日本にもいくつかの大学を一括りにしたグループが存在するようにイギリスにもよく使われるいくつかの大学グループがあります。最もよく耳にするのはラッセルグループ(Russell Group)で、24の研究型上位大学が集まった大学グループです。その他では、古代の大学(Ancient university)、ロンドン大学連合(University of London)、赤レンガ大学(Red brick university)、1994グループ、サットン13は割とよく使われます。特にラッセルグループ、サットン13、赤レンガ大学、(特にスコットランド内で)古代の大学は一流大学の象徴としてしばしば使われています。

ただしそれぞれの大学グループが実際にどの程度の難易度、選抜度合(人口に対して上位何%か)なのかがはっきりしなかったので実際に調べて表にまとめてみました。(学生数のデータはイギリスはHESAの2011~2012年度の提供データ(参照元)、日本は弘前大学の公開データ(参照元)及び各大学のホームページを参照しています。イギリスの大学の偏差値はUCASの最新データを偏差値に換算した値です。社会人学生と通信制は除いています。)


イギリスの大学徹底分析-学部入学難易度と大学グループの関係
表1:イギリスの学部入学難易度と大学グループの関係



イギリスの大学徹底分析-日英の大学グループ学部選抜度/人口比率の比較
表2:日英の大学グループ学部選抜度/人口比率の比較



1. ラッセルグループ

ラッセルグループはイギリスで最も有名な大学グループ名です。最近のアンケートではイギリスの大学生の50%が認知しており、そのうち72%がラッセルグループを名門・難関大学/一流大学として認識しているという調査結果が出ています(参照元)。構成大学数は24校に過ぎないですがイギリスの全大学研究費予算の80%以上がこれらの大学に投入されています(参照元)。研究に重点を起き、学力上位層を集めているという意味で日本の国公立大学やアメリカのアメリカ大学協会に似ています。

実際に表1を見ての通り、イギリスの難関大学の大半を網羅しています。難易度はケンブリッジ大学の偏差値81からクイーンズ大学ベルファストの偏差値54までで平均偏差値は64.7、大半の構成大学が偏差値に換算して60以上の高い難易度になっています。学部学生数の人口比率で見ますと11.9%で、日本の国公立大学の人口比率11.5%とほぼ同じですが、選抜水準は人口比上位16.4%で日本の国公立大学(人口比大よそ上位20%)に比べるとやや高くなっています。特にクイーンズ大学ベルファスト以外の構成大学は日本の中堅国公立大学と同水準以上の相対難易度・選抜度(偏差値で58以上、人口比で選抜上位13.3%)となっています。

ただし、ラッセルグループが難関・名門大学の全てではなく、最新のUCAS入学難易度のデータではラッセルグループと同水準の難易度の大学はセントアンドルーズ大学バース大学を筆頭に18校存在しています。


2. 古代の大学

ラッセルグループほどよく使われませんが、古代の大学も一流大学としてしばしば認識されています。古代の大学はイギリスとアイルランドに存在する英語圏で最も古い7大学で、イギリスには6校存在しています。特にスコットランドは古代の大学のうち4校が存在している事もあり認知度は高くなります。

実際に選抜度を見てみるとラッセルグループよりさらに高く、平均偏差値は70、最高はケンブリッジ大学の偏差値81で最低でもアバディーン大学の偏差値61となっています。人口比率で見てみますと2.1%と学生シェアは少なく、日本の旧帝大(1.7%)に似ています。ただし選抜水準は人口比上位8.2%と人口比上位3.7%の旧帝大と比べると低めです。


3. サットン13

かなりマニアックな用語ですがイギリスの大学受験用語として日本の進学校にあたるシックスフォームカレッジが大学進学実績を語る際にしばしば使う大学グループです。またマスメディアが進学校の大学進学実績を比較する際にもよく使用されます(参照元)。元々はサットン・トラストという教育関係のチャリティグループが1999年に当時のランキング上位13大学を選んでグループ化したものです。そのため最難関大学の網羅率が高いのが特徴です。

グループの構成大学の難易度はケンブリッジ大学の偏差値81からノッティンガム大学の偏差値60までとなっており、特徴的なのは偏差値66以上の最難関10大学がグループに全て含まれています(平均難易度は69.1)。学生シェアは人口比で5.2%、選抜水準は人口比上位11%です。ノッティンガム大学、ヨーク大学バーミンガム大学の三大学は近年の人気が停滞しているためグループの選抜水準が下がっていますが、過去8年を平均した選抜水準で見れば人口比で上位8.5%と、日本で似た意味合いでしばしば使われる受験用語の難関国公立大や早慶上理(選抜度は人口比大よそ上位7%)に近い水準と見なせます。

