エグザイル/絆  | B級パラダイス

B級パラダイス

健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

B級パラダイス

エグザイル/絆 (2006)
EXILED 放・逐

 

監督・製作:ジョニー・トー  製作総指揮:ジョン・チョン  脚本:セット・カムイェン、イップ・ティンシン

撮影:チェン・シウキョン  音楽:ガイ・ゼラファ 
出演:アンソニー・ウォン、フランシス・ン、ロイ・チョン、ラム・シュー、ニック・チョン、ジョシー・ホー、

リッチー・レン、サイモン・ヤム、ラム・カートン

 

今日29日はなんと出社日。だが今月末までの映画招待券が昨日手に入っていた。

仕事帰りに観れる映画はないかとシネコンの上映作品見たら

気になっていたこの作品が、夜1回だけ上映されることになっている。

腹は決まった。

「こんなに早く帰るなんて珍しいねー」と驚く同僚尻目に18時半には会社を出て

電車に乗り、30分後には劇場に入ることができた。

 

結論から言おう。

エグザイルという言葉で某唄歌い&踊り手多集団思い出してしまうのは今日限りだ(笑)

 

「男気」という言葉に反応するすべての方へ伝えよう。

 

必見の傑作だ!!

 

中国返還間近のマカオ。ある男の帰りを待つ二組の男たち。

その男を殺すためにやってきた二人。

その男を守るためにやってきた二人。

男の家の前、公園とも言えない街路樹の下でタバコふかしながら、

互いの出方を窺い、緊張感を湛え、ひたすら待つ4人の男たち。

 

マカロニウエスタンのようなギターの音色。単調なリズム。

俯瞰の映像がぐんぐん下がって4人の男たちを捉える。

レオーネの映画のような時間が延びる感覚。

4人の男たちが並んでいるその絵がまさに「映画」だった。

最高な出だしだ。

 

そして、逃亡に疲れ、妻と生まれたばかりの子供との安息の暮らしを求めて

帰ってきてはいけなかった「その男」が帰ってくる。

 

殺される「その男」が無言で殺しに来た男とそれを守りたい男を部屋に招く。

残された互いの相棒は肩を並べて、通りかかった刑事をけん制する。

男のリボルバーの6発の装填に合わせ、オートマチックの弾丸を抜く、殺しに来た男。

守りたい男もまた二人に合わせて弾丸を抜く。

ああ、そうだ、理にかなってないよ。殺すためにも生き残るためにも

手持ちの弾丸は多いに越したことはない。

だが彼らはそれをしない。それが彼らの流儀であり「友」への仁義だからだ。

 

互いの銃口が向かい合う。

一瞬の間をおいて始まる狭い部屋での激しい銃撃戦。

しかし男の赤ん坊の泣き声にいつしか銃声は止み、

次のカットでは銃撃の後を5人の男たちが修繕している・・・(笑)

 

この5人の男が実は一緒に育ち、裏の道に同じように踏み込んでしまった過去がわかる。

殺し、殺される関係になってしまっても彼らの「絆」は死んじゃいなかった。

男の妻子を交えての食事。以前のように笑う5人の男たち。

そして5人に2人(妻子)を交えた記念撮影・・・。また昔のようにふざけ合う男たち。

互いの想いが、短く少ないセリフの中に浮かび上がる。

もうどっぷりとその世界に浸ってしまう素晴らしいオープニングシークエンスだ。

 

全てが終わる前に妻子に金を残したいという「その男」ウーの願いを聞き

金になる危険な仕事を請け負う、立場の違う二組4人の仲間。

しかしそれは組織のボスに傷を負わせた落とし前を後回しにすることになる。

その危険を承知で男を殺しにきたブレイズとファットは

男を守りにきたタイとファット、そしてウー本人と共にその危険な仕事に向かう。

 

誰もいない記号化された街。ボーイさえいない舞台としてだけ機能するレストラン。

ターゲットを狙う5人。偶然の邂逅。激高するボス。そして組織の裏切り。

誰が誰を撃っているのか判然としない激しい銃撃戦が再び起こる。

それは冒頭の友人同志の止むにやまれぬ戦いではなく

仲間を助けるため、組織に反撃の狼煙をあげた「生き残る闘い」だった。

そして同時にそれは彼らの最後=組織からの「追放」への第一歩だった・・・。

 

ジョン・ウーのそれよりベタベタしていないクールな友情が気持ちいい。

これを観てしまったらあの大好きな「男たちの挽歌」が浪花節に思えてしまったくらいだ。

ざらついた画面の中、ひたすら自然体の男たち。

誰も泣かない。怒鳴ることはあっても喚かない。

皆俺と同年代のおっさんだ。でもなんていい面構えなんだ!

コインの裏表で行き先を決める子供のような男たち。

でも最後は友のために、男たちはコインに頼らず自らの意思で道を選ぶ。

 

真っ先に思い出したのがマイフェバリット映画「ワイルドバンチ」だった。

ごっこ遊びの延長のような笑顔を残しながら

男たちが最後の闘いに挑む、ペキンパーの破滅の美学が蘇った。

ジョニー・トーは「わかっている」。

奴らはまさに現代の「ワイルドバンチ」だった。

 

観ている俺も涙は出なかった。

ただただ、羨ましかった。

男たちの笑顔に、その一瞬の笑顔に痺れた。


GW初日、出社日。完全に仕事を忘れた帰り道。

無性に酒が飲みたくなりタバコが欲しくなった。もちろんいい意味で。

良いとは聞いていたがまさかここまでとは。

 

同じキャストだという彼の「ザ・ミッション非情の掟」や

その他のジョニー・トー映画も勉強しなおしだ。

今まで観てなくてすまんかった!

 

劇場で見れて良かった。

映画好きでいて本当に良かった!

これだからやめられねえんだよ!!