■ Double Indemnity
保険外交員のウォルター・ネフは自動車保険の更新で訪問したが、妻のフィリス・ディートリクスンから障害保険の話を提示された。支払いは自分がするという。
フィリスの悪意は明確で、その場で断った。しかし再度フィリスと会い惹かれた。歯車が回り始めた。もう止められない。
二人は計画を立てた。予めフィリスの夫を殺害し、列車からの転落事故を装う。


製作:1944年 脚本:レイモンド・チャンドラー、ビリー・ワイルダー 監督:ビリー・ワイルダー  


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 Mr.ディートリクスン(トム・パワーズ) 会社経営者
 フィリス・ディートリクスン(バーバラ・スタンウィック) ディートリクスンの妻
 ローラ・ディートリクスン(ジーン・ヘザー) ディートリクスンの娘。フィリスは継母深夜の告白/バーバラ・スタンウィック、フレッド・マクマレイ/保険金殺人、予め殺して鉄路に放置
 ウォルター・ネフ(フレッド・マクマレイ) 保険外交員。
 バートン・キーズ(エドワード・G・ロビンソン) 保険調査員
 ニーノ・ザケッティ(バイロン・バー) ローラの恋人。
 ジャクソン(ポーター・ホール) 列車の中で会う男

本作はウォルターがキーズに「ヴォイス・レコーダーで事件の全貌を報告する」という形で表現されている。

フィリスは最初から「悪女」という雰囲気が十分にでている。拍手!


