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チキン番外編33



リョウキは怯えるヒロシに対して、わざと足で地面を鳴らした。




ヒロシは肩をすくめ、分かりやすい反応をしめした。




「ダメだ。完全に飲まれてる」と思ったが、助ける力が出そうにないのと、ヒロシがどこまでやるのか見たかったので俺は立ち上がらなかった。




するとヒロシはなにやら話し始めた。




「あー、えー、えっとさ、君たち修学旅行中だよね?こんなことして見つかったら停学になっちゃうからやめない?」




「はぁ?」




リョウキは拍子抜けしたのか、振り向いて俺を見た。




「お前の仲間、なんやワケわからん事言うてるで」




俺はリョウキの問いに答えた。




「前、向いた方がいいぜ?」




リョウキは不思議そうな顔をしたが、この間が命取りだった。




リョウキが俺を見ている間に、ヒロシはまた後ろからリョウキを殴った。




前につんのめったリョウキを更に蹴飛ばし、間髪入れずに距離を詰めてまた蹴った。




リョウキはまんまとヒロシの卑怯作戦にはまってしまったのであった。




ヒロシはここぞとばかりに一気に畳み掛けた。




今日の鬱憤を晴らすかのように夢中で手や足を出した。




またもやヒロシに背後から急襲されたリョウキは倒れ、ヒロシは跨り、無我夢中に拳を振り下ろしたのだった。




珍しく勝ったかなと思ったが、ヒロシのいいところはここまでだった。




リョウキはヒロシを下から跳ね返すと、すぐに立ち上がってヒロシの服を掴んで引き寄せる勢いのまま頭突きをした。




頭蓋骨と頭蓋骨が激しくぶつかる音がした。




ヒロシはこの一撃で半分意識が飛んだのか、目の焦点があっていないようだった。




今度はリョウキが間を空けずにヒロシを思い切り殴り飛ばした。




ヒロシは殴られた勢いで地面を転がり、うつ伏せのまま動かなくなった。



どうやらリョウキの実力は本物だし、思っていた以上に強い事が分かった。




テルに負けない頑丈さがありそうだ。




リョウキはヒロシに近寄った。




そして踏みつけようとして足を上げたので、「もういいだろ」という意味で俺は吸っていたタバコをリョウキに飛ばした。




デコピンの要領で飛ばしたタバコは顔に当たり、リョウキは俺を見た。




俺は立ち上がり、リョウキに向かって手招きをして言った。




「こいよ」




~つづく~



井口達也


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