イギリスの大学は学部入試の場合は人気の変動が移ろいやすい傾向があります。そこで今回の記事では近年の学部入学難易度の変遷のトレンドについて書いてみます。

1.入学難易度
過去に何度か取り上げていますIndependent社のランキングには2008年度(2007年秋入学)から2012年度(2011年秋入学)までのデータが公開されています。この5年間のデータの大学ごとのUCAS Tariffの入学者平均の数値から各年度毎の大学の入学偏差値を計算しました。

また、より長い期間での変動を見るため、2002年のAレベルの大学ごとの入学者平均スコアを元に偏差値を計算をしました。(参照元)

この2つの計算の後に主要大学を選別してグラフにまとめました。グラフは地域と特徴別で色分けしました。

イギリスの大学徹底分析-イギリスの大学の短中期の学部入学偏差値の変動
イギリスの大学の短中期の学部入学偏差値の変動


また、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの地域別で見ました5年間及び10年間の学部入学偏差値の変動と、特に変動が大きかった大学を取り上げ、表にまとめました。

イギリスの大学徹底分析-地域別短中期学部入学偏差値・変動が大きな大学
地域別で見た短中期の学部入学偏差値及び変動が大きい大学


これらのデータから読み取れる事を箇条書きにしてまとめました。

①この10年間でスコットランドの大学の人気が非常に大きな変化をしています。スコットランドの多くの大学が2002年から2007、2008年にかけて急激に難化し、その後は急激に易化してほぼ元に戻りました。特に変化が激しかったのがストラスクライド大学とアバディーン大学で偏差値にして15程度の上下が起こりました。ただ例外的にセントアンドルーズ大学は10年間一貫して安定した難易度を保っています。

②同じく、この10年間でロンドンの大学の人気に非常に大きな変化が起きています。ロンドンの主要7大学で2002年から2007、2008年にかけて大幅な易化が起こり、その後に急速に難化し、結果的には10年前よりやや高い難易度になりました。特に変化が激しかったのがインペリアル・カレッジ・ロンドン東洋アフリカ研究学院(SOAS)で偏差値にして5~6程度の上下が起こりました。

③主要大学の中で10年間で最も人気が高くなったのは東洋アフリカ研究学院(SOAS)ケンブリッジ大学ダラム大学で、10年前に比べて偏差値にして4~5程度上昇しています。一方で10年間で最も人気が低くなったのはクイーンズ大学ベルファスト、ノッティンガム大学エジンバラ大学で偏差値にして4~8程度下落しています。


2.変動の原因の推測

これらの変動、特にスコットランドとロンドンの大学の人気変動の原因を考えてみます。大きく分けると原因は二つと考えられます。

2-1. 景気動向による原因

最も大きな原因は景気の動向であることはほぼ間違いありません。イギリスのGDP成長率と若年者失業率のデータを見てみます。

$イギリスの大学徹底分析-イギリスの景気状況と大学出願時期
イギリスの景気状況と大学への出願時期


このデータが示しますようにリーマンショックが起きた2008年秋まではイギリスは好景気に沸いていました。一方で2008年の秋以降は深刻な不況が続いています。この景気動向を大学の出願時期と当てはめて見ますと、2007年と2008年の秋入学者は好景気の時に大学を選んで出願した学生です。一方でそれ以降の学生は不況期に大学を選んで出願している事になります。

2002年秋入学者の場合は2001年のITバブル崩壊後で若干景気が落ち込んでいた時期に大学を選んで出願しています。ただしイギリスにとってITバブルの崩壊は軽度な影響でした。

つまりスコットランドの大学の人気が落ち、ロンドンの大学の人気が上がった時期は不況期のタイミングにあたります。一方で好景気の時はスコットランドの大学の人気が上がり、ロンドンの大学の人気が落ちていたといえます。

