SORRY, WRONG NUMBER

レオナは心臓が悪く、寝たきりではないが、ほぼ自室のベッドの上で生活している。電話がかかってくる。しかしその電話は混線で、しかも誰かを殺す指示の電話であった。
いろいろなところに電話をかけて調べて行った。すると殺害のターゲットは自分であることが分かった。


製作:1948年,脚本:ルシル・フレッチャー,監督:アナトール・リトヴァク


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)

レオナ・スティーヴンソン(バーバラ・スタンウィック) 主人公、旧姓コターレル
ヘンリー・スティーヴンソン(バート・ランカスター) レオナの夫、副社長
ジェームズ・コターレル(エド・ベグリー) レオナの父親、製薬会社社長
サリー・ロード(アン・リチャーズ) ヘンリーの昔の恋人、旧姓ハント
ピーター・ロード(ジミー・ハント) サリーの夫、検事局勤務
フィリップ・アレキサンダー(ウェンデル・コーリー) レオナを診ている医師
モラノ(ウィリアム・コンラッド) 犯罪組織のメンバー
ウォルドー・エヴァンス(ハロルド・ヴェルミリエー) 社員、スタテン島アジトの所有者
フレッド・ロード(リーフ・エリクソン) ピーターの同僚
ジョー(ジョン・ブロムフィールド)ビーターの同僚
ハープフリアン(ポール・フィエロ) ビーターの同僚
エリザベス・ジェニングス(ドロシー・ニューマン)ヘンリーの秘書
ウィルキンス・ミネラル(ホームズ・ハーバート) 結婚前にレオナを診た医師

◆ 補足

レオナの母親は心臓病を患って死亡した。ヘンリーとレオナが住んでいる家は豪邸だが、鉄道のすぐ近くにあり、音がやかましい。

スタテン島はニューヨークを構成する島。鉄道や車でも行けるがフェリーも運航している。

本作の見どころは、殺人指示の混戦電話が自分をターゲットにしたものであるというサスペンスである。
しかしバーバラ・スタンウィックが演じるレオナのキャラクタも見どころとなっている。バーバラは、善人、悪人、コメディなんでもこなす俳優で、本作ではレオナの異常な性格を熱演している。very good。
 


■ あらすじ

◆ レオナに混信電話

ヘンリーが約束の六時になっても帰ってこない。看護師やメイドはすでに帰らせた。会社に電話をかけた。しかしヘンリーにはかからずに、他人の声が聞こえてきた。

それはなんと殺害計画の打ち合わせであった。

実行時刻は、今夜11:15、ターゲットは女性。そばに鉄道があるので列車が通って音が目立たない時に実行。

さらに苦しまない方法を使う。物取りに見せるために宝石類を奪う。

「住所は」と言ったところで電話が切れた。

レオナは警察に電話をかけて知らせたが、冗談だと相手にされない。

◆ レオナとヘンリーの出会い

サリー・ハントはもともとヘンリー・スティーヴンソンの恋人だった。

しかしレオナは、ヘンリーと会ったとたん好きになってしまった。ヘンリーとサリーがダンスをしているところに割り込んだ。

その時にダンスをしただけではなく、(ひどい言い方をすれば)ヘンリーに付きまとった。

ヘンリーは断りの言葉をはっきり言い、サリーはレオナにクレームをつけたが、ひるまなかった。

レオナは大金持ちの娘であり、ヘンリーは貧しい家庭の出であったことが理由かどうかは不明であるが、ヘンリーはレオナと付き合い始めた。

父親のジェームズも反対した。主たる反対理由はヘンリーの出自である。しかしジェームズが反対すると、レオナは興奮し、心臓を抑えて苦しそうな顔をするので、それ以上強くは言えなかった。

