長々とお付き合いいただいた「腹黒あひる物語」ですが今日で終わります。

 

「ポンコツ引越」してたため、だいぶ空いてしまいました。

※コメントお返事しました♡後から読んで置くだけWi-Fiの落とし穴も分かったのでぎゃなこさん読んでね!

 

前回の続きです。

 

 

 

ここから28話です↓
 
夕方6時前、
いつものようにバイトへ行った。
 
「どうぶつ学習塾」は
電話の着信音が鳴り響き
あきらかに騒然としていた。
 
何これ…
 
通常「どうぶつ学習塾」は
私達から子供に電話をするため、
電話がかかってくる音はしない。
 
着信音でうるさいなんて
初めてのことだった。
 
 
りんご「なんでこんな電話鳴ってるの?」
セキセイインコ黄「保護者のクレーム!バイトは出ちゃダメだって!」
 
 
6~7人いる社員は
みんな電話に出て通話中。
ひたすら謝っている。
 
激しく電話が鳴り続ける中
とりあえず席につくと、
答案に丸を付けていたヒツジちゃんに言われた。
 
 
おひつじ座「誰かさんのせいでホントに大変なことになったよね~」
セキセイインコ黄「やめなよ。そういう言い方。」
おひつじ座「だってそうじゃん。」
 
 
エースしまうま君が
突然バイトを辞めてから
2週間近く経とうとしていた。
 
その間私達は
少しずつ失敗していた。
 
まず最初のミスは
モンスターペアレンツの子供たちを見落としてしまったことだった。
 
いつの時代にも
「ウチの子を最優先で!」
という厄介な親たちがいて、
 
そういう親の子供は
これまでもずっと
最優先で電話することになっていた。
 
いわゆる要注意児童として
ファックスに名前が貼ってあり
約30名ほどいたと思うけど、
 
その子の答案が届いたら
順番全部すっ飛ばして
最優先の束に入れるのだ。
 
しまうま君なら
要注意児童の名前と筆跡が
全て頭に入っているから
確実に分類できた。
 
でも、しまうま君が辞めた後
FAX番をしていた社員二人は
何人も何日も見逃してしまった。
 
無理もない。
アナログなあの時代、
目視でやるしかなかったし、
同姓同名の子供もいる。
 
そんなわけでだんだん
モンスターペアレンツ達が
「答え合わせが遅い!」と
怒り狂って電話してくるようになった。
 
問題なのはその後で、
要はそのクレーム対応に
社員が取られてしまって
指令を出す人がいなくなってしまった。
 
どの束からやればいいのか、
丸付けた方がいいのか、
電話した方がいいのか、
 
我々バイトは右往左往し
次第に処理件数が落ちて
 
当日中に
電話できなかった答案が
さらにたまっていった。
 
 
翌日は前日未処理の束から
手をつけるんだけど
日を追うごとにその束が増え、
収拾つかない状態になって
 
そうしてる間にも
今日の答案がどんどん届くし
 
「昨日電話がなかった!」
と普通の親まで
怒って電話してくるから
 
そうするとまた
そのクレーム対応に
社員を取られてしまって
司令塔がいなくなる。
 
今思えば
全体を見る社員を一人残して
クレーム対応すべきだったと思うけど
 
なんだかもう
戦場みたいになっていて
 
我々バイトは
その辺にある答案から
手当たり次第
頑張って電話したんだけど
 
しまうま君みたいに
兄弟の答案を見つけるとか
お風呂の時間をはずすとか
そういう能力は当然ない。
 
前と同じようには
どうやっても進まなくて
未処理が増えるばかり。
 
それでも電話するしかない。
私は必死で電話した。
 
 
りんご「あひる先生だよっ!昨日は電話出来なくてごめんね!今から昨日の答え合わせ出来るかな?」
ニコ「うん!いいよお~」
 
子供は普段通り可愛い。
でもそこで親が出てくる。
 
ちょっと変わって!
という親の声が聞こえて
 
真顔「最近どうなってるんですか!?昨日どころか、一昨日も電話かかってきてないんですけど!」
りんご「も…申し訳ありません。」
 
真顔「前は夕飯前にちょうどかかってきたじゃないですか!」
りんご「申し訳ありません。」
 
ムキー「生活リズムが崩れて大迷惑なんですけど!」
りんご「申し訳ありません。」
 
ムキー「アナタねえ!謝れば済むと思ってるの!?さっさと答え合わせしてよ!今日は早く寝かせたいのよ!一昨日と、昨日と、今日の分、全部まとめて今やって!」
 
 
まずい…
手元には昨日の答案しかない。
 
一昨日の答案と今日の答案は
この積みあがった紙の束のどこかにあるんだろう。
 
でも、すぐには
見つけられない( ;∀;)
 