不況になると大学選びで2つの現象が起きます。一つは余計な出費を抑えるために地元の大学に通う人が増える事です。そのため結果的に人口規模が大きい地域の大学ほど人気が高くなります。二つ目は先の見えない将来に備えるために就職に強い大学に人気が集まりやすくなります。この二つの意味においてロンドンにある大学は不況期の大学選びには有利な立場にあり、スコットランドの大学は不利な立場にあるといえます。

2-2. 授業料による変化

二つ目の理由は授業料です。イギリスは1998年に年間1000ポンド(年額約15万円/当時のレート換算)の大学の授業料を徴収し始めて以来、年々増加を続けています。2006年秋からは3倍の年間3000~4000ポンド(年額約60~80万円/当時のレート換算)に増加しました。この問題により授業料の高低が大学選びに関与するようになってきました。

スコットランドをとりまく状況は複雑で、スコットランド国内法によりスコットランド人はスコットランドの大学に通う限りは実質的に授業料が無料になります。つまりスコットランド人にとっては値上がりしたイングランドやウェールズなど他の地域の大学には以前より魅力を感じなくなってきている事になります。

一方で授業料の値上がりは他地域の学生にとっても問題となります。高くなった授業料を支払いつつ下宿をするのは、先に払うにせよ、ローンを組んで後払いをするにせよ以前よりも金銭的負担が高くなります。卒業後の心配が無い好況の間は比較的表に出てこないかもしれませんが、これは不況になると顕著に影響します。特にスコットランドの大学は他の地域から通う場合、学士課程が4年制であるためイギリスの大学の中で授業料が最も高くなります。そうなりますと高い授業料に見合った見返りが無いとスコットランドに進学する動機は低くなります。

2-3. その他の考えられる要因

景気と授業料の話だけではスコットランドの大学が2000年中頃に大ブームになった説明がつきません。ひとつ言えるのは、2002年から2007年にかけた時期にロンドンの大学以外にもイギリス国内の多くの有名大学の人気が一様に下がっています点です。

この時期に難易度が上がった有名大学はあまり多くなく、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、ダラム大学、バース大学、そしてスコットランドの主要大学に限定されます。バース大学以外の大学に共通するのは多くが創立が古く、オックスブリッジに似た伝統的な雰囲気と制度を持った大学だという点です。古代の大学と呼ばれます創立400年以上の6大学の殆どがかなりの難化をしました。またセントアンドルーズ大学のカレッジであったのが独立しましたダンディー大学や、創立200年を超えるストラスクライド大学、イングランドでは3番目に古い大学の一つでオックスブリッジに似た大学運営をしているダラム大学も同様に難易度が上がっています。

つまりこの時期に何らかの理由でイギリス国内で伝統校への進学ブームが起きていた事が推測されます。

(追記)
その後、調べてみた結果、スターリング大学など伝統校以外のスコットランドの新設大学も同じ上昇をしていましたので、スコットランドの大学への進学自体が大きなブームになっていたようです。理由ははっきりしません。


3.2012年以降の今後の傾向の予測

最後に来年以降、イギリスの大学がどう変わっていくかを予測します。まずイギリスでは来年の入学者以降で授業料が大幅に値上げされます。新たな学費は最大で今までの3倍の年額9000ポンド(110万円/現在レート換算)となり、殆どの大学がこの額で授業料を設定しています。これは当然大きな変動要因となります。

まず大学進学率そのものがかなりの低下をする事が見込まれます。授業料が支払えないので大学に進学しない人がかなり出てくると見込まれます。

また、大学に進学する場合も出費を安く済ませるための地元志向に一層拍車がかかる事はほぼ間違いないでしょう。特にスコットランド人の殆どは学費が無料で済むスコットランド内の大学に留まる事が予想されます。

一方で4年制のスコットランドの大学はイギリス国内で最も高額の授業料を支払う事になり、その他の地域の大学とは9000ポンドの学費の差が出てきます。そのため、他の地域からスコットランドの大学に進学する学生の数は大幅に減少すると推測されます。