ヘンリーとレオナは結婚した。

◆ レオナの「病気」

レオナは自分が思い込むと、それ以外のことは考えられない。他人の事情は考慮せずに(本当は考慮できない)、思っていることを実現しようとする。

家が裕福なので、それなりにはレオナの我がままが通用してきた。

ヘンリーとの結婚も同様の展開をした。サリーがヘンリーを諦めた理由は不明であるが、とにかくレオナは自分の我がままを通した。

結婚してからも同じような問題が発生した。ヘンリーとレオナの意見が違うと、レオナは絶対に自分の意見を通そうとする。

そして自分の意見が通りそうもないと、レオナは心臓を抑えて苦しんだ。レオナの母親も心臓病でなくなっている。

レオナの心臓病は、フィリップ・アレキサンダー医師の診断によると心因性のものである。

ジェームズは、レオナがこのような状態であったので、レオナを甘やかして育ててきた。

ヘンリーも結婚してしばらくすると、何度かのトラブルで、レオナのことを認識しレオナに慎重に接するようになった。

◆ ヘンリーの不満

ヘンリーはレオナと結婚しジェームズの会社に就職し副社長となることができた。

しかし自分の能力・奮闘の結果ではない。これが不満である。「自分の力を発揮した」という満足感がない。

それで独立しようとした。しかしレオナは、例によって自分の考えの及ばないことには反対し、またヘンリーの気持ちを理解することもできない。ついでに言っておけば、レオナの実家から引っ越すときも、それなりのトラブルがあった。

ヘンリーは同業者に接触したが、その相手はジェームズの会社と多額の取引をしており、ジェームズにばれてしまった。

◆ サリーからの電話

サリーはヘンリーと別れた後、検事局に勤務するピーター・ロードと結婚した。もう八年である。

ピーターが新聞を見て「お前の昔の恋人がでている」とサリーに言った。ピーターがその記事を切り取るので、サリーが聞くと「今捜査していることと関係がある」とのこと。

その後、ピーターにかかってきた電話を盗み聞きして、ビーターたちがスタテン島に行くことが分かった。「印がついた100ドル札で5000ドルを用意しろ」と話している。

サリーはヘンリーを訪ねて話を聞こうとしたが、途中で割り込みが入るなどして、ヘンリーからは情報は得られなかった。

サリーは、スタテン島に行くピーターたちを尾行して、フェリーでスタテン島に渡った。彼らが行ったのは、ほとんど人気がない海岸だった。

海岸のそばの小さな家に入った。その隣にも、古ぼけた家があった。そちらには「ダンスタン・テラス20番地。立ち入り禁止。ウォルドー・エヴァンス」の表示があった。

エヴァンスの家から、指向性の強い光が海に向かって放たれた。それは点滅した。沖からモーターボートが現れて岸に着いた。そこから一人の男が上陸しエヴァンスの家に入った。

その夜、ピーターに電話がかかった時、内容は不明だが「ヘンリー・スティーヴンソン」の名前が何度も繰り返された。

内容はまだよく分からないが、サリーはレオナと連絡を取って分かっている範囲で説明し、ヘンリーに何かが発生していることを知らせた。これはレオナが混線電話を受けた後。

レオナとは恋人を取られた間柄ではあったが、不穏なことが発生していることの方が気になった。

◆ ヘンリーの不正行為

サリーとの電話の後、ヘンリーから電話が入った。「明日ボストンで年次総会がある、帰宅は日曜日の朝」。伝えるのを忘れていたとのこと。

その後ウォルドー・エヴァンスから電話が入った。サリーから聞いた名前である。

エヴァンスは、最初から丁寧に説明した。

1月。エヴァンスが勤務しているシセロの工場に、突然ヘンリーが訪ねてきた。帰りはヘンリーの車に乗せて送ってもらったが、下車時にヘンリーからある話を持ち掛けられた。端的に言えば、会社の薬品を横流しする話である。

