黒澤明 「酔いどれ天使」 (1948) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

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スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【あらすじ:Movie Walker()及びWikipedia()よりの引用

駅前のヤミ市附近のゴミ捨場になっている湿地にある小さな沼周辺で、暑さに眠られぬ人々がうろついていた。これら界わいの者を得意にもつ「眞田病院」の赤電燈が蜘蛛の巣だらけで浮き上っている。

眞田病院長(志村喬)は、飲兵衛で近所でも評判のお世辞っけのない男だが、一方で、気骨があり正義感に溢れた男である。

眞田はヤミ市の顔役 松永(三船敏郎)が拳銃で撃たれた傷の手当を受けたことをきっかけに、松永が結核に冒されているのを知り、病気についての注意を与え、松永のことを気に掛ける様になる。

しかし、若くて血気盛んな松永は素直になれず、威勢を張るばかり。松永は傲岸不遜な面構えでそっくり返ってこそいるが、胸の中は風が吹き抜ける様な、虚ろな寂しさがあった。殺し切れぬ理性が時々うずく、まだ芯からの悪党にはなっていなかったのだ。

「何故素直になれないんだ。病気を怖がらないのが勇気だと思ってやがる。俺に言わせりゃ、お前程の臆病者は世の中にいないぞ」と、眞田の放った言葉が松永にはグッと堪えていた。

やがて松永の病状は悪化し、松永の情婦の奈々江(木暮実千代)は、刑務所帰りで元々松永の兄貴分だった岡田(山本礼三郎)と結託して、松永を縄張りから追い出してしまう。松永に代って岡田勢力が優勢になり、もはや松永を顧みる者もいなくなる。

そんな中、松永は吐血し、眞田病院に運び込まれ、一旦は養生を試みる。言い様の無い寂しさに襲われた松永が、一番愛するヤクザと仁義の世界も、すべて親分の御都合主義だったのを悟った時、松永は進むべき道を失っていた。

ドスを抜いて奈々江のアパートに岡田を襲った松永だが、岡田の反撃に遭い、反って己の死期を早める結果になってしまった。

ある雪どけの日の朝、かねてより松永に想いを寄せていた飲屋「ひさご」のぎん(千石規子)が眞田と話している。親分でさえかまいつけぬ松永のお骨を、ぎんは大事に抱えて田舎に帰ると言うのだ。

ぎんを見送ると、眞田は結核が快癒したとレントゲン写真を持って喜んで走って来る眞田の患者の女学生(久我美子)に再会し、一縷の光を見出だすのだった。




【感想】

黒澤明監督映画に初めて三船敏郎が出演した作品であり、黒澤明もそのテーマ・技法・スタイルを確立した作品と言われており、映画史的にも大変重要な作品である。

この後、三船敏郎は、「生きる」(1952)を除く黒澤映画12本に連続して主演し、幸福な日本映画の黄金時代を築く一翼を担っていく。

黒澤明は、ヤクザ否定、暴力否定のテーマを持って本映画に臨んだのだが、いかんせん、三船敏郎という役者の魅力が強烈過ぎた。観客は、「酔いどれ天使」の眞田(志村喬)ではなく、自己破滅的になりながらも、心の何処かに純粋な部分を残している松永(三船敏郎)により魅力を感じてしまうという皮肉。

しかし、映画が監督の意図を(遥かに)超えて、とんでもない何かを産み出してしまうことは、たまにあることであり、黒澤明も自分の意思とは違ったこのモンスター三船を、その後もずっと使い続ける訳だから、その点は確信犯であろう。

今、改めて70年も前に公開された本映画を観ると、黒澤映画に於ける三船敏郎の存在の大きさを再認識するのである。恐るべし、三船敏郎!




【スタッフ、キャスト等】

監督:黒澤明
脚本:植草圭之助、黒澤明
撮影:伊藤武夫
美術:松山崇
音楽:早坂文雄
挿入歌:「ジャングル・ブギ」(作詞:黒澤明、作曲:服部良一、歌:笠置シヅ子)
キャスト:
眞田(志村喬)
松永(三船敏郎)
岡田(山本礼三郎)
奈々江(木暮実千代)
美代(中北千枝子)
ぎん(千石規子)
ブギを歌う女(笠置シヅ子)
女学生(久我美子)

上映時間:1時間38分
日本公開:1948年4月27日
1948年度キネマ旬報ベストテン:日本映画第1位
鑑賞日:2018年7月21日
場所:新文芸坐(池袋)



