父の日あたりまで、

毎週日曜日公開を目標に

森下教授の話を綴っていきます^^

悩みや葛藤を交えつつ、

親ばかっぷりを露呈する予定(笑)

 

ちなみに今週の日曜日も

ちょっとした落書きを出したいので

このシリーズを土曜日に更新した次第です。

 

しかもしかも!

さらなる長文の予感が(^▽^;)

どうか、無理のない範囲で

お付き合いくださいっ(滝汗)

 

 

 

 

 

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黄藤くんの職場の困った後輩

高杉氏シリーズにたびたび登場する

経済学のスペシャリスト

森下教授視点のお話。

 

雑誌で紹介されるたびに

次男との闘病生活も紹介され

愛妻家でイクメンと

奉られる森下教授ですが、

今回は長男との生活をベースに

闘病生活を振り返ってもらいます。

 

(☆第1話第2話第3話

第4話第5話はコチラです)

 

 

今回は第6話。

次男くんが安定した事で、

ようやく4人暮らしが始まった森下家。

バリアフリー化するなど、

歓迎ムードから始まりますが……。

 

 

 

 

 

******************

 

 

オリキャラ妄想

「もうひとつの軌跡 第6話」

 

 

 

「健児!カメラマンさんに
撮ってもらった写真が

雑誌に載ったよ」

あれから複数の取材で
次男とや妻との写真を撮影。
プライバシー保護のため
次男のみ顔の見えない角度で
撮られたが、出来上がった雑誌を見て
次男は嬉しそうだった。

「おとうさん!この文字なァに?」
「ん?これはな、
“きずな”って読むんだ」
「―――きずな?」
「離れたくないくらい
健児は家族と仲良し~っていう事だよ」
「なかよし…!」
最近平仮名が
読めるようになった次男は
この漢字が気に入ったようだ。

「健児の手術も成功したし、
もうすぐ家に帰れるぞ!
父さん、お兄ちゃんと一緒に
準備して待ってるからな」
「おにいちゃん…?」
「いつも写真を見せてるだろう?
今ごろ学校で勉強中じゃないかなあ」
「がっこう…」
伝染病の持ち込みを防ぐため
保護者以外の家族は面会出来ず、
次男と長男が会える機会は少ない。
次男が忘れないよう、
こまめに長男の写真を見せていた。

「お疲れ様!賢吾くん」
「ああ!いつもありがとう
ございます、お義母さん」
義母と、付き添いの交替に来た
妻が顔を出す。




長男・賢一が小学3年生、
次男・健児が6歳。
次男の容態がいく分安定してきたため
今回の入院が終われば
4人で暮らせそうだ。
とはいえ、体力が著しく低いため
不自由なく暮らせるよう
自宅をバリアフリー化する事に。

工事中は、
長男の夏休み期間を利用して、
ウィークリーマンションで暮らす。
うち前半の2週間は
南方の物件を借りて過ごし、
海の遊びを堪能するつもりだ。
次男が家で暮らすようになったら
さすがにこんな長旅は
出来ないだろうし、飛行機に
乗る機会はうんと減るだろう。
次男の元に残る妻に悪いと
思いながらも、長男との体験を
楽しもうと決めていた。



「健児の世話を任せっぱなしで
ごめんな。麗奈さん」
「ううん。母さんや姉さんたちに
お願いして、適当に息抜きしてるから」
義母にしばし次男の世話を頼んで、
妻と1階のカフェで話しをする。

「それに賢吾くんはいままで、
いい夫で、いい父親だったわ」
「そんな事…」
「だから本当は賢吾くんにも、
このリフォームの間ひとりで

ゆっくりする時間を…と思うんだけど。
実家もお店が忙しいから、
賢一の世話まで頼めなくて」
「全然!賢一とひと月もの間
一緒だなんて夢のようだよ」
「ふふふっ。
賢吾くんってば鼻息が荒いわよ」
息まく俺を見て、妻は穏やかに笑う。

