母の日&父の日にちなんだ

森下教授の話を

毎週日曜日公開を目標に公開中!

いちおう今月中で完結予定。

悩みや葛藤を交えつつ、

親ばかっぷりを露呈してイキます(笑)

 

 

今回も長文です(^▽^;)

どうか、無理のない範囲で

お付き合いくださいっ(滝汗)

 

 

 

 

 

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黄藤くんの職場の困った後輩

高杉氏シリーズにたびたび登場する

経済学のスペシャリスト

森下教授視点のお話。

 

雑誌で紹介されるたびに

次男との闘病生活も紹介され

愛妻家でイクメンと

奉られる森下教授ですが、

今回は長男との生活をベースに

闘病生活を振り返ってもらいます。

 

(☆第1話第2話第3話

第4話第5話第6話

第7話はコチラです)

 

 

今回は第8話。

2人の息子を平等に可愛がろうと

努めてきた森下教授。

しかしその努力とは裏腹に

差をつけてしまう自分に葛藤し、

妻に縋るのでした。

 

 

 

 

******************

 

 

オリキャラ妄想

「もうひとつの軌跡 第8話」

 

 

 

俺の母親だった女が死んだとき、

長男と次男は妻の実家に預け、

義母と連れ立って俺の実家へ赴いた。

通夜の訪問をしたのは少数の親族と

町内会の役員のみ。

兄貴に尽くす事だけが

生き甲斐だったあの女らしい最期だ。

 

 

翌日再び訪れ

簡素な告別式を済ませたあと。

兄貴の隣にいた親父が、口を開く。

「お前、教授になったんだって?

春彦と違って、昔から

出来が良かったからなァ」

「運が良かっただけだよ」

「いや。頑なな母さんの手前

何も言えなかったが、

父さんは内心、お前を応援してたんだ。

お前は絶対大物になる!ってな」

かつて空気のようだった親父が

俺の素晴らしさとやらを饒舌に語る。

 

「なァ賢吾。これを機に、

父さん達と同居しないか?」

「……は?」

「これまで家族らしい事を

出来なかったから、

せめてもの罪滅ぼしをしたくてな」

笑顔を張りつけながら、

俺の妻を舐めるように見やがる。

「それにウチも、

女手がなくなって困ってるんだ。

父さんが孫たちの世話してやっから、

麗奈さんには家事と、

春彦の世話を……ひィッ!」

「ふざけんじゃねえぞ、くそ親父」

胸倉を掴んで、睨みつける。

黙って聞いていたが、

妻を軽視されて我慢の限界を迎えた。

 

「要は俺の妻をこき使って、

楽してェだけなんだろ」

「ちっ違う!俺は可愛い次男と

もう一度やり直したいだけで」

「可愛いだと!?

あの頃12歳だった俺が、

どうやって中学の制服代を稼いだのか

知ってて言ってンのか?

金の出所も聞かず、

見て見ぬふりをしやがって」

 

これまでの恨みつらみが

口をついて出てくるが、

それを聞いた親父がニヤニヤと笑う。

「お前だって、麗奈さんに知られたら

まずいんじゃないのか?

大人しく父さんのいう事聞けば

悪いようにはしないから」

実際は、妻は全て知っている状態で

付き合い始めたから問題はないのだが…。

 

 

(コイツら、どこまでも腐っていやがる…)

ドロドロと煮えたぎる嫌悪感に

吐き気を催した俺の隣に、妻が座る。

 

「―――私、知ってますから。」

「エ!?」

「私は、賢吾くんがどのように生きてきたか

全部知ったうえで伴侶となりました。

ですので、お義父さんの

ご心配には及びませんわ」

親父に微笑みながら、

俺の手に自らの手を重ねる。

「それに私は、仕事で忙しく

賢吾くんの助けのおかげで

家の中が回っている状態です。

同居の話も、丁重にお断り致します。」

凛と背筋を伸ばしす妻の存在を

頼もしく思ったが、

か細い妻を見くびっている親父は、

高圧的な態度に出た。

「これだから、長年外で働いてる女は

可愛げがないんだ!

“とう”が立ったお前を、俺と春彦が

可愛がってやると言ってンのに!」

(厳かな時間だと思って我慢してたが、

もう我慢ならねェ)

妻への侮辱に堪忍袋の緒が切れ

拳を握って立ち上がった、次の瞬間。

 

「…さあさあ!お別れの挨拶も済んだ事だし。

子ども達を迎えにいくよ!

