【ネタバレなし感想】

 

陸軍

 

あらすじ

日本の戦争の歴史
幕末から日清・日露、満州・上海事変まで。
 
一気怒涛に突き進み続ける国で暮らす、ある家族3代の情景。

戦争の時代に生きた

素晴らしい。

圧巻である。

 

戦争に次ぐ戦争である。

日本が誤った道に進んでいるとは思いたくない、庶民の心情。

町の通りの暮らしに、すっと戦火が入り込んでくる景色だ。

 

お国のために子を生み、子を育てる。

男子は君子からの預かり物。

息子が軍人になることが家の誇りであり、当人の出世であった時代だ。

 

深刻一辺倒かと思いきや、笑いもあるから驚いた。

唐突に頭に血が上る父親像は、当時は珍しくなかったのかもしれない。

不器用な偏屈ぶりが、妙に可笑しい。

 

モノクロで、いかついタイトル。

そんな映画の面構えに反して、温かい。

軍国主義丸出しな外観はフェイクである。

 

これはひとえに、木下惠介監督の信念によるものだ。

スタッフ、キャストについて

木下惠介(恵介)監督

監督うんぬんの前に、まず、なんという人なのか。

陸軍省の依頼で作られた映画である。

なのに、大反戦映画になってしまっている。

国威発揚作品を求められたのに、だ。

戦争の哀しみを描き、納品までしてしまった。

 

結果、木下監督は戦後まで仕事を干されることに。

その経緯は、加瀬亮が木下監督を演じた『はじまりのみち』に詳しい。

これこそ、大和魂ではないか。

田中絹代

手がちぎれるほど拍手したい。そして世界遺産に推薦したい。日本が誇る女優として教科書に載せるべき。

笠智衆

当時40歳。笠智衆はずっと笠智衆だったのだなと実感。寅さんシリーズの御前様にも通じる立腹からの笑顔が、屈託がない。

東野英治郎

途中で気づいたわけですが、のちの水戸黄門様がここに…!

今作の重要アイテム『大日本史』の編纂が水戸光圀公の事業であったことを思うと、グッとくる。

黄門状態ではないから余計に、芝居の上手さに驚かされてしまった。

映画史に残ったラストシーン

昭和19年の作品で、日本は第二次大戦の真っ只中。

太平洋戦争から3周年を記念して公開されたそう。

今作をお蔵入りさせなかった、陸軍省の勇気

 

戦時中に作られた戦争映画なのに、そもそも、主役は女性である。

田中絹代演じる妻はおそらく、当時の正解の女性像だ。

夫を盛り立て、子を躾け、生活費も稼ぐ。

そう見せかけて、露わになる弱さと感情が胸を打つ。

 

哀しいとか、いやだとか、そんなセリフは出てこない。

各人が胸に秘め、言葉にする以上に饒舌だ。

 

あの有名なシーンに息を呑んだ。

あれほどの人数をかけて、大通りでの撮影は軍の協力があってこそ。

セリフが無い10分間。

そこに全てが詰まっている。

戦争に追い立てられる当時の空気感が、肌に沁みる。

いっそ、鑑賞を義務化してはどうでしょうか。(提案

 

戦時下にあって、軍批判に走ることなく、完璧に反戦を描き切って力強い。

映画とは、こんなにも力があるのかと涙が止まらない。

 

走り出す母の姿。

一生、あの行軍を忘れないでいたい。

 

 

陸軍

 

カチンコWOWOW

 

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『陸軍』
1944年/日本/87分
監督:木下恵介
原作:火野葦平
脚色:池田忠雄
撮影:武富善男
後援:陸軍省
キャスト:田中絹代、笠智衆、東野英治郎、上原謙、三津田謙、星野和正、杉村春子

 

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