結婚するふたりの家族も本人たちも、みーんないい人。
にやにやしながら読んでいたけれど、途中からモヤモヤ……。
こんなめでたい物語なのに、モヤるのはなぜ?
婚活カウンセラーが選ぶ、結婚がわかる100冊シリーズ
48冊目
「明日は結婚式」 小路幸也
≪あらすじ≫
信用金庫に勤めるパンが大好きな春香と、本の装丁デザインやイラストレーターをしている真平は明日、結婚式を挙げる。
真平の家は、祖父、父、妹がパンを焼き、母と高校生の妹が接客、真平が店舗デザインを手掛ける人気のパン屋である。
ふたりは挙式後から、真平の実家で同居をする。
それぞれが家族と過ごす最後の日、家族と本人たちの思いとは……。
いい人ばっかり過ぎてモヤる
春香の弟から始まり、それぞれの登場人物の結婚式前日の過ごし方と思いが語られる小説です。
それぞれの話から春香や真平の人となりも分かるし、家族のキャラクターや関係性なども見えてきます。
ほんとうに、みんないい人で、理想の家族で……
ただただにやにやしながら、「よかったねぇ」って感じで読める物語であり
こんな素敵な義実家に迎えられたい
とか
こんな素敵なお嫁さんが来てくれたらうれしい
と、読む人が自分の立場に当てはめながら、あっという間に読めてしまうのですが。
わたしはモヤッとしてしまいました。
自分の持つ結婚観が分かる
真平の家は、父方の祖父、両親、妹2人、真平の6人の大家族で、真平はパン屋以外の仕事をしています。
それなのに、なぜ同居する?
ここが一番の謎ポイントでした。
マンションの頭金を貯めるとか、子供ができたら別居するというように、作中では理由が述べられているのですが。
家族みんなが春香を歓迎していて、とてもいい関係を築いているので、同居後にトラブルになる心配もなさそう。
実家同士が電車で10分ほどの距離なので、春香はパン屋で残ったパンを毎日でも(自分の)家族に届けると言っています。
それを聞いて、「春香が出ていっても寂しくないだろう」と思う父。
パン屋の朝は早く、4時に起きて22時には就寝する生活です。朝は総菜パン用のおかずと前日のパンを食べるのがルーティンで、「楽な家に嫁いでよかったね」と喜ぶ祖母。
ここもモヤモヤポイントでした。
モヤッとする理由は、わたし自身の結婚観と違うからだと思います。
なぜモヤモヤするのかを突き詰めれば、自分でも気づかなかった結婚観が見えてきます。
たとえば、わたしの場合だと……
・新婚なんだから、ふたりだけで暮らしたい
・同居するのだから、家事をするのは当然
・自分の実家にしょっちゅう帰るなんてありえない
・毎晩、お風呂上がりに女性メンバー(妹2人、義母)で一緒にドラマを見る時間、なんか無理
・同居にメリットはあるが、ストレスもある
結婚観に良いも悪いもなく、自分が大切にしている考えでもあります。
だけど、あまりにも登場人物たちがいい人過ぎて、「わたしって、間違っているのかな……」って思ったりしました。
意外? 精神的に自立している家族
家族の仲がいいのは素晴らしいこと。
だけど、結婚して家を出ても、自分の家族とも、義家族とも仲よくしたい。夫との生活も手に入れたい。
それをみんなが良しとしてくれている。
そんな春香を欲張りだと思ってしまいました。
ところが
最後に登場する春香の物語では、「この家で寝起きをすることは二度とない」という春香の覚悟が見えました。
家族がどう、ではなく、結婚するのは自分と真平であること。
わたしと真平さんの家庭を築いていく、実家に来ることはあっても自分の家という感覚はもうない、そんな固い決意が語られていました。
これまで朝食は春香が持ち帰った食パンを食べていたのだけど、これからは真平の実家まで行って、お金を払って食パンを買うようにしよう、と家族が提案します。
2日に1回、家族の誰かがパンを買いに行く。
それだけ見れば、「そんなに急に、義実家と頻繁に関わらんでもいいのでは?」と思ってしまいましたが、これは春香がしょっちゅう実家に帰ってこなくてもいいようにと考えての提案だったのかもしれません。
こういうところから、家族も春香にべったりなのではなく、だからといって、「しょっちゅう帰らなくてもいいから」と突き放すのでもなく、自然なかたちで距離をとろうとしているなぁと感じました。
真平一家も、家族でパン屋を経営するという強い気持ちでつながっているし、とても仲がいい家族ではあるけれど、いずれは家族のかたちが変わっていくことを受け入れているようでした。
それは、真平の生みの母親が病気で亡くなったことも関係しているのかもしれません。
ずっと一緒にいたかったけれど、できなかった。
家族で過ごす時間は永遠じゃないからこそ、「家族でいる時間を長く続ける」ための同居ではなく、「今」できる家族のかたちをとったのかもしれません。
妹にも恋人がいて、いずれ結婚して家を出るっぽいし、真平と春香の同居生活も実は短いかもしれません。
そうして、変わっていくものを受け入れながら「今」を楽しめる、仲がよくてもべったりと依存するのではなく、精神的に自立した家族なのかなと読み終わってから思いました。
家族や結婚に模範解答はなく、手探りで見つけていくもので、変化もしていくもの。
自分の結婚観との違いにモヤッとしたけれど、それに気づけてよかったです。
勝手にあれこれ思ってごめんね。素敵な夫婦と家族だね。と、言いたい。
春香と真平、家族みんなに幸あれ。
婚活カウンセラーが選ぶ、結婚がわかる100冊
1.この人と結婚するかも
2.スパルタ婚活塾
3.消滅世界
4.私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな
5.夏休み
6.怒り
9.愛する人に。 △
16.かわいい夫 ♡
33.くらやみガールズトーク ※取扱注意
36.オリーブの実るころ ※取扱注意
41.水歌通信 △
47.傲慢と善良 ♡
♡=幸せ・喜び
△=ややビター
無印=ダーク
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マインドフルネスでストレスを軽くする方法を発信する公認心理師(心理カウンセラー)です。
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