■ The Woman in the Window
リチャードはショウウィンドウに飾られた肖像画を見ていたところ、肖像画のモデルの女性が現れた。アリス。
意気投合して飲みに行き、さらにアリスのアパートに行った。
しかしその部屋に男が乱入してきて二人に殴りかかった。リチャードはアリスから渡されたハサミで、その男を殺した。


製作年:1944、原作:J・H・ウォリス、脚本:ナナリー・ジョンソン、監督:フリッツ・ラング


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 アリス・リード(ジョーン・ベネット) 飾り窓の女
 リチャード・ウォンリー(エドワード・G・ロビンソン) 犯罪心理学の助教授
 フランク・レイラー(レイモンド・マッセイ)地方検事
 マイケル・バークステイン(エドマンド・ブレオン)医師
 クロード・マザード/フランク・ハワード(アーサー・ロフト)
 チャーリー(アーサー・ロフト)
 ハイト(ダン・デュリエ)
 ティム(ダン・デュリエ)
 ウォンリー夫人(ドロシー・ピーターソン) リチャードの妻
 ディッキー・ウォンリー(ロバート・ブレイク) リチャードの息子
 


■ あらすじ

◆ 家族は旅行に行った

リチャード・ウォンリーは犯罪心理学を研究する助教授。妻と二人の子供は旅行に出かけた。

一人なので食事に出かけた。そこで知人のフランク・レイラー検事、マイケル・バークステイン医師と会った。

二人と楽しく話した後、二人は帰り、リチャードは残って本を読んだ。

しばらくの後に店を出た。

◆ アリス・リードと会った

その店の店頭のショウウィンドウに女性の肖像画が掲げてあった。その絵(の女性)に見とれていると、そばに誰かが立った。

それはまさに肖像画の女性であった。アリス・リード。

その場で少し話をして、お互いに一人だったので、一緒に飲みに行った。

◆ フランク・ハワードを殺した

飲んだ後リチャードとアリスはアリスのアパートに行った。表はともかく、中はわりとよいアパートである。

しかしアリスに勝手に好意を持っているフランク・ハワードが突然現れた。アリスを殴った。

リチャードとハワードは殴り合いとなった。リチャードはハワードに首を絞められた。

意識が遠のいていくが、リチャードはアリスが差し出したハサミでハワードを殺してしまった。

アリスはハワードの名前以上のことを知らなかった。格闘する時に落ちた懐中時計には「C.M.」のイニシャルがあった。

リチャードは警察に知らせようとしたが、受話器をとったところで中止した。

二人はこの事件を秘密裏に処理することで合意した。するとハワードの死体をなんとかしなければならない。

◆ 死体を隠した

リチャードは「必ず戻ってくる」と言って、いったん帰宅して車を持ってきた。途中でライト不点灯で止められたが問題なし。

身元が分かりそうなものは外した。毛布にくるんだ死体を、雨の中で車に乗せた。注、直前には雨は降っていない。このような時には映画では雨が降ることになっている。

アリスとは「もう二度と会わない」と約束して出発した。

若干のトラブルに会いながらも遠くの森に到着した。車から死体を下ろして担ぎ、森の中に死体を遺棄した。

しかし死体を投げ捨てるときに有刺鉄線に引っかかって右手をケガをした。

◆ 死体が発見された

フランク・ハワードは実はクロード・マザードという経済界の大物であった。その行方不明は大きく報道された。

リチャードは自分が殺したのはマザードであったと理解した。アリスも新聞記事を見た。

マザードの死体はボーイスカウトによって発見された。

◆ 捜査に協力する

フランク・レイラー検事は捜査に乗り出した。そして犯罪心理学の専門家であるリチャードに協力を求めた。

リチャードは、一般的な知識でもって見解を披露するとともに、少しばかりは自身の「犯人にしか知りえない情報」を用いた。犯罪心理学の逆応用である。

有刺鉄線のある場所に死体があったことを指摘した。さらに「私が犯人」と冗談を装って自分の手首の傷を見せた。

予想通りレイラーは、リチャードを疑うどころか、リチャードの見識に驚いた。

リチャードは現場にも同行した。発見現場に勝手に歩いていくので不思議がられた。しかし警察がいろいろと調べている状況を見て、気分が悪くなった。

自宅に帰ったところ、アリスから電話があった。アリスには何も知らせてなかったのだが、(事件とは関係がない)リチャードの記事が新聞に載って、電話番号を調べてきたらしい。二人は「特に問題はない」という話をした。