これらの要因に加えて先に説明しました不況時の大学選びの要因が引き続き働くと考えられます。これらをまとめますと下の表のようになります。

不況の悪影響不況の好影響授業料値上げの悪影響授業料値上げの好影響他のプラス要因
オックスブリッジ下宿が必要な出願者の減少無し出願者の減少無し強いブランド力
ロンドン下宿が必要な出願者の減少ロンドンの優秀層を囲い込める出願者の減少ロンドンの優秀層を囲い込める高い就職力に惹かれる学生を集められる
他イングランド下宿が必要な出願者の減少無し出願者の減少無し無し
スコットランド下宿が必要な出願者の減少スコットランドの優秀層を囲い込めるスコットランド外からの出願者が大幅に減少スコットランドの優秀層をほぼ完全に囲い込めるスコットランド人の大学進学率は変わらない
ウェールズ下宿が必要な出願者の減少ウェールズの優秀層を囲い込める出願者の減少ウェールズの優秀層を囲い込める無し
北アイルランド下宿が必要な出願者の減少北アイルランドの優秀層を囲い込める出願者の減少北アイルランドの優秀層を囲い込める無し

来年以降の大学の人気傾向の予想


来年以降、最も変動が予想されるのはオックスブリッジ、ロンドン以外のイングランドの大学です。これらの大学は不況と授業料の悪影響を打ち消す目立ったプラス要素が無いために相対的に人気が落ちる事が予想されます。ただしブランド力がある上位大学(特に最初のグラフで紫色に塗った4大学)や、バーミンガム市など人口が比較的多い地域の大学は比較的に軽微な影響で済むと思われます。

ウェールズ、北アイルランドの大学は自分の地域の学生を囲い込み易い状況になるものの、全体の人口が小さく、また他地域からの出願の大幅な減少で苦しい状況になる事が予想されます。ただし、ウェールズでトップのカーディフ大学に関しては比較的軽微な影響で済むと思われます。

スコットランドの大学は他地域からの出願が大きく落ちると予想されるものの、自分の地域の学生を囲い込める事や自分の地域の大学進学率が変わらないというプラス要因もかなりあるため、他地域の大学進学率が大幅に落ち込む場合は現状維持が出来る可能性があります。ただし、財政的理由で高額授業料を多く払う他地域の学生をたくさん受け入れる必要が出てきた場合は大きく落ち込む可能性もあります。いずれの場合にしても学部定員が1学年1600人程度と少なく、スコットランド内の人気で1、2を争うセントアンドルーズ大学は現状と比べて大きな変化は無いのではと推測されます。

オックスブリッジは他のイングランドの大学と同様に不況と授業料値上げの悪影響を受けますが、強いブランド力がある事と裕福な家庭の学生が多い事から影響は軽微だと推察されます。ただしカレッジ制の大学ですので学生全員の各カレッジへの下宿が義務付けられています。その分の費用を天秤にかけて自宅から通える大学の方を選ぶ学生は一定数でてくるだろうと予想されます。

ロンドン市内の大学はイギリスの人口の13%を占めます首都ロンドンに存在している恩恵を最も受けますので今後も有利な状況は続くだろうと思われます。ただし、ロンドンは物価が高いため、下宿前提のロンドン外からの出願者からは最も敬遠される可能性があります。


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今回の記事ではイギリスの大学の成績評価と卒業度の傾向について書いていきます。

1.イギリスの大学の卒業難易度の傾向

以前紹介しましたHigher Education Statistics AgencyというNPO組織が各大学の最終卒業率のデータを公開しています(参照元)。このデータを各大学で最近の5年間の数値で平均をとり、以前に計算しました学部入学難易度の偏差値と相関関係をとってみました。


イギリスの大学徹底分析-英国の入学難易度と卒業率の相関関係
入学難易度と卒業率の相関関係


相関関係をとったのは偏差値50以上の大学だけですが、この結果を見ると偏差値と顕著な傾向が見て取れます。

①イギリスの大学全体で見ますと大学の平均最終卒業率は85%です。入学難易度が高くなるほど卒業率は高くなり、低くなるほど卒業率は低くなっています。一番卒業率が高い水準が98%~99%、一番低い水準が55%~65%です。