しかし、
「でも……。
これを機に賢吾くんも、
もう頑張らなくても
いいんじゃないかと思うの」
「え?麗奈さんまさか、
何か思い詰めて―――」
「そういう意味じゃないわ。
ただ、いまの賢吾くんは
“ふたりの息子を分け隔てなく
愛する、いい父親”っていう枠に
頑張って収まってる感じ」
「そうかな?
俺は息子たちを愛してるし、
嫌々頑張ってるつもりは
ねえんだけど」



―――出来が良すぎて可愛げのない次男。

 

母親は俺をそう呼び、

“可愛げのある”兄貴を溺愛していた。

気の弱い親父は、

その歪な光景を黙認するのみ。

吐き気のするような家から

早く出たい一心で

寮のある一貫校を受験し、

特待生の名を手に入れたほどだ。

そんな経緯から、

次男を授かったとき、

平等に愛情を注ごうと決めたのだった。


事情を知る妻の黒目がちな瞳は、

物言いたげに見えるが……。
「…ごめんなさい。
私の考え過ぎだったみたい」
にこりと微笑み、この話を打ち切った。
「ところで、旅先では
観光するの?水族館とか?」
「主に海遊びかな。
さすがに人の出入りが多い場所は
感染が心配だからなあ…」



こうして、そのとき話したように
夏休み前半は海を一望できる

ガラス張りの壁面がある

ウィークリーマンションで過ごした。
午前中は仕事の傍ら長男の宿題や

勉強に付き合い、昼食後は海遊び。
夜は早めに長男が寝るため
その後仕事の残りを片付ける。

とはいえ、
海遊びで程よく疲れるため
俺も日付が変わる前に

寝る事が多かった。

後半は地元の
ウィークリーマンションへ移り、
非日常を楽しみ……。



やがて、夏休みが
残り1週間になったところで
自宅へ帰還。
「すげえ!これ逆上がりが出来る!!」
「おい危ないよ賢一!
これは鉄棒じゃないんだぞー」
玄関前に設けたスロープの手すりで
遊ぶ長男を諌めたあと。
「…どうせなら父さんみたいに、
綱渡りくらいやってのけなきゃ!」
「うわッ!
父さんのほうが危ないじゃん」
悪ノリが高じて
スロープの上に立つが、危うく
近所の人に見られそうになってしまう。

「…いいか父さん!?
これは健児が歩くための
大事な手すりなんだから。
上に乗っちゃダメ!」
「はい。気を付けます」
逆に長男に叱られ、綱渡りを断念。

他にも、1階の床の段差を全て
取り払ったりと、
次男の負担が少ないものへと変えた。




9月半ば、ついに次男が退院。
様変わりした我が家に
次男は驚きながらも
嬉しそうにしていた。

「おにいちゃん、それなァに?」
「これはランドセルだよ。
学校に行くとき、本や
勉強道具を入れていくんだ」
自分の生活圏で
目に触れなかったものに囲まれ
次男は興味津々だ。



ただ、闘病生活中
自分が世界の中心のように

思っていたせいか、

長男に対してやたらと張り合うように。
「…おにいちゃん!
ぼく、きょうおかあさんと
○○でパフェ食べたんだァ」

(ああ。こりゃ麗奈さん的には
内緒にしときたかったヤツだな。)
自分が学校に行っている間に
美味しい思いをしたと知って
長男は複雑なのでは…。
心配しながら、
2人のやり取りを見守ると。

「そうか!良かったじゃん」
長男は、にっこりと笑った。
「○○の、どのパフェ食べたんだ?」
「い。いちごパフェ…」
「あそこのイチゴ、
甘くて美味いよな!
チョコバナナパフェも美味いから
今度食べてみなよ」
「う、ん……」


また、あるときは、
妻と一緒に寝る事を自慢するが。
「ぼく、おかあさんと寝るんだよ!」
「おう、ぐっすり寝ろよ!おやすみ」
夜の歯磨きを終えた長男は
にこりと笑って2階に消えていく。

「大丈夫か賢一。
健児のやつ、自慢ばかりして…」
「ヘーキだよ。
健児はいっぱい頑張ったんだから

優しくしねえと」

ある日長男の部屋に赴き
困っていないか尋ねるが、
長男はけろりとしていた。
「それに、母さんと寝るなんて
小さい子がする事だよ。羨ましくねえ」
「ははは。賢一だって、
父さんと寝てるじゃないか」
「父さんはいーの!」
「ははは!この甘えん坊めー」
「ぎゃははは!