ほら、麗奈も立って!」

後ろから義母が、俺の肩を掴む。

 

「ちょっと姫路さん!?

これは俺と賢吾の、

親子の問題なんですよ!

首を突っ込まないでもらえますかねェ」

「そっちこそ、うちの子達を

引き留めないでくださいな!

麗奈と結婚した時点で、賢吾はもう

私の息子になりましたから!

二人への侮辱は、私が許しません。」

慌てて口を挟む親父に対し、

80を超えた義母は堂々と対峙する。

 

「いいかい賢吾くん!?

こんな奴らから、遺産なんて

一銭も貰っちゃいけないよ?

アンタはもう、この家の人間じゃない。

とっくの昔に、うちの家族なんだから」

「お義母さん……」

義母の後押しを受けて、

相続放棄手続が受理された事の報告と

絶縁宣言をして家を出る。

長年老舗和菓子店を守ってきた

強い女性を前に、

元々気の弱い親父は成す術もなく

うなだれたのだった。

 

 

帰りの道中、義母は結婚当初

俺の事を良く思っていなかったと告白した。

「こんな色男と結婚して、

麗奈は2年もしないうちに

捨てられるだろうと思ってたんだ」

「もう!お母さんってば失礼ね。

賢吾くんは愛情深い人よ」

「麗奈の言うとおりだよ…。

賢吾くんはこれまで本当に、

よく頑張ってくれた。

賢一を手放すなんて馬鹿を言う

この子の事を支えながら、

仕事に育児に奔走して……。

アンタには、感謝してもしきれないくらいだ」

 

これまでなりふり構わず生きてきた俺を、

義母が家族として受け入れてくれた事に

感極まり、目頭を熱くした。

 

それと同時に、改めて誓った。

俺は長男も次男も、悲しませはしないと。

それなのに……!

 

 

 

 

 

 

 

 

「リビングで健児を殴りつけたのは。
…健児のためを思った行為じゃなかった」
 

家出した長男を『ひだまりハウス』から

連れ戻した日。

妻に縋るように抱きついた俺は

その後妻のベッドに並んで腰掛け、
自分の膝を見ながら呟く。

「ただ単純に…腹が立った。
アイツのせいで賢一は悲しみ、俺は
賢一から大嫌いって言われたんだ、って」
「賢吾くんは、ちゃんと
健児の事を愛してるじゃない。」
「俺だってそう思ってたよ!
健児が大事だからこそ、
アイツの健康を願い続けて!

…でも、それ以上に俺は。
賢一を愛してるんだ……」



声にした言葉ひとつひとつが、
確固たる真実へと変わっていく。
俺の抵抗が全て無駄だったと
嘲笑うかのように。

「ケンちゃんや健児がが生まれるとき、
あの女みてえになるもんかと
あれ程心に誓ったのに。

だんだんと近づいていく自分が怖いよ…」
「大丈夫よ賢吾くん。
心が痛いのは、健児の事を
大事に想っている証拠だから」
震える俺の手を、
小さな手で包んでくれた。

「そもそも、賢吾くんが
賢一まっしぐらな事なんて、
生んだときから知ってるわ」
「だが!健児が生まれてからは
ケンちゃんの呼び名だって…」
「貴方たまに、無意識にケンちゃんって
言ってるわよ。…ほら、今も」
「!」
(いままで全く、気づいてなかった)
はっとして、口元を押さえる。
「GPSだって…。
一体どこに仕掛けてたの」
「ケンちゃんが持ってる靴全部。
あとランドセルと、
プライベート用のリュックサック…」
「もう…!相当重症よね」
妻はくすくすと笑う。

「健児と違って、ケンちゃんは
ひとりで出歩く事もあるから
…っていうつもりだったんだけど。
知らないうちに贔屓してたのか。
まいったな……」
「でもね。賢吾くんが
賢一を愛してくれてるおかげで、
私も賢一も救われたの。
もし学童を辞めたとき
別の道を辿っていたら、
いまの関係にはなれなかった。

きょうだって、いち早く発見出来たじゃない」
「そうかな…」
「だから、別にいいじゃないの。
賢吾くんが私にしてくれたように
夫婦で手を取り合ってフォローしていけば。
それもひとつの
『家族』の形になるはずよ」

 

あの選択に、

義母も感謝してくれたが。

そこには親心らしきものよりも、

賢一を手放したくないという
個人的な感情が占めていた。
それでも、妻が結果的に
救われたというのなら、俺の偏愛も
無駄ではなかったのだろうか…。

 

