■ A Ticket To Tomahawk
エピタフ駅からトマホーク駅へ土曜日の正午までに列車を走らせなければ、鉄道会社の免許が取り消される。
距離は100キロだが、そのうち最初の60キロは線路が敷設されていない。機関車を馬車で引っ張っていく。
一方、鉄道に反対する駅馬車の会社が妨害活動に出てくる。負傷している保安官に代わって、孫娘のキットが敵に立ち向かう。
製作年:1950、監督:Richard Sale、脚本:Mary Loos、Richard Sale
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
ジョニー(ダン・デイリー) 行商人
ドッジ(ウィル・ライト) 保安官
キット・ドッジ・Jr.(アン・バクスター) ドッジ保安官の孫 →保安官代理
チュキティ・ジョーンズ(チャールズ・ケンパー) 副保安官
ポーニー(チーフ・ヨーラチー) 保安官の助手、アラバホ族
テレンス・スウィーニイ(ウォルター・ブレナン) 機関手
エマ・スウィーニー(-) 機関車
サツド・アイズ(アーサー・ハニカット) テレンスの助手
車掌(オリン・ホーランド)
ロングタイム(ヴィクター・セン・ヤング) 洗濯屋
アデレード夫人(コニー・ギルクリスト) ダンサーティームの管理者
駅長(ジョージ・メルフォード)
ビショップ町長(?)
ドウスン(M・ヒューゴー) 駅馬車の会社経営
ダコタ(ロリィ・カルハーン) ドウスンの部下
ファルゴ(ジャック・イーラム) ドウスンの部下
トランコス(?) ドウスンの部下
ギラ(?) ドウスンの部下
黒い狼(?) アラバホ族、ドウスンの部下
「アン・バクスターが二丁拳銃かっ?絶対見なくちゃ」と思われた方が絶対にいらっしゃると思う。少なくとも一人(→私)はいる。しかし二丁拳銃ではない。キットのもう一つの武器は投げナイフ。
本作は荒唐無稽なありえないストーリーが展開するが、それはむしろ問題ではなく、それを楽しむ映画である。
言葉では解説しにくいが、キットのキャラクタが非常に面白く、必見。
■ あらすじ
◆ 機関車エマ・スウィーニーがエピタフの町に
1976年、コロラドの山中を鉄道が通っており、エマ・スウィーニーという名前の機関車が走っている。
最高時速56キロ。当時にしては最速。33トン。運転しているのはテレンス・スウィーニイ。機関車、燃料車、客車の順につながれている。エマとテレンスの苗字が同じなので、エマはテレンスの孫なのだろう。
車掌と客が一人ジョニーが乗っている。
◆ エマの前に岩が落とされた
両側に岩山が見える場所。突然、大きな岩が落ちてきた。いや、落とされた。列車の前をふさいだ。
実は鉄道の開通に反対している駅馬車会社のドウスンたちの犯行である。
ジョニーはしかたなくエピタフの町まで歩いていくことにした。しかしその岩を落とした犯人二人に出会って馬に乗せてもらった。ジョニーは彼らが岩を落とした犯人とは知らない。
前の岩を取り除いてエマもエピタフに向かった。
◆ 保安官が撃たれ、キットが敵を倒した
ジョニーたちはエピタフに到着した。なぜかは不明だが保安官事務所に入っていった。
ここでいきなり一味の二人がジョニーを殴り倒したうえで、副保安官のチュキティ・ジョーンズに拳銃を向けた。
ドアを隔てた隣の部屋にはドッジ保安官、孫娘のキット、ポーニーィがいた。
三人がドアを開けて入ってきた。ドッジは事態を把握して拳銃を構えて発射。犯人の一人が倒れた。しかしもう一人がドッジを倒した。
ドッジは倒れながらも自分の拳銃をキットに投げて渡した。拳銃を空中でキャッチしたキットは、たちまち犯人を撃ち倒した。
◆ キットは保安官代理になった
キットはジョニーも一味とみなして尋問した後「この町をでていってちょうだい」と申し渡した。ジョニーが反論すると、キットはナイフを投げてジョニーのそばの壁に突き立てた。
チュキティはナイフを回収しながらジョニーに「彼女はタダの女じゃない。これまで六人を地獄に送った」と説明。
その後、別の場所でドッジはキットをコロラド州連邦保安官代理に任命した。そして「おまえは女になった。男に気をつけなさい」と注意を促すが、キットは言われたことが分かっていないようである。
それから後、キットはキュロットスカート、ジャンパー姿でガンベルトをして、若干ガニマタ気味で町を闊歩する。
◆ ドウスン一味
ドウスンが部下に命令している。
「彼らは汽車を運ぶ、その護送隊に入り込め。それとは別に護送隊を追いかける。みんな眠ったら機関車を爆破する」。
そして一味のアラバホ族の黒い狼に「アラバホ族をたきつけろ」と指示をした。
◆ エピタフ駅からトマホーク駅へ
さてエピタフ駅に到着したエマをトマホーク駅まで走らせなければならない。それが営業許可延長の条件になっている。