②各大学の最終卒業率の分布を見てみますと2つの傾向があるのが見えます。黒い傾向線の示すグループAと赤い傾向線の示すグループBです。大多数の大学は黒い傾向線の示すグループAに属しています。赤い傾向線の示すグループBはそれらの大学に比べて相対的に卒業難易度が高い事を指しています。グループBに属していると見て取れるのはImperial College LondonLondon School of EconomicsSt Andrews大学University College London東洋アフリカ研究学院、Glasgow大学、Strathclyde大学、Dundee大学の8大学です。


2.イギリスの大学の成績評価の傾向

Higher Education Statistics Agencyが同じく各大学の学部の成績の優等比率(2:1以上)のデータを公開しています(参照元)。このデータを各大学で最近の5年間の数値で平均をとり、以前に計算しました学部入学難易度の偏差値と相関関係をとってみました。


イギリスの大学徹底分析-英国の入学難易度と成績評価の相関関係
入学難易度と成績評価の相関関係


相関関係をとったのは偏差値50以上の大学だけですが、この結果を見ると同じように偏差値と顕著な傾向が見て取れます。

①イギリスの大学全体で見ますと大学の平均成績優等率は62.7%です。入学難易度が高くなるほど成績評価は高くなり、低くなるほど成績評価は低くなっています。一番成績評価が高い水準がだいたい成績優等率90%、一番低い水準がだいたい成績優等率35%です。

②各大学の卒業率の分布を見てみますと3つの傾向があるのが見えます。黒い傾向線の示すグループと2つの赤い線で囲んだグループです。大多数の大学は黒い傾向線の示すグループAに属しています。上方にある赤い線のグループBはそれらの大学に比べて顕著に成績評価が厳しく、下方にある赤い線のグループCはそれらの大学に比べて顕著に成績評価が緩い事を指しています。グループBに属していると見て取れるのはCambridge大学Imperial College LondonLondon School of Economicsの3大学、グループCに属していると見て取れるのはSussex大学です。


3.近年の大学中退率の変化

最後にここ近年の中退率の傾向を見ていこうと思います。イギリスでは近年大学卒業率に大きな変化が起きています。2003年と2008年で入学難易度と中退率の相関関係をとってみました。


$イギリスの大学徹底分析-近年の大学卒業率の変化
近年の大学中退率の変化


図の通り、5年間でイギリスの大学の中退率は大幅に改善しています。実際、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの全地域で2003年と2008年の間で中退率が大幅に低下しています。


$イギリスの大学徹底分析-イギリス4地域の中退率の変化
イギリス4地域の中退率の変化


ただしこれは近年イギリス人の学力が大幅に向上している事が原因という訳では無さそうです。それは下のPISAの15歳の学力調査の結果に現れています。

2000年2006年2009年
数学力529点8位(欧州2位/G8中3位)495点24位(欧州16位/G8中5位)492点28位(欧州18位/G8中5位)
読解力523点8位(欧州3位/G8中2位)495点17位(欧州10位/G8中3位)492点25位(欧州15位/G8中6位)
科学知識532点5位(欧州2位/G8中2位)515点14位(欧州7位/G8中4位)514点16位(欧州8位/G8中4位)
PISAの15歳の国際学力テストのイギリスの結果


このデータが示すとおり、ここ10年間でイギリス人の平均学力は低下しています。若年層の平均学力の低下は先進国には広く見られる傾向ですがイギリスは相対的に見ても2000年には先進国トップレベルだった学力水準が、2006年には相対的に先進国の中堅水準にまで6年間で大幅に平均学力を落とし、そのまま改善せずに現在に至っています。

