■ THE BLUE GARDENIA
ノラは遠方恋愛の彼氏に振られた。留守のルームメイトにかかってきたデートの電話に出た。
相手は悪評高いプレイボーイのハリー。ノラはハリーとデート。酔っぱらってハリーの家に行った。
翌朝ハリーが死体で発見された。ノラには記憶がなく、自分が殺したと思い込む。


製作:1953年 脚本:チャールズ・ホフマン 監督:フリッツ・ラング  


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ノラ・ラーキン(アン・バクスター)
 クリスタル・カーペンター(アン・サザーン) 同室の女性
 サリー・エリス(ジェフ・ドネル) 同室の女性
 ハリー・プレブル(レイモンド・バー) 画家
 ローズ・ミラー(ルース・ストーリー) レコード店の店員、ハリーの恋人
 ケイシー・メイヨ(リチャード・コンテ) クロニクル紙 記者
 アル(リチャード・アードマン) クロニクル紙 カメラマン
 ヘインズ警部(ジョージ・リーヴス)
 ホーマー(レイ・ウォーカー) ブルー・ガーディニアの目が見えない女性
 ナット・キング・コール(本人) ブルー・ガーディニアで歌っている

場所はロスアンゼルス。ノラ、クリスタル、サリーは電話会社の電話交換手、同じアパートで共同生活している。

ノラの恋人は軍人で海外にいる。
 


■ あらすじ

◆ 電話局

電話局にクロニクル紙の記者ケイシーが来た。交換手が忙しそうに働いている。そこには画家のハリーもきていて、交換手クリスタルをモデルに絵を描いている。

ハリーはプレイボーイと有名な男である。ケイシーがクリスタルの電話番号を聞く、それをハリーがこっそり記録している。

ハリーに電話あった。レコード店の店員、ローズ・ミラーから電話。ハリーがなかなか会ってくれないからである。ハリーは冷淡な対応をする。

◆ ノラは誕生日だったが振られた

ノラは黒のドレスを着ている。今日はノラの誕生日。ノラの恋人は外国にいるが、あたかも目の前にいるように話しかけている。

電話がなった。サリーにデートの電話。サリーは大喜びなので、クリスタルが「軽くみられるわよ」と注意する。

ノラに男性が誕生日プレゼントを持ってきた。その男性はノラにアプローチしているが、恋人がいるので断っている。代わりにクリスタルが、その男性と出かけた。

ノラはロウソクを点ける。恋人から来ている手紙をわくわくしながら開けた。しかしその内容はノラへの別れを告げるものであった。「入院した時に出会ったアンジェリカという看護師と一緒になる」。

