…賢一。大丈夫か?
怖い思いしたよな…」
「………。」
所長先生と父さんは

俺の向かい側の席に着き、
ミツキ先生が、再び俺の隣に座った。
 

(……。心臓が飛び出そうだ)

息苦しさを覚えた俺は、

健児が過呼吸発作を起こしたときの

母さんの対応を思い出し、

静かに深呼吸を繰り返す。

 

「…ケンちゃん。家出した理由を

話してくれるかな」

ついに所長先生から、

家を出た理由を尋ねられ。
 

 

 

「俺は。いらない子なんだ」
ちゃんと話し合わなければと思い、
顔を上げて答えた。

「健児が家に帰って来たし、

俺なんていても邪魔だと思う」
「ケンちゃんは、
どうしてそう思うのかな?」
「だって。父さんも母さんも
俺だけのけ者にしてる」
一度話し始めると、

思いのほか落ち着いて話す事が出来た。

 

話を聞いた父さんは

信じられないといった表情をしたあと、

「そんな!父さんは賢一を
のけ者にした事なんて一度も…」
「嘘つき!」

(白を切るつもりかよ)

そうはさせるもんかと、話を遮る。

「健児と3人で写ってる雑誌を
本屋で見たんだからな…!」
「まさか、父さんが
取材を受けた本を…。」
「3人には“きずな”が

あるんだって、健児が言ってた!

父さんだって、俺を雑誌に載せたくない

って言ってたじゃねーか!!!」

 

「違うよ。違うんだ賢一…」
「違わねえよ!
夜だって、父さんはいつも
1階の母さんの部屋に行ってる!
俺をのけ者にして、
健児と3人で仲良く寝てるんだッ」

予想よりも

感情的になってしまったけど、
何ヶ月も抱えていた疑問を
ようやくぶつける事が出来た。

……でも。

 

 

 

(…否定。しねえんだ)
いつもハキハキと受け答えをする

父さんが、何も言えず、

返す言葉を探しているのを見て。
俺の言った事が事実なのだと察した。
父さんも本当は、俺の事なんて

邪魔だったんだ……。

 

みるみるうちに、涙が目に溜まるけど。
こんなやつの前で、泣いてたまるか…!
「父さんの裏切り者!
俺の事、大好きって言ってたのに…!」

勢いよく立ち上がり、怒りをぶつける。

 

「嘘じゃないよ!

父さんは本当に賢一を…」
「所長先生っ!
俺を、ここに住ませてください!
俺、学校やめて、
お仕事沢山しますから!

少しだけど、お金も持って来たし!」

この家族から、早く離れたい……。

そんな一心で机に身を乗り出し、

所長先生に必死に訴える。

 

「賢一。所長先生もミツキ先生も
ここには住んでない…」
「だったら公園に住むもん!

もう、健児のワガママには

ウンザリなんだよ!」
 

 

涙がボロボロ零れて止まらないなか、
声の限り叫んだ。
「あんな家嫌いだ…。
健児に優しい母さんも嫌いだ。
俺を裏切った父さんも!
 

大…ッッ嫌いだァァァッ!!!!」



心のダムが決壊したというたとえが、

いまほど相応しいときはないだろう。
言いたい事を吐き出したあと、

机に突っ伏し、なりふり構わず泣き続けた。
それでも……そのうち涙も声も枯れて、
この先の生き方を決めなければ

いけないときが来るのだろう。
 

 

 

――――モウ、消エタイ。



昔熱が出たときのように
ぼんやりしてきた頭の中で。

ただ、楽になりたいと思った。
家ではのけ者にされ、
そんな俺を受け入れるところもない。
もう…何も考えたくない。

今すぐ、ここから逃げ出したい……。

(あ。窓――)
ゆらゆら揺れる景色の、一点を見つめる。

日中まだ暑さが残るこの日、
室内の窓が数か所、

大きく開かれていた。
普段子どもが入る場所ではない事も

あるだろう。
 

あそこからなら、

ここを抜け出せると思った。
大人が沢山いるけど、ミツキ先生以外の

2人がいるのは机の向こう側。
俺の素早さなら、ミツキ先生に

捕まるまえに窓から出られるかも。

 

――――そうだ。それしかない。
作戦なんて考える暇はない。

今すぐこんな場所から抜け出そう…。

 

 

 

ゆらりと、重い頭を上げた。

…そのとき。


「――じゃあ賢一、俺の家においでよ」
「!」
声を掛けられ、反射的に隣を見た。

 

「ミツキ先生。それは一体どういう…」

「賢一の事を、僕が育てます。

下宿させるのか

養子縁組をするのかは今後、

森下さんと話し合う必要がありますが」

「貴方…気は確かなの?」

いつも冷静な所長先生が

明らかに戸惑っているけど…無理もない。

 

(エ。ミツキ先生が…育てる?俺を?)

