
『TBS レトロスペクティブ映画祭 石井ふく子特集』公式サイト
TBSに収蔵されている貴重な作品をデジタル修復し、スクリーンで蘇らせる「TBSレトロスペクティブ映画祭」。昨年開催された第2回は「実相寺昭雄特集」で、今年の第3回は「石井ふく子特集」。日本で「ホームドラマ」というジャンルを確立したプロデューサー&演出家で、今年9月で100歳を迎える今なお“現役”として活動する人物です。
そんな石井ふく子が盟友の橋田壽賀子と共に、昭和を彩った名女優たちと手掛けたドラマの数々。今回はその原点ともいえる「東芝日曜劇場」の名作ドラマ8作品を、デジタル修復版によりスクリーン上映。その鑑賞のスタイルに多少の違和感はあるものの興味津々の作品鑑賞でした。劇場はシネマスコーレ(シニア会員1,100円×2)。

『時間ですよ』(単発)(1965年7月4日放送、プロデューサー/石井ふく子、脚本/橋田壽賀子、演出/橋本信也、出演者/森光子、中村勘三郎、中原ひとみ)
以下は「TBS レトロスペクティブ映画祭 石井ふく子特集」公式サイトに記載のドラマ『時間ですよ』(単発)の紹介文です。
後に久世光彦×向田邦子コンビでシリーズ化された名作の元祖単発ドラマ
銭湯「泉湯」の女主人(森光子)は大の働き者だが、その夫(中村勘三郎)は女癖が悪くいつも遊んでいた。ある日近所の未亡人が妊娠、しかもその相手が女主人の夫だという噂が立ち…。「ただの水で稼ごうなんて、水商売もいいとこだわ」など橋田セリフの切れ味は素晴らしく、女性の働き方や生活保護問題など、すでに令和の社会問題を扱っている。森光子は石井の母と交流があった。
今なおTBS系列のテレビ局で毎週日曜の夜9時より放送される「日曜劇場」というドラマ番組枠。現在は話題の「VIVANT」(第2シリーズ)が始まったばかり。この番組枠は1956年の放送開始より、東芝が冠スポンサーになっており「東芝日曜劇場」の名で親しまれ、1990年代を迎えるまでは一話完結の単発ドラマが放送されていた。
今回の特集上映の8本の作品は、1963年から1967年の間に「東芝日曜劇場」で放送されたもの。VTR収録のドラマのテープが貴重な時代で、現存する映像作品は限定的で、それをデジタル修復してのスクリーン上映になります。私が見たのは1965年7月4日放送の『時間ですよ』と、1963年6月30日放送の『みれん』の2作品です。
1970年代になって人気のシリーズ放送となる『時間ですよ』ですが、本編はその5年前に単発ドラマとして“日曜劇場”の枠で放送されたもの。銭湯の女主人の森光子を軸にしたドラマですが、女癖の悪い旦那を演じているのが中村勘三郎(十七代目)です。テレビのホームドラマとはいえ、達者な演技を見せているのはさすがです。
▼ 1970年からシリーズ放送となった『時間ですよ』。森光子の旦那役は最初は船越英二、そして荒井注と代わります。出演する堺正章、浅田美代子、天地真理らのドラマ内で唄う楽曲がヒットしていた1973年あたりが、人気のピークに思えます。



『みれん』(1963年6月30日放送、プロデューサー/石井ふく子、原作/瀬戸内寂聴、脚本/田井洋子、演出/蟻川茂男、出演者/渡辺美佐子、下元勉、小池朝雄)
以下は「TBS レトロスペクティブ映画祭 石井ふく子特集」公式サイトに記載のドラマ『みれん』の紹介文です。
原作、瀬戸内寂聴。仲代達矢出演で映画化もされた名作
ともこ(渡辺美佐子)は小杉(下元勉)と8年間も不倫していたが、かつてともこを当時の夫から奪った年下の男・涼太(小池朝雄)ともいまだに関係していた。嫉妬深い二人の男の狭間で揺れる女心を描く、瀬戸内寂聴の初期作。激しい情念の世界で「女の生き様」というテーマが息づいている。
今回の特集上映の中で、最も古い時期の作品の『みれん』。上映の開始前のアナウンスでドラマの冒頭部分の映像に欠落があるという説明で、さほどの時間とは思われませんが、タイトルからキャスト・スタッフのクレジットを確認できませんでした。それでも当時のテレビドラマの世界をリアルに伝えてくれますから貴重な作品です。
おそらくセットのみの撮影で、出演者も限られた人数と場面により構成されている印象です。当時の黒電話など小物も上手に使っていますが、主要なキャストの表情アップのシーンが意外に多い。作品が原作・瀬戸内寂聴の不倫ドラマだけに、感情の揺れを表情や仕草で激しく伝える必要もあり、俳優の演技力も問われる感じです。
これは蛇足になりますが、『時間ですよ』『みれん』のどちらのドラマにも、開始前と終了後に冠スポンサーの東芝の“コマーシャル枠”の映像がある。それは最新の扇風機であったり、冷蔵庫であったりと…。こちらも興味津々で見つめていました。
▼ 瀬戸内寂聴の原作は映画化もされており、その劇場公開は1963年10月(監督/千葉泰樹)。テレビ局側があえて先んじてドラマ放映したという印象ですが、実態はどうだったのでしょう? 映画での配役は渡辺美佐子→池内淳子、下元勉→仲谷昇、小池朝雄→仲代達矢となります。個人的には映画版がとても見たくなりました。


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