熊井啓 「お吟さま」 (1978) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

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スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【あらすじ:Movie Walkerよりの引用(→結末までの記述あり。

豊臣秀吉(三船敏郎)の茶頭 千利休(志村喬)の養女 お吟(中野良子)は、5年ぶりにキリシタン大名 高山右近(中村吉右衛門)を、父の名代で高槻城へ訪ねた。

吟は20歳になる今日まで嫁入りもせず、幼なじみの右近を慕い続けてきたのだったが、妻のある右近はキリシタンの教えに背いてまで、吟の思いを受け入れることは出来なかった。

利休は大阪城で、石田三成(伊藤孝雄)から吟の縁談を持ちかけられる。気の進まぬ吟は、高槻から明石へお国替え中の右近に心中をうちあけるが、彼には嫁に行けと伝えることしか出来ない。

万代屋宗安(原田大二郎)に嫁いだものの、吟の右近に対する思いは増すばかりであった。

天正15年(1587年)10月、北野の大茶の湯が催された際、吟の美貌に秀吉は激しく心を動かされる。三成と宗安は、吟を秀吉に差し出し、おのれの栄達を画策する。

一方、キリシタン禁制の布令で身を隠していた右近のもとへ、吟は馬を走らせ、右近の身の危急を知らせる。そして、九州まで一緒に連れて行ってくれと哀願する吟に、右近は困惑しながらも、彼女と添い寝する。
しかし、右近は吟に心を残しながらも、彼女を置いて去ってしまう。

天正18年(1590年)、秋深き大阪城にむかえられた吟は、黄金の茶室で秀吉から求愛の言葉を受けた。翌年1月、卑怯極まる秀吉の横恋慕に、利休は命に代えても吟を守ろうと、身をひそめていた右近に、吟の加賀への同行を頼む。

その夜、利休一家は揃って別離の宴をはったが、千家はすでに秀吉の軍勢に包囲されていた。逃れるすべのなくなった吟は、白無垢の死装束に身を正し、右近に別れの書状を残し、離れ座敷で自害した。

同年2月28日、太閤秀吉の命により、利休は切腹する。高山右近はルソンに追放され、マニラでその生涯を閉じた。



【感想】

銀嶺の果て」(1947)から31年、三船敏郎と志村喬の最後、51本目の共演作である。この年、三船敏郎58歳、志村喬73歳。志村喬は本作品公開の4年後の1982年に76歳で亡くなってしまう。

三船敏郎は豊臣秀吉の役で、もはや犯罪者・逃亡者どころか、日本の頂点に君臨する太閤様の役だが、志村喬の千利休との関係は、どこか「銀嶺の果て」と通じるものがある。

本作品において、実は主人公は秀吉でも千利休でもない。主人公は、千利休の養女 お吟(中野良子)である。(今東光の創作であり、実在の人物ではない。)   お吟のキリシタン大名 高山右近(中村吉右衛門)への叶わぬも激しい恋が映画のテーマである。

私が、この映画を観て、真っ先に思い出したのは、私の大好きなフランスのフランソワ・トリュフォー監督(1932-1984)の映画「アデルの恋の物語」(1975)である。「アデルの恋ー」は、「レ・ミゼラブル」等で知られるフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴー(1802-1885)の次女アデルの、一度だけ愛し合った英国騎兵隊アルバート・ピンソン中尉への狂気的恋の情念を描く映画だ。

お吟はアデルの様に、狂気にまで陥ることはなく、あくまでも日本女性らしく静かだが、内に秘めた高山右近への思いは強烈で途切れることはない。

お吟を演じた中野良子(当時28歳)の美しさと、熊井啓の確かな演出力が合わさり、岡崎宏三撮影の映像美も加わって、傑作と呼ぶにふさわしい。




【スタッフ、キャスト等】

監督:熊井啓
脚本:依田義賢
原作:今東光の同名小説(1957)
撮影:岡崎宏三
美術:木村威夫
音楽:伊福部昭
キャスト:
お吟(中野良子)
高山右近(中村吉右衛門)
千利休(志村喬)
豊臣秀吉(三船敏郎)
石田三成(伊藤孝雄)
万代屋宗安(原田大二郎)

上映時間:2時間34分
日本公開:1978年6月3日
鑑賞日:2018年7月25日
場所:新文芸坐(池袋)



【三船敏郎 主要出演作品】

谷口千吉 「銀嶺の果て」 (1947)
黒澤明 「酔いどれ天使」 (1948)
黒澤明 「静かなる決闘」 (1949)
谷口千吉 「ジャコ萬と鉄」 (1949)
黒澤明 「野良犬」 (1949)
黒澤明 「醜聞」 (1950)
黒澤明 「羅生門」 (1950)
黒澤明 「白痴」 (1951)
森一生 「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」 (1952)
千葉泰樹 「東京の恋人」 (1952)
谷口千吉 「吹けよ春風」(1953)
本多猪四郎 「太平洋の鷲」 (1953)
黒澤明 「七人の侍」 (1954)
稲垣浩 「宮本武蔵」 (1954)
杉江敏男 「天下泰平」 (1955)
杉江敏男 「続 天下泰平」 (1955)
稲垣浩 「続 宮本武蔵 一乗寺の決闘」 (1955)
黒澤明 「生きものの記録」 (1955)
稲垣浩 「宮本武蔵 完結編 決闘巌流島」 (1956)
成瀬巳喜男 「妻の心」 (1956)
黒澤明 「蜘蛛巣城」 (1957)
黒澤明 「どん底」 (1957)
千葉泰樹 「下町 ダウンタウン」 (1957)
稲垣浩 「無法松の一生」 (1958)
黒澤明 「隠し砦の三悪人」 (1958)
稲垣浩 「或る剣豪の生涯」 (1959)
稲垣浩 「日本誕生」 (1959)
岡本喜八 「暗黒街の対決」 (1960)
黒澤明 「悪い奴ほどよく眠る」 (1960)
黒澤明 「用心棒」 (1961)
稲垣浩 「ゲンと不動明王」 (1961)
黒澤明 「椿三十郎」 (1962)
稲垣浩 「どぶろくの辰」 (1962)
松林宗恵 「太平洋の翼」 (1963)
黒澤明 「天国と地獄」 (1963)
岡本喜八 「」 (1965)
黒澤明 「赤ひげ」 (1965)
岡本喜八 「血と砂」 (1965)
谷口千吉 「奇巌城の冒険」 (1966)
ジョン・フランケンハイマー 「グラン・プリ」 (1966)
小林正樹 「上意討ち 拝領妻始末」 (1967)
岡本喜八 「日本のいちばん長い日」 (1967)
熊井啓 「黒部の太陽」 (1968)
ジョン・ブアマン 「太平洋の地獄」 (1968)
稲垣浩 「風林火山」 (1969)
蔵原惟繕 「栄光への5000キロ」 (1969)
丸山誠治 「日本海大海戦」 (1969)
岡本喜八 「赤毛」 (1969)
沢島忠 「新撰組」 (1969)
岡本喜八 「座頭市と用心棒」 (1970)
テレンス・ヤング「レッド・サン」 (1971)
中島貞夫 「日本の首領 野望編」 (1977)
熊井啓 「お吟さま」 (1978)
中島貞夫 「日本の首領 完結編」 (1978)
スティーヴン・スピルバーグ「1941」 (1979)
舛田利雄 「二百三高地」 (1980)
山田洋次 「男はつらいよ 知床慕情」 (1987)
熊井啓 「千利休 本覺坊遺文」 (1989)
熊井啓 「深い河」 (1995)






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