やめろよくすぐったい!」
からかいながら脇腹をくすぐると
長男は笑い転げる。

そのまま一緒に寝そべり、
学校や『ひだまりハウス』の
出来事に耳を傾けた。

次男の我儘は気になるが、
こうして長男との時間を作り
声を聞いていけば
このまま順調に暮らせる。

この頃は、そうやって安易に考えていた。





そんな長男にも
秋の運動会という、
我が家の主役になれるイベントが訪れる。
両親揃って応援するという状況に
長男は喜び、張り切る姿を見せた。

「すごい!賢一ってば
こんなに速かったのね」
リレーのアンカーとして
1位でゴールした長男に、
妻が惜しみない称賛を贈った。
「バトンもらった時点で
4位だったのに、挫けずに
よく頑張ったわね」
「ミツキ先生が、挫けない心が
大事だよって言ってたんだ。」
長男は照れながら、
しかし誇らしげに微笑む。

「ぼくだって、
しゅじゅつ頑張ったし…」
自分のクラスへと戻っていく長男を

見送りながら、次男はもごもごと呟き。
「ぼくも早く、
しょうがっこう行きたいな!
おにいちゃんよりかっこいい
ランドセルをしょって、

かけっこでも1位になるんだ!」

「……。そうだなあ…」
俺と妻は、居た堪れない思いで
顔を見合わせた。



長男の運動会が終わってまもなく
次男の就学前健診が訪れる。
だが俺と妻が予想した通り
次男は病気と手術の影響で
標準体型よりも遥かに小さく、
発育不良という結果に。
体力的な問題もある事から
特別支援学校を薦められる点まで
織り込み済みであり、
俺たち夫婦としては問題なかったが…。

長男と同じ学校に通えると
思っていた次男は大きく落胆し、
我儘な態度に拍車がかかる。



「ぼく、こんなカバンやだ!
おにいちゃんみたいな
ランドセルにするんだ!!」
店で通学リュックを手に取った瞬間
次男はリュックサックを叩く。
「こら健児!お店のものを
叩いたらダメでしょ!」
「うあああああああんんん!!!」
妻が叱りつけると大声で泣きわめく。

「…とりあえず、安いランドセルと
リュックサック、両方買おうか」
「でも、支援学校は荷物が多いし
健児だってリュックサックのほうが
楽なんじゃないかしら」
「俺もそう思う。
だから実際に通って、
健児がそう思うまでの間限定で
ランドセルで通わせれば
いいんじゃないかな。
健児にとって、ランドセルは
小学生の象徴だったんだろうし…」

小声で話し合った結果、
2万円弱の黒いランドセルを購入。
「これ、ぼくのランドセル!
おにいちゃんのよりピカピカでしょー」
「良かったじゃん!
これでお前も、小学生になれるな」
長男はというと、上級生の
くたびれたランドセルに
憧れていたため、次男の思い通りの
反応を見せる事はない。



やがて入学式を迎え、
学校で自分の身の回りの事を
するようになると、次男は

ランドセルの不便さを痛感したらしく。
早々にリュックサック登校に変えた。

「ただいま!宿題いっぱい出たー」
5月の連休前日、
4年生に進級した長男は、休みが長いぶん

宿題も沢山出されたらしい。
妻と帰宅するなり、『ひだまりハウス』で
終わらなかった宿題に取り掛かる。
『ひだまりハウス』は基本
入院中の家族がいる事が条件となるが、
次男が妻の送迎で通学している事や
今後も定期検査が必要な事から、
所長のご厚意に甘えて
お世話になり続けていた。

「…“しゅくだい”?」
「学校の先生が、

おうちでやって来てくださいって

言って出す、勉強の事だよ」
俺の迎えで先に帰宅していた次男に
宿題の意味を教える。

「家でも勉強するの?カワイソウ!
ぼくは宿題がないから
いっぱい遊べるよ!」
「別に遊べなくてもいいし!