◆ ハイトはアリスを脅す

元警官のハイトという人物がアリスを訪れた。マザードのボディガードをしていたハイトは、マザードの行動をある程度は掴んでおり、アリスのアパートがおかしいと睨んだ。

「警察に言う」と脅されたので、いやいやながら中に入れた。

ハイトは嫌がるアリスを尻目に、アパートの中をネチネチと調べまわって、いくつかのマザードの痕跡を発見した。髪の毛、ハサミ、リチャードが残したペン。

ここでまずいことにアリスは「何が欲しいの?」と言ってしまった。ハイトは5000ドルを要求した。

アリスは「時間をちょうだい」と言ってハイトを帰した。

◆ ハイトの毒殺が失敗し、リチャードは自殺する

アリスはリチャードに電話をかけた。会って相談した。

リチャードはいくつかの選択肢を上げた後、ハイトを殺すことを提案した。

リチャードは劇薬を薬局で購入した。二人はビルのエントランスで待ち合わせて、誰もいないところを見計らって劇薬を渡した。アリスは不安そうな顔をする。

ハイトがまた訪ねてきた。アリスが「5000ドルは大変なの。とりあえず2900ドルで」とごまかす。「冗談言うな」「私を信用できないの」。アリスはバッグから金を出して渡した。

ハイトが受け取った金をポケットに入れたので、飲み物を作ってすすめた。ハイトはグラスを受け取り、口まで持って行ったが、しかし飲まなかった。

この後、ハイトは「一緒に南米に行こう」と提案しアリスも同意しキスをする。アリスはもう一度飲み物を作って渡した。

ハイトは「飲んでみろ」と言ったがアリスは飲めない。ハイトはグラスを床に叩き落した。

ハイトはさらに要求金額を引き上げて、隠してあった少しの金とマザードの懐中時計を持って出て行った。

アリスから連絡を受けたリチャードは、この事態にいたって(残していた)劇薬を飲んで自殺を図った。

◆ ハイトは死亡した

アリスはベッドに伏せていたが、何発もの銃声が突然鳴り響いた。パトカーのサイレンが鳴った。

銃撃戦の相手はハイトであった。警官はハイトが持っていた現金と懐中時計を確認した。ハイトがマザード殺害犯とされた。注、ハイトが銃撃戦を演じた理由は不明。

これを見ていたアリスは、急いで戻ってリチャードに電話した。しかし電話は取られない。

リチャードは劇薬を飲んで意識不明状態であった。

◆ ラスト

リチャードは目を覚ました。本を読んでいるうちに眠ってしまったようである。

預けていた帽子を従業員のチャーリーから受け取る。チャーリーはマザードであった。

クラブの門番ティムはハイトであった。注、しかしリチャードはハイトには会っていないはずだが。

店をでると、アリスの肖像画があった。肖像画を見ていると、女性が近づいてきた。


■ 補足

「ストーリーの全体が夢であった」とする本作の終わり方には疑問が投げかけられている。

それはともかく、本作の末尾をほんの少しだけ修正してほしい。肖像画を見ている時に女性が近づいてくるのだが、最初はアリス、しかし最後に登場する女性はアリスではない。これをアリスにしてほしかった。本当に。

すると本作は、最初と最後に、肖像画を見ているリチャードの前にアリスが登場する。さらに同じストーリーが展開する(ように感じられる)。このような構造を「末尾再帰構造」と言う。

解説は省略するが、私が見た範囲で末尾再帰構造の映画は以下の通り。

「悪魔の往く町/NIGHTMARE ALLEY(1947)」タイロン・パワー+コリーン・グレイ
「イヴの総て/All About Eve(1950)」アン・バクスター+ベティ・デイヴィス
「ナチュラル/The Natural(1984)」ロバート・レッドフォード+グレン・クローズ+キム・ベイシンガー

ついでにもう一つ。リチャードがアリスの部屋に行って、乱入してきたハワードを殺すのだが「それはアリスの陰謀である」としたらどうだろうか?もちろん本作は良い映画なので、「それはまた別の映画」ということになる。
 


■ 出演作

ジョーン・ベネット
(1933)若草物語/Little Women
(1940)私が結婚した男/私はナチと結婚した/The Man I Married/I Married a Nazi
(1941)マン・ハント/Man Hunt
(1944)飾窓の女/The Woman in the Window
(1945)緋色の街/スカーレット・ストリート/Scarlet Street
(1947)浜辺の女/The Woman on the Beach
(1949)無謀な瞬間/The Reckless Moment

◆ エドワード・G・ロビンソン
「深夜の告白/Double Indemnity(1944)」
「キー・ラーゴ/Key Largo(1948)」
「十戒/The Ten Commandments(1956)」

◆ レイモンド・マッセイ
「カンサス騎兵隊/Santa Fe Trail(1940)」
「絶海の嵐/Reap the Wild Wind(1942)」
「西部のガンベルト/Carson City(1952)」

◆ エドマンド・ブレオン
「剣豪ダルタニアン/Sons of the Musketeers(1952)」
「ガス燈/Gaslight(1944)」
「まごころ/Devotion(1946)」

◆ ダン・デュリエ
「恐怖省/Ministry of Fear(1944)」
「飾窓の女/The Woman in the Window(1944)」
「スカーレット・ストリート/Scarlet Street(1945)」
「黒い天使/Black Angel(1946)」
「裏切りの街角/Criss Cross(1949)」

◆ ドロシー・ピーターソン
「街の野獣/The Beast of The City(1932)」
「ロナルド・レーガンの陸軍中尉/This is the army(1943)」