このシリーズでは

ツクシくんの同級生である、

サキちゃん(黄藤咲希)、

クマくん(大熊陽太)、

モリシタくん(森下賢一)

の3人がメインとなります。

 

 

サキちゃんをめぐる

三角関係の行方を、

クマくん視点だったり

ライバル・モリシタくん視点で。

…あるいはサキちゃん視点でも

綴っていきたいです。

 

ツクシくん世代の妄想リンク集はコチラ♪

 

 

 

 

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今回はモリシタくん視点。

クマくんとサキちゃんのデートを目撃し

心は曇り空なようですが、

一旦脇に置いて、小1の

バレンタインを振り返ります。

 

 

 

******************

 

 

オリキャラ妄想

「バレンタインの恋模様」

 

 

 

(やっぱり黄藤さんは、
大熊が好きなのかな)
先日遊園地で会ったとき、
黄藤さんは大熊と2人で来ていた。

剣道部にも入って、合宿中も喋って。
最近距離が縮まったような
気がしていたけど、

やっぱり家庭環境に引かれたのかな。
それとも、そもそも俺にチャンスなんて
初めからなかったのか……。
 

 

 

「……っ。」

「―――ん!?」

 

小さな子供に

服を引っ張られた事で、

自分がバイト中だという事を思い出す。

確かこの男児は、

トイレトレーニングの最中だっけ…。

 

「きょうもトイレ行きたいって

教えてくれたな。偉い偉い」

トイレの前まで付き添ったあと

頭を撫で、次は言葉で

伝えてみようと提案する。

こいつの詳細を知らない

保育者に囲まれた場合、

上手く伝わらずに失敗するかも

しれないからだ。

(こうして子どもの気持ちを

考えられるようになったし、

俺の失敗も無駄じゃなかったか)

トイレにまつわる過去の失敗を

思い出し、苦笑していると。

 

「ケンちゃーん!

この宿題わかんなーい」

「ごめんケンちゃん!あたしもっ」

「あー。はいはい」

 

高校入学後、

将来の勉強もかねて

かつてお世話になっていた託児施設で

短時間バイトを始めたのはいいが、

俺と在籍期間がかぶっていた

子どもが数人いるせいで、

俺は“ケンイチ先生”じゃなくて

“ケンちゃん”と呼ばれている。

散々世話になった

ベテランの保育スタッフさんも

そう呼ぶ手前、もう抗えないものだと悟り

受け入れている。

 

 

子ども達の宿題を見ている最中、

託児施設の人間とは違う

呼び名で呼ばれる。

 

「おーっす!ケンイチ」

「また来たの。近藤さん」

「“元近藤”、な!」

乳児と、降園中と思われる

制服姿の幼児を連れた

20代の母親が俺を呼ぶ。

この託児施設は、
児童館や保健所など
福祉関連の総合施設の
一画を借りて運営されている。
そのため、児童館で遊ばせる

一般の利用客と会う機会もあった。

 

「アンタ、きょうも

バイト頑張ってるんだな。偉い偉い」

「あ!俺の台詞を真似すんなよ」

「てか、すっかりイケメンに育ってェ…。

やっぱ、アタシの言うとおりだったデショ?

残念ながらアタシは夫も子もいるから、

デート出来ないけど。ごめんね?」

「いや。俺頼んでねえし」

 

 

相変わらずマイペースな発言を

聞き流しながら、

この、“元近藤”さんと

会ってまもない、
小学1年生の頃の
バレンタインを思い出す。






あの年のバレンタインは、
日曜日だった。
託児施設では、ミツキ先生は
外へボール遊びに出掛けていて
俺は室内で、親父に買ってもらった
算数のドリルに取り組んでいたが…。

「ねえねえ。
ケンイチは、コレ好き?」
隣に座ったシハル先生が、
俺のドリルに“チ〇コ”と
書きやがった。
「なっ…!何て事書いてんだよ…!」
「エーッ?
今日はバレンタインだから
チョコレートの話しようと
してたんだけど」

「……え?」
「逆に、それ以外に
ナニがあるのさ?
ケンイチってば
エッチなんだからー」
「ち、ちげーよ!」
顔を真っ赤にした俺を見て、
シハル先生はけらけらと笑う。

いま思えば、シハル先生は毎年
この日に限っていたずらしたり
絡んでくる事が多かった。
きっと、ミツキ先生が
モテるのが面白くなかったんだろう。


そこへ、さらに厄介な人間が現れる。
「ヤッホー!ケンイチーッ」
「わっ…!」
いきなり後ろから抱きつかれ、
俺は硬直する。

「こら近藤!
子どもにまで手ェ出すなよ。
しかも預かってる子を…」
「エーッ?だってアタシ、
スタッフじゃなくて
通りすがりの近藤さんだしー」
そしてシハル先生に近寄り、
「硬いのはチ〇コだけに
しとけってー」
あっけらかんと言い放つ。
きっと美人な人なのに、