勉強楽しいし、宿題たくさん頑張って
頭が良くなりてえもん!」
何かにつけて張り合う次男に、
長男も場合によって
言い返しているようだ。

「………うぅ。」
頭も運動神経もいい長男に
簡単に言いくるめられて
面白くないようだったが、
一方的に長男が我慢するよりは
健全だと思っていた。



翌日から連休が始まり、長男が

近所の本屋へ出掛けようとすると。

「ぼくも行きたい!」
「俺はいいけど。
―――健児も連れてっていい?」
「ああ。よろしくな、賢一」
次男は激しい運動が出来ないぶん

運動が疎かになりがちだ。
散歩などの有酸素運動は、
健康促進に繋がるだろう。

(なんだかんだ言っても、
お兄ちゃんが大好きなんだなあ)
微笑ましい気持ちで見送り、
1時間も経たないうちに2人は帰宅する。
「おかえり!
お目当ての本は見つったか?」
笑顔で長男を出迎えるが、


「……。うん…」
何故か浮かない顔をして
手洗いに向かい、そのまま
2階の自室にこもってしまう。

それでも、
夕食の時間には降りてきて
いつも通りに食べていたが。
「お父さん!
ぼく、お父さんと一緒に寝たいなァー」
「ん?健児が父さんと
寝たがるなんて、珍しいなあ」
洗い物をする俺に、次男が抱きついた。

「じゃあ父さんの部屋で、
お兄ちゃんと3人で…」
「俺はいいよ。」
「え?」
驚く俺に、長男は真顔で答える。
「いいのか?ちょっと狭いけど、
子ども2人くらい充分入る…」
「俺、もう4年生だし。
これからはもう、ひとりで寝るから」
淡々と答えて、
長男は自室へ戻ってしまう。
 

 

 

 

不思議に思うが、

翌日、2人でサイクリングに
出掛けたときは、これまで通りの様子に。
 

「…あれ?森下さんじゃありませんか」
「どうも!その節は、お世話になりました」

市内の大きな図書館に入ろうとすると、
以前取材に訪れた
編集者に声を掛けられる。

「…あれ?その子はもしかして…」

「長男の賢一です。

―――賢一。父さんが、

仕事でお世話になった方だよ」
「こんにちは。

父が、お世話になってます」
「こんにちは!

礼儀正しくて偉いね」
丁寧に挨拶する長男に、
編集者はにこりと挨拶を返したあと。

「しかし、なるほど……。

森下さんが、この子を

雑誌に出したくない理由がわかりました」
「ああ!わかって頂けますか」

間接的に長男を褒められ、頬が緩む。

「この子、妻にそっくりでしょう?

だからとても気掛かりで―――」
愛妻家と知っている編集者の前で

惚気混じりに説明し、

長男の顔を見ると…。

(――――――!???)
長男は小さく震え、
目に涙を溜めているように見えた。
知らない大人に凝視されて
恐くなったのだろうか…。

「ああすみません!

ジロジロ見てしまって」
「いえ!…また今後とも

宜しくお願い致します。」
 

(分別のつく人で良かった…。)
あの人も同じように思ったという事は、

長男の露出は親ばか抜きにして

危険だという事だ。

今後も、長男を守っていかねえと……。

 

怯える長男を見て改めて決意し、

図書館に入り

好きな本を物色して帰宅した。



「俺、明日は『ひだまりハウス』
に行きたい」
夜になると、長男は真顔で呟く。
「どうした?休みの日くらい、
家でゆっくりしたらどうだ」
「退屈だから、ミツキ先生に会いたい」
理由を教えてくれたものの、
保護者がいる日にまで
お世話になっては申し訳ない、
なんとか長男を宥める。


(どうしたんだろう?
親離れの時期が来た…のか?)
『ひだまりハウス』の
他の保護者と話していても
この頃から難しい年頃になるというし
長男もそういう時期なのかもしれない。

最近の様変わりに戸惑うものの、
深くは考えていなかった。

 

 

