記事を連日更新中!

 

今回は前回の記事以上に

辛い内容がありますので、

お時間とお心に余裕があるかたも、

無理だと感じたら、

急いでお逃げください(≧Д≦)

 

 

 

 

 

 

それでは本題へ。

 

 

未来編では

出来過ぎ高校生として登場します、

モリシタくんこと森下賢一くん。

今回は現代設定の

小学4年生編をお送りいたします。

 

 

 

賢一くんが登場する

『ひだまりハウス』のエピソード

↓↓↓↓↓

 

 

『旅行前にもまたひとつ』

(前編後編)

 

『バレンタインの恋模様』

 

『マスクですから!』

 

『18歳』

 

『もうひとつの短冊』

 

『…翔べ!』

 

『笑顔が見たいから』

 

『受難は続くよどこまでも』

 

 

『もうひとつの噓』

 

 

 

2人の先生との

やり取りを綴った妄想を、

思いつくままに垂れ流したいと思います^^

 

 

 

 

 

 

 

image

 

 

 

4年生の秋に

家出をしてしまう賢一くん。

それまでの間、

この子に何があったのかを

主に本人視点で、

いくつかの話を公開予定です。

(父・賢吾さん視点の

『もうひとつの軌跡』

第6話第7話第8話の内容を

賢一くん視点で書きます)

 

 

 

この頃の経験も踏まえて、

サキちゃんや仲間と

青春を謳歌する高校生モリシタくんを

書けたらと思いながら書きますが、

辛い内容も多いと思うので、

読む読まないは無理なさらず、

お時間とお心に余裕のある場合に

お付き合い頂ければ幸いです(^^;

 

(☆第1話第2話第3話

第4話第5話第6話

第7話第8話第9話

第10話第11話第12話

第13話はコチラ)

 

 

 

 

今回は第14話。

 

 

 

 

 

 

 

 

第13話に引き続きまして、

上記のリンク先にあります

母・麗奈さん視点で書かれた

重めなハナシを

賢一くん視点で書いています。

 

※注意!※

特に今回は、

賢一くんが病気になる描写や

暴力を受ける描写、

理不尽な思いをする描写もあります。

万が一読んでくださったかたが

いらっしゃいましたら、

辛くなった時点でお逃げください。

 

 

 

 

 

 

 

******************

 

 

オリキャラ妄想

「散らばるココロ 第14話」

 

 

 

父さんの迎えで『ひだまりハウス』から

帰って来た俺は、手洗いうがいを

済ませて2階に上がる。

 

「おーっ。…さっそく“アレ”を

作り始めたんだな?頑張れよ」

「おう!頑張るよ」

俺の部屋の隣から、父さんが出て来た。

荷物を自室に置いたあとは

健児のパケモンに付き合う事が

最近の日課のようだ。

 

(さて。頑張ろっと)

同じ長さに切った4本の竹の棒を

輪ゴムで固定して、彫刻刀で削っていく。

この月誕生日を迎えるミツキ先生が、

ミツキノートを通じて

『何か作って』とリクエストしたため、

もうやめるつもりだった手作り工作を

再開したのだった。

 

俺は大抵、夕食までの時間は

部屋で読書している。

この習慣は5歳の頃、

健児が1年ほど自宅で暮らせた時期から

始まった。

 

 

 

 

「うわあ!沢山の本だあ……」

その日家に帰ると、小さな弟と、

沢山の絵本が俺を待っていた。

しかもその絵本は健児じゃなくて、

俺に買ってくれたという。

 

「健児は身体が弱いから…。

びっくりさせないよう、

お部屋で本を読んでいてね」

「うん。わかった。

かあさんありがとう!」

舞い上がった俺は、

母さんに運んで貰った本の山から

嬉々として読むものを選ぶ。

 

時々、リビングから

小さな子どもの声と、

母さんの笑い声が聞こえた。

(楽しそうだな……)

どんな会話をしているのか

覗いてみたかったけれど、

俺は保育園でも元気なほうだと

言われるから、大きな声で

怖がらせたらいけないと思い

本を読み続ける。

 

(このマッチ売りの少女、可哀想だな)

雪が降る寒い冬の夜、窓越しに

パーティーを楽しむ家族を眺める

少女の姿に、胸を痛める。

最期までひとりぼっちなその少女に

当時の俺は心から同情したっけ。

 

 

 

「賢一、また部屋で本を読むのか?」

「賢一ってば、本に夢中なのよ?