【三船敏郎 主要出演作品】

谷口千吉 「銀嶺の果て」 (1947)
黒澤明 「酔いどれ天使」 (1948)
黒澤明 「静かなる決闘」 (1949)
谷口千吉 「ジャコ萬と鉄」 (1949)
黒澤明 「野良犬」 (1949)
黒澤明 「醜聞」 (1950)
黒澤明 「羅生門」 (1950)
黒澤明 「白痴」 (1951)
森一生 「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」 (1952)
千葉泰樹 「東京の恋人」 (1952)
谷口千吉 「吹けよ春風」(1953)
本多猪四郎 「太平洋の鷲」 (1953)
黒澤明 「七人の侍」 (1954)
稲垣浩 「宮本武蔵」 (1954)
杉江敏男 「天下泰平」 (1955)
杉江敏男 「続 天下泰平」 (1955)
稲垣浩 「続 宮本武蔵 一乗寺の決闘」 (1955)
黒澤明 「生きものの記録」 (1955)
稲垣浩 「宮本武蔵 完結編 決闘巌流島」 (1956)
成瀬巳喜男 「妻の心」 (1956)
黒澤明 「蜘蛛巣城」 (1957)
黒澤明 「どん底」 (1957)
千葉泰樹 「下町 ダウンタウン」 (1957)
稲垣浩 「無法松の一生」 (1958)
黒澤明 「隠し砦の三悪人」 (1958)
稲垣浩 「或る剣豪の生涯」 (1959)
稲垣浩 「日本誕生」 (1959)
岡本喜八 「暗黒街の対決」 (1960)
松林宗恵 「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」 (1960)
黒澤明 「悪い奴ほどよく眠る」 (1960)
黒澤明 「用心棒」 (1961)
稲垣浩 「ゲンと不動明王」 (1961)
黒澤明 「椿三十郎」 (1962)
稲垣浩 「どぶろくの辰」 (1962)
松林宗恵 「太平洋の翼」 (1963)
黒澤明 「天国と地獄」 (1963)
岡本喜八 「」 (1965)
黒澤明 「赤ひげ」 (1965)
岡本喜八 「血と砂」 (1965)
谷口千吉 「奇巌城の冒険」 (1966)
ジョン・フランケンハイマー 「グラン・プリ」 (1966)
小林正樹 「上意討ち 拝領妻始末」 (1967)
岡本喜八 「日本のいちばん長い日」 (1967)
熊井啓 「黒部の太陽」 (1968)
丸山誠治 「連合艦隊指令長官 山本五十六」 (1968)
ジョン・ブアマン 「太平洋の地獄」 (1968)
稲垣浩 「風林火山」 (1969)
蔵原惟繕 「栄光への5000キロ」 (1969)
丸山誠治 「日本海大海戦」 (1969)
岡本喜八 「赤毛」 (1969)
沢島忠 「新撰組」 (1969)
岡本喜八 「座頭市と用心棒」 (1970)
テレンス・ヤング「レッド・サン」 (1971)
中島貞夫 「日本の首領 野望編」 (1977)
熊井啓 「お吟さま」 (1978)
中島貞夫 「日本の首領 完結編」 (1978)
スティーヴン・スピルバーグ「1941」 (1979)
舛田利雄 「二百三高地」 (1980)
山田洋次 「男はつらいよ 知床慕情」 (1987)
熊井啓 「千利休 本覺坊遺文」 (1989)
熊井啓 「深い河」 (1995)




【黒澤明監督作品】

①「姿三四郎」 (1943)
②「一番美しく」 (1944)
③「続 姿三四郎」 (1945)
④「虎の尾を踏む男達」 (1945)
⑤「わが青春に悔いなし」 (1946)
⑥「素晴らしき日曜日」 (1947)
⑦「酔いどれ天使」 (1948)
⑧「静かなる決闘」 (1949)
⑨「野良犬」 (1949)
⑩「醜聞」 (1950)
⑪「羅生門」 (1950)
⑫「白痴」 (1951)
⑬「生きる」 (1952)
⑭「七人の侍」 (1954)
⑮「生きものの記録」 (1955)
⑯「蜘蛛巣城」 (1957)
⑰「どん底」 (1957)
⑱「隠し砦の三悪人」 (1958)
⑲「悪い奴ほどよく眠る」 (1960)
⑳「用心棒」 (1961)
㉑「椿三十郎」 (1962)
㉒「天国と地獄」 (1963)
㉓「赤ひげ」 (1965)
㉔「どですかでん」 (1970)
㉕「デルス・ウザーラ」 (1975)
㉖「影武者」 (1980)
㉗「乱」 (1985)
㉘「夢」 (1990)
㉙「八月の狂詩曲」 (1991)
㉚「まあだだよ」 (1993)





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