ただでさえ頭がボーッとしていたのだ。

俺もまた、天と地がひっくり返るような

驚きのなか、理解が追い付いていなかった。

 

「何とかしてあげたい気持ちは

わかるけど、冷静になりなさい」

「僕は冷静です。冷静じゃなければ、

とっくに賢一を連れ去ってますよ」

「貴方はここの職員なの。

ケンちゃんひとりを特別扱いする事は

この子にとっても、他の子にとっても

良くない事よ」

「それなら。

僕が、この仕事を辞めるまでです」

重大な事を、ミツキ先生はさらりと答えた。

 

 

「僕がここで働く理由は、

子ども達の笑顔を守りたいからです。

いま実行せずして、

何を守ったと言うんですか。

…この子はもう、限界なんです。

家庭も機関も守ってくれないのなら。

俺が、賢一を守ります……!」

 

きっぱりと言い切ったあと、

いつもの表情で俺を見る。

「いまは実家暮らしだけど、
賢一が一緒に住んでくれるなら
アパートでも借りて、実家を出るよ。

そのぶんバイトを増やさないと
いけないから、賢一にも家のお手伝いを

頑張ってもらわないといけないけど」
「え!?先生の家族は……」
「まあ、大学卒業したら
家を出る予定だからね。
それが1・2年早まったって

どうって事ない」
俺の質問に、優しく笑って返答したあと。
 

「…大丈夫だよ。

賢一はひとりじゃないから」

「――――っ」

頭を撫でる手を見て、胸が詰まった。

 

(ミツキ先生の手。…痣が出来てる)

座ったままで受け答え、

落ち着いているように見えたミツキ先生。

でも机の下では

拳を固く握り締めていた事を、

隣に座る俺は知っていた。


ミツキ先生は怒ってくれてるんだ。
……俺のために。
そして言葉のとおり、

守ってくれようとしている……!

 

 

 

ミツキ先生の気持ちが伝わり、
ぐにゃりとしていた身体に、芯が入る。

「ただ、…その前に。
お父さんの話を、最後まで聞こうな」
「!」
次の言葉を受けて、

一瞬だけ父さんを見た。
「いまはな、賢一とお父さんが
“話し合う”時間なんだ。
賢一の気持ちを、お父さんは
最後まで聞いてくれただろ?

今度は賢一が

お父さんの話を聞いてあげないと」
「話っていっても。俺は…」
確かにミツキ先生の言うとおり、

俺が遮った事で父さんの言葉を

最後までは聞いていなかった。

でもさっきの反応が全てを

物語っていると思う。

それをいま一度言葉に変えて

聞かされるのは、気が重い。

 

「うん。納得できないかもしれないね。
―――そのときは本当に、
俺のところへおいで」
「…ほんとに?いいの?」
「でも、それを決める前に
話だけは“聞く”んだぞ」

「聞く…だけ?」
「うん。聞き終わったあと、
それでも賢一が家を出たいのなら、
そのまま俺の子になればいい」

(これは本気。なんだよな)
俺を説得するための手段として
養子の話まで

ちらつかせるような事、
この人はしないと思う。
本当は聞きたくもないけど、
ミツキ先生がいるなら――――。

「…うん。わかった。

先生……。手ェ、繋いでてくれる?」

「うん。いいよ」
職員であるミツキ先生に

頼んでいいものかわからず

おそるおそる尋ねると、

ミツキ先生は隣り合う方の手を
握ってくれる。
 

 

 

(どんな言葉が返って来ても、

いまなら聞けるような気がする。)
意を決して、真っ直ぐ父さんを見た。

 

 

 

 

******************

 

 

賢吾さん視点の話では

賢吾さんと賢一くんが

隣の席になっておりましたが、

これでは賢一くんにとって

気まずすぎるのではと考え、

この度修正いたしました。

 

その他ミツキ先生の言葉の語尾も、

以前は先生から子どもに語り掛ける

感じにしていたのを、

もう少し砕けた雰囲気に変更済。

 

加筆した場面については、

あえて賢吾さん視点に付け足す必要は

ないかと思い、手を加えない事にしました。

 

 

 

 

このときの

ミツキ先生の心情については

語り出すと長いので、

このシリーズが完結したあと

別記事で書きたいと考えておりますが

(゚∀゚)

 

 

若いスタッフが情熱に任せて

発した提案は、あまりにも

無鉄砲だったかもしれません。

でも少なくとも賢一くんにとっては、

その無鉄砲さが救いであり、

唯一の支えとなりました。

 

写真の事や寝室の事など…。

ちょっと勇気を出して尋ねてみれば、

ここまで追い詰められる事も

なかったとは思います。

 

ただ、気軽に尋ねられない程に、

賢一くんが幼い頃から強いられた

環境は、重かった。

ようやく雪どけの兆しが見えてきた

お母様との関係ですが、

賢一くんの立場からすれば

沢山傷ついてきたでしょうから(:_;)

 

 

 

賢一くんは本来前向きで、

女々しさのないサッパリした子。

高校生編でも、恋敵だったクマくんの

親友・ツクシくんに対して、

それはそれとして、

お互い仲間として認めているくらい。

 

そんな子が、

何かをお願いするときに

「……いいの?」とか、

「○○しても…いい?」

といった、少し顔色を窺うように

尋ねる姿は、沢山の拒絶を経て

傷ついてきた結果なのだなあと><

 

モリサキ編の場合、

ウブなサキちゃんに優しくしたい

という意図もあるのでしょうが、

こうした生い立ちも含めながら

書いております。

 

 

 

まあ賢吾さんからすれば

健児くんの事を注視はしていたものの

ここまで酷い事になっているとは

思っていなかったワケで。

藪からスティックな話に驚き、

大事なムチュコタンは疑心暗鬼になって

話を聞いてくれない。(´・ω・`)オロオロ...

といった状況なんですけどね^^;

 

このくらいでへこたれる人ではないし

ミツキ先生の発言を含めて

陰で所長がフォローしてくれるので、

まず大丈夫でしょう( ̄▽ ̄)

 

 

 

 

なにはともあれ、今回なんとか

お父様の話を聞くところまで

こぎつけました!

キリがいいかと思い区切ったものの

お父様のターンは書き進めてあるので

34話は比較的早めに

公開出来るかもしれません(゚∀゚)

 

それではお付き合いいただき、

ありがとうございました(^^)