ノラは手紙をくしゃくしゃにしてテーブルの上に投げた。泣き出した。

ここで電話。かけたのはハリー。ハリーはクリスタルにかけたつもりだが、お互いに状況をよく理解しないままブルー・ガーディニアで会うことになった。

後ほど帰ってきたサリーがノラへの手紙を読んだ。

◆ ブルー・ガーディニアで会う

ハリーが席で待っている。ノラが入ってきた。声をかけた。人違いなのだが、ハリーは気がついてない。

もっとプレイボーイのハリーにとっては誰でもよかったのである。

パールダイヴァーというカクテルを飲んだ。「おいしい、でも強いわ」。ノラは振られた悲しみもあってか、何杯も飲んだ。

ナット・キング・コールが「ブルー・ガーディニア」を歌っている。

目が見えない女性が「この店の名物のブルー・ガーディニアはいかが?」とトレイに乗せたブルー・ガーディニアを持ってきた。

ハリーが声を出すと「ハリー・プレブルさんね」ときちんと判別した。ノラはそれを買って胸につけた。

ノラは酔っぱらってきた。目つきが定まらない、同じことを喋る、体がフラフラしている、機嫌がよくなった、怪しげに微笑む、ハリーに寄っかかる。

◆ ノラは逃げた

二人は車に乗った。「どこに行くの?」「僕の家、友達が何人か来る」。注、「友達が来る」というのは実は嘘。

ハリーの家に入った。ノラはフラフラ。しかしまた飲んだ。

ハリーはレコードをかけた。先ほどと同じ曲「ブルー・ガーディニア」。

ノラはソファに倒れこんだ。靴を脱いた。ハリーがコーヒーを持ってきたが、ノラはほとんど寝ている。

ハリーはライトを消す。「誕生日おめでとう」と言ってキス。ノラは恋人の手紙のことを話して、相手が違うのに気がつく。

「帰る」というと、ハリーは阻止する。胸に飾ったガーディニアが落ちた。

ノラはハリーを突き飛ばして、靴も履かないで、雨の中を帰った。

朝になってサリーとクリスタルが起きたが、ノラが寝たままでなかなか起きない。

ノラがやっと起きたので「昨日はどうしたの?」と聞くが「どうやって帰ってきたか覚えてない」。

◆ ハリーは死んだ

ハリーの家に警察が来ている。ハリーが死んだ。死体を発見した掃除係の女性に聞いている。

23センチの靴が残されている。血がついたハンカチもあり、ブルー・ガーディニアも落ちている。

ケイシーとアルも来て取材している。「画家が音楽とともに殺された」。

◆ 電話局

ハリーが前日いた電話局に警察が来て聴取している。順番に交換手に聞いていく。ノラはドキドキ、ドキドキ。

それとブルー・ガーディニアにいた盲目の女性も来ていて聴取されている。「女性はやさしく落ち着いた声」と証言。そしてはっと思い出して「女性のドレスはタフタだった」。ドレスが擦れる音で分かったらしい。

ノラは聴取の順番が回ってくる前に「気分が悪くなった」と業務を代わってもらって帰った。

ノラは(電話局の)玄関に行ったが、外に警官がいたので、陰に隠れて後から出た。

◆ タフタのドレスを処分

三人のアパート。新聞は事件のことを報じている。サリーが新聞を読上げるとノラがイヤな顔をするので「振られた八つ当たり?」という。

ノラは夜中に起きて、昨日来ていたドレスを取り出して外の焼却炉で焼いた。夜中に焼却炉を使うのは違法なので警官に注意された。

◆ ケイシーは犯人に手紙を書いた

ケイシーは「本事件で何とかスクープを」と頭をひねった。ひねりにひねって「犯人に手紙を書く」というアイデアが浮かび上がった。

犯人に対して「ケイシーに連絡を」と呼びかける。「私はあなたの味方です」と付け加えてある。もちろん、そうは言っても罪を免れるわけではないが、悩んでいる犯人には効き目がある。

ケイシーのところにはたくさんの電話がかかってきた。無関係のいたずら電話か、「実は私が犯人です」というものである。しかしピンとくるものはないので、ケイシーは電話を断るのに忙殺された。

ついでながらヘインズ警部もケイシーのところにいたずらで電話をかけたりした。

ノラは悩んだが「あなたの味方」が気に入った。しかし別人の振りをする。

ノラは電話ボックスから指定された番号に電話をかけた。受話器をハンカチで覆っている。ノラが「スエードの靴、23センチ、左のかかとが取れかけている」と言うとケイシーは信用した。

