「殺人者の記憶法」　★★★☆～こんな設定の映画を作れるのは韓国だけ

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2018』の掲載にあたって」

こんな設定の映画を作れるのは韓国だけ ★★★☆

【　出演　】ソル・ギョング
キム・ナムギル
キム・ソリョン
オ・ダルス

【あらすじ】

　アルツハイマーを患う元連続殺人犯の男ビョンスは、愛娘のウンヒと静かに暮らしていた。

　霧の深いある日、車の接触事故で偶然出会った男テジュから異様な雰囲気を感じたビョンスは、彼も連続殺人犯であることを直感する。ビョンスは警察にそのことを告げるも、テジュは警官であったため、誰もビョンスの話を信じなかった。

　テジュが娘のウンヒに近づいてきたとき、ビョンスはウンヒを守るため自らテジュを捕らえようとするが、アルツハイマーによって記憶がたびたび飛んでしまい、思うようにいかない。

　そして、ついにウンヒの身に危険が迫っていく―

【コメント】

　さて、三連休が続く9月ですが、急な休日出勤で貴重な三連休が潰れてしまった土曜の帰宅時、残りの休みは充実させようといつものTSUTAYAに寄ったところ、目に留まったのが本作。

　劇場公開時は単館でひっそり公開されていたのは若干記憶に残っていた程度でしたが、宣伝文句もかなりセンセーショナルというかインパクトが強いものだったので、他に観たい映画をすっ飛ばして手に取った次第です。

　いやいや、なかなかに刺激的な映画でしたな。アルツハイマーを患った元連続殺人鬼が主人公という設定がまず凄いですが、そこに更なる若き連続殺人鬼が登場し、元殺人鬼と現殺人鬼が対決するという、ある種とんでもない設定。こんな設定、差別やらナンやらでケチつけられて日本ではまず作れないでしょう。こんな映画を作れるのはまさに韓国だけ、泥臭いながらもエンタメに徹する韓国映画だからこそなせる業です。

　元連続殺人鬼が世間を騒がせている現役の連続殺人鬼とひょんなことから出会ったことで、自分と同類だという人殺しだった自分の勘が働く。しかも、たったひとりの愛娘に近づいてきて、これはヤバいと警察に通報する。しかし相手は警官、しかも自分自身がアルツハイマーであるため警察にも相手にされず、自分が今何をしているのかすらの記憶もすっ飛んでしまい一向に事が進まない。そういった肝心なところで記憶がリセットされてしまうというもどかしさが逆に物語の展開を面白くしている。警察はもう頼りにならないから、娘を守るため封印した殺人鬼を解き放ち若くて体力十分な連続殺人鬼と対決するも、ここでまた記憶が飛んでしまって大ピンチ！という憎いクライマックス。アルツハイマー設定とはいえペットボトルに用を足したお小水を口にするシーンはウェッとなりましたが、そんな泥臭い雰囲気漂う感じも韓国映画らしいなと。

　ストーリー的にも、主人公の姉の正体や、なぜ人殺しを封印してしまったのか、愛娘の出生の秘密など、謎と伏線が随所にちりばめられている作りもうまいし、ハッキリしない終わり方も悪くない。本作がひっそりと公開されて忘れ去られてしまうには非常に惜しい、とても面白い映画でしたね。