私的映画ジャンル 其の参 | B級パラダイス

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前回紹介した「異能」はプロフェッショナルの「技」だったが

この「異能」が全く逆の能力・・・能力というか、一般生活では役に立たない特技だったりして

そしてそういう連中だけが集まってしまったら・・・まあ、普通何もできないわけだ。

でもそいつらが一念発起して・・・っていう映画が今回紹介したいジャンルだ。

 

映画ジャンル其の参は【役立たず異能集団奮起映画

 

設定は上記の通り、彼らは何らかの能力はあっても当然役立たずである。

むしろ能力じゃなくただの「特徴」といってもいいし
その「特徴」を持つメンバーはいろんな意味でマイノリティだったりすることが多い。
単純にデブだったりド近眼だったりオタクだったりも含めてざっくり言えば「負け組」だ。

強い社会集団から馬鹿にされ、軽く見られ、蔑まれ、爪弾きにあっていたりする奴らが
よくぞまあこれだけ集まったものだという集団が今回の主役だ。


多くは束ねるリーダーからして、人生の落伍者だったり
本当は凄腕だったのに今は落ちぶれていたり(酒飲みながら登場シーン多し(笑))
世をすねて負け犬根性染み付いているケースが多いのが特徴なのだ。

 

彼らが何かのきっかけで集まり(前回紹介したのと違い大体雁首そろえてもう集まってるが(笑))

彼らを笑う奴らに対し、奮起し、闘い、意地を通し、最後は勝負に勝つ
或いは負けても誇りを取り戻す・・・そんな映画も俺は大好物なのだ。

 

言われてみれば・・・と、覚えがある映画は多いと思う。
簡単なところではスポーツものによく見かけるパターンだし。
メジャーリーグ」に代表されるよくある落ちこぼれたちのサクセスストーリー。
でも自分は「メジャーリーグ」は悪くはないけどまだまだと思ってしまうのだ。

プロだったら「弱小」ってだけで、それほど酷い状況じゃないわけで

ほんとにどうしようもないっていう集団を主人公にした映画はいっぱいあるのだ。


中でも野球モノだったら断然コレってのがある。

がんばれ!ベアーズ」がこのジャンルの「スポーツもの」の代表作だと俺は信じている。

ベアーズという弱小子供野球チームの話なのだが、このチーム、ほんとに酷い(笑)


デブで食い意地だけが凄いキャッチャーに、超ド近眼のピッチャー、
運動神経皆無の内気ないじめられっこ、野球より喧嘩ばっかりの短気なチビ
大リーグオタクで何でも知っているがプレイはヘタな奴

ハンク・アーロンを崇めているけどからっきし野球は下手な黒人少年や

英語が話せないメキシカンの双子などなど、もう顔ぶれだけで笑えるチームなのだ。

弱小ぶりもハンパじゃない。なんせ試合の初回の表に26点入れられ

1アウトもとれずに試合放棄するくらいで(笑)、

このチームを率いる監督バターメイカー(ウォルター・マッソー)がお約束の飲んだくれ(笑)。

彼の昔の恋人の子供が凄いピッチングセンスをもっているんだが、なんと女の子というのがミソ。

その娘=アマンダ(演じてるテイタム・オニールが物凄くチャーミングだった!)と

タバコ吸って、バイクは乗りまわす不良少年が加わってすったもんだの末、
チームがまとまって強豪チームに勝負挑んで行くというドラマなのだ。

とにかく酷いチームだけど野球が好き!という熱意だけが人一倍ってのが微笑ましい。

最後は勝利しないものの強豪チームには無い「大切なもの」を皆が一丸となって手に入れ

準優勝のトロフィーを相手チームに投げつけて「次はみてろよ!」的自信を取り戻すという

御約束ではあるが痛快な幕切れが待っている。
野球はまったくダメだった俺はこの連中に凄くシンパシー感じながら

映画館で拍手喝采したものだった(笑)。

 

「役立たず」集団が主人公になると、このようにアクションよりコメディが増えてくるが例外もある。
マカロニウエスタンが好きな俺でも、お気に入りの正調西部劇、
これまたあんまり好きじゃないジョン・ウェイン主演なれど

