■ I Confess
神父マイケルは殺人を告解された。当然その内容は秘密にしなければならない。
犠牲者はマイケルと今は国会議員の妻となっているルースとの昔の関係をネタに二人を脅迫していた人物。
その夜、マイケルとルースは会っていたが、マイケルのアリバイが証明できず、マイケルが起訴された。
製作:1953年 原作:ポール・アンセルム 脚本:ウィリアム・アーチボルド、ジョージ・タボリ監督:アルフレッド・ヒッチコック
■ はじめに
登場人物(キャスト)
マイケル・ローガン(モンゴメリー・クリフト) 神父
ルース・グランドフォート(アン・バクスター) マイケルの元恋人、ピエールの妻
ピエール・グランドフォート(ロジャー・ダン) ルースの夫、国会議員
オットー・ケラー(O・E・ハッセ) ドイツからの亡命者、教会に勤務
アルマ・ケラー(ドリー・ハース) オットーの妻、教会に勤務
ヴィレット(オヴィラ・レガーレ) 殺人事件の被害者
ラルー警視(カール・マルデン)
ミレ神父(チャールズ・アンドレ)
ベノア神父(ギルス・ペルティエ)
場所はカナダ・ケベック。ケラー夫妻はドイツからの亡命者で、マイケルの紹介で教会で働くようになった。またヴィレットの家で働く日もある。
話の舞台の教会は「セント・マリー教会」。
■ あらすじ
◆ 「ヴィレットを殺した」
夜中、オットー・ケラーがマイケル・ローガンを訪ねてきて「告解したいことがある」と話すので、二人は告解室に入った。
「ヴィレットを殺した。今夜彼の家に金を盗みに行った。騒がれたので殺した」との内容。
オットーと妻のアルマはドイツから逃れてきて、マイケルの世話で教会の仕事をしている。しかし生活は苦しく、もっと金が欲しかったらしい。
「あなたが受けた恩をアダで返した」と謝った。
マイケルは告解を聞いたが、その内容を他の人に話すことはできない。神の代理として聞くだけである。
オットーは、その後に妻のアルマにもその事実を話した。
◆ 事件の捜査開始
オットーはヴィレットの家でも働いていて、次の日はヴィレットの家に出かけた。当然ながらヴィレットの死体を発見し、何食わぬ顔で警察に届けた。
事件の捜査が行われた。一方まわりには野次馬が集まっている。ルースも現場に来た。国会議員ピエール・グランドフォートの妻である。
マイケルも来た。ルースがマイケルのそばに来て「これで私たちは自由ね」と囁いた。ルースはヴィレットからマイケルとの関係で脅されていた。
オットーは教会に戻った。神父などが事件について話しているので「私が第一発見者です」と言う。他の人が立ち去った後、マイケルに「自首はできません」と言うと、マイケルは「なんの話だ?」と知らん顔を装う。「私はどうすればいいのですか?」。
警察は捜査を開始した。二人の子供の情報。「事件の夜、あのそばを通ったら人を見た。神父よ。でも顔は見ていない」。警察は「このことは誰にも言わないでくれ」。
子供が「神父よ」と証言したのは、オットーが偽装のために神父の法衣を着ていたため。
「昨晩外出した神父を割り出せ」との指示がでた。町中の教会のすべての神父が調べられた。すべてアリバイが確認された。しかし一名だけ、すこしアリバイが怪しい。
◆ ルース・グランドフォート
マイケルは警察に呼び出された。グランドフォート夫妻も呼び出された。
警察にはマイケルとルースが会っていたことが知られた。9時から11時。
ルースはヴィレットと会う約束をしていた。その理由を警察に問われた。「彼(ヴィレット)に脅迫されていました。そのために神父と相談を」「ご主人は?」「それは夫は無関係のことです」「夫に話せないことが、神父に相談できると?」「彼とは旧友です」。
「なぜ恐喝されていたのですか?」「それは答える必要はありません」「何を怖れているのですか?」
ルースはマイケルと秘密の関係が会ったことを示唆した。ピエールの前でははっきりとは言えない。
ルースは「神父にはアリバイがあります」と言ってピエールと一緒に帰った。
マイケルも帰った後「ヴィレットの死亡推定時刻が分かった。午後11時半」との報告。
警部は「二人が別れたのは11時。その後に犯行可能」と呟いた。ルースの話はアリバイにはならず、逆にマイケルの動機を疑われる結果となった。
◆ 裁判
マイケルは逮捕・起訴された。裁判となった。ルースやオットー、アルマも傍聴している。
血がついた法衣がマイケルの部屋から発見された。医師がその血はヴィレットのものであると証言。
オットーへの尋問。11:45頃。窓を見ると誰かか入ってきた。ローガン神父が祭壇の前に膝まづいていた。「悩んでいるのか?」と聞くと一人にさせてほしいと答えた。
オットーのとんでもない答えをアルマが悩まし気に聞いている。
続いてルースへの尋問。これはルースとマイケルの不倫関係を聞くもので、ルースは長々と続くしつこい質問に怒りながら「結婚後も被告のことは好きではあったが、付き合ってはいない」と答えた。
マイケルへの尋問。法衣について。「あなたの法衣ですか?」「ノー」「誰かから借りた?」「ノー」「なぜあなたのカバンの中にるのか?誰かが入れたのか?」「イエス」「心当たりは?」「(分かってはいるが)言えません」。
次にはルースとの関係が、ルースの時と同じように繰り返される。マイケルは大声を上げて怒った。
当日の行動について。「ルースと夜11時に分かれて、その後の行動は?」「教会に戻った」「何をした?」「自分の部屋に戻った」「誰かに会った?」「オットー・ケラーに会った」「彼は悩んでいるあなたを見てなんと言ったか?」「悩んでいたのは事実ではない」「ケラーはあなたが悩んでいるのを見ている」。
「ヴィレットに恐喝されたあなたは凶器で殴った?」「ノー」。
これらの過程を経て、陪審員団は「証拠不十分で無罪」という判断をした。
◆ オットーが死亡
マイケルは釈放された。しかし「証拠不十分で無罪」ということなので、一般の人々から見れば、十分に疑わしい状態である。
マイケルが裁判所からでると、怒りに満ちた人々が待ち構えていた。マイケルはそれらの人々に囲まれて、もみくちゃにされた。
これを見たアルマが走り出して叫んだ。「私の夫が...」と言うと、オットーは拳銃を取り出して、自分の妻アルマを撃った。アルマは倒れた。その後アルマは死亡。
オットーはホテルに駆け込んだ。ロビーの奥で拳銃を構えている。警察はロビーに入り込んでオットーと対峙した。これを見てグランドフォート夫妻は現場を立ち去った。
マイケルは「私に行かせてください」と警察に言って、オットーに近寄った。オットーは大声を上げてマイケルに拳銃を向ける。マイケル「アルマが死亡したっ!」。
警察は「銃を捨てろ」と言いながらオットーに迫る。オットーが引き金を引いた。しかし警官隊が引き金を引き、オットーは撃たれて倒れた。
■ 補足
◆ オットーは卑劣である
オットーは冒頭でマイケルに謝罪しながら犯行を明かす。マイケルには仕事を紹介してもらった恩義がある。しかし金目的でヴィレットを殺した。
おまけに偽装のために法衣を着ており、ヴィレットがルースとマイケルを脅していたという関係があったので、マイケル疑われることになった。
しかしオットーは、それでも自分の罪を逃れるために、マイケルを庇おうとはしない。マイケルは守秘義務を守り、オットーから打ち分けられたことを警察に明かさない。
◆ マイケルとルース
二人は幼馴染。大人になって付き合い始めた。
戦争が起こりマイケルは志願した。二人は手紙をやり取りしたが、そのうちマイケルからの手紙が来なくなった。
ルースは国会議員のピエール・グランドフォートの元で働き始めて、そして結婚をした。
戦争が終わりマイケルが帰ってきた。
二人は会ってフェリーで島に行った。しかし嵐が来てフェリーが止まり、雨をしのぐために小屋に駆け込み朝まで過ごした。
朝になって土地の所有者ヴィレットが来てクレームをつけられた。
ヴィレットはルースがグランドフォートの妻であることが分かり恐縮した。マイケルはこの時にルースが結婚していることを知った。
その後、ヴィレットはルースとマイケルを脅迫するようになった。国会議員であれば、スキャンダルは許されない。そこを見越しての脅迫である。
その後、マイケルは神父になった。
■ 蛇足
告解はカトリックにおいて行われる「自分の罪を神に告白し、許し/赦しを願う」もの。実際にはカトリックの神父が、それを聞く。
告解室は、二人が入れる小さな部屋で、横幅を部屋の大きさに合わせたテーブルが置いてある。両側にイスが一つずつあり、それぞれのイスの横にあるドアから神父と告解する信者が入室する。
この狭い空間で信者は、自分が犯した罪を神父に告白する。神父は神の代理として告白を聞く。その内容は誰にも決して喋ってはいけない。
■ 出演作
◆ モンゴメリー・クリフト
(1948)赤い河/Red River
(1949)女相続人/The Heiress
(1949)陽の当たる場所/A Place in the Sun
(1953)終着駅/Terminal Station
(1948)山河遥かなり/The Search
(1953)私は告白する/I Confess
◆ アン・バクスター
(1940)スワンプ・ウォーター/Swamp Water (1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia
(1950)彼女は二挺拳銃/A Ticket to Tomahawk
(1950)イヴの総て/All about Eve
(1952)人生模様/最後の一葉/O. Henry's Full House
(1956)十戒/The Ten Commandments
(1953)私は告白する/I Confess
(1946)剃刀の刃/THE RAZOR'S EDGE
◆ カール・マルデン
「死の接吻/Kiss of Death(1947)」
「欲望という名の電車/A Streetcar Named Desire(1951)」
「誰が私を殺したのか?/Dead Ringer(1946)」