ねえ、賢一」

「うん。ぼく、本が好きだよ」

健児の付き添いがなくなったこの時期、

父さんは遅くまで仕事をする日が

多かった。

それでも俺が寝る時間までに

帰って来ると、読み聞かせをしてくれた。

 

「何ソレ!?……英語?」

「そうだよ!きょうは英語の絵本を

借りてきました~」

「わあ!すごい!!!」

その本は家にもある、

小さな頃から読み古したものと同じだが

ひらがなでもカタカナでもない

何かが書かれている。

首を傾げる俺に、

父さんは元気よく正解発表をした。

「とうさん、読めるの?」

「ああ。多少はな」

「そっか!多少読めるなんてすごいな」

その日は文字を目で追いながら、

外国人のようにスラスラと読む

父さんの声に聞き入るだけだったのが、

少しずつ文字の意味が気になり。

意味を尋ねる俺に、

父さんはにこにこと付き合ってくれる。

 

おかげで、ひとり時間に

日本語版と英語版を照らし合わせて

意味を考えるという作業が増えた。

 

 

 

 

 

冬になると、保育園の友達が

代わる代わる休むように。

(明日も、誰か休むのかなあ。

みんないるといいな……)

夕方の、お迎え待ちの子が

だいぶ減った時間。

保育園のトイレで手を洗う最中

突然胸から喉にかけて嫌な感じが

込み上げて、口から吐き出した。

 

「ケンちゃん!大丈夫?」

「う…ぇ。ごほっ……」

先生に背中をさすられながら

流しでそのまま吐ききる。

 

 

 

すぐに母さんが迎えに来るが、

この日の診察が終わっている

病院がほとんどだったため、

次の日診てもらう事に。

のろのろと部屋まで上がり、

パジャマに着替えてベッドに転がる。

 

「いい?吐き出すときは

このバケツに出すのよ?

何かあったら、ブザーで呼んでね」

「……。」

「いい子にして寝ていれば、

病気も治るからね」

ビニール袋入りのバケツと

水筒の横に置かれたブザーを見て、

こくりと頷く。

 

 

母さんが出て行ったあとは

眠気に襲われる。…が。

「ぅ…!げ…ほ…」

再び吐き気に襲われ、

バケツに水を吐き出した。

すぐに母さんを呼ぼうとしたが、

 

(いい子にして、寝てなくちゃ)

健児にまで、この病気を

うつすわけにはいかない。

早く寝て、休まないと……。

 

しかし寝る事が出来そうな

タイミングで、吐き気がやってくる。

眠いのに苦しくて、でも何も出なくて…。

 

 

ちょうどその頃、リビングから

健児の楽しそうなうなり声と

母さんの声が、微かに聞こえる。

(ぼく、このまましぬのかな)

父さんの友達の子どもも、

15歳なのに死んでしまった。

俺もまだ子供だけど、

死んじゃうのかな……。

 

苦しさと怖さでいっぱいになり

涙が込み上げた。

窓からパーティーを眺めた

マッチ売りの少女も、

こんな気持ちだったのかもしれない。

 

身体を起こす力もなくなり、

ベッドに吸い込まれるような

強い眠気のなか、目を閉じた。

一瞬、慌てた様子の父さんが

俺を抱きかかえた気がしたけど、

マッチの灯が見せた幻に違いない…。

 

 

 

次に目を覚ました俺が見たものは、

天国でも地獄でもなく、

ウチとは違う天井だった。

「賢一!おはよう……!」

「…とー…さん?」

「待って!動かないで。

いま点滴付いてるから」

「点滴?……げっ!!?

