読み進めるの、めっちゃつらい。
だけど、間違いなく名作。
「星を掬う」 町田そのこ
≪あらすじ≫
千鶴はどこまででも追ってくるDV元夫に悩まされていた。
経済的、精神的、体力的にも、「やるか、やられるか」の状態だったとき、賞金が欲しくてラジオ番組にある投稿をした。
小学生だった千鶴が過ごした、母とふたりきりの夏休みの思い出。
その後、母は父と離婚して千鶴を捨てた。
ラジオ番組の投稿を聴いて、千鶴に会いたいという女性が現れ……。
つらくて、読むのをやめそうだった
この小説は、最初から最後まで容赦がない。
千鶴は母に捨てられ、父方の家族と一緒に暮らしてもいい思いはできず、結婚相手から暴力を振るわれ、離婚しても居場所を突きとめられてお金をむしり取られる。
そんな生活を送っています。
母と過ごした最後の夏休み。
すごく楽しかったのに、その直後に母は自分を捨てた。
ラジオの投稿を聴いたある女性の出現をきっかけに、千鶴の生活が一変します。
でもそれは、これまで苦労してきた千鶴にとってのボーナスタイムではなく、違う種類のつらさを経験するものでした。
元夫に追い詰められる最初のパートだけで、読むのをやめようか迷いました。つらすぎて。
なぜ、この小説に興味を持ったのだろう……と思うくらいに。
そう思う人もいるかもしれないけれど、そして、読み進めてもまた違うつらさがあるけど、それでも読んでよかった!と心から言えるので、もし読めそうなら最後まで読んでほしいです。
母と同じ道、違う道、どちらを選ぶ?
この物語は、事前にあらすじやもっと先の内容を知らずに読んだほうがいいと思うので、それには触れずに……
婚活のカウンセリングや講座で、このような相談を受けたことがあります。
両親の仲が良くないので、幸せな家庭を築けるのか心配。
自分も親のようになるのではないかと思ってしまう。
まっさらな状態で生まれてきた子どもが、最初に影響を受けるのは親の価値観です。
育った環境、言われたこと、親や家族の価値観が、その人を形成します。良くも悪くも。
だからといって、親と同じ人生をたどるわけではありません。
ただ……
千鶴の母がなぜ娘を捨てたのかは、母とその母親(千鶴の祖母)との関係が一因となっていました。
詳しい内容はネタバレになるのであれですが……
つまり、千鶴の母は自分の母と同じになりたくなくて、違う道を選んだということ。
だけど、その結果、娘である千鶴は幸せになれなかった。
育った環境、親との関係性とはまったく違う人生を選択することはできる。
でも、それが自分や子どもにとっての幸せだとは限らない。
それがつらくて、やるせないです。
まったく違う物語ですが、母と娘の3代に渡る選択・人生を描いた「つみびと」(山田詠美・著)でも、同じように感じました。
この物語は母親によるネグレクトの末に子どもが餓死するという実際に起こった事件から想起されているので、「星を掬う」以上に読むのに覚悟がいります。
母親なんだから、〇〇すべき?
千鶴は母親が自分を捨てたことが許せず、自分のこれまでの人生や現状がこんなにつらいのは母親のせいだと考えます。
ですが、当の母親は謝るどころか……という感じ。
この物語には、幼い娘が懐いてくれず、娘に捨てられた母親が出てきます。
ところが、娘は自分で父親を選んだにも関わらず、いい人生を送ることができなかったために、自分のもとを去った母親を恨みます。
母親が子どもを捨てるなんてありえない!
母親なんだから〇〇して!