また大学進学率、大卒率もここ最近の10年間で10%程度増加しています。それにも関わらず、中退率が下がっている事は大学の卒業難易度が低下している事を指しています。

一つの傾向として見れるのが入学難易度帯による中退率の推移の違いです。上の図で示しました通り、入学偏差値が64~65を超える大学には中退率の変化はあまり見られません。むしろ全体としては中退率は若干増加の傾向を示しています。一方で偏差値で64~65を下回る大学は逆に中退率が顕著に低下しています。特に偏差値50から下の大学は中退率の変化が非常に大きくなっています。つまり最難関の大学グループでは卒業難易度は変化していない一方で、中堅~下位大学の卒業難易度は大幅に易化している事を意味しています。

これは大学数の増加と進学率の急激な上昇によって本来大学に入るに満たない学力層までも大量に大学に入学して来たために卒業基準を下げざるを得なくなった事も大きいですが、各新聞社が発表するイギリスの大学ランキングでの学生満足度や卒業率、成績優等率の全体のランキングに与える重みが大きい事も影響が少なくないと考えられます。

つまりブランド力が無い下位大学はランキング順位を上げるために学位の取りやすさでランキングスコアの数値を改善させる戦略を取りがちになっているという事です。実際、イギリスの大学ランキングは在学生の満足度が高い大学、卒業率が高い大学、成績優等率が高い大学ほど良い大学であるという観点から順位をつけているため、学位発行の難易度を下げる事は入学者の入学試験の平均点の改善や研究力の数値を改善させるよりも遥かに簡単にランキングの順位を上げることが出来ます。逆に学位発行を厳しくし、卒業難易度を高くしてしまうと学生満足度、卒業率、成績優等率のスコアが大きく下がる事でランキング順位を大幅に下げてしまい、受験生を満足に集められなくなる経営リスクがあります。イギリスの大学はほとんど全てが公立大学ですが各大学の自治権が大きいため、このような大学独自の基準を設ける事を可能としています。

この問題は現在のイギリスの大学行政が抱えるひとつの大きな問題と言えます。現在、イギリス政府は大学定員の縮小などの改善の方向に向かい始めてはいますが、当面は今の状況が続くと思われます。


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ウォーリック大学ダラム大学セントアンドルーズ大学ブリストル大学エジンバラ大学
バース大学キングス・カレッジ・ロンドン (KCL)ヨーク大学ノッティンガム大学マンチェスター大学
バーミンガム大学シェフィールド大学サウサンプトン大学グラスゴー大学エクセター大学
東洋アフリカ研究学院 (SOAS)カーディフ大学クイーンズ大学ベルファストロンドンビジネススクール (LBS)クランフィールド大学
上位12大学の紹介が終わったのですが、あと何校か紹介した方が良いだろうと思う重要な大学が残っていますので紹介していきます。大学の一般的な情報はWikipediaなどの繰り返しになりますので、今までこのブログで紹介してきましたデータを中心に書きます。それぞれのデータの根拠はページの最後の方の一覧に載せました過去の記事を参考にしてください。

今回はノッティンガム大学をとりあげます。


ノッティンガム大学 (University of Nottingham, Nottingham)


イギリスの大学徹底分析-Nottingham (撮影者Barry Mangham/Wikipediaより)
(撮影者Barry Mangham/Wikipediaより)

イギリスの大学徹底分析-Nottingham大学の入学難易度/大学の特徴
グラフで見たNottingham大学の主な特徴


ノッティンガム大学のサマリーデータ
大学名University of Nottingham
主要な所属大学連合ラッセルグループ
創立1881年
立地Nottingham市 (Londonから電車で約2時間)
学生数(正規のみ)学部20121学年 平均7,838人 /全学年  23,515人
大学院20127,715人
学生の割合(学部)英国人201283.6%
欧州留学生20123.7%
他留学生201212.7%
学生の割合(大学院)英国人201253.6%
欧州留学生20129.2%
他留学生201237.2%
学部学生の出身高校 (2009)(私立高卒) 30.3% : 69.3% (公立高卒)
男女比 (2013)(男) 51% : 49% (女)
人種の多様性 (2008)非白人学生率 14.9%
学部入学難易度 (2013)21位UCAS 437 / 換算偏差値 60
学部入学難易度 (過去8年平均)13位平均偏差値 63
同世代人口比で見た選抜水準(学部)(2013) 上位11.0%  (過去8年の平均) 上位4.9%
卒業難易度標準的学部最終卒業率 95.4% 学部成績優等率 74.5%
教員一人当たり学生数 (2013)17位14.0人
学生一人当たり教育支援支出 (2013)29位£1,214 (約18万円)
学生一人当たり施設支出 (2013)42位£429 (約6万円)
研究力 (2008)21位RAE 2.67 / 換算偏差値 60
研究費予算配分 (2011 / 人件費込)14位£100,300,000 (約150億円)
ノーベル賞18位3人(OB 1人  教員 2人)
就職/進学率 (2012)33位72.5%
卒業生の初任給平均 (2009)22位£20,967 (約315万円)
NYTimes トップ企業の採用評価 (2012)9位世界70位
Spear's 富裕層の輩出人数 (2013)18位世界217位
時価総額世界上位500社のCEO輩出力2011イギリス国内2位  世界13位
日本の大学ライバル校総合選抜度上位国立大学及び上智大学、東京理科大学など
平均研究力分野別順位平均: 理系:東北大学  文系:該当無し
教員当たり平均研究実績: 大阪大学、東北大学
採用評価京都大学~早稲田大学
米国の大学ライバル校総合選抜度全米総合大学選抜度上位40位~55位水準
平均研究力分野別順位平均: Stony Brook University
教員当たり平均研究実績: USC
採用評価全米総合大学採用評価上位19位~20位水準
国内大学ランキングIndependent社(2014) 24位  (過去7年の平均) 18位
Guardian社(2014) 28位  (過去7年の平均) 20位
世界大学ランキングTimes社2014157位
QS社201375位
上海交通大201383位
Times名声調査世界ランキング2013N/A


主要専攻の学部入学難易度と研究力2014 (UCAS/RAEスコアの偏差値での換算値)
学問分野全平均法律政治経済経営会計心理哲学歴史古典英文芸術言語教育
難易度(学部)6070606656556058646064------
研究力6066567264645963585768------
学問分野数学物理化学生物電子機械材料土木情報建築医学歯学薬学
難易度(学部)686462585360--57516572--64
研究力6264725961676771715250--71


研究力及び研究者育成力の世界順位 (上位200位まで/2013年版ARWUより)
学問分野社会科学自然科学工学生命科学医学&薬学
経済学&経営学数学物理学化学情報工学
順位101-150位101-150位151-200位--101-150位151-200位151-200位--48位26位


ノッティンガム大学は創立130年の大学です。もともとはロンドン大学のカレッジとして設立されましたが1948年に独立しました。特徴を箇条書きにしますと次のようになります。英国の研究型上位大学連合であるラッセルグループに属しています。

(1) 立地・大学の雰囲気
ロンドンから電車で2時間ほどの距離にあるノッティンガム市に位置しています。立地的には若干不利なロケーションとなっています。大学構内の雰囲気や大学のシステムは郊外の広いキャンパスに近代・現代的な建物が分散しています。州立高校卒業生比率が69.3%と低く裕福な学生が多く集まる大学です。

(2) 学生数・教員数
教員一人当たりの学生数は14.0人でこのランクの大学としては平均的です。学生数は学部・大学院を合わせて3万人以上でイギリス屈指の大規模大学です。在学生の男女比は51:49とほぼ男女半々です(参照元)。

(3) 入学難易度
学部入学難易度は比較的高く、UCASの入学者平均スコアから計算した2013年度入学者の偏差値は60でイギリスで21番目です。ここ数年間は以前と比べると全体的に他大学と比べた相対的な難易度は低迷しています。専攻や年によって上下しますが、毎年同世代人口でだいたい英国の上位4.9%の学生が集まっています。法学、建築、薬学、医学が特に人気が高く難関です。なお学部入試の平均倍率はおよそ6倍です(参照元)。

(4) 成績評価・卒業難易度
最終的な卒業率は平均して95.4%、学部生の成績優等率は平均して74.5%です。学生の学力水準に対し、卒業難易度、成績評価はイギリスの中では標準的です。