針が刺さってる~~!!!」

驚いて反射的に、針の刺さった腕に

手を伸ばそうとすると。

 

 

「――――良かった。賢一が無事で」

「!」

伸ばそうとした手を片手で握り、

もう片方の手で抱き締められる。

(ぼく、死ななかったんだ……)

夢じゃない事を確信したくて、

もう会えないかもしれないと思っていた

父さんの胸に、顔を擦り付ける。

用意してくれた

スポーツ飲料のような物を飲むが

2,3口で胸がいっぱいになってしまった。

 

 

病院の先生の診察のあと、

俺は保育園や学校で流行っている

お腹の病気で、もう少し元気になるまで

入院をする事を知る。

「…とうさん、仕事は?
ぼく、もうヘーキだよ」
ご飯は食べる気になれないものの、

あの苦しさがなくなって、

気持ちはだいぶ落ち着いていた。

「前にも言っただろう?
健児の入院中も出来る
お仕事なんだよって。
だから父さんは、
ここで仕事してるから」
「ふーん…」
 

(とうさん、ずっといてくれるんだ…)

診察のあと少しだけ病院を出て行き、
戻ってきた父さんは

沢山の本や国語ドリル、
算数ドリルを抱えていた。

「いまベッドを起こすからな」

「うわっ!すごい!メカみたいだ!!」

ボタンひとつで自動的に背中が起こされ

ゆったりを本を読む事が出来た。

昼頃になると水分を取れるようになり、

パソコンで仕事をする父さんの隣で、
本を声に出して読む。

夜はほぼお湯のようなおかゆが、

次の日の朝には少し粒のある

おかゆに変わる。

この日は文字を書く元気も出て、

ドリルに取り組んだ。


「おっ!賢一はもう
カタカナも書けるのか」
「アルファベットも書けるよ!」
「すごいじゃないか!頭いいなあ」
褒め言葉がくすぐったくて、

鼻をかきながら笑う。
 

夜ご飯のおかゆは、味があった。

これまで味なんてなかったから

美味しく感じる……。

「…とうさん。」

「どうした?賢一」

その日の就寝前、嬉しくなった俺は
父さんに言った。

「ぼく、元気になって良かった。

かあさんの言うとおり、

いい子にして寝てたからかなあ?」
「ああ。そうかもしれないなあ……」
何故か一瞬、父さんの顔が

悲しそうに見えたけど
すぐに微笑みに変わる。
その後は英語の本を読み聞かせてくれて、

病気は嫌だったけど、父さんと

一緒にいられて嬉しかったな…と思った。

 

 

 

 

すぐに退院出来た俺でも

こんなに辛かったのだから、

何年も手術と入院を繰り返す健児は

想像出来ないくらい、

うんと大変に違いない。

 

そう思った俺は、家に帰ったあとも

いい子で過ごすよう頑張った。

よく保育園の子と喧嘩して

怒られる事以外は、そこそこいい子

だったんじゃないだろうか。

でも。

 

 

「コホッコホッ…!」

「大丈夫健児!?」

小さな咳を聞きつけ

健児に駆け寄る母さんを見ると、

吐き気とは違う、気分の悪さが胸に溜まる。

俺が死にそうなときには

気付いてくれなかったのに……。

 

 

(母さんは、ぼくの事が

可愛くないのかな)

この頃から、母さんに対して

そんな疑問が芽生えた。

いままで健児がいなかったから

気付かなかっただけで、

もしかしたら健児が生まれたときから

俺の事なんて――――。

 

 

 

 

 

 

 

声に出せないまま疑問は膨らみ。

小学一年生になった俺は、

授業が終わると地域の学童で

迎えを待つように。

 

ここには気の弱い子をいじめる

いじめっ子がいる事を、

辞めた子に学校で声を掛けて

初めて知った。

俺は負けん気が強いからなのか

狙われる事はなかったが、

見えないところでやっているらしく。

秋になる頃には1、2年生が

何人も辞めていってしまう。

 

そんななか、夏休み明けから

新しい1年生が学童に入った。

その子は他のクラスの、

ハカセと呼ばれている子。

虫や魚について詳しくて、

将来博士になりたいという理由から

そう呼ばれているらしく、

学童に向かう道中、

道端の生き物について尋ねると

色々と教えてくれた。

「賢一くん、英語が読めるんだ!?