「賢吾くんは、これまで自分の力で

人生を切り拓いてきたかもしれないけど。

もっと、私を頼ってくれていいのよ。

貴方は、ひとりじゃないんだから」


慈愛に満ちた眼差しに、
心が救われたような気がした。
確かに、長男を偏愛

しているかもしれないが。
あの女と違って俺には、

最高の伴侶がいる。
だから、きっと大丈夫だ……。


妻の身体を、再び抱き締める。
「ありがと、麗奈さん。マジ女神」
「ふふっ。そんな誉め言葉を
言ってくれるの、賢吾くんだけよ」
「当たり前だ。
他のやつを近づけるもんか」
ベッドに押し倒し、

口づけをしようとするが。

「…そろそろ、
20分経ったんじゃないかしら」
「あ。そうだった。」
今後も30分は時間を取るとしても、
マッサージをして終わりそうだ。
少し残念に思っていると……。

「…愛してる。賢吾くん」
「!」
手を伸ばした妻に引き寄せられて
唇を重ねた。

「大丈夫よ。

私はいつだって、貴方の傍にいるわ」

「ああ……」
しばらく抱き合って過ごしたあと、

長男の部屋へと向かう。




「……賢一」
「!」

出迎えてくれた長男の、

細い身体を包み込む。
「これからも健児は、
賢一の事が羨ましくて
意地悪な事も言うかもしれない。
でも、そのときには
名前の由来を思い出してほしい」

最後に、
「帰って来てくれて、ありがとう」
頭を撫でながら伝えると、

長男も呼応するように
俺の服をぎゅっと掴む。
雨に濡れた子猫のように

小さく震えていた。

「父さん。
…また、一緒に寝てもいい?」
「ああ。勿論だ」
長男の気が済むまで頭を撫でたあと
自分の部屋へと連れて行った。




翌日の月曜日は
運動会の代休だったため
長男は『ひだまりハウス』を休む。
俺も昼過ぎには帰宅し、長男と
サイクリングに行こうとしたが。

「ぼくも行きたい…」
次男が追いかけてきたものの
昨夜の叱責のせいか勢いがない。
「お兄ちゃんとの約束が先だから、
帰って来てからな」
毅然と答えて、背を向けようとすると。

「健児お前。
本当に自転車乗りてえの?」
「!」
こういうやり取りの際、常に黙るか

譲るかしていた長男が口を開いた。
次男が悲しそうに頷くのを見て、
長男は俺を見上げる。

「あのさ!父さんっ」
「?」
「俺が健児に、教えてもいい?」
「―――賢一が?」
「俺さ!『ひだまりハウス』でも
一輪車乗りたいやつらに
教えたりしてるんだ。
出来るようになるとみんな喜ぶから
健児も喜ぶと思う」


長男の意気込みに押される形で
次男の準備をして、
公園にふたりを送る。
だが俺たち夫婦もそのまま残り、
木陰から覗く形で見守った。
「…あ!健児が派手に転んだわ」
「長袖シャツとサポーターのおかげで
出血はなさそうだな」

出血があれば連絡するよう
長男にも伝えてあるため、
様子を確認後、練習を続行しようと
するのを見てほっとした。
しかし転んだショックで、
次男は泣きじゃくっている。

「うああああああん!
兄ちゃん、自転車起こしてよォ」
「バカヤロー、ひとを頼るんじゃねえ!
泣いてもいいから、自分で起こすんだ!」

「…賢一のやつ、
ずい分言葉遣い荒いな…」
「賢吾くんそっくりじゃないの。
でも外では、もう少し

柔らかいらしいわよ」
厳しい指導を見て
夫婦で感想を言い合っていると。


「お前は!大変な手術をいっぱい

乗り越えてきた、強い男だろ!?」
「強い…おとこ?」
「そーだよ!俺なんか、
注射だって怖いもん。
ゼッテー泣かねえけど。
…だからお前がしてきた事は、
すげえ事なんだぞ」

“強い男”という言葉は、
次男の励みになったらしい。
「…ぐ。ぅうう……ッ」
「よし!もう少しだぞ!
お前なら出来る!」
体力の少ない次男にとっては

困難だったに違いない。

しかし生まれたての

小鹿のようにぷるぷる震え、
途中何度もふらつきながらも、
次男は自力で立ち上がった。

「すげえ!
やっぱりお前は強い男だ!」
「…ほんと?」
「本当だ!これからも、
練習頑張ろうな」


結局この日は乗れずに終わったが、
帰るときの次男の眼は
きらきらと輝いていた。
「なんだか、感動しちゃった。
賢一も相当、すげえ男よね」
「ははっ!麗奈さん、
賢一の言葉がうつってるよ」
未熟な父親とは対照的に、

