■ Scarlet Street
クリスは勤続25周年を祝ってもらった日、男に暴力を振るわれている女性キティを助けた。
その後クリスはキティのためにアパートを借りた。費用は妻アデルの元の夫の保険金である。
しかしキティはクリスのことをなんとも思っておらず、ある日クリスはキティの情夫を目撃した。


製作年:1945、脚本:ダドリー・ニコルズ、監督:フリッツ・ラング


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 クリストファー・クロス(エドワード・G・ロビンソン) 通称クリス、出納係
 アデル・クロス(ロザリンド・アイヴァン) クリスの妻
 キャサリン・マーチ(ジョーン・ベネット) 通称キティ、街娼
 ジョニー・プリンス(ダン・デュリエ) キティの情夫
 ミリー・レイ(マーガレット・リンゼイ) キティのルームメイト、モデル
 デイヴィッド・ジェインウェイ(ジェス・バーカー) 美術評論家
 ホーマー・ヒギンズ(チャールズ・ケンパー) 刑事、アデルの元夫
 チャールズ・プリングル(サミュエル・S・ハインズ) クリスの知人
 ポップ・ルジョン(ウラディーミル・ソコロフ) 街頭で絵を売っている人
 デラロウ(アーサー・ロフト) 画商
 J・J・ホガース(ラッセル・ヒックス) クリスの会社の社長
 


■ あらすじ

◆ クリスはキティを助けた

場所はニューヨーク。クリスはある企業で出納係を務めてきた。上司や同僚が1909年~1934年の勤続25周年のバーティを開いてくれた。社長から高価な懐中時計が贈られた。

バーティが終わって、同僚の一人とほろ酔い気分で街を歩いていた。クリスは「本当は画家になりたかった」と話した。

同僚と別れて一人で歩く。見ると通りの反対側で女性が男に殴られている。クリスは男を持っていた傘で殴って女性を助けた。

クリスは先ほどすれ違った警官を追いかけて現場に連れてきた。男は消えていた。女性はキティ・マーチ。「15ドルを奪われた」。

キティは「自宅まで送って」と言うので一緒に歩いて行った。キティのアパートの前まで来た。キティが「さようなら」と言うので、クリスはカフェに誘った。

そのアパートの地階のカフェで話した。クリスがキティを見ている。「なぜ見つめているの?」「あなたは私の子供くらいの年」「そんなことはないでしょ」と他愛のない話をした。

「仕事は?」「当ててみて」「女優?」「そのとおりよ」と展開し「あなたはアーティストでしょ?」と言われたので、思わず「画家」と答えた。その後二人はセザンヌの話をした。

クリスはまだ知らないが、実はキティは娼婦である。

キティは店のテーブルに飾ってある花を取って、クリスにプレゼントした。クリスは、その花を大事に持って帰った。

◆ クリスはキティのためにアパートを借りる

キティのアパート。男がいる。実は昨日キティを殴っていた男。ジョニー。言ってみればキティのヒモ。昨日とは打って変わってジョニーはキティにキス。キティは「もっと上手にできないの?」と言っている。

キティはクリスの話をした。「彼はあなたみたいな人じゃないわよ。金持ちの画家」。ジョニーは「金持ち」というキーワードに反応した。

キティはマジメなクリスを誘惑した。キティは「同室の女性とうまくいっておらず金がない」という話をでっち上げた。もちろん「このことは言うべきではなかったわ」と遠慮する素振りも見せる。

途中省略して、キティはクリスにアパートを借りさせた。ついでにそのアパートは「クリスのアトリエ」という名目もつけて、自分の後ろめたい気持ちを和らげた。

もちろんこれらはジョニーの陰謀である。

◆ クリスはアデルの金と会社の金を使い込む

さてしがない会社員のクリスは、どこからその金を出したのか?

クリスは五年前にアデルと結婚した。アデルは再婚で、前夫ヒギンズは刑事だったが死亡した。クリスはヒギンズに下りた保険金をアデルに黙って使い込んだ。

さらにキティの要求はエスカレートし、今度は会社の金を使い込んだ。出納係なので、金を持ち出すのは比較的容易である。

アデルとうまくいっていないクリスは「アトリエ」で絵を描いた。

◆ キティが画家としてデビューする

キティとジョニーがイチャイチャしているところにドアノック。ジョニーを奥の部屋に慌てて隠す。しかし入ってきたのは、キティと元同室のミリー・レイ。モデルだそうである。ジョニーも奥から出てきた。

この三人が集まれば、ろくな話は出ないのだが、ここでまたドアノック。クリスが現れた。「ジョニーとミリーは恋人同士」ということにした。

クリスはジョニーに「以前にお会いしたのでは?」と聞くがジョニーはしらばっくれた。注、最初にキティに街頭で会った時に見ている。

ジョニーとミリーが出て行った後、クリスは「もし妻がなくなったら」という仮定の話を持ち出すが、キティはそれを打ち切る。そして「女優は金がかかるの」とさらに金を要求する。クリスはさらに会社の金を横領する。

ジョニーはクリスの絵を画商に持ち込む。しかし断られた。そこで道路で絵を売っているホップという男のところに持って行った。ホップは(クリスの絵を買い取るのではなく)委託販売することにした。

再度ジョニーがホップを訪ねていくと、ホップは興奮して「デイヴィッド・ジェインウェイが褒めた」という。高名な美術評論家である。

そしてホップとジェインウェイと画商のデラロウがキティのアパートに来た。ちょうどいたジョニーは、それらの絵をキティが作ったものにしてしまう。注、クリスの絵にはサインが入っていない。