しかし電話ボックスの外に警官がうろうろしていたので、慌てて逃げ出した。

迷った後しばらくしてまた電話をした。今度はハンカチをしていないので「さっきの声と違う」と言われたが「さっきは私ではなく知人だったの」とごまかした。

◆ ケイシーとノラが会う

二人は会った。ノラは「彼女は怖かったのよ」と三人称で話す。

「彼女は殺人の記憶はない」「自分で頭を殴ったとは思えない」。

小さなレストラン。食事もした。話したせいかノラも少し笑った。店主が見ている。

ケイシーは「次は直接会いたい」と言って夕刊締め切り前の時刻を指定した。

二人はレストランのドアに行ったが、ちょうどケイシーの知人が入ってきて、ケイシーはノラを見失った。

ケイシーはオフィスに戻ってアルに「代理が来た。まれにみる女性だった」と話した。つまりケイシーはノラが気に入ったようである。

◆ ノラが捕らえられた

ノラが帰ってきた。クリスタルが起きていた。そして「タフタのドレスはどうしたの?黒いスエードの靴は?」と聞く。ドレスを借りようとしたらしい。

さらにクリスタルはノラがいろいろ怪しいことを指摘した。ノラは泣き崩れれた。

前日会った店にケイシーが来た。クリスタルが待っていた。しかしクリスタルは「私が犯人じゃないの」と言って、隣の席を指さした。ノラがいた。

「まさか君だったとは?」。ケイシーは、ノラと分かってがっかりしたようである。ノラは恋人に振られて、ハリーとデートしたことを話した。

「本当は殺したかどうか分からないんだろ?」「それ以外に説明がつかない」。

ここで警察が入ってきてノラを逮捕した。ノラは怒る。「また男に騙された。罠だったのね」。

ケイシーを弁護しておけば、警察に密告したのはレストランの店主。

◆ 事件現場でかかっていた曲

ノラは警察に連れていかれて、指紋の採取、撮影、聴取が行われ、新聞に載った。

ケイシーはアルと飲んでいる。アル「惚れたのか?」ケイシー「そうかもな」。

ここでも音楽がかかっているが、ケイシーは「死体発見時にかかっていた曲は、ノラが言っていた曲と違う」と気がつく。注、なんの曲は明示されない。

ヘインズ警部に連絡した。二人で納入したレコード店に行く。担当者のローズ・ミラーを呼び出してもらう。

ミラーは「すぐ行くわ」と言ってトイレに入った。グラスを割って手首を切った。

ケイシーとヘインズは待っていたが、突然叫び声が聞こえた。トイレで傷ついたミラーが発見された。

補足。事件時にかかっていた曲と犯人はストレートに結びつかないが、それは許す。

◆ ローズ・ミラー

ミラーが警察で真実を話した。ケイシーもノラも聞いた。クリスタルとサリーも聞いた。

ミラーはハリーの自宅を訪ねて行った。しかしハリーは冷徹な態度。

ハリーが曲をかけて、下に落ちていた(ノラが落とした)ガーディニアを拾おうと体をかがめた時に、暖炉の引っかき棒でハリーの頭を殴った。何度も殴った。逃げ出した。

自供した後ミラーは目を閉じた。

注、ミラー(ルース・ストーリー)とノラ(アン・バクスター)はわりと似ている。

◆ ラスト

ケイシーが警察からでてきた。外で待っている。事件が解決ということで、他のメディアも集まっている。

ノラ、クリスタル、サリーが出てきた。

ここでケイシーとノラが抱き合って喜ぶというラストになる。はずだったが、ノラとクリスタルはケイシーの横を何も言わずに通り過ぎた。サリーはケイシーにちょっと話して二人を追いかけた。

クリスタルはノラに「後ろを向いたらダメよ。軽くみられるわよ」。ノラは「もちろんよ。任せといて」。
 


■ 出演作

アン・バクスター
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia
(1950)彼女は二挺拳銃/A Ticket to Tomahawk
(1950)イヴの総て/All about Eve
(1952)人生模様/最後の一葉/O. Henry's Full House
(1956)十戒/The Ten Commandments
(1953)私は告白する/I Confess
(1946)剃刀の刃/THE RAZOR'S EDGE

◆ アン・サザーン
(1964)不意打ち/Lady in a Cage
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia

◆ レイモンド・バー
(1949)陽の当たる場所/A Place in the Sun
(1953)コルシカの嵐 The Bandits of Corsica
(1948)脱獄の掟/RAW DEAL
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia

◆ リチャード・コンテ
(1946)記憶の代償/SOMEWHERE IN THE NIGHT
(1949)深夜復讐便/THIEVES' HIGHWAY
(1959)コルドラへの道/They Came to Cordura
(1968)セメントの女 Lady in Cement
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia

◆ リチャード・アードマン
(1952)サンフランシスコ物語/The San Francisco Story
(1951)犯人を逃がすな/Cry Danger
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia

◆ ジョージ・リーヴス
(1939)風と共に去りぬ/Gone with the Wind
(1949)サムソンとデリラ/Samson and Delilah
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia