■ VENGEANCE VALLEY
牧場主の息子リーはリリーと浮気して、リリーは妊娠・出産。しかしリーは責任を取ろうとしない。
牧童頭のオーウェンは、リーやリリーのために尽力するが、リリーの兄弟からはリリーの相手と疑われる。
全く反省しないリーは、オーウェンを亡き者にしてオーウェンに責任を押し付けようとする。
製作年:1951、監督:リチャード・ソープ、脚本:アーヴィング・ラヴェッチ
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
アーチ・ストロビー(レイ・コリンズ) 牧場主
ストロビー夫人(-) アーチの妻、すでに死亡
リー・ストロビー(ロバート・ウォーカー) 息子
ジェーン・ストロビー(ジョーン・ドルー) リーの妻
オーウェン・デイブライト(バート・ランカスター) 牧童頭
ヒューイ(カールトン・カーペンター) 牧童、リリーが好き
ウィロビー(ウィル・ライト) 料理係
リリー・ファスケン(サリー・フォレスト)
ハブ・ファスケン(ジョン・アイアランド) リリーの兄
ディック・ファスケン(ヒュー・オブライアン) リリーの弟
コン・アルヴィス保安官(ジム・ヘイワード)
バーク夫人(グレイス・ミルズ) 牧場主
ハーブ・バケット(テッド・デ・コルシア) 牛泥棒
デイブ・アラード(グレン・ストレンジ) 牛の仲買人
本作ではヒューイのナレーションが流れている。ストーリーは「復讐/VENGEANCE」とは無関係。
本作当時ジョン・アイアランドとジョーン・ドルーは夫婦。
■ あらすじ
◆ 初期状態
オーエンは、アーチに育てられて牧童頭となった。ジェーンもアーチに育てられてリーの妻となった。
リーはリリーと浮気して、リリーは妊娠・出産、リリーは誰が相手なのかを明かさない。
リリーはバーク夫人の家に身を寄せている。リリーは「彼(リー)には迷惑はかけない」と言っている。今後、バーク夫人が仕事を世話してくれるらしい。
ジェーンはリリーの世話をしている。しかし相手がリーであるとは知らない。
張本人のリーは責任逃れで知らん顔をしている。
ヒューイはリリーが好き。オーウェンはリーとリリーの関係はリーから聞いて知っている。
◆ オーウェンはリリーのことで誤解された
オーウェンとリーは冬の放牧の旅から戻ってきた。
オーウェンはリリーを訪問して今後のために500ドルを与えた。
リリーは誰が父親なのかを明かすのを拒否してした。またオーウェンもリーを庇って本当のことを言わない。
ファスケン兄弟はオーウェンの行動を見て、オーウェンが父親であると誤解して争いになった。
アーチが500ドルを引き出したのを見て、ジェーンはリーがリリーの相手であることを理解した。
しかしリーはジェーンに「オーウェンを助けるためだ。オーウェンがリリーとできちまった」ととんでもない大ウソ。しかしジェーンは、この言葉を信用していない。
ジェーンはリーと別れようとしたが、オーウェンはアーチの恩を説いてジェーンを説得した。
◆ ファスケン兄弟とトラブル
オーウェンとヒューイは牛集めの委任状のサインをもらうためにバーク夫人の牧場を訪れた。
外にリリーがいたので、リリーが好きなヒューイは話しかけたが、あまりうまく話せない。
サインを貰った後、リリーとオーウェンが話す。リリーは「この件(相手が誰であるか)は秘密にしましょう。もう迷いはないわ」と決意が固まっている。
ファスケン兄弟がきた。納屋でオーウェンと話す。二人は「オーウェンがリリーの相手」と思っているので、拳銃を突き付ける。オーウェンはリリーとの約束があるので黙っている。
オーウェンが殴られた。リリーがライフルを構えて現れた。
保安官を呼んで二人は捕まり一週間入れられることになった。一週間が過ぎれば、当地から追放される。
オーウェンはリーに「ジェーンと一緒に、この町を出ろ、一からやりなおせ」とジェーンに言ったこととは矛盾したことを言う。
ジェーンは、部屋にカギをかけてリーを締め出した。
◆ 共同経営
オーウェンは「もう長い間世話になっているので出ていく」と言っている。アーチは「いてくれ」と引き留める。
リーはアーチに「牧場を共同経営にしたい」と提案した。アーチは「いずれオーウェンとリーに半々に分割する」と申し渡した。
これが行われるのは、まだ少し先のことであるが、リーはこれを不満に思った。
またリーはジェーンとオーウェンが不貞の関係にあるものと誤解した。
◆ 牛泥棒
もうすぐ牛を売却するために牛集めが行われる。
ヒューイが「山の中でうちの牛を見つけた」と報告した。オーウェン、ヒューイ、リーの三人で調査に出かけた。
馬の蹄鉄の跡がある。跡をつける。河を渡った気配があったが、これを偽装と判断。新しい足跡を見つけて追跡した。
ハーブ・バケットの牧場に辿り着いた。バケットはしらばっくれるが、馬の蹄鉄の特徴を指摘すると黙った。
しかし牛はいないのでオーウェンは「すでに処分したんだろ。牛を盗んだらどうなるか?」。
オーウェンはガンベルトをヒューイに預けて拳を構えた。バケットはナイフを構えた。ヒューイがバケットのナイフを撃ち落とした。
格闘して勝ったので「お前の牛をいただく」と言う。リーは反対したが、ヒューイが賛成したので、バケットの牛を連れて帰った。
リーは残ってバケットと秘密の話をした。リーはバケットに金を払った。