■ あらすじ

◆ 自動車保険の継続

ウォルターは、ディートリクスンの車の保険契約のために自宅を訪れた。もう少しで契約が切れる。

本人はおらず、妻のフィリスが応対した。フィリスは日光浴をしていたとのことで、タオルを巻き付けた姿をみせたが、着替えて二階から下りてきた。

ウォルターは最初からフィリスに惹かれたようで「素敵なアンクレットだ」と関係のないことを言った。

フィリスも関係がない話をした。「他にどんな保険を扱ってるの?」。ウォルターは「当社はどんな保険でも」と答えた。

本人がいないので明日の午後八時半に再度訪問することになった。

次の日ウォルターがオフィスに戻るとフィリスから伝言が届いており「午後三時からに変更してほしい」とのこと。

訪問する。「夫には話しておいた」。

しかしフィリスはまた関係がない話をする。「いくらか保険に入りたい。夫が危険な仕事をしているので障害保険に」。

「ご主人に説明しますよ」と言うと、「夫は保険が嫌いなの。夫には秘密にして、私の金で」と続ける。

保険の専門家としてウォルターはすぐにその意図が分かった。「ばれているんだよ、彼を消したいんだろ?相手を間違えたな」と言うと「出て行って」という展開になった。

ウォルターは出ていったが、しかしフィリスのことが気になっている。

◆ 歯車が動き出した、もう止められない

午後八時。フィリスが訪ねてきた。電話帳で調べたとのこと。

「会えて嬉しい?、悪い女だと思ったのね?、優しくしてね」とストレートに言う。「そうはいかない」と突っぱねたが、ウォルターは内心自身がなかった。

フィリス夫に監視されているようなことを言う。そして強引に自分からキスをした。

ウォルターは保険金殺人の話の例をいろいろと出す。

フィリスは「夫は事業に金をつぎ込んでいるので金がない。先妻は死亡した。私は先妻の看護師だった。生命保険金は娘のローラが受取人」と次々に話して行く。

さらに「ある晩、夫は車のエンジンをかけたまま、ハンドルに顔を伏せていた。もし私がエンジンを切らなかったらどうなったか?」。

ウォルターは「そんなことを考えるな」と肩を抱き寄せた。しかし、すでに専門知識を動員して計画を立て始めていた。

フィリスは帰った。歯車が動き出した、もう止められない。

◆ 保険契約をしたが、実は傷害保険

二日後、ウォルターはディートリクスン家を再訪問した。ディートリクスンとフィリス、ローラがいた。

ローラはすぐに出かけるようだが、親はニノ・ザケッティとの交際をあまりよく思っていないので注意する。

契約書にサインしてもらった。しかしこれは車の保険ではなく、障害保険であった。災害倍額支払い特約がついている。

ディートリクスンは「パロアルトでの同窓会に出席する」という話をして席を外した。

ウォルターはフィリスにパロアルトには車ではなく列車で行かせるように説得した。それで死亡すれば特約が有効になる。

◆ ローラはニーノと付き合っている

ウォルターが外に出るとローラが待っていた。「車に乗せて行って」。

ローラは、父親は金持ちと交際させたい。ニーノは運が悪いだけでマジメな人間。私はニーノが好き。諦めない。というような話をする。

ニーノがいた。ウォルターに突っかかり、あまり感じがよくない青年であった。

◆ ついに実行する

フィリスとウォルターは、スーパーの中で買い物をしているようにして分からないように打ち合わせする。電話は使わない。

「ケガをして、パロアルト行は中止になった」「待つしかないな」「待つのが辛い」。

この間同じ保険会社で調査員をしているバートン・キーズがウォルターに「調査員をしないか?」と話を持ってくるが、もちろん断った。

この時フィリスから電話があった。緊急連絡なので電話を使ったもの。ウォルターはキーズには分からないようにトンチンカンな応答をしながら話した。

ディートリクスンは、ケガをしているが、予定通りパロアルトに行くことになった。フィリスは「ついに来たわ」と言って電話を切った。

◆ アリバイ工作をする

ウォルターは計画通りにアリバイ工作をする。

まずオフィスの自分の机に保険の料金表を置く。忘れたふり。

午後七時に帰宅し車を車庫に入れた。自宅アパートの従業員に洗車を頼む。「今夜は家にいるので、ゆっくりでいい」。

部屋からオフィスを共用しているルーに伝言する。「料金表を忘れて来たので教えてほしい」。これは電話の記録を残すため。注、ルーが電話を折り返してきら、留守なのでかえって危なくないのか?

ディドリクソンと同じ色の服に着替える。偽のギブスを作るための材料をポケットに入れた。電話があれば帰ってから分かるようにカードで細工をする。外からの呼び鈴にも同じ細工。

非常階段から外に出て、ディドリクソンの家に徒歩で行く。バス・タクシーは使わない。

◆ ディートリクスンを殺した

車庫を開けた。後部座席の足元にもぐりこんで隠れた。これは打ち合わせ通り。

二人が来た。前の座席に乗った。

フィリスが運転していく。違う道にそれた。ディートリクスンが道をそれたことに気がつく。

ここでフィリスが合図のクラクションを鳴らす。後部座席からディートリクスンを襲って殺した。

◆ 列車に乗る

駅に着いた車から、ギブス、松葉づえ姿のディートリクスンが下りた。いや、ウォルター。

ウォルターは九号車11番。発車した。ウォルターは最後部車両の展望車に行く。

フィリスは車を運転していく。後ろの座席にはディートリクスンの死体。

乗客が一人いた。話しかけてくる。パアルトに行くという話をした。「タバコは?」というので「私は葉巻」と答えて、ポケットを探って「葉巻を忘れた」と言うと、その乗客は松葉杖のウォルターに「取ってきてやる」と九号車に向かった。