この濃すぎる性格のほうが
目だってしまっている気がする。
 

「バカかお前!
子どもの前だぞ!?」
「でも、ケンイチにも
ついてんでしょ?」
「ンな事子どもに聞くなっ!
ってか、なんでここにいるのさ?
この前来た事は、
ミツキから聞いてたけど…」
「アタシ5人きょうだいの
2番目なんだけど。
4番目と5番目がまだ小さいから
ママの息抜きタイムの間、
児童館に連れて来たの」

シハル先生とミツキ先生の
友達だという、この
近藤さんという女子高生は、
年長組の弟と年少組の妹を連れて
遊びに来ていた。

「ほら!あのぽっちゃりした
男子がライムでェー。
ぷくっとした女子がマリンだよ」
「お前、名前ミキだったよね?
趣向違い過ぎない???」
「ああ!ライム達2人は
ママの子だからねー」
「……え」
「ママはねェ、アタシの
お父さんの、2番目の奥さん!
アタシを産んだお母さんは
8年前に出て行ったからさー」
「そうなんだ。
お前も、色々大変だねえ…」

「でもママ優しいし。

仲良くやってるよー」

(近藤さん、寂しくないのかな)
ドリルをやりながら
黙って2人の会話を聞いていたが、
気になって口を開く。



「ねえ。お母さんいなくなって、
寂しくなかった?」
「…あはっ。
ケンイチってば優しー♡」
質問すると、
へらへらと笑って説明する。

「お母さんはいつもアタシを
無視してたし、
いなくなって清々したよ」
「無視したの?」
「お母さん、男の子が3人
欲しかったんだって。
だから兄ちゃんと3番目は
可愛がられてたけど、
アタシはいらなかったんだってさ」
近藤さんの言葉を聞いて
悲しくてたまらなくなった。

「近藤さん、かわいそうだ…。
きょうだいが可愛がられてるのに
……うわっ!」
「やーん♡
ケンイチってば可愛いー。
ちゅーしたげよっか♡」
「こら!子どもを困らせるな」
シハル先生に止められ、
なんとか俺は無事だった。



「あーでも、ケンイチって
イケメン君だからモテるっしょ?
こんなオバサンにモテても
嬉しくないかァ」
「モテないよ。チビだもん」
ドッジボールが得意だから
男子の友達はそれなりにいたが、
当時はクラスで一番小さい俺は
女子から笑われる対象だった。

「そっかぁ。
ケンイチは顔は大人びてるけど
身体が小さいからかな?
アンタは背が伸びる
10代半ばからモテると見たッ!」
「嘘だ…」
まるで信じていない俺に、
シハル先生が優しく囁く。
「ケンイチ、信じていいと思うよ?
近藤は、イケメン見抜く力だけは
天才的だから」
「そうそう!アタシ、ヤルなら
イケメンとしかシないって決めて」
「こらこら!
―――とにかく、
僕も中2までチビだったけど、
今じゃこんなに背が伸びたし。
ケンイチだってきっと伸びるよ」
「シハルちんの言うとおり!
コイツ背もデカイうえにチ〇…」
「いちいち下ネタ言うな!」
「???」

(近藤さん、さっきからたまに
意味のわからない事言うよな)
当時の俺は首をかしげていたが
物心ついてから
意味を理解したときに、
初めてこの人のぶっ飛びっぷりを
理解したっけ。



焦りっぱなしだった
シハル先生だが、
バレンタインの話題で仕切り直す。
「じゃあさ。ケンイチはチョコ
もらってないの?」
「朝、かあさんからもらったよ。
ケンジには内緒だよ、って」
この日病院へ行って
親父と看病を交替する母さんは、
出掛ける前に渡してくれた。

「よかったじゃん!
もう食べた?
お父さんと帰ってから?」
「………。わかんない。
俺“だけ”食べて、いいのかな…」
「ケンイチ……」

首を振ると、シハル先生は
にこりと笑って手を差し出す。



「食べないならそのチョコ、
僕にちょーだいっ」
「…え!?」
目の前に出された手を見て、
困惑する。

「なァに、タダとはいわないよ?
シハル先生はモテるからねえ、
チョコをいっぱいもらってるんだ。
その中から10個
好きなやつあげるから、
ケンイチのチョコちょうだいよ」
「い!いやだよっ」
意地悪そうに笑うシハル先生に
必死になって拒んだ。

「だって!
かあさんからのチョコは
ひとつだけだもん!
他のはいらないよ」
本当に取られるんじゃないかと、
このときの俺は心から焦ったが、
…それはシハル先生の
“計算”だった。

「そんなに大事なチョコなら、
ちゃんと食べな」
「っ」
「お母さんはケンイチが大好きで
くれたんだと思うよ?」
「うん……っ」
こくこくと頷くと、
近藤さんが大声で割り込む。