男気監督ハワード・ホークスとコンビを組んだテキサス3部作がそれだ。


リオ・ブラボー」「エル・ドラド」「リオ・ロボ」のどれもいいけど
中でもお気に入りで今回の「役立たず」ジャンルに入れたいのが「エル・ドラド」だ。
撃たれた弾が体に残り、必要な時に手が痺れちゃって銃が撃てないガンマン:ジョン・ウェインに
女に振られたのが原因で飲んだくれて腑抜けになってる保安官:ロバート・ミッチャム
拳銃がダメで(でもナイフは上手)、ショットガンで撃ちまくる若者:ジェームズ・カーン
そして銃に弓矢で対抗する頑固かつ楽天的なアーサー・ハニカット爺さんという

なんという心もとない布陣が町の悪と対決する一編。
このチームが「リオ・ブラボー」より陽性の戦いを繰り広げるゴキゲンな1本なのだ。

「リオ・ブラボー」がプロが男の誇りを取り戻す「其の弐」ジャンルの映画だとすると

こっちは本来強いウェインとミッチャム二人が弱点だらけなことがポイント。

「強さ」が「悪」を一直線に倒すわけじゃない捻った表現が可笑しくて、

J.ウエインの映画の中では間違いなく一番好きな「役立たずガンマン」映画なのだ。

 

そしてこのジャンルの白眉はなんといってもジョン・ランディスの「アニマルハウス」だ!
これでもかという役立たずの揃った劣等生クラブ「アニマルハウス」が
優等生グループ(でも変態だ(笑))の「デルタハウス」相手にくっだらねえ抗争を繰り広げるのだが
学園と結託した権力=デルタハウスに立ち向かう(っていうか悪戯でやり返す)
ジョン・ベルージの突き抜けたキャラをはじめとする面々がホント最高だった。
下品で猥雑でこれでもかってくらい馬鹿で・・・(笑)。トーガパーティもゴキゲンだったなあ。
学生じゃないがキーファーのオヤジ、ドナルド・サザーランドの教授がまたよかったりして(笑)。
ジョン・ランディスのコメディ映画は好きなものが多いけど
ただのバカが一人二人じゃなく集団ってのがいいのだ(笑)。
他にもバカのリトマス試験紙、逆七人の侍映画としても最高な「サボテン・ブラザース」も

3人だけなんで「集団」というと微妙だが「役立たず奮起映画」として

この2本は俺の中のマスターピースなのだ!(ちなみに「ブルース・ブラザース」より好き(笑))

 

てなわけで、語りだすと止まんなくなるこのジャンル
最近だと「トロピック・サンダー」がこのジャンルの匂いが濃厚で観たくてたまらない1本。
あと教えてもらった「ギャラクシー・クエスト」も俺を呼んでる気がするなあ(笑)。
広い意味だと前述の数々のスポーツものでの「弱小チーム勝利映画」があるが
邦画の「シコふんじゃった」や「ウォーター・ボーイズ」もそれにあたるかな。

あと「スィングガールズ」もかなり好きだが馬鹿さ加減、役立たず加減、異能さが乏しくて残念!

ってとこだと思う(かなり好きではあるけど)。

それならば「少林サッカー」の方がこの3点をクリアしていてジャンル入りさせたいところである。

 

とにかく観ていて「馬鹿だなあ」とか「酷いなあ」っていう連中が

権力者、強い者に一泡吹かせるだけで成立しちゃうジャンルではあるんだが

このジャンル、その虐げられてる連中に悲壮感があまりないっていう共通点がある。

その立場をどこかで楽しんでいる雰囲気。それはまさに「自由」を体現しているように思う。

相手の権力側の強者が規則や威厳に縛られて窮屈に見えるから相対的にというのもあるが、

彼らは強者に対抗する中で自分の中にもあるそうした境界線を軽々と打ち破ってくれるのだ。

どーしよーもない連中の集まりなのに、俺が憧れてしまうのは

そこに見える「自由」に憧れているなのかもしれない(笑)

 

さてさて次は何を定義しようか・・・「負け犬暴発映画」や「ハタ迷惑対決映画」などなど
色々思いついてきたぞ(笑)