 
りんご「申し訳ありません。手元に昨日の答案しかなくて…」
ムキー「はああ?!」
 
りんご「取り急ぎ、昨日の答え合わせをさせていただいて、見つかり次第もう一度お電話を…」
ムキー「何言ってんの!?何回も電話かけてこられたら迷惑!っていうかお兄ちゃんの分も今やってよ!」
 
 
ここの家、兄弟いるんだ…!
全然気付いてなかった。
 
しまうま君なら
兄弟も全部記憶してるけど
凡人はそうはいかない。
 
子供はたくさんいるから
余程めずらしい名字とか
面白い兄弟じゃないと覚えてない。
 
 
りんご「申し訳ありません。今は明くんの昨日の答案しか手元になくて…」
ムキー「はあああ!?こんな塾、私が丸つけた方がよっぽどマシよ!話にならないわ!上司に代わって!」
 
 
そう言われ社内を見回す。
社員は全員、
他の電話に出ている。
 
たぶん全部クレーム対応。
いつ終わるか分からない。
 
 
りんご「申し訳ありません。上司は他の電話に出ておりまして…」
ムキー「アナタねえええ!ふざけんじゃないわよ!5分後に上司から電話して!」
 
 
5分後に電話…
社員が空くか分からない。
 
 
りんご「申し訳ありませんが、5分後に折り返すお約束は出来かねま…」
ムキー「はああああ!?何なのアンタ!!絶対に上司から電話ちょうだい!5分後よ!」
 
 
切られてしまった。
電話中のパンダ先生(社員)に伝言メモを渡しにいく。
 
上手く対応できず
余計に怒らせてしまった。
 
たぶん五分後に
社員は電話できない。
 
そしたらあの親は
怒って電話をかけてくるかもしれない。
 
そうか。
電話が鳴り続けてるのは
こういうことか。
 
そして改めて気付く。
この電話だけで
20分も使ってしまった。
 
通常答え合わせは5分。
20分なら4人終わるはず。
 
でも今、私は20分も話して
結局1人も終わっていない。
全く進んでいない。
 
その間にも
どんどんFAX答案が届く。
 
でもそれを
さばける人がいない。
 
相変わらず社内は
電話が鳴り響いている。
目の前の電話も鳴っている。
 
気を付けて発信操作しないと
受話器を取った時
電話を受けてしまいそうになる。
 
バイトの我々は
その電話に出ても何も出来ない。
 
我々はただ子供と話す人員で
学習塾の料金すら良く知らなかった。
返金とか割引とか何も話せない。
 
 
おひつじ座「私もう辞めよっかな~」
ハリネズミ「ねえ、どの束から電話すればいいの?」
カエル「分かんないよ~」
猿「しまうま君がいればね。」
おひつじ座「ほんと誰かさんのせいで。」
 