そして次男と寝る生活が続くと思いきや、
連休が終わった途端、
あっさりとひとりで寝るように。

「あれから、賢一も来ねえし。
すっげえ寂しいんだけど…」
就寝前、妻の部屋に押しかけ
くだを巻く俺に、妻は
嫌な顔せず付き合ってくれた。

「賢一…何かあったのかしら。
賢吾くんの事大好きだったのに」
「だろォ!?眠る間、無意識に
すり寄るトコとか可愛かったのに」
「やっぱり、健児との生活が
ストレスなのかもね…」
「家族揃って過ごせるから
てっきり喜ぶと思ったんだが…」
「家族といっても、
相性だってあるでしょう?」
6人姉妹の4女である妻は
不仲とまではいかなくても
相性が今ひとつな相手もいるという。
何より、自分自身親とは

相性が最悪だったから

頷かざるを得なかった。

「あの子優しいから、健児の我儘を
かなり我慢しているのかも」
「そうか?ただの
反抗期のようにも見えるけど…」
思慮深い妻と楽観的な俺は
意見に相違がある事のほうが多いが
対照的な事で、却って相性が
いいのかもしれない。

「これを機に、俺もケンちゃんから
子離れしねえといけないのかな」
「賢吾くんの口から
そんな言葉を聞くとは思わなかったわ」
「だよな!アイツが生まれるまでは
こうして手が離れて
麗奈さんとの時間が出来る事を
心待ちにしていたのに」
「でも。さすがの賢吾くんも、
もう…そんな気分でも
なくなったんじゃない?」
膝に抱きつきながらぼやく俺に、
妻は困ったような表情を向ける。

「私…すっかりオバサンに
なったでしょう?
世間的にはもうすぐお婆さんって
呼ばれる歳だからね…」
「ンな事言ったら、
俺だってひとつしか違わねえ
オッサンだぜ?
それにいまの麗奈さんも綺麗で、
俺は好きだよ」

(麗奈さんからの“誘い”がないのは
引け目を感じていたからなのかも)
すっかり男女の営みに
興味をなくしたのかと
思っていたが、いまの言葉を聞いて
そんな可能性が浮上する。


「…よーし!
俺、これからは毎晩
麗奈さんの部屋に来るよ」
「……毎晩!?」
「昔は毎晩マッサージしてただろ?
麗奈さんの疲れも取れるし、
俺も麗奈さんに触れるし一石二鳥だ」

意気揚々と立ち上がり、
翌日にはマッサージオイルなどを
揃えると、妻はくすくすと笑った。
この日を境に、毎晩妻の部屋で
過ごすようになる。




その後も土日のいずれかは
長男と2人でサイクリングへ出掛け。
夏を迎えてからは
大型のプール施設を検索して
気になる場所へ赴く。
最近距離が出来てしまった長男だが
この時間には笑顔を見る事が出来た。


しかし。
「ぼくも自転車乗りたーい!」
残暑の厳しい9月の週末。
長男と出掛けようとすると
次男がそう叫んだ。

「わかった。じゃあ、
来週の土曜日に練習を始めよう…」
「やだやだ!
きょう行きたいよォ!」
「じゃあ、夕方帰って来てからな。
時間的にこのあと暑くなるし、
いまはお兄ちゃんとの時間だから」
何かにつけて大声で
意見を通そうとする次男に
妥協案を提示していると。

「…父さん。俺はいいよ。」
「いや、良くはないだろ。
賢一のほうが、

先に約束していたんだから」
身を引こうとする長男に
その必要はないと説明するが。
「俺、学校ない日は家で休みたいし。
2人で行って来なよ」
ぱたぱたと音を立てて階段を昇り、
自室へと戻ってしまう。

(賢一、強がってんじゃねえかな。
かといって、本当にゆっくりしたいのなら
余計な迷惑かもしれねえし…)
長男の真意を慮っていたが、
次男にせがまれるまま外へ出る。
物置から取り出した長男のお下がりの
幼児用自転車に空気を入れて
公園で練習を始めるが、
気温の上昇に伴いすぐに疲れて、
1時間も経たぬうちに