(5) ノーベル賞受賞者数・研究力
ノーベル賞受賞者総数は3人で18番目です。米国の大学と比較すると総数、卒業生の受賞者数共にジョージワシントン大学と互角です。RAEで見ました大学の総合研究力はイギリスでは21番目となっています。ARWUのデータで見ますと医学の研究力が英国6位、世界30位、生命科学、社会科学の研究力が世界51-75位と高い水準となっています。一方RAEのデータでは化学と薬学、物理学が強く、それぞれ英国2位、2位、4位の研究水準を誇っています。なお、研究人件費を含んだ2011年の研究費予算配分では英国で14番目に多い1億30万ポンド(約150億円)を獲得しています(参照元)。

(6) 就職力・経済界での活躍度
卒業生の収入は初任給平均では英国22位で難易度に対してやや悪いです。これは立地の不利さが理由だと推測されます。卒業6ヶ月後時点の未就職者数は6.8%です(参照元)。一方、時価総額で世界上位500社の経営者の輩出力のランキングでは2011年のランキングでイギリス国内で2位、世界全体で13位と大変良い結果になっています(参照元)。また、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価では英国9位、世界70位となっています(参照元)

(7) 日本のライバル
日本で同水準の大学は選抜度に関しては、以前掲載しました英国上位12大の選抜度国際比較データの傾向から推測しますと上位国立大及び上智大、理科大あたりですが、ここ数年は人気が低迷しており1ランク下の選抜度になっています。研究力及び研究者育成力で同水準の大学は、ARWU分野別の研究力世界200位のデータから推測しますと理系では東北大学ですが、文系では日本の全大学を上回っています。一方、教員一人あたりの平均研究実績はARWUのPer Capita Performanceのスコアで見ますと20.5ポイントで大阪大学や東北大学がほぼ同水準です。また企業の採用評価に関しては、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価で京都大学(日本3位/世界47位)と早稲田大学(日本4位/世界101位)の間という結果(世界70位)が出ています。

(8) アメリカのライバル
米国で同水準の大学は選抜度では、上記同様の推測からロチェスター大学などの全米総合大で選抜度上位40~55位水準ですが、ここ数年は人気が低迷しており1ランク下の選抜度になっています。一方、研究力及び研究者育成力ではストーニーブルック大学がほぼ同水準です。教員一人あたりの平均研究実績はARWUのPer Capita Performanceのスコアで見ますと20.5ポイントで南カリフォルニア大学などがほぼ同水準です。また企業の採用評価に関しては、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価でジョージタウン大学(全米19位/世界68位)と南カリフォルニア大学(全米20位/世界72位)の間という結果(世界70位)が出ています。

(9) 国内大学ランキング
新聞社が毎年出している国内大学ランキング表を見ますとIndependent社のランキングで2008年~2014年の7年間の平均ランキングで国内18位、Guardian社の2008年~2014年の7年間の平均ランキングで国内20位となっています。(近年授業料の急激な変動や景気変動などの国内情勢を反映し国内の大学ランキングは毎年乱高下しています。特にGuardian社のランキングは変動が激しくなる傾向があります。そのため、変動要素を減らすためにここでは平均で見ています。)

(10) 世界大学ランキング
2013年度版の世界大学ランキングではTHEのランキングで157位、QS社のランキングで75位、ARWUのランキングで83位となっています。

(11) 著名なOB
著名なOBはノーベル経済学賞受賞の経済学者のクライヴ・グレンジャー、マレーシアの首相のナジブ・ラザクなどです。

(12) 人種・国際性
人種別の学生比率は2007~2008年のデータでマイノリティ学生が14.9%となっています(参照元)。イギリスの全大学の非白人の人口平均が16%(参照元)である事から人種構成は平均的かややマイノリティが少なめです。2011~2012年のデータでは全体の学生の25%が留学生です。


総合的に見ますと英国で13~14番目の大学と言ってよいと思います。


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