息子達がどんどん

成長していくさまを見て。

妻の言葉に笑いながら、
俺もまた目頭を熱くした。




平日になり、日も暮れた時刻に
『ひだまりハウス』に預けた
長男を迎えに行く。
「所長先生、先日は
ありがとうございました!
ミツキ先生にも、
何とお礼を言えばいいか…」
「私と黄藤は、
お父さんと賢一くんの話に
立ち会っただけですから」
改めてお礼を伝えると、
所長はにこりと微笑む。

「黄藤もあんな大胆な提案をして
お父さんが気を悪くされたのではと
反省していました」
「ミツキ先生には感謝しています。
あの声掛けのおかげで
賢一が話を聞いてくれましたから」
「ですが決め手は、
お父さんと賢一くんの
普段の関係性だったと思います。
黄藤も、きっと賢一くんは
心の底ではお父さんの事を
大好きなのだと
見越していたのでしょう」

ずっと俺たち親子を
見守ってくれた人の言葉なだけに
勇気づけられた。
「賢一は、ここに来てから
本当に明るくなったんです!
前の学童にいた頃は暴れたり、
妻いわく、能面のような顔を
していましたから」
この『ひだまりハウス』は、
長男だけでなく、俺たち一家を
明るい方向へと導いてくれた。
感謝してもしきれないくらいだ。

すると所長は、俺を見据え。
「お父さんは、
聞いた事がありますか?
…賢一くんが、学童で暴れた理由を」
「はあ…。からかわれて
腹が立ったと聞きました。
あと、相手が2対1だという事も」

(所長は、真相を知っているのだろうか)
次の言葉を待っていると…。



「賢一くん、上級生2人に
こう言われたそうです。
『お前の家族はショウガイシャだ』と」
「――――!!!?」
あまりに残酷な言葉に、耳を疑う。

「賢一くんいわく、その子達は
元々色んな子に暴言を吐いて
いじめていたようです。
中でも、斜視の矯正をしている子が
標的になっていたらしくて。
賢一くんが止めに入ったところ、
2人組の片割れの子が
健児くんが車椅子に乗っていた話を
親から聞いたと仲間に告げ口し、
『ショウガイシャの仲間だから
優しくするんだろ』と
2人して笑ったらしくて……」

「本当…なんですか」
「はい。うちのスタッフも、
学校帰りに賢一くんが
からかわれる所を目撃しています」

「きっと賢一は…。
真相を話して家族を悲しませぬよう
黙っていたんですね。
小さな子どものくせして、身体を張って。
僕たち家族を守ってくれたんだ…」

(賢一はいままで、
どんな思いでいたのだろう。
麗奈さんに打たれ
健児からの攻撃を受けても尚、
悲しい事実をひた隠して―――!)
申し訳なさと不甲斐なさで、
唇がワナワナと震えた。
…と同時に、固く決意した。
この先どんな事があっても、
俺は賢一の味方であり続ける。
と……!

所長と別れたあと、
長男の待つ部屋へと向かう。



妻の支えがあるとはいえ、
次男を悲しませる事は避けたくて
なるべく愛情表現を
抑えていこうと思っていた。
しかし―――。

(コイツを悲しませるくらいなら、
鬱陶しく思われる程に構い倒そう。)
 

「あ!父さんおかえり!」
勉強道具を片付け

駆け寄った長男を見て、
にっこりと微笑む。

 


「お待たせ。――ケンちゃん」
「……“ケンちゃん”!!?」
長男はしばらく、硬直していた。





「母さん母さん!大変なんだ!!!」
帰宅早々、長男はキッチンに立つ
妻に向かって猛ダッシュする。
「父さんが!
おかしくなっちゃった!」
「え?お父さんが?」
「だってさ?俺の事だけ、
ケンちゃんって呼ぶんだよ?
父さんも健児も、皆ケンちゃんなのに」