ウォルターは最後尾から飛び降りた。

フィリスが近くで待っていた。注、ずいぶんとぴったり場所が合ってるな、すごい。

車からディートリクスンの死体を下ろして、線路に寝かせた。

◆ 自宅に戻った

自宅近くまで車で来た。非常階段から中に入った。

呼び鈴と電話の確認をして洋服を着替えて、車庫に行って洗車の状況を聞いた。

外に買い物に行って部屋に戻った。

◆ 自殺を疑われる

出勤するとキーズが来た。「ディートリクスンが死んだ。ボスが会いたいと言っている」。

判定は事故死で処理されている。しかし上司はウォルターが直前に契約したものなので、機嫌が悪い。

フィリスが入ってきた。上司は「事故死とは思えない。自殺であれば、保険金は支払われない」。

上司は裁判にすると面倒なので、フィリスに一部支払いを提案する。フィリスは怒って出ていった。

キーズは「私も自殺を疑った」。しかし「列車の最後尾からの飛び降り自殺は事例がない」と言う。

◆ キーズとフィリスがニヤミス

ウォルターがアパートに戻った。フィリスから部屋に来ると電話があった。

しかし直後にキーズが来た。ウォルターはひやひやしながらキーズと話す。

キーズは自ら推論を展開する。「脚を骨折していたのに、なぜ保険の請求がない」「保険に入って、たった二週間で死んだ。これは殺人だ」。

フィリスは部屋の前に来たが、話し声が聞こえてきたので、ドアのそばに隠れる。

キースはドアを開けた。フィリスはドアの陰に隠れている。キーズはエレヴェーターに乗って帰った。

「二人が会うのはもう危険だ」「どのくらい会えないの?」。

◆ ローラがフィリスのことを暴露する

ローラが会社にウォルターを訪ねてきた。オフィスで話した。以下のような話。

前にも同じことが起こった。六年前の冬。アレン湖の別荘。母は肺炎になった。看護師が世話をしていたはず。看護師はフィリス。

母の部屋に行ってみた。布団が床に落ちて、窓が開いていた。ひどい熱。そして看護師はいなかった。

二日後、母は亡くなった。

六か月後、父はフィリスと結婚。今度は父が死んだ。

ウォルターが否定すると「彼女の目はあの時と同じ。保険金を払わないで」。その後で「取り乱して、ごめんなさい」と謝った。

「このことは誰かに話した?」「話してない」。

この後、何度かローラにあった。この件はフィリスには内緒である。

◆ 「犯人はすぐにわかるさ」

ウォルターは出勤するとキーズの部屋に呼び出された。部屋の外にある人物。それは列車で会った人物。

中に入る。キーズは自分の推論を述べた。

あれは殺人だ。ディートリクスンは列車に乗らなかった。先に殺されていた。

妻ともう一人の誰かが夫を殺した。彼は松葉づえで列車に乗った、それから列車から飛び降りた。

「できすぎだ」「いや時計のように精巧だ」。そしてキーズは外の人物を招き入れた。

証人は夫の写真を見て「これではない」と言う。しかしウォルターとは気がつかない。

証人は帰った。キーズは得意顔である。「もう一人は誰か?犯人はすぐにわかるさ」。

◆ フィリスは執着する

フィリスに電話して、またスーパーで会った。

「キーズは君の要求を拒否する。みんな見破られた」「裁判に訴えるわ」「それはまずい。とにかく裁判はなしだ」。

「金より首が危ない」「私はどうなるの?一人はイヤ」「計画が狂った」「まだやれるわ」。

フィリスは怒って出ていった。

◆ ニーノも怪しい

ローラは事件以降、家を出ていた。ウォルターはローラから連絡を受けて二人であった。

「ニーノとフィリスが父親を殺した」「なんで?」。

「ニーノをつけていた。フィリスの家に毎晩行った、初めから二人はグル。父が殺された日、彼は授業の迎えにこなかった」。

ウォルターは「ニーノが何をしたのか?」「フィリスとどのような関係にあったのか?」「この事件にどのように関与しているのか?」と考えたが、結論はでなかった。

◆ キーズの音声メモ

会社の一階でキーズとすれ違った。キーズは上機嫌。「ディドリクソンの件が解決した、男が見つかった」。

それが誰なのかは言わないので、ウォルターは心配になった。

キーズからの音声メモ「ノートン氏へのメモ、極秘、ディドリクソンの件」。

「ウォルター・ネフを調べることは反対。彼はずっとアパートにいた」。

「フィリスと関係がある他の男。彼は7/9,10,11,12,13に夫人を訪問。それはニーノ・ザカッテイ」。

◆ フィリスと決着をつける

ウォルターは電話をしてフィリスに会いに行った。「この泥沼から脱出する方法がやっとわかった。フィリスからも逃れられる」と呟いて屋敷に入っていった。

だがフィリスにも計画があった。フィリスは家のライトを消して待った。拳銃をソファの下に隠した。ラジオの音楽をつけた。

ウォルターは部屋に入った。「さようならを言いに来た」「どこに行くの?」「行くのは君だ」。

「俺を巻き込んだのは保険の知識のせい?金が入ったら追い払うつもりだったんだろ」。

「前からニーノと?」「違うわ」「それはどうでもよい。キーズはニーノが犯人だと思っている」。

「君が死ねばニーノが追われる」。しかしフィリスは「お金を手に入れて幸せになる道も残されている」と粘る。

「君は腐りきっている。分かるよ」「それはお互い様でしょ」。

「俺にダンナを始末させて、ニーノにローラを殺させる、そして俺も。そして誰かがニーノを始末する」。

フィリスがウォルターを撃つ。しかし倒れない。フィリスの直前に立つ。

しかしフィリスは続けて引き金を引けない。拳銃を奪い取る。「俺を愛してたなんて言うな」「誰も愛したことはない」。

「私は腐りきっている。でもあなたを撃てなかった。あなたを愛してしまうなんて」「信じられないね、お別れだ」。ウォルターはフィリスを撃った。

外にでて待った。ニーノが来た。ニーノに5セントを渡して、ローラの電話番号を教えた。「ローラはずっと君を愛してる」。
 


■ 蛇足

「ニーノが何をしたのか?しなかったのか?」は明らかにされない。

最後の場面でフィリスはウォルターを撃てない。「呪いの血/THE STRANGE LOVE OF MARTHA IVERS(1946)」でも、マーサ(バーバラ)が拳銃を向けながら、引き金を引けない場面がある。
 


■ 出演作

◆ トム・パワーズ
(1946)青い戦慄/The Blue Dahlia

バーバラ・スタンウィック
(1933)女囚の意気地/Ladies They Talk About
(1937)ステラ・ダラス/Stella Dallas
(1939)大平原/Union Pacific
(1941)群衆/Meet John Doe
(1941)レディ・イヴ/The Lady Eve
(1944)深夜の告白/Double Indemnity
(1945)クリスマス・イン・コネチカット/CHRISTMAS IN CONNECTICUT
(1946/呪いの血/マーサの奇妙な愛情/The strange love of Marth Ivers
(1947)いのち短し/The Other Love
(1948)私は殺される/SORRY, WRONG NUMBER
(1947)恐怖の叫び/Cry Wolf
(1957)四十挺の拳銃/Forty Guns

◆ フレッド・マクマレイ
(1949)テキサス決死隊/Streets of Laredo
(1960)アパートの鍵貸します/The Apartment

◆ エドワード・G・ロビンソン
(1944)深夜の告白/Double Indemnity
(1944)飾窓の女/The Woman in the Window
(1945)緋色の街/スカーレット・ストリート/Scarlet Street
(1948)キー・ラーゴ/Key Largo
(1956)十戒/The Ten Commandments

◆ ポーター・ホール
(1941)サリヴァンの旅/Sullivan's Travels
(1935)ミズーリ大平原/Pony Express
(1947)三十四丁目の奇蹟/MIRACLE ON 34TH STREET
(1936)平原児/The Plainsman(1936)
(1944)深夜の告白/Double Indemnity