帰宅したのだった。



そんな週末が続いたあと、
この年の運動会が近づく。
「俺ソーラン節リーダーだから、
みんなの前で踊る事になったよ!」
「そうなの!じゃあ賢一の事、
すぐに見つけられそう。楽しみだわ」
この年はリレーのアンカーに加え
2学年合同の演舞でも
前線で活躍するらしい。
『ひだまりハウス』でも
練習している演舞を嬉しそうに
披露してくれると、
ミツキ先生から聞いていた。

「ミツキ先生も、賢一の踊りが
かっこいいって言ってたよ!
今年も皆で応援に行くからな」
「うん!」
期待に溢れる瞳を見て、
自分の事のように嬉しくなった。




予定されていた開催当日は、
台風の影響で大雨に。
幸い、午後には晴れて
翌日の日曜日には
開催となったのだが……。


「…賢一ごめんね。
健児の咳がひどくて…」
朝方、次男が激しく咳き込み、
妻は次男と自宅に残る事に。

「父さんが、母さんのぶんまで
応援するからな」
「~~~~~ッ」
長男は目をつり上げ
悔しそうに歯を食いしばったあと、
「……わかったよ。」
しょんぼりと項垂れ、力なく頷く。

それでも運動会では
精一杯力を出す姿に心を打たれた。
「賢一、お疲れ様!
すごくかっこよかったよ!
リレーも一周、頑張って走ったな」
「うんっ!
今年はダントツ1位だった!」

長男の学校では
2学年ごとの分散式で
開催されていて、
長男の出場時間のみの参観となる。
自分の種目を終え教室へ戻る長男に
労いの言葉を掛けると、
機嫌は直っているように見えた。
「父さんは、このまま
夕方まで大学の仕事に行くけど、
夜ご飯は美味い物食べような」
頭を撫でると、最近鳴りを潜めていた
輝く笑顔を返してくれて。

このときはまさか、
妻からあんな連絡を受けるとは
露程も思っていなかった。


 

 

「賢吾くんどうしよう!」
「?」
「賢一が、出て行っちゃった…!」

 

 

 

 

******************

 

 

このシリーズ内で

存在感の希薄な

教授のご実家について、

少しばかり触れてみました。

最初子どもはいらないと

思っていたのも

こういう背景があるからで、

次男くん誕生後は半ば意固地になって

息子たちを平等に扱う事に

こだわっている教授ですが。

 

ここまでの行動でも、

明らかに差があるような気が

しないでもないような^^;

 

 

 

ハイスペックなお方だけど

ミツキ先生ほど

心の機微に敏感でもない。

父親特有の鈍感さもありつつ

子煩悩な、いいパパさん。

というのが、このシリーズにおける

森下教授のイメージです♪

 

出来が良すぎて近寄りがたいと

思われてしまっている

長男くんの孤独感も、

彼なら理解できるのは!?と期待♡

(何故に♡なんだwww)

 

 

 

 

 

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そして、タイトル画像&加工前ver.です♪

親子ペアルックに憧れ描いた

一枚であります♡

親子揃って細い!

&脚長くて羨ましい(//▽//)

 

40代の森下教授。

同性も惹きつけそうな、

おフェロなパパを目指して描きました♡

 

38歳でパパになったため

同世代のご父兄の中では

年配という点が気掛かりだったようですが

長男くんにとっては

かっこよくて万能で優しい、

自慢のお父さん(*^^*)

 

 

もっとも、気がかりなのは

ムチュコタンに若い父さんがいい!って

言われたらどうしよう!?的なもので

周りの保護者の眼は

痛くも痒くもありません(笑)

 

でもこのプロポーションは

にょへ子の描く

オジ様オリキャラの中では

ずば抜けているので、

運動会や参観日でも

違う意味で注目されてたかも!?

(そう思って頂けるような

森下教授を再現出来るように、

精進します…( ̄▽ ̄))

 

 

 

運動会といえば、

最後は長男くんの家出で

終わってしまいました(゚д゚)!

 

次男くんの背景を思えば

ワガママ言いたくなる

次男くんの気持ちも、

甘んじて受け入れるご両親の

気持ちもわかります!

長男くんもそれがわかるから

色々我慢し続けた結果、

限界が来たんだろうなあ(:_;)

 

 

 

それではお付き合いいただき、

ありがとうございました(^^)