「………。」
妻は後から入って来た俺を見て
一瞬微笑んだあと。

「お父さんはね、元々賢一の事を
ケンちゃんって呼んでたのよ」
「エ!?マジで?」
「ええ、マジよ。
だから、お父さんが
ケンちゃんって呼んだときは
貴方が返事をしてあげてね」
至極当然だと言わんばかりの
妻の反応に、長男は口を
あんぐりと開けている。
「それにお父さんは、いまも昔も
ずっと賢一の事が大好きなの。
何も変わってないわ」

「ねえねえ!ぼくはーー?」
「ふふっ。お父さんもお母さんも

健児と賢一がだーい好き。

もし健児が寂しいなと思ったら、
お母さんのところに来なさいね」
動じない妻を見て、
訴えるのを諦めたようだった。



「ねえ父さん。
…もしかして、怒ってる?」
「何がだい?ケンちゃん」
「またケンちゃんって言う…。
…ほら!この前俺が大嫌いって
言ったからまだ怒ってて、
変な呼び方すんのかなって」
一緒に入浴しているとき
長男はおずおずと聞いた。


「怒ってないよ!
パパはケンちゃんの事を
愛してるんだから!」
「なッ…ナニ言ってんの!?
パパとか、…あ。愛してるとか!」
のぼせているのか照れているのか
わからないくらい、顔が真っ赤だ。
「…そろそろ出ようか。
ケンちゃんに
見せたい物もあるし」
「―――見せたい物?」
浴室を後にして、
俺の部屋へと向かった。


次男のためバリアフリー化した際、
一点だけ、自分のために
リフォームした場所がある。
「…なんだコレ!隠し階段!?」
「何があるのか、
登って確かめてごらん」
天井から現れた階段を
長男に続いて登る。

「すげえっ!屋根裏部屋だ」
「パパ専用の、読書部屋だよ」
大きな天窓は
光を取り入れるだけでなく、
夜空の観賞にもうってつけだ。
「こうして、本がたくさんある
屋根裏部屋を作るのが夢だったんだ。
ケンちゃんも、
好きなときに来るといい」
「え。俺もいいの?」


4LDKの我が家は、妻の部屋と
次男の部屋はこれまで通り1階に、
俺の部屋と長男の部屋は2階にある。
2階の、さらに急な階段を上った
先にあるこの部屋は、俺と長男の
秘密基地にしようと考えていた。
結局、帰って来た次男の顔を見て
思い直したのだが、どうしても

不満を溜め込みがちな長男には、

こういう場所も必要だろう。

「いいよ。いつでもおいで。
本を読みたいときとか
一人きりになりたいときも、
好きに使っていいからな」
きょとんとする長男の頭を
ぽんぽんと撫でる。
「うん!」
差し込む月の光よりも、
長男の笑顔は眩しかった。



日が経つにつれ、長男の笑顔が

再び増えていく。
 

「ケンちゃん。

明後日の社会見学の日、

弁当が要るだろ?おかずは何がいい?」

この頃妻は、実家の店が開いた
インターネット店舗の店長に就任し
多忙だったため、
俺が弁当作りを引き受けた。
「んー?何でもいいよ」
「だが、ケンちゃんの苦手なおかずが

入ってたら、テンション下がるだろ?」
食後、食器を運ぶ長男から

受け取り洗っていると、
ぎゅっと俺の背中に抱きつく。
「下がらねえよ。

父さんの作るご飯、全部好きだもん」
「ははっ!

じゃあ、腕によりをかけて作るからな」
最近は再び甘えてくれるようになり、
俺も堂々と長男を可愛がった。
 

 

 

げんこつを食らわせた

次男との関係はというと。

兄弟平等という意識を

手放してからは肩の力が抜けて、

これまで同様に可愛いと思えるように。
大好きだという気持ちを本人に伝えたり、

甘えに来たときには思い切り相手をした。
 

他にも、

長男と2人で出掛ける時間とは別に、

次男の自転車の練習も設けた。

練習を始めてからふた月後、

冬休みに入る頃には
すっかり運転を覚えたのだった。

ただ、これまでと違う点もある。

練習の際、次男の希望で

長男も一緒だった事だ。
これまで、ただ守られる弱い存在だと、
次男は心のどこかで
卑下していたのかもしれない。

自分の事を強いと認めてくれた
長男に心を開き、

勉強や運動について頼るようになり。
喧嘩も増えたが、兄弟間の距離が

うんと近づいたように見受けられた。



 

 

 

こうして、着々と家族が

形作られていくなか。
 

長男が4年生の終盤を迎えた頃、
成人を迎えるまでの
折り返し地点が来た事を祝う行事が

学校で行われた。

「ねえねえ!
この日、父さんが来てよ!」
「ああ。パパ、絶対行くからな」
妻は相変わらず多忙なため
元々俺が仕事の合間に
観に行く事になっていたが、
長男はやたらと俺に来てくれと
念押ししてきた。