英語教室に行ってるの?」

「ううん。父さんが出来るから

多少教えてもらってるだけ」

俺は英語を、ハカセは虫や魚の知識を

出し合い、時間を忘れて話をした。

数少ない低学年という事もあって、

ハカセと話す事が楽しみになっていた。

 

でも一ヶ月経った頃、

ハカセが来る回数が減ってしまう。

金曜日にようやく会えたとき、

今回限りで学童を辞めるという事を

本人から聞かされる。

「…何かあったの?」

事情を聴いてみると、

目の向く方向が左右バラバラという

病気を持つハカセは、

例のいじめっ子2人組のターゲットに

されてきたのだという……。

 

(あンの野郎ども!何て事を…)

腹が立って、アイツらの顔を見たら

即ぶん殴りたいくらいだったが、

最後の学童の時間を、

ハカセが何事もなく終わる事に

集中しようと言い聞かせる。

「よし!

アイツらが卑怯なマネしないよう、

ぼくが傍についてるから」

「賢一くん。ありがとう…」

こうして学童に着いたあとは

ハカセの隣であれこれ話し掛ける。

先生たちには別れを惜しんでいるように

見えたのか、誰にも邪魔されはしなかった。

「ごめん!ちょっとトイレ行ってくる」

「うん」

駆け足でトイレに向かい、

急いで戻ると……。

 

 

 

 

(…あれ?いないぞ)

さっきまで座っていたはずの場所に、

ハカセがいない。

すかさず靴箱を確認すると、

ハカセとアイツらの靴だけ消えている。

この日最終日であるハカセが、

トイレに行く間のたった数分で

何のひと言もなく帰るとは思えない……。

 

外の、学童敷地内にいると予想した俺は

靴を履いて、外へ出た。

部屋の中からでは見えない場所へ

真っ先に向かったところ、

予想通り3人の姿を発見。

「ハカセ。お待たせ」

ハカセの強張った顔が、少し緩む。

「用事でもあったの?中に戻ろうよ」

「うん」

アイツらとハカセの間に割り込み、

ハカセの手を取ろうとした、そのとき。

 

 

「ちょっ…。待てよ」

「?」

俺の手首を、片割れの3年生が掴む。

「ぼくに何か用?それとも、オムタクの

モノマネを披露したかっただけ?」

「ちげーよ!」

「そういえば、

ナントカそうかもねっていう

モノマネ芸人も真似してたっけ。

もしかしてそっちのマネ?」

「知らねえよそんなやつ!

俺らの用はまだ終わってねえんだ、

お前ひとりで戻れ」

芸能人の名前を挙げると、

3年生は顔を真っ赤にして怒るが、

怒りたいのはこっちの方だ。

 

「んじゃあ、用事が終わるまで、

ぼくもここで待ってるよ」

「はァ…?」

「ここは皆の学童なんだから。

女子トイレ以外のどこにいたって

ぼくの自由だろ……んあ?」

イジメが起きないよう

とことん居座ってやろうと決め込むと

後ろで様子を見ていた4年生が前に出る。

 

「いい加減に戻れ。賢一」

「なんで?」

「俺らはコイツに用があんだよ。」

「用って何?

きょうは帰るまで一緒に遊ぼうって、

ぼくのが先に約束してたんだけど」

「…ッ!ああ言えばこう言うチビだな…!」

思い通りに動かない下級生を前に

だんだん苛立ちを見せ始めたところで。

 

 

「こんな、先生が

見えない所まで連れて来て。

まさかイジメなんてしてないよなァ」

「!」

核心を突いてやると、表情が凍り付く。

「もしかして図星?じゃないよな。

これまで辞めた1、2年生も、……!?」

「黙れこのチビ!」

背が高い4年生は、上から俺の髪を

鷲掴みにしてきた。

 

「悪いのはコイツだ。

ショウガイシャのくせして、

物知り自慢してやがるから」

「ショウガイシャって誰の事?」

「とぼけんなよ!

コイツ、目がオカシイじゃねーか」

「……おかしい?」

「俺らと違う!普通じゃねえ!」

「アンタの言う普通って何?