「いい事言うねシハルち~ん!
普段はただのヤリ〇ンなのに」
「あーもう!マジでお前帰れっ」
シハル先生に怒られても、
近藤さんは気にせず
俺のほうを向く。
「良かったね、ケンイチ。
アンタ、お母さんから
ちゃんと愛されてるじゃん」
「そう?なのかな」
「そもそも、置いていく
アンタの事が心配だから
ココに連れて来てるんだよ?
だから間違いない!」

(大好き。なのかなあ……)
半信半疑だったけど、
シハル先生と近藤さんが
力強く言ってくれたから。
思わず嬉しくなって
笑みがこぼれた。



「よし!じゃあ近藤さんも、
チョコをあげよう」
「こら!預かってる子どもに
勝手に食べ物を…」
「だってアタシ、通りすがりの
近藤さんだもーん」
お店の包装紙で綺麗に包まれた
チョコレートを受け取ると、
手を握られた。

「いーい?これは
イケメンに成長するアンタへの
先行投資なんだから」
「センコートーシ?」
「高校生くらいになって
イケメンに育ったら、
アタシとデートしてねえ?」
「その頃高校生に手を出したら、
お前捕まるからね!」

こうしてわいわいと喋っていると、
お迎えの時間が近づき
外遊びのメンバーが戻ってきた。


「あ!黄藤くーん」
「近藤さん来てたんだ?お疲れ様」
「いつも買い物に

付き合ってくれてありがとね!
これ、プリンセスカフェの限定品」
「うわ…いいの!?
これ、妹たちが欲しがってたけど
俺たちが行ったとき
ちょうど品切れだったんだよ。
ありがとう!」
おそらく、
この日の目的だったであろう
ミツキ先生へのプレゼントを渡し
近藤さんは離れていく。
「アイツ、バレンタインチョコは
渡さない主義だったはずなのに。
どういうつもりなんだか…」


(聞かなかった事にしよう。)
このとき、何らかの事情を
察した俺は、シハル先生の呟きに
気づかぬふりをして親父と帰った。




そして、
高校1年生のバレンタイン当日。
当時のシハル先生たちの
年齢に近づいたいま、
気持ちがわかるようになった。

「俺はあのデートで、
サキの肩を抱いたぜ?
すげえイイ匂いするんだ」
「へえ。そう…」
「チョコもサキに作ってもらうから
可哀想なモリシタくんに
このチョコやるよ」
家庭科の授業で女子が作った
男子全員に配られたチョコレートを
勝ち誇った顔で置かれる。

現在はケンジも俺も、両親から
2つずつチョコレートを貰っている。
親父がキモイ点はともかく、

家族から愛されているのに、

それ以上誰かからの
“たったひとつのチョコレート”を
求めるなんて。

俺も贅沢になったよな……。

「お前の事情は
どうでもいいけど……」
どうでもよくねえが、
ひと言釘を刺してやる。
「作ってくれた女子たちがいる
目の前で、よくも堂々と
言えたモンだな。失礼だろうが」
「とッ!……とにかく!
これはお前にやるから!」
女子たちの冷たい視線に気づくと
大熊はそそくさと
自分の席に戻った。



「あ。これ、このまま
俺がもらってもいいかな」
自分だけ2個もらう事に躊躇うが、
突き返すのも失礼だろう。
まだ見ている女子に声をかけると、
作り過ぎたから
もらってくれと言われた。
「あ!私も作り過ぎたの。
モリシタくん食べてくれない?」
「私も!」
「え?…ああ。ありがとう」
続々と女子が置いていき、
気が付くと机の上に
10個のチョコレートが
積み上げられていた。

(俺は、余り物処理班かよ)
毒づくが、こんなに貰える機会は
今後なかなかないだろう。
有難く頂く事にするが……。





リュックに入れた
このチョコレートが、
この日起こる衝撃的な出来事の
引き金になるとは、
このとき想像もしなかった。




 

 

 

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ひとつ前の記事にて

クマくんorサキちゃん視点で

迷っていると書いたにょへ子。

 

ホワイトデー付近の

公開を予定していました

このモリシタくん視点を、

急きょバレンタインのくだりに

差し込みました(笑)

 

 

 

モリシタくん、

あれこれふざけ合いながらも、

シハル先生の事が大好きです^^

ってか、近藤さんの登場によって

チャラいシハル先生が

真面目くんに見えるという(笑)

 

シハル先生も、

かの無自覚人間に

振り回されてきた人なので、

そういう意味では分かり合える

同士となるのか!?( ̄▽ ̄)

 

 

 

 

今度こそ、

次がクマくん視点か

サキちゃん視点を公開します(笑)

 

 

それではお付き合いいただき、

ありがとうございました(^^)