エヴァンスはいったん断ったものの、結局その話に乗って不正を始めた。薬品を横流しし、最終的にはモラノという男に渡す。ヘンリーからは報酬を受け取った。

半年ほど、その行為を続けたが、エヴァンスはベイヨン工場に転勤することになった。それを機会にヘンリーに「もう止めたい」と伝えた。

しかしヘンリーは「これを機会にモラノを外してやる」と言い張った。その後はエヴァンスの受取額が増えた。

◆ モラノに脅される

しかしこれをモラノがかぎつけて、二人の前に現れた。今までの分け前を渡すように要求するとともに、さらに高額の慰謝料を要求した。20万ドル。

モラノと一緒に数人の男がきて拳銃を構えている。そしてモラノの後ろには凶悪な組織が控えている(らしい)。

ヘンリーは「そんな金はない」と言うが「裕福な義父と妻がいる」。「金は自由にならない」と言うと「お前の妻は病気で、命も危ない、生命保険に入ってるだろ」と脅した。

ヘンリーはモラノが出した契約書に署名した。期限は90日後。ヘンリーが脅されたとはいえ妻の保険を当てにして署名したのは納得しがいたが、ともかく署名した。

しかし、病気が重くなっているとはいえ、レオナはまだ生きている。エヴァンスは、署名の期限が迫っていると言う。本日。

最初の混線電話の殺害のターゲットはレオナ自身であることを認識した。

◆ ラスト

もう11:15が近づいている。レオナはエヴァンスから聞いた番号に電話した。しかしそこは死体安置所だった。

外に男がいる。窓から侵入した。

レオナの部屋のカーテンが揺れている。電話がかかった。ヘンリー。「窓を開けて、助けを求めろ!」と叫ぶ。しかしレオナは動けない。電話が切れた。

階段を上ってくる音がする。ドアを開ける音がした。外を列車が通った。

ヘンリーはもう一度電話した。男の声で「間違いです/Sorry, wrong number」と応答。

 


■ 出演作

バーバラ・スタンウィック
(1937)ステラ・ダラス/Stella Dallas
(1939)大平原/Union Pacific
(1941)群衆/Meet John Doe
(1944)深夜の告白/Double Indemnity
(1945)クリスマス・イン・コネチカット/CHRISTMAS IN CONNECTICUT
(1946/呪いの血/マーサの奇妙な愛情/The strange love of Marth Ivers
(1947)いのち短し/The Other Love
(1948)私は殺される/SORRY, WRONG NUMBER
(1947)恐怖の叫び/Cry Wolf
(1957)四十挺の拳銃/Forty Guns
(1940)思い出のクリスマス/Remember the Night
(1956)マーヴェリックの女王/烙印なき男/The Maverick Queen
(1955)ビルマの逃亡劇/Escape To Burma
(1953)人妻の危機/Jeopardy
(1941)新妻はお医者さま/You Belong to Me
(1939)大平原/Union Pacific
(1957)荒野の追跡/TROOPER HOOK
(1950)テルマ・ジョーダン事件:情事の代償/The File on Thelma Jordon
(1937)脅すギャングと助けるギャング/Internes Can't Take Money
(1947)二番目の妻/The Two Mrs. Carrolls
(1942)三人姉妹/The Gay Sisters
(1953)吹き荒ぶ風/Blowing Wild
(1964)ナイト・ウォーカー:夜歩く者/The Night Walker
(1954)バッファロー渓谷の戦い:牛飼いの女王/Cattle Queen of Montana
(1935)娘無軌道旅行/Red Salute
(1947)カリフォルニア独立の陰謀/California
(1970)呪われた屋敷/The House That Would Not Die
(1957)出世する気がない刑事と夫の出世を望む妻/Crime of Passion

バート・ランカスター
(1947)真昼の暴動/Brute Force
(1947)暗黒街の復讐/I Walk Alone
(1948)私は殺される/SORRY, WRONG NUMBER
(1949)裏切りの街角/Criss Cross
(1952)真紅の盗賊/The Crimson Pirate
(1953)白人酋長/His Majesty O'Keefe
(1954)アパッチ/Apache
(1957)OK牧場の決斗/Gunfight at the O.K. Corral
(1960)許されざる者:妹は先住民の娘なのか?/The Unforgiven
(1960)エルマー・ガントリー/魅せられた男/Elmer Gantry
(1951)復讐の谷/VENGEANCE VALLEY
(1961)明日なき十代/The Young Savages
(1950)美女と老人と偽札/Mister 880
旅路:シーズンオフの海辺のホテルで展開する人間模様/Separate Tables
(1960)許されざる者:妹は先住民の娘なのか?/The Unforgiven
(1956)空中ブランコ:驚異の三回転/Trapeze
(1948)殺人犯と看護師/Kiss the Blood Off My Hands