ぼくがチビで、

そこの3年生がでっかい身体して。

みんな違うっていうのに、

なんでハカセだけオカシイの?」

言い返したあと、

怯えるハカセの顔を見た。

確かに病気かもしれないし

本人からすれば大変な事は

あるかもしれないけど。

少なくとも俺にとっては、

俺の知らない事を色々教えてくれる、

楽しい友達だ。

 

「そもそも、まったく同じ人間なんて、

この世に存在しない。

イジメの理由にしていいワケがない」

鷲掴みされた毛が抜けて

ハゲたりしねえよな?と心配しつつ

4年生を睨みつけ。

「オカシイのは、こんなチビでも

馬鹿だなってわかる事を繰り返す、

お前らの方だろ。

二度とコイツに近づくな…!」

「……ッ!」

一気に畳みかけると、

何も言い返せず口をつぐんだままだった。

(いまのうちにハカセを連れて、

中に戻ろう)

その前に、髪を掴んだままの手を

払い除けようとしたが。

 

 

 

「お前の家族がショウガイシャだから

ビョウキのやつを庇うんだろ」

「!!?」

4年生の後ろに隠れて、

3年生がほくそ笑む。

「ええっ?賢一の家族って

ショウガイシャなのかァ?」

「ウチの母ちゃんが、

賢一の母ちゃんが車いすを

押してる所を見たんだってー」

「マジかよ?だからコイツ、

ショウガイシャを見ても

オカシイ事がわからねえんだ?」

 

 

(『ショウガイシャ』ってまさか。

健児の事を言ってるのかよ―――。)

無言で状況を分析していると

俺が言い返せないと思い込んだらしい。

 

「おーまえっのかーぞくっは

ショウガイシャッ。それ!」

「おーまえっのかーぞくっは

ショウガイシャッ!」

「――――――――!」

コイツらのイカレた歌によって、

俺はついに堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「ぶごッ…!」

囃し立てるのに夢中で

髪から手を放した瞬間、

4年生の顔にパンチを見舞う。

「痛てェェッ!」

さらにもう一発…と思ったそのとき、

3年生に羽交い締めにされる。

「離せ!何すんだよッ」

身体をバタバタ動かすが、

太った3年生は頑丈で

ちっとも逃げられない。

「おい賢一!よくも殴ったな!?

…おい。しっかりソイツを押さえとけよ」

「うん!任せて!」

3年生に命令したあと、

4年生は俺のお腹にパンチを入れた。

 

 

「――――ッ!……ゥ……ッ」

声すら上げられない苦しみに襲われ、

小さく呻いた。

そして……。4年生が2発目を

振りかぶった瞬間、思った。

このままされるがままになっていたら

俺は殺される。――――と。

 

「あぎゃああああッッ!」

羽交い締めにしていた3年生の

腕に噛み付き、緩んだ隙に離れる。

そのまま左足で地面を蹴って、

3年生の叫びに驚き

止まっていた4年生に

全身でぶつかり、押し倒した。

 

「テメエら!よくも馬鹿にしたなッ!

よくも健児を!ウチの家族を…ッ!」

「ひぃィィィ……ッ!」

「うぎゃああああ!痛いよおっ!

せんせえええええっっ!」

 

馬乗り状態になった俺は、

顔を必死で守る4年生の手や頭を

何度も殴りつける。

しかし3年生の

半狂乱な泣き声を聞きつけた

先生2人が駆けつけて……。

 

 

「何やってるの賢一くん!」

「!」

大人2人がかりで、

4年生から引きはがされた。

その後は事情聴取をするため、

先生によって親が呼ばれる。

父さんは、明日手術を控える

健児に付き添っているため、

母さんが現れる。

 

「子ども同士喧嘩は付き物かも

しれませんけどねェ?

お宅のお子さん、ちょっと

度が過ぎるんじゃありません?」

「ホントホント!ウチの子なんて、

噛まれた部分が内出血

起こしてるんですけどォ!?」

かんかんに怒った

アイツらの親が到着したところで、

事情聴取が始まる。

 

 

「言いなさい賢一。

明日は健児の手術なのよ?

そんな大切な時期に

どうしてこんな事をしたの?」

「っ」

隣に座る母さんに、

事情を尋ねられるが。

 

(本当の事なんて、絶対言えない)

本当は、これまで辞めて行った子たちの

被害も含めて、コイツらのしでかした事を

大人に知ってもらいたい。

だけど……知ってもらうという事は、

健児に対する侮辱の言葉を

母さんに聞かせてしまうという事。

健児の健康を願い、

4年間頑張ってきた母さんが

あんな残酷な言葉を聞いたら

心の底から悲しむと思った。

健児は父さんと母さんの

大事な子どもなんだから――――。

 

 

「……。

 

からかわれて、腹が立ったから」

目を反らした方向へ顔を

向けようとした瞬間、

パァンッ!と何かが爆ぜる音がして、

頬に痛みが走る。

(あ。母さんに打たれたんだ…)

何が起こったのかわからなかったが、

鬼のような形相の母さんを見て察した。

 

「健児が小さな身体で
頑張ってるのに、どうして
アンタは困らせるのよ!」

「……。」

「いつもいつも喧嘩ばかりして!