なお2008年のデータでは国内トップ5の進学校で83%、トップ30の進学校で71%、トップ100の進学校で58%、トップ200の進学校で49%、その他の進学校で10%の学生がサットン13のいずれかの大学に進学するという結果になっています(参照元)。


4. 赤レンガ大学

赤レンガ大学(レッドブリックス)という用語もしばしば一流大学を指す言葉として使われます。赤レンガ大学は19世紀後半から20世紀初頭に設立されたレンガ造りの建物を基調とした6大学の俗称で全てラッセルグループに属しています。一般的にはオックスブリッジ、ロンドンの上位大学に次ぐ水準の大学を象徴する大学群として使われる事が多いです。

難易度はブリストル大学の偏差値66からリバプール大学の偏差値58までで平均すると61.2となります。大規模大学が多い事もあり学生シェアは人口の4.0%と大きく、人口に対する選抜度は上位13.3%で、日本で明青立法中や関関同立と括られる上位私立大学群(学生シェア4.6%、人口比大よそ上位15%)に似ていますが、赤レンガ大学の場合は難易度帯の幅や名声にかなり大きなばらつきがあります。


5. ロンドン大学

ロンドン大学はパリ大学やカリフォルニア大学に似た運営の18の大学が集まった大学連合です。各構成大学はそれぞれ独自に入試と学位発行を行っています。全般的には高い評価を受けていますが難易度は最難関大学から中堅大学まで様々で、また単科大学や大学院大学など特殊な大学が多いのが特徴です。

難易度はロンドンスクール・オブ・エコノミクスの偏差値73から王立音楽アカデミーとヘイスロップカレッジの偏差値48まで様々です(平均難易度は58.3)。日本で似たタイプの大学連合を探すのは難しいですが強いて言えば大学コンソーシアム京都が少し似ています。


6. 1994グループ

ラッセルグループが設立された当初、非研究型大学、中小規模大学が対抗して作った大学グループです。一時期はラッセルグループと並ぶ上位大学グループとして認識されていましたが、2012年~2013年に8つの主要大学が相次いで脱退し(一部ラッセルグループが吸収)、現在は活動が大きく停滞しています。

難易度はランカスター大学の偏差値60からエセックス大学の偏差値48まで様々です(平均難易度は55.7)。選抜水準では人口に対して上位22.9%で日本の中堅~下位国公立大学/上位~中堅私立大学に該当すると見なせます。


補足 : アメリカの大学連合と比べたラッセルグループ

ラッセルグループは今はあまり言われなくなりましたが、割と最近まで英国版アイビーリーグとしばしば称されてきました。実態はどうなのか、アメリカのアイビーリーグを含めた大学グループの選抜度を2012年のSATの75percentileランキング順で米国人の学部学生数を調べて学部選抜度を比較してみました。(大学のSATのデータはSTATEUNIVERSITY.comの2012年版SATトップ500ランキングを利用しました。学生数や留学生の割合などのデータはForbesとCappexなどを中心に調べてあります。生データはこのページの最後に載せてあります。)

イギリスの大学徹底分析-米英の大学グループ学部選抜度/人口比率の比較
表3:イギリスの学部入学難易度と大学グループの関係(アメリカとの比較)


まず、表のデータを見ての通り、学部選抜において、ラッセルグループとアメリカのアイビーリーグとの比較はかなりの無理があります。ラッセルグループの学力の選抜水準は人口の上位16.3%ですが、アイビーリーグは人口上位1%です。ラッセルグループの加盟大学でアイビーリーグに似た水準の選抜度を保っている大学はケンブリッジ、オックスフォード、インペリアルカレッジ、LSEの4校のみになります。

ただし、一方で公立大学版アイビーリーグのパブリックアイビーの学力選抜度(人口上位15.4%)と比較するとほとんど同水準と言えます。またアメリカ大学協会の学力選抜度(人口上位17.5%)と比較してもほとんど同水準となります。上で書きました通り、研究型上位大学の大学連合の特徴を考えますとラッセルグループは学力選抜度と研究型大学の集まりという二つの意味で英国版のアメリカ大学協会と見なせると言えます。



イギリスの大学徹底分析-アメリカの上位365大学の学部選抜度
表4:アメリカの大学の学部選抜度 (紫=IVY 緑=Public IVY 橙=その他非LAC)



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