 
針のむしろだった。
私達は答案1枚ずつ電話して
終わらせていく以外ないんだけど
 
電話すれば
親につかまって怒鳴られる。
 
そう思うと
大学生バイトの私たちは
手が止まりがちで、
余計に進まないという悪循環。
 
 
しまうま君がいないと
こんなことになるんだ…
 
 
ひたすら申し訳なかった。
私がもっと上手く別れれば。
 
クローバークローバークローバー
 
 
せめてもの罪滅ぼしで
私は必死で電話をかけた。
保護者に怒られながらも
ひたすら電話をして、
 
夜9時前
「最後にもう1枚だけ…!」
と思い電話をかけた。
 
 
りんご「あひる先生だよっ!遅くなってごめんね。もう眠たい?大丈夫?」
zzz「待ってたよお!ちょっと眠いけど頑張る~」
 
 
海くんが送ってくれたのは
国語の答案だった。
 
上半分に物語が書かれ、
下半分に設問がある。
 
りんご「じゃあ今日のお話、音読してみてくれる?」
 
その物語は
「ごんぎつね」だった。
 
海くんの澄んだ声が
電話口から聞こえてくる。
美しい文章を読む子供の声。
心が洗われるようだった。
 
 
やばい。
泣いちゃう。
 
 
真顔「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。」
 
張り詰めていた糸が
プツリと切れ
とめどなく涙があふれてくる。

 
真顔「先生?泣いてるの?」
りんご「…上手に読めたね。」
 
 
何の涙なのか
自分でもよく分からない。
でも、泣けて泣けて仕方なかった。
 
答え合わせが終わって
電話を切ったあとも
まだ私は泣いていた。
 
 
パンダ「あひるちゃん大丈夫?保護者に怒られた?」
 
 
気付いたら隣に
パンダ先生(社員)が
立っていた。
 
 
パンダ「…あひるちゃんのせいじゃないから。今回のことがなかったとしても、しまうま君はいずれ就職していなくなる人だったんだから、そのための準備をしてこなかった会社が悪いんだよ。」
りんご「本当にすみません。」
 
 
夜9時をまわり
バイト達が帰り始める。
 
電話と言えば
自宅の固定電話の時代。
 
夜9時をすぎたら
社員もバイトも
さすがに電話できない。
 
社内は静けさを取り戻し、
今日も未処理の答案が
何束も積まれて残っていた。
 
 
パンダ「ここのバイトもう居づらいでしょ、辞めたかったら今日で辞めていいよ。」
 
 
え…
いいの?本当に?
 
この戦場から
私だけ逃げてもいい?
 
 
そんなのダメだと思いながら
逃げられるなら
すぐにでも逃げたかった。
 
 
りんご「…お世話になりました。」
 
 
内心ものすごくホッとした。
明日から来なくていいんだ。
針のむしろから解放される。
 
 
パンダ「まあ仕方ないよ。。。そういえば前さ、就活の準備で聞かれたじゃない?自己分析とか他己分析とか。」
りんご「あ、はい。」
 
 
この時私は大学3年生で
年明けからの就活に向け
パンダ先生に
相談に乗ってもらったりしていた。
 
そう、ついこの間まで
パンダ先生と私は仲良しで
ここは楽しいバイト先だった。
 
 
パンダ「私が思うあひるちゃんはね、『大抵のことで78点取れるけど1番にはなれない人』なんだよね。」
 
 
この言葉を
鮮明に覚えている。
 
図星すぎて、
心に刺さりすぎて、
 
この後20年引きずった、
呪いの言葉。
 
でも、ものすごく的確に
私を説明している言葉。
 
 
パッと見、合格点に見える。
でも実は足りてなくて
何もかも中途半端で
だから本物になれない。
 
 
本当に言い当ててる。
今もそうなんですよね。
 
お菓子作りも編み物も
ブログ、仕事、副業も全部
そこそこの人!笑
 
まあ今は自分の中で
整理がついたんですけど
 
当時の私は
あまりのショックで
言葉が出てこなかった。
 
 
パンダ「あ、ごめんね。大学生相手にひどいこと言ってどうかしてるよね。じゃあ元気で。」
 
 
こうして私のあひる人生←
は終わりを告げたのでした。
 
 
クローバークローバークローバー
 
 
コメントで
「去り際に人間性が出る」
と書いてくれた方がいましたが、
 
しまうま君もパンダ先生も
あんなに楽しい人だったのに
こういう風になるんだと…
そう思ったのを覚えています。
 
だけど間違いなく私も
そっち側の人間なんです。
 
Fくんみたいに
「他に行ってもいいよ。」
「幸せならそれでいいよ。」
なんて言えない。
 
私はFくんみたいになれない。
だからこそ惹かれたのかな?
 
なので何て言うか…
しまうま君もパンダ先生も。
気持ちが分かるし好きです。
たまらない気持ちになる。
 
去っていく人に
小石をぶつけたい。
ちょっとだけ。
 
私の中にも
そういう部分が確実にある。
 
パンダ先生の小石は
かなり痛かったけど!笑
 
まあそんなわけで…
若かりし頃の思い出話に
長々とお付き合いいただき
ありがとうございました!
 
劇団員Fくんとは
何事もなかったかのように
この後も付き合いました~
大好きだったんでね(≧∇≦)
 
まあ、数年後に
またすったもんだの末
別れたんですけどねw
 
ある時私はあひるで、
恋を頑張った時期もあって
でもやっぱり失敗ばかりでした!
 
そんなあひる腹黒物語、
おしまい(*´∇`*)!

 

 

ちょうちょ追伸:大感謝ちょうちょ

コメントが本当に力になりました!

楽しみと言ってくださった方のおかげでブッチせずに済みました!

ありがとうございました(*´∇`*)