先ほどの格闘でオーウェンがケガをした。そのケガをジェーンが手当てをしている。リーが入ってきて「二人にしてくれ」と言うがジェーンは拒否した。
◆ 牛集め
リーはバケットのところへ行った。「牛集めは山の西側と東側に分かれて行う。自分は東側の担当」。
そして「ファスケン兄弟が明日釈放される。当地から列車で追放されるが、二人を連れ戻して東側の部隊に入れてほしい」と依頼した。
西と東に分かれて作業が行われる。
リーとオーウェンは「牛集めが終わったら、ここを出る」「お前がゼロからやり直すのか?」とやり取りする。
ファスケン兄弟が、途中で列車を下りて、東側の部隊に合流した。
牛集めは、何日も何日も続いた。ストロビー牧場の牛と委任状がある牧場の牛だけを集める必要がある。焼印を確認して分類する。
◆ リーが勝手に牛を売る契約をする
リーはデイブ・アラードという牛の仲買業者と出会った。テキサスまで行って牛を買い付けるとのこと。
ここでリーは3000頭の牛を売る話を持ち掛ける。アラードは、その話に興味を示し、14000ドルで手を打った。
アラードは予定が変わったので、電報を打ちに行く。
アラードは西側で作業をしているオーウェンに会った。「お宅の牛を買ったよ」と言われてオーウェンは「それは何かの間違いだ」というが、それ以上は追求しない。
アラードは立ち去った。オーウェンはヒューイと「牛を売った金で逃げる気だ」と話す。
◆ オーウェンとリーが話す
牛集めはさらに進捗、東と西の部隊が接近してきた。
オーウェンとリーが話した。「3000頭売ったな」「なんのことだ」「アラードに売っただろ」「もう契約した、遅い」「俺は牧童頭だ」「俺は経営者だ。命令するのか」「親父の牛だ。取り消せ」。
◆ オーウェンが襲撃された
ヒューイが「ファスケン兄弟を見た。牛集めに加わっていた。リーは知ってるはずだ」と報告。
リーは「牛の売却を取り消すので付き合ってくれ」とオーウェンを誘う。実はこれが罠である。
オーウェンとリーはアラードを追いかけた(とオーウェンは思っている)。
途中でファスケン兄弟が待ち構えている。
ファスケン兄弟が銃撃してきた。リーは逃げ出した。オーウェンと兄弟の銃撃戦。
オーウェンはディックが岩の間を移動する時に撃ち倒した。
事態を察知した牧童たちが駆けつけた。ハブは逃げたが射殺された。オーウェンはリーを追いかけた。
リーは川のそばまで逃げてきたが落馬した。オーウェンは「オヤジのところに行こう」と言ったが、リーは引き金を引いた。オーウェンはリーを射殺した。
戻ったオーウェンはアーチとジェーンにすべてを話した。
■ 補足
本作は当時の牧畜業の特徴がよく紹介されている。
当時の牧畜業は放牧であって、牛を草が生えている草原に放して勝手に食べさせる。その場所で草がなくなれば、また移動する。
複数の牧場の牛が放されているので、焼印をつけて区別をする。
牛を売りに行くときは、焼印をもとに牛を集める。本作のように他の牧場の牛も依頼されて一緒に売却することもある。本作では依頼状を貰っている。「赤い河/Red River(1948)」(ジョン・ウェイン、モンゴメリー・クリフト)でも他の牧場主の牛を、ついでに売却する話が展開する。
1862年にホーム・ステッド法が施行される。これは簡単に言えば、西部の未使用地を無料で与えるものである。これを気に開拓者(農場主)が西部に押し寄せた。
誰の土地でもないところで牧畜をしていたところに開拓者たちが押しかけて争いになる。法的に言えば、開拓者に正当性がある。
牧畜と農業の対立は西部劇の大きなテーマである。
後ほど牧畜業は、放牧ではなく、牛を囲って飼って、餌を人間が与える形式に変換する。
■ 出演作
◆ ロバート・ウォーカー
(1943)キューリー夫人、伝記映画/Madame Curie
(1945)夢のひととき/Her Highness and the Bellboy
(1947)大草原/The Sea of Grass
(1951)復讐の谷/Vengeance Valley
(1951)見知らぬ乗客/Strangers on a Train
◆ ジョン・アイアランド
(1946)荒野の決闘/My Darling Clementine
(1957)OK牧場の決斗/Gunfight at the O.K. Corral
(1948)赤い河/Red River
(1949)ウォーキング・ヒルズの黄金伝説/The Walking Hills
(1950)誇りを汚すな/THE RETURN OF JESSE JAMES
(1948)脱獄の掟/RAW DEAL
(1946)目覚めと夢/Wake Up and Dream
◆ バート・ランカスター
(1947)真昼の暴動/Brute Force
(1947)暗黒街の復讐/I Walk Alone
(1948)私は殺される/SORRY, WRONG NUMBER
(1949)裏切りの街角/Criss Cross
(1952)真紅の盗賊/The Crimson Pirate
(1953)白人酋長/His Majesty O'Keefe
(1954)アパッチ/Apache
(1957)OK牧場の決斗/Gunfight at the O.K. Corral
(1960)許されざる者/The Unforgiven
(1960)エルマー・ガントリー/魅せられた男/Elmer Gantry
(1951)復讐の谷/Vengeance Valley