トマホーク駅までは約100キロ(セリフでは60マイル)。1876年9月6日、土曜日の正午が期限である。そして正規の旅客が一人以上。
それを聞いてテレンスは「エマならば2時間で済む」と言うが、よく聞くとエピタフからデットホースまでの60キロ(40マイル)は線路がないとのことである。
テレンスは、この話が簡単ではないことを理解した。
◆ 敵のスパイが入り込む
ダコタが一行に入れてほしいとキットに申し込んできた。キットは知らないがドウスンの手下である。キットはダコタの拳銃の腕を調べた。空き缶を空中に上げる。ダコタが拳銃で撃った。つづいてキットがナイフを投げた。空き缶は撃ち抜かれナイフが突き刺さった状態で落ちてきた。
ダコタが去った後キットは「なかなか男前ね」とつぶやいた。それからなぜか四人のダンサーと管理者のアデレード夫人の五人組。トマホークで公演するとのことで、馬車で同行する。
それからロングタイムと言う名前の洗濯屋もなぜか一緒に行く。それと肝腎の乗客はジョニー。
地元の人に見送られて、護衛隊も一緒に出発した。
◆ 野営するが、さらに敵のスパイ
機関車と燃料車の二台をつないだまま、多くの馬で引っ張る。最初は平坦な道だが、山に差し掛かる。注、客車はない。
山の中に入ったところで夜になり野営をする。
見知らぬ三人が訪ねてくる。キットは拳銃を構えながら応対した。「切られた電線を修理している。ここで野営したい」という。もちろん我々は敵であると知っている。キットは許可する。
◆ ダンサー
さてここでダンサーたちに「踊ってくれ」とのリクエスト。管理者のアデレード夫人は「こんなところではやらないわ」と言うが、むしろ嬉しそうな顔。
四人のダンサーが踊りだす。途中でジョニーも加わって一緒に踊った。
機関車のそばで寝袋を広げる。ジョニーは隣。「私をたぶらかそうとした男が祖父に撃たれて死んだ」という話をする。
その後、キットはダンサーのテントに行く。女性なのにダンサーが着替えているのを見てドギマギしている。
しかしアデレード夫人に「とってもきれいよ」と言われる。アデレード夫人がメイクを落としているのを見て「何してるの?」と聞く。
戻ってジョニーにアデレード夫人から教わったようにウィンクすると「どうしたの?」と聞かれた。
◆ ダイナマイトが仕掛けられた
ダコタの手下がダイナマイトを用意している。手下がダイナマイトに火をつけて機関車の方に投げた。ジョニーとキットが気が付いた。キットは導火線を拳銃で撃って切断した。
犯人の手下に拳銃がむけられた。キットは「銃口を後ろ向きにして拳銃を渡しなさい」と命令。
しかしダコタが手下を射殺した。秘密がばれないようにするためである。ジョニーはダコタに「なぜ急所を外さなかった?」と問い詰めた。
◆ 鉄橋が崩れ落ちた
夜が明けて、また列車を引っ張って突き進む。デッドホースまであと八キロ。
その前に鉄橋がある。深い谷に鉄橋が掛かっている。
敵が鉄橋にダイナマイトを仕掛けている。アラバホ族が鉄橋の敵を襲った。一人が倒れた弾みで爆破スイッチを押してしまった。鉄橋は崩れ落ちた。
◆ アラバホ族が襲撃してくる
今度はアラバホ族がエマ輸送隊を襲ってきた。全員が銃を持つて戦った。激しい銃撃戦。
ダンサー部隊も戦った甲斐があってか、やっとのことで撃退した。
しかしキットは「明日は本体が攻めてくる」と言っている。200人くらいいるらしい。
ここでジョニーが「曲がった刀は友達。交渉してくる」と言い出した。「曲がった刀」とはアラバホ族の酋長の名前。
◆ アラバホ族に協力してもらう
ジョニーはアラバホ族がテントを張っている場所に出かけた。アラバホ族が襲い掛かろうとしたが、酋長が制止した。
ジョニーは昔話をして、さらに事情を説明した。「鉄の車を運んでほしい」とお願い。
鉄橋があった谷を避けて、多数のアラバホ族も一緒になって、分解したエマを運んだ。
一気にデッドホースに近づいた。ここでダコタが「ちょっと先に偵察してくる」と言って、みんなから離れて先にいく。我々はダコタが悪事をすると分かっている。
◆ 給水塔の水がなくなっていた
無事デッドホースに到着した。しかし本作はここでもトラブルが発生することになっている。
ここには木製の給水塔がある。しかし給水塔に穴が開いていて水が全くない。実はもちろん敵(=ダコタ)の仕業である。
ダコタが「20人くらいの敵がいた」と証言した。キット「敵の足跡がない」ダコタ「ライフルで遠くから撃った」。
◆ 水の問題も、燃料の問題も解決した
テレンスの助手のサッド・アイズは「水はいっぱいある」と言う。テレンスの指示に背いて水はいっぱい積んでいたらしい。
さらに「燃料の薪がない」と言う話がでるが「給水塔をばらせばよい」と簡単に解決した。
エマを組み立てて線路に乗せた。残りは40キロ。しかし後40分しかない。
◆ ダコタの正体が判明した
