「不能犯」　★★☆～厨二病を発症したダークヒーロー

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2018』の掲載にあたって」

厨二病を発症したダークヒーロー ★★☆

(C)宮月新・神崎裕也／集英社　2018「不能犯」製作委員会 （2018年／日本／106分）【　脚本・監督　】白石晃士【　原作　】宮月新
神崎裕也

不能犯コミック 1-8巻セット

4,856円

Amazon

【　出演　】松坂桃李
沢尻エリカ
新田真剣佑
間宮祥太朗
テット・ワダ
菅谷哲也
岡崎紗絵
真野恵里菜
忍成修吾
堀田茜
芦名星
矢田亜希子
安田顕
小林稔侍

【あらすじ】

　不可解な変死事件が多発、事件現場には黒スーツの男・宇相吹正が目撃されているものの、死因はすべて病死。宇相吹は“不能犯”だった。

　宇相吹のもとには、人間の嫉妬や欲望にまみれた殺しの依頼が舞い込んでおり、刑事の多田と百々瀬は宇相吹を取り調べるが、なにひとつ証拠が挙がらないままだった。

　そして、宇相吹の魔の手は、警察内にも及んでいく―

【コメント】

　さて、久しぶりの三連休ということでですが、連休中は酷暑とのことなので、脱水症状で干からびないようキンキンに冷えた自宅でDVDでも観ようと、いつものTSUTAYAを物色していたところ、新作棚に陳列していたのが本作。

　本作は今年の2月に劇場公開され、当時観に行こうか迷っていたんですが、予告編からどうも主演・松坂桃李君の演技に違和感を感じ、ゲロスベリしそうな感じだったのでスルー。今回めでたくDVD化ということで、三連休はこれで決まりだとばかりに手に取ってみた次第です。

(C)宮月新・神崎裕也／集英社　2018「不能犯」製作委員会

　ちょっと僕、勘違いしていたようです。これは、証拠を残さず人を殺す不能犯・宇相吹を刑事が執念で捕えるといった作品ではなく、私利私欲のために人殺しを依頼する身勝手な人間に対し宇相吹がダークヒーローとして遠回しに成敗するといった、言わば笑ゥせぇるすまん的な存在でしたね。まあそこは原作未読のままの鑑賞ということで不問としていただきたい。

　本作では原作からいろんなタイプの人間が私利私欲のために人殺しを宇相吹に依頼するエピソードを盛り込み、それを刑事の多田と百々瀬が逐次捜査するという展開になっているので、原作を詰め込んだ感はあまりなく、一本の映画としてちゃんとはしています。ただ、クライマックスが全然弾けないし、「宇相吹と多田は同類！」といった部分の分析にまで至ってない。何より、当初から不安材料だった桃李君の演技がどうにも厨二病を発症した若者にしか見えなくてイタさ全開。正直観てて恥ずかしくなる。こういう役は君に合わないよ、桃李君。もっと誠実でまじめな好青年がピッタリよ。こういう猟奇殺人犯って、なんでこういったイタイ人物像になってしまうのか。いかにも俺ってアタマイカれてまーす、デンジャラスな俺カッコイイ的なアピールをしているようで何とも興ざめ。

　現段階で原作は8巻、今でも絶賛連載中ということなので、好評だったら続編行きますよーな空気も感じたりしましたけど、桃李君の厨二病ダークヒーローはもう結構と言いたいところ。桃李君にはもっと役者として高みを目指した演技に挑戦してほしいところです。