3週間ほど前から騒ぐ長男を見て、
楽しみにしていると。


長男はクラス代表として、
体育館の舞台の上で
保護者に宛てた作文を読む事に

なったらしい。
「僕のお父さんは、すごい人です。
頭が良くて運動も出来て、
病気をしない元気な人です。
僕は少食だったけれど、

お父さんが作ってくれるご飯が

とても美味しくて、最近は、

おかわりするようになりました。」

(ケンちゃん!あんなに堂々と、
皆の前で話せるなんて…!)
成長ぶりに感動する俺に、
さらなる波が押し寄せる。

「でも、無理をしていないか
時々心配になります。
僕ももう10才になったので、
色んな料理を作れるようになって、
家族を助けてあげたいです。

お父さん。
10年間育ててくれて、ありがとう。
たまには僕がご飯作るから、
ゆっくり休んでね。
―――4年1組、森下賢一。」


最後の文に感極まり、
体育館の外でこっそり涙した。
「賢一!
父さん、すごく嬉しかったよ。
ありがとうな!」
体育館から出てきた長男に
礼を言うと、長男は
からかい混じりの笑顔を見せる。
「父さん、普通の呼び方に戻ってるな」
「うん。これはよそ行き用の言葉だ。
賢一も作文読むとき、
“僕”って言ってただろ」
「あ!確かに」

さすがに外でちゃん付けで呼ばれたら
恥ずかしい年頃だろう。
線引きする俺に安心したのか、
言葉の変化に戸惑いながらも慕ってくれた。
 

 

(本当に心が救われたのは、

俺の方なのかもな)

俺を息子だと言ってくれた義母、

愛し続けてくれる妻、

無邪気な笑顔を向ける子ども達……。

 

家族が惜しみなく注いでくれる

無償の愛は、春の陽射しのごとく

俺の心を温めてくれた。

 

 

 

 

 

******************

 

 

 

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今回も、雑な落書きをペタリ(^皿^)ノ

 

この回もまた、

長男くん尊い回なのでありました(笑)

 

 

次男くんは、身体が弱いだけで

知能は年相応のため、

健常者との違いというものも

よりはっきりと自覚しちゃうのでは?と予想。

やりたい事と出来る事が違い過ぎて

ジレンマも大きかったのかなあと(:_;)

 

この後もたびたび賢一呼びして

兄ちゃんのげんこつを食らうけれど、

喧嘩もしつつ、兄ちゃんの事が

大好きになっていくのでした^^

 

 

 

 

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お次は大学時代の森下夫妻・再び。

ダンスの練習後のため、

ターンソックスという、つま先しかない

形状の靴下を履いてます♪

 

 

この2人の関係は

甘酸っぱい関係ではなく、

契約っぽいカタチから始まりました。

…ので愛が育まれるまでの間に

お互いぶっちゃけた話もしていて。

 

 

 

 

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それもひっくるめて結婚したので

賢吾さんの父親の脅しも

効きません(`・ω・´)b

 

 

 

 

 

ところで、麗奈さんは

賢吾さんの留学時に別れ、

就職後再び付き合ってから

髪を伸ばしたので、

賢吾さんの麗奈さん熱が

燃え上がった頃はショートカットでして。

 

 

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このように輪郭と口以外が、

長男くんの顔と瓜ふたつ!(笑)

(口の形は賢吾さん似。)

 

賢吾さんが

長男くんに入れ込んだきっかけには

こういう背景もあったのでした(//▽//)

 

 

 

 

 

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ちなみに社会見学の行き先は、

偶然にも賢吾さんの勤める大学でした!

 

なんらかの研究を(大雑把w)

見学させてもらったあと

食堂で昼食タイムになった長男くん。

弁当箱を開き、好きなおかずばかりが

入っていて感激☆

&そんな長男くんを陰から見守り

悶える賢吾さん。の図です(笑)

 

 

 

このように、

様々な出来事を通じて

さらに仲良しになったこの親子ですが

次回は反抗期に突入(^▽^;)

さらに、賢吾さんの抱える過去によって

暗雲が立ち込める!!?

 

…といったところで、

この記事を締めさせて頂きますm(u_u)m

 

 

 

それではお付き合いいただき、

ありがとうございました(^^)