いよいよ出発しようとするところ「給水塔の下で薬莢を見つけた」と報告があった。それを見てキットは「ライフルの弾じゃないわ。それに足跡は一人分、ダコタの足跡」。
キットは「男前だったのに残念ね」と言いながらダコタのところに来た。
キット「どこで保安官やってたっけ?」ダコタ「ヒコック保安官のところにいた、二週間前」。
ジョニーが「ヒコックは悪党に撃たれて一か月前に死んだ」と指摘するとダコタが拳銃を撃ってエマに飛び乗った。サッド・アイが捕虜になった。
◆ 走り出したエマに飛び乗り、投げナイフを使う
サッド・アイが脅されてエマが走り出した。テレンスが燃料車にしがみついた。キットとジョニーが馬で追いかけた。補足。ダコタの目的は列車の運航を阻止することなので、ここで列車を走らせるのはおかしいが、許す。
キットが馬からエマに飛び乗った。しかし殴られて倒れた。ジョニーも飛び乗った。ジョニーとダコタが格闘。
二人はエマの屋根の上で格闘した。ジョニーが首を絞められて落とされそうになった。燃料車によじ登ったキットがナイフを投げた。ダコタは谷底に落ちて行った。
◆ ドウスン一味が襲撃
エマが走っていく。ドウスン一味が襲ってきた。テレンスは「エマは負けない」と言ったが追いつかれた。
銃撃戦でエマの胴体に穴が開いており蒸気が漏れてスピードがでない。ストップした。一味に取り囲まれた。もうトマホークのすぐそば。
絶体絶命の状況かと思われたが、ケガから恢復したドッジ保安官に率いられた部隊が駆けつけた。
ドウスンたちは逃げ始めたが、逆方向からアラバホ族の部隊が現れて挟み撃ちとなって、やっつけられた。
◆ 時間切れかっ!?
さて、エマが停止した場所はトマホークの町の境界まで400メートル。締め切りの2分前。
終点にはテントが張られて町長や町議会の議員、そして多数の町民が待っている。
キットは「もう間に合わないわっ!」と悲壮な叫び声。ここでテレンスが大胆かつ誰も思いつかない案を叫んだ。「町の境界を移動しろっ!」。
それを聞いた町長は、すぐさま町議会を開催し、町の境界の移動の議案を提出。即座に可決となった。
境界の立て札が大急ぎで運ばれた。セーフ。
◆ ラスト
ここでキットとジョニーの運命は?
ジョニーは「僕は根無し草」と言って出て行こうとする。しかしキットは「でもあなたを愛している」と必死。二人は言い争う。
キットは「旅ができないように足を切ってやるっ」とナイフを取り出した。完全なブラックジョーク。
ここで10年近い年月。
ジョニーは車掌の制服を着て列車に乗ろうとしている。キットと五人の女の子が見送る。
ジョニーは足が悪く杖をついている。列車に乗った。子供たちが「いってらっしゃ~い。パパ~っ!」と手を振った。
■ 補足
上に述べたがキットは二丁拳銃を使わない。このような詐欺はすべきではない。また私が持っているDVDにはマリリン・モンローの画像がでているがマリリンはちょい役でクレジットされてもいない。主役のアン・バクスターに失礼である。このようなことをしている担当者には、何か不吉なことが起こらないとも限らない。注意するように。
キットは投げナイフも使う。しかしナイフにしてはかなり大型で、剣にしては太くて短い。これを背中に背負っていて、取っ手が右肩からでている。
アンの代表作は「イヴのすべて」と言うことになっているが、本作の方が面白い。ウォルター・ブレナンとアンは「スワンプ・ウォーター/Swamp Water(1940)」では親娘を演じている。
■ 出演作
◆ アン・バクスター
(1940)スワンプ・ウォーター/Swamp Water
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia
(1950)彼女は二挺拳銃/A Ticket to Tomahawk
(1950)イヴの総て/All about Eve
(1952)人生模様/最後の一葉/O. Henry's Full House
(1956)十戒/The Ten Commandments
(1953)私は告白する/I Confess
(1946)剃刀の刃/THE RAZOR'S EDGE
(1952)ポーカー・フラットの追放者/The Outcasts of Poker Flat
◆ ウォルター・ブレナン
(1936)激怒/Fury
(1940)西部の男/The Westerner
(1940)スワンプ・ウォーター/Swamp Water
(1941)群衆/Meet John Doe
(1944)姫君と海賊/The princess and the pirate
(1946)荒野の決闘/My Darling Clementine
(1948)赤い河/Red River
(1950)彼女は二挺拳銃/A Ticket to Tomahawk
(1950)峡谷の銃声/Singing Guns
(1952)ジャングルの逃亡者/Lure of the Wilderness