ザ・ミッション/非情の掟 | B級パラダイス

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その昔「映画秘宝」で記事を読んで気になり、主要キャストが再結集して製作された2006年の「エグザイル/絆」(過去記事はこちら)でノックアウト、続く2009年の「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」(同じく過去記事)でまたも昇天したが故に、その元になった本作を観たくてしょうがなかったのだ。

 

しかしこれがDVDが早々絶版、TSUTAYAをはじめとするレンタル店でもとんと見かけず、探し始めた2006年頃にはもうAmazonでも出ているのがVHS、レンタル落ち、たまにDVDが出ても2万円台。その他のショップでも殆どが取り扱い無しと言う具合。

ヤフオクでは大体15000円前後の値がついていて、何度か8000円台の出品にチャレンジしたけど最後の最後に寝落ち負けすること数回(笑)、Blu-rayになるのをひたすら待っていたのだが気配さえないまま、早幾年…。

 

それが先週ヤフオクでまた8000円台で出ていたのを最後まで起きていて勝負、結果大台を超える価格にはなったもののなんとか競り落としのたのが到着したのだ!

 

因みにこれ、我がヤフオク落札歴で最高金額でしたな(笑)。次点は望月三起也のワイルド7の最終エピソード「魔像の十字路」及び続編の文庫セット、その次が宇崎竜童の初ソロ「R.U début」のCDだったりする(笑)。

ああ、どうしてこういう絶版なものばかり好きなのだ…。

 

と、「いいから早く書けよ〜」という声が聞こえてきそうな長い前置きだが(笑)、どんなにこの作品を欲したかを知って欲しかったのだ!

 

到着後、仕事が立て込み我慢すること4日。

漸く昨日土曜、持ち帰り仕事の対外分を何とか済ませ、深夜から酒飲みながら、ついに、ついに、ついに観たのだった!!

 

 

ザ・ミッション/非情の掟 (1999年)

鎗火 The Mission

監督・脚本: ジョニー・トー アクション監督: チェン・カーサン 脚本: ヤウ・ナイホイ 撮影: チェン・チュウキョン 編集: アンディ・チャン 音楽: チュン・チーウィン

出演: アンソニー・ウォン、フランシス・ン、ロイ・チョン、ジャッキー・ロイ、ラム・シュー、サイモン・ヤム、コウ・ホン 

 

そんな待ちに待って、恋焦がれてやっと観れた本作、これが期待に違わず待った甲斐ありの絶品!

痺れた。最高だった!

 

普段は正業についている、かつて香港の黒社会に関わった5人の男たち。しかし一度黒社会に身を置いたものはいつまでも「掟」がついて回る。

 

この事実を定めとして、潔くも忠実に、しかし完璧に与えられた「任務=ミッション」を淡々とこなすプロフェッショナルたち。彼らにとっては「掟」の重さは身に染みていて「絶対」だ。

 

何者かに命を狙われているボスの身を守るために

呼び寄せられた5人はその「ミッション」を遂行するために力を合わせて戦う。

 

ストーリーは以上だ。物凄くシンプルだ。台詞も極限まで削られて、男たちと同じように寡黙な映画であり、81分という短めのランニングタイムに一切無駄がない。

しかし濃密だ。描かれた男たちのストイックさに呼応するかのようにソリッドな「ハードボイルド」映画だった。

「氷の男」の異名のクールなベテラン、グヮイ(アンソニー・ウォン)、血気盛んなロイ(フランシス・ン)、射撃の名手マイク(ロイ・チョン)、銃の調達やメンテナンスが得意なフェイ(ラム・シュー)、ロイの舎弟でボディガードとしてはルーキーのシン(ジャッキー・ロイ)。

この5人が様々なやり方、ルールを持ちながらも、そのプロフェッショナルさ故に、次第に互いの技量を認めチームとしてまとまり、友情を感じていく様が、ちょっとしたシークエンスや短い台詞で描かれるのが本当に格好良くも気持ち良い。

 