謝らせるのもいい加減にして!!」

反論したいのを堪えて

母さんを見上げたのを、

反抗と捉えられたのだろう。

「…ッ……!」

母さんの手に後頭部を押され、

机に額をぶつける。

 

「申し訳ありません!

申し訳ありませんでした!

お子さんの医療費は必ず…」

「お金はいいから、

とっとと消えてくれません?」

「私も同感ですわ。

お宅の子のような乱暴者といたら

ウチの子に悪影響だもの」

「はい!…はい…っ…!

本日限りで、退所しますから……!」

 

母さんの必死の謝罪と、

俺達親子を蔑む言葉が

頭上を飛び交う。

 

 

「…ったく。お宅もイロイロ

大変かもしれませんけど?

もう少しお兄ちゃんの躾をしてくださいな」

「ホントホント。この際病院で、

この子の精神状態でも

診てもらったらどうかしら」

 

(その言葉、そっくりそのまま

お前らに返してえよ)

母さんに押さえつけられていなかったら

この言葉を本人たちにぶつけて、

この場がさらに泥沼化していただろう。

 

 

 

 

 

「…賢一。

ご飯の時間だって言ってるでしょう?」

「………。」

お互い無言で家に帰り。

そのまま部屋へ戻った俺は、

夕飯時になっても部屋から出なかった。

 

「もう!勝手にしなさい」

母さんの足音は遠ざかり、

階段を降りていく……。

 

 

 

(これで。よかったんだ)

健児が馬鹿にされた事実を、

母さんは知らない。

これで、家族が悲しまずに済むんだ。

乱暴な方法だったかもしれないけど、

間違ったとは思っていない。

 

 

 

(なのに。

なんでこんなに悲しいんだろ…)

俺は気が短い方で

喧嘩も初めてじゃないし、

何も知らない母さんが

また暴れたのかと怒るのも当然だ。

そう言い聞かせていたけど。

 

 

 

本当はもっと、

自分を信じて欲しかった。

結局母さんは、俺の事なんて

どうでもいいんだ……。

 

 

 

 

ベッドに突っ伏して

力尽きるまでの間。

声を出さずに、ただただ涙を流し続けた。

 

悲しみで、息が苦しい。

仕方がない。…仕方がないんだ。

でも……。

 

 

 

 

******************

 

 

前回と比べて長文なのですが、

過去編の中において

もっとも辛い場面を

引き延ばしたくなくて、

この回にまとめてしまいました(汗

 

 

賢一くんは、とにかく負けん気が強く。

小さいけれど腕っぷしも強いし

同年代の中では言葉も

知っているほうだから

納得できない事があると

ぶわ~っと言葉を捲し立てる。

 

そのため、元々被害者的な

立ち位置だったとしても、

傍から見ると賢一くんによる

一方的な攻撃に見えてしまって

結局賢一くんも大人から

怒られる…という顛末に

なりがちなのでした(;´Д`)

 

 

 

根っこは素直な子なので、

自分に否があると理解すれば

潔く謝れるんですけどね!

 

 

 

前回の、健児くんの誕生日会が

開かれると知ったときの反応も、

最初は「どうして健児だけ…」と

嘆く描写を入れていたものの、

すぐに消したのです。

 

物分かりの良い一面もある

賢一くんなので、

「頭では理解している。

それでも心が…」としたほうが

彼っぽいのかなあと思い直しまして^^;

 

 

 

そんな賢一くんの

誕生日会が実現するのは

17歳なので、

まだまだ長い道のりですが><

毎度同じく、高校生編では

沢山幸せ感じておくれ!と

願ってやまないにょへ子なのでした。

 

 

 

さり気なくミツキ先生の

誕生日とも絡ませてきましたが、

次回はようやくハナシが繋がる!?

予定です。

 

 

 

 

 

それではお付き合いいただき、

ありがとうございました(^^)