と要求する被害者ムーブが、絶妙に読者を苛立たせます。
この母親と千鶴の母は、とった行動はほぼ同じですが、成長した娘への向き合い方は対照的だといえます。
また、幼い頃に両親を亡くして壮絶な人生を歩んできたのに、素直で優しくて美人でいい子なエマを見て、千鶴は自己嫌悪に陥ります。
行き場のない感情、自由に動かない体。母から愛情や優しい言葉をかけてもらえない寂しさ。
さまざまな感情が、千鶴を苦しめます。
千鶴がラクに生きるためには
千鶴は周りの人や母親とぶつかり、時に傷つけられたり、傷つけたりしながら、少しずつ自分や母親を受け入れていきます。
いわゆる、落としどころを見つけた、という感じです。
それまで、いろんなことがありました。
それを経て、今までの人生で起こったこと、今の自分の性格や気持ちなどを母のせいにしてきたけれど、自分のせいだったんだな……と思うようになります。
自然とそう思えるようになるまでの道のりは、かなりの荒療治なのだけど……。
この物語を読む前後から、「自分の選択に納得する」というのが、ブレずに人に振り回されず、楽に生きるために必要なことだな、と考えていました。
そして今、その思いはさらに強くなりました。
千鶴は母が自分を捨てた理由を知りたがっていました。
そして母と再会したら、「あのときはごめん」と謝ってもらえると期待していました。
だけど、実際の母親は少し違いました。
千鶴の母親は、最後まで自分の選択の責任をとろうと心に決めていたのだと思います。
どのような選択をすればいいのか考え抜き、その選択に納得し、言い訳もしない、許しを求めることもしないと決めたのだろう、と。
だからこそ、「お母さんがこうしてくれれば許せるのに」という、相手の態度や行動次第で選択や考えを決める千鶴は戸惑い、傷つき、モヤモヤしてしまったのです。
人に期待するのは自然なことだし、何でも自分に原因や責任を求める「自責思考」は必要以上に自分を苦しめてしまうこともあります。
でも、「相手さえこうしてくれれば」と他者に原因や責任を求め続けると、苦しみや恨みからいつまでも抜け出せないかもしれません。
だって、その人は自分の思い通りにならないから。
その人はその人で、自分の判断基準で選択をして生きているから。
「自分の選択に納得する」とは?
心理を学んで16年以上経ち、知識をつけて実践することで、ずいぶんラクになったなぁと感じます。
この数年で、さらに自分らしく、ストレスを減らして生きるための考え方として
1.徹底的に、自分にとっての優先順位を考える
2.自分の選択に納得する
というのが、自分には合っているなと思うようになりました。
1は、SNSや周りの人を見ると、すべてを手に入れているように見えて、自分もいろんなことに手を広げなければ!と思っていました。
だけど、何でも手に入れることはできません。
1日は24時間だし、体力だってずっとフルパワーなわけじゃない。
「人は人、自分は自分」だと割り切り、自分にとっての優先順位をとことん考えました。
すると、何かを選べばほかのことが犠牲になるという感覚がなくなり、「わたしはこれが一番大事なんだ、今のところ」と確認できて、思いも強くなりました。
もちろん、思い通りにいかないこともあります。
「こんなことなら、あのとき〇〇していれば……」なんて思いがよぎることもありますが、「でも、優先順位をしっかり考えて決めたことだから」と気持ちを切り替えられました。
2は、「納得できる選択をする」というよりも、「選択に納得する」という言い方がしっくりきています。
人の価値観や性格、優先順位は、人によってまったく違います。
当たり前といえばそうなのですが、忘れてしまうことも……。
ある状況になったときに、わたしはAという選択をするとします。それは、わたしにとってはすごく自然なことです。
だけど、ほかの人がBという選択をする場合があります。
それが自分にも関係がある場合であれば、「えぇ……。やだな」と感じてしまいます。
そう思うのも自然なこと。
そこで、「わたしの立場になって考えてほしい」とか、「この人もわたしと同じ状況になったら分かる」と考えると、ストレスがたまります。
なぜか?
その人は、その人の判断基準によって選択しているからです。
その人の立場が変わっても、その人の価値観・判断基準で考え、行動するでしょう。
そのときに、「なんてわがままなの!」と怒っても、相手には何も響かないでしょう。
だからこそ、「自分の選択に納得する」なのです。
わたしはわたしでこんな選択をする。
相手の選択は自分とは違うものだけど、それはそれで尊重はしたい。
そのうえで、どうすれば自分の選択に納得できるか考える。
という感じです。
相手の考えを尊重して何も言わずに受け入れる選択もあれば、「わたしはこう思う」と気持ちを伝えるという選択肢もあります。
たとえ人にモヤモヤすることがあっても、それに対して自分がどのような行動をとるのかよく考えて選択し、それに納得できたら、他人に振り回されることは減るのかなーって思っています。今のところ。
長くなりましたが、「星を掬う」と重なる部分があったので、持論を熱弁してしまいました。
「心理学」や「〇〇理論」、「〇〇療法」など、さまざまな手法がありますが、「これを取り入れたら、なんとなくラクかも!」という「考え方」に行きつくための、ひとつの手段だと思っています。
生き方を変えるのはラクな作業じゃないかもしれませんが、根を詰め過ぎずにいきましょう。
良いお年をお迎えください。
年末年始に本を読むなら、こちらがおすすめ。
幸せな話よりも反面教師になる本が多めです。
婚活カウンセラーが選ぶ、結婚がわかる100冊
1.この人と結婚するかも
2.スパルタ婚活塾
3.消滅世界
4.私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな
5.夏休み
6.怒り
9.愛する人に。 △
16.かわいい夫 ♡
33.くらやみガールズトーク ※取扱注意
36.オリーブの実るころ ※取扱注意
41.水歌通信 △
51.幸せについて ♡△
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