キティは戸惑うが、しかしさすがにキティ。適当なことを喋って画家の振りをする。

たちまちキティは新進の画家ということで評判になる。しかも美人である。

◆ クリスはキティの名前で絵を描く

クリスがキティを訪ねていくとジョニーがいた。ジョニーはすぐに帰るが、クリスはさすがにふたりの仲を疑う。しかしキティが怒ったふりをするとクリスはおろおろして何も言えない。

クリスの妻のアデルは画廊でクリスの絵が売られているのを発見した。キティ・マーチの名前になっている。

アデルはクリスが盗作したものと思いクリスを責めた。クリスは事情を把握した。

クリスはキティを追及したがキティは「生活のために売った」と、これまた適当にごまかす。いやもちろん涙は流している。

しかしクリスは、それよりも自分の絵が評価されたことを喜んだ。

以後、クリスはキティのために描いた。キティ・マーチの名前が挙がっていく。クリスは満足した。

◆ ヒギンズ刑事がクリスの前に現れた

クリスの会社に面会人が来た。海賊のように左目に黒い眼帯をかけていてドスが聞いた声で話す。

「俺が分かるか?」という。クリスが不審な顔をしたので、男は眼帯を取った。アデルの元の夫のヒギンズ。死んだはずの人間である。眼帯は偽装。

二人は店に入った。ヒギンズは大きな身振り手振りで事情を話した。

ヒギンズは汚職をしていて上司にばれてしまった。自殺するつもりで橋から飛び込もうとしたのだが、偶然女性の飛び込み自殺を見た。刑事の反射動作で、その女性を掴んだ。実際に掴んだのは帽子。しかし帽子ではなく、実は財布で、その中に大金が入っていた。その金を持って姿を消した。注、女性がどうなったかは不明。

ヒギンズが現れた目的は、さらにクリスから金を貰おうという魂胆である。クリスが出納係をしていることを知っている。

クリスは、この機会を利用する。ヒギンズが生きているとなれば、アデルと別れることができる。するとキティと結婚できる。このような楽観的な計画を思いついた。

クリスはアデルが持っているヒギンズの生命保険を盗み出すように言う。これはクリスが少々使い込んでいるが、まだ余っている。アデルとヒギンズを引き合わせるのが目的である。

「その金(保険金)は、あなたのもの」と言う言葉にヒギンズは頷いた。

ヒギンズは、クリスの合図を確認して、クリスのアパートに入った。アデルは突然に現れたヒギンズに驚いた。

それを確認してクリスはキティのアパートに向かう。

◆ クリスはキティを刺す

クリスはキティのアパートに行った。しかしそこではジョニーとキティが抱き合っていた。クリスはアパートを飛び出した。ジョニーも出て行った。

クリスは酒場に入ってキティが発していた言葉を何度も繰り返した。「I love you,Johnny!」。

クリスはキティのアパートに戻った。キティは勘違いして「ジョニー、開いてるわよ」とドアに叫んだ。

クリスはキティを責める。キティは居直る。激しい言葉が飛び交う。クリスはアイスピックでキティを刺した。何度も刺した。

クリスは出て行き、今度はジョニーが入ってきた。

◆ ジョニーはキティ殺人犯として逮捕

結果、ジョニーはキティ殺人犯として逮捕された。

一方、クリスは会社の金を盗んだことがばれた。ヒギンズからの通報である。

1200ドル以上を使い込んでいた。警察はクリスを逮捕しようとするが、社長は温情でそれを制止した。しかしクリスは解雇された。

逮捕されなかったクリスは運がよかったとも言えるが、ジョニーは警察で厳しく追及された。ジョニーは今までも、それなりに悪いことをしてきたので、そのような目で見られる。

ジョニーは起訴されて、裁判となった。証人が何人も呼ばれたが、ジョニーを弁護する者は一人もいなった。

ジョニーは死刑が宣告されて、しばらく後に執行された。

◆ クリスは放浪した

クリスは、罪には問われなかったものの、罪悪感が彼を罰した。

クリスはキティとジョニーの声が聞こえるようになった。「キティは自分が殺した」と警察に行ったが、それはすでに解決済みの事件である。

クリスはホームレスとなって放浪した。
 


■ 出演作

◆ エドワード・G・ロビンソン
(1944)深夜の告白/Double Indemnity
(1944)飾窓の女/The Woman in the Window
(1945)緋色の街/スカーレット・ストリート/Scarlet Street
(1948)キー・ラーゴ/Key Largo
(1956)十戒/The Ten Commandments
(1941)海の狼/The Sea Wolf


◆ ダン・デュリエ
(1944)飾窓の女/The Woman in the Window
(1945)スカーレット・ストリート/Scarlet Street
(1946)黒い天使/Black Angel
(1949)裏切りの街角/Criss Cross
(1950)ウィンチェスター銃'73/Winchester '73
(1949)遅すぎた涙/Too Late for Tears
(1944)恐怖省/Ministry of Fear

◆ チャールズ・ケンパー
(1950)彼女は二挺拳銃/A Ticket to Tomahawk

◆ ラッセル・ヒックス
(1949)サムソンとデリラ/Samson and Delilah

ジョーン・ベネット
(1933)若草物語/Little Women
(1941)マン・ハント/Man Hunt
(1944)飾窓の女/The Woman in the Window
(1945)緋色の街/スカーレット・ストリート/Scarlet Street
(1947)浜辺の女/The Woman on the Beach
(1949)無謀な瞬間/The Reckless Moment
(1940)私はナチと結婚した/The Man I Married/I Married a Nazi
(1954)ハイウェイ捜査網/Highway Dragnet