【心理学と結婚本】ゴールデンウィークに読みたい！ 辻村深月が描く「結婚の陰と陽」。

ゴールデンウィークに、集中して本を読みたい。

楽しいだけじゃなく、ちょっと重めの物語を。

という人におすすめの、結婚をテーマにした２冊の辻村作品を紹介します。

１冊目

盲目的な恋と友情 （新潮文庫） [ 辻村 深月 ] 594円 楽天

盲目的な恋と友情　　

結婚式から始まり、回想していく物語です。

物語が、「盲目的な恋」と「盲目的な友情」の２編にわかれています。

母親が元タカラジェンヌで、ずば抜けた美貌を持ち、しかも性格も良い主人公が落ちてしまう盲目的な恋。

そして、そんな主人公の友達による盲目的な友情。

ふたりは同じ大学で同じ部活をして、卒業後はルームシェアをします。

同じ時間を過ごしているふたりだけど、見えている世界がまったく違うところがこの物語の肝です。

２冊目

本日は大安なり （角川文庫） [ 辻村深月 ] 691円 楽天

本日は大安なり

人気の結婚式場のある１日を描いた物語です。

「この物語にはたくさんの登場人物が出てくるから、装丁は複数の人が描かれると思っていた。少なくとも、登場人物の双子は。だけど、あがってきたイラストには、ひとりの女性だけが描かれていた」

と、「第３回ビブリオバトル全国大会ｉｎいこま」のトークイベントで辻村深月さんが話してくれたので、気になって夢中で読みました。

大安のある日に挙式をするカップルたちと、ウェディングプランナーのそれぞれの事情と気持ちが丁寧に描かれています。

ちょっとしたトラブルはあったものの、つつがなく結婚式が進んでいた･･････と思っていたのに！？

この２冊を続けて読んで、辻村深月さんは、普通の人の背景（バックグラウンド）にあるものを描くのがとても上手だと思いました。

「普通の人の闇」というのはちょっと違っているし、「結婚の光と影」というのも違う。ってことで、「陰と陽」と表してみました。

背景は誰もが持っていて、人格を形成するのに大きく影響するものです。

心理学の交流分析という分野の中に、「禁止令」と「人生脚本」というものがあります。

子供の頃に親や学校の先生、周りの人から言われたことが、その人の価値観になると考えられています。

そして、「こんな自分だから、こんな人生を歩むだろう」という脚本を、１２歳ごろまでに書きあげ、脚本通りの人生を歩もうとするのです。

「禁止令」というのは、どんな育てられ方をしても、なんらかの禁止令にかかってしまうものです。

たとえば、生きていくうえで一番呪縛がきつい禁止令は、「生きていてはいけない」というものです。

これは、「あなたさえいなければ･･････」と言われることでかかってしまいます。

これ以外にも、たとえば運動神経がいい女の子に、「男の子だったらよかったのにね」と言ったがために、「女らしくしてはいけない」という禁止令がかかってしまい、男友達はできるけど、女性として見られるのは嫌だ！と思うこともあります。

また、良かれと思ってしたことが禁止令になることもあります。

過保護気味で何でも親が決めてくれたりすると、「自分で決めてはいけない」という禁止令にかかり、体調が悪いことで親がかまってくれると、「元気になってはいけない」という禁止令にかかることも。

つまり、どんなにひどい育て方でも、どんなに大切にされていても、なんらかの禁止令にはかかってしまうということです。

自分がかかっている禁止令に気づけば、人生脚本を書き換えることができますが、なかなか気づかなかったり、書き換えることは難しかったりします。

親や周りの人がいたから生きてこられたわけで、過去から現在までの自分の人生や人格を否定することになりかねないからです。

この２つの物語には、その人が歩んできた人生が描かれています。

「この人は、どうしてこんな考え方をするんだろう？」とか、「どうしてこんな行動をするんだろう？」と思うことがありますが、そのおおもとになっているのが「背景」なのだと、あらためて感じます。

あなたがそんな行動をするのは、こんな背景があったからなのね。と、登場人物のことを深く理解できます。

それと同時に、

たしかにそんな背景があったかもしれないけれど、もうそんな禁止令は手放してもいいんじゃない？

と、言いたくなります。

子供の頃につらい思いをしたかもしれない。だけどね、それを頑なに持ち続けて、変わろうとしていないのはあなたでしょう？

そう言いたくなったときに、「わたしはどうだろう？」とハッとして、自分の禁止令と人生脚本を見直すきっかけになるのです。

そして、そんな背景に縛られて、自分でもこじらせていることに気づいていない人を愛する人がいる、ということも教えてくれます。

結婚って、こういうものなのかも。

どちらの作品にも、陰の部分と陽の部分があります。

サッサと禁止令を手放して、幸せになるように人生脚本を書き換えよう！

そして、幸せになろう。

そんな風に思わせてくれる物語です。

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