この5人の面構えも好きなのだが、彼らが守る物静かで温厚なボス、ブン(コウ・ホン)と、彼らを召集したブンの実弟で冷酷さと剽軽さを併せ持つ参謀格のナン(サイモン・ヤム)この2人の存在感がまた良くて映画に深みを与えている。

一番左のほとんど喋らなかった側近もいい味。

 

加えて何度も襲いくる敵の殺し屋(ちょっと若い頃の中村敦夫にも似たなんと日本人の佐藤佳次という俳優さんだった)もいい面構えだ。

思いがけない黒幕、ファーストシークエンスでボスを置いて逃げたが故に降格した下っ端(最後が泣かせる)も含め、出てくる連中がまた皆揃いも揃っていい顔をしているのがまた痺れるのだなあ(笑)。

 

「エグザイル」の記事でも書いたが、香港ノワールと言えば当時はジョン・ウーだった。

「男たちの挽歌」は今は亡き男の映画館「新宿ローヤル」で追っかけて観て震えたし、その後の続編や諸作も大好物だ。

その大好物なジョン・ウーの作品が浪花節に思えてしまうほど、ジョニー・トーの本作(その後の作品もそうだ)はクールで、寡黙な「ハードボイルド」具合だ。

主人公たちは怒鳴らないし泣かない。派手な爆発も無ければカッコよさ重視の二丁拳銃撃ちまくりも無いし、当然だが鳩も飛ばない(笑)。

 

こう言う静的な構図がまたカッコいいのだが、蒼暗い画面の中、無駄な動きをせず、アイコンタクトさえもなく、両手で銃を構え、必要な時に必要な銃弾を浴びせる。

 

銃弾の雨あられでひたすらバンバン撃ち合うジョン・ウーの映画のそれ(これも大好きだけどさ)とは真逆の、地味だが銃弾一発一発に意味を感じる銃撃スタイルのアクションがいい。

アメリカ映画のアクションではなく、かつてのフランス映画のフィルムノワールのような肌触りだ。

その重さ、緊迫感が心地良い。特に物語中盤の閉店後のジャスコ内での襲撃への応戦シークエンスのカッコよさ、スリリングさは失禁ものだ。

 

彼らはひたすら与えられた任務を遂行するために己の役割を果たすだけだ。その無駄が剃り落とされたアクションの緊張感が素晴らしい。

このストイックなアクションの気持ちよさに浸る映画だとしても最高なのだが、見事にボスを守り通してやれやれと思っていると…の終盤の展開が予想外で、これぞ映画の、物語の醍醐味というもので、これまた最高なのだ!

プライベートを一切語らない5人が、徐々に絆を深めていく様を「仕込んだタバコ」や「紙屑サッカー」などの悪戯や遊びを通して見せる演出が心憎い。

「エグザイル」でのコイントスや「冷たい〜」の自転車のシークエンスでもそうだが、ジョニー・トーは男がいくつになっても持ち合わせる子供っぽさをさりげなく見せるのが本当にうまい。

 

任務を通して芽生えたそんな5人の男たちのさりげない友情と、組織の「掟」の厳しさがクローズアップされる終盤。

互いに銃を向け合う男たちが切ない。

彼らがストイックに守ろうとしていた絶対の「掟」に対し「選択」した行為に戦慄し、その裏の仕掛けに唸りつつも、その後を思えば苦いとも言える結末。

それでも「彼らのルール」の中で選んだ「そのスタイル」には素直に脱帽だ。

 

もうたまらず飲みながら観ていたのだが、アルコールと共に「映画を観る歓び」に「素晴らしい物語」に「男たちのカッコ良さ」に酔いまくりだった。

気持ち良すぎて夜も明けるのにおかわりしたくなる美味しさだった(笑)

スタイリッシュとも言える映像と、一度聞いたら忘れられない耳に残る音楽がまた素晴らしく、この映画に浸る気持ちよさを加速させてくれる。

ガン・アクションとしても、男たちの乾いた友情の物語としても、最高なハードボイルド映画の傑作であると言い切れる。

是非!と言いたいが、そんな具合であまり出回っていないから、なかなか観れないでしょうなあ、わはは、と、物凄い優越感なのである(笑)。