小林正樹 「上意討ち 拝領妻始末」 (1967) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【予告編:3分13秒】




【あらすじ:Movie Walkerよりの引用(→)】

会津松平藩 馬廻りの三百石藩士 笹原伊三郎(三船敏郎)は、主君 松平正容(松村達雄)の側室いち(司葉子)を、長男 与五郎(加藤剛)の妻に拝領せよと命ぜられた。

武芸一筋に生きてきた伊三郎は、笹原家に婿養子として入った身で、勝気な妻すが(大塚道子)の前で忍耐を重ねて暮してきた。だから、与五郎には自分の轍を踏ませず、その幸福な結婚を願っていたため、なんとしても命を受けるわけにはいかなかった。

伊三郎は親友で国廻り支配の浅野帯刀(仲代達矢)に相談し、時をかけてこの話を立ち消えにしようと考えた。しかし、側門人 高橋外記(神山繁)の性急な要請と、笹原一族の安泰を考える笹原堅物(佐々木高丸)の談判を受け、伊三郎は藩命という力の前に屈した。

間もなく与五郎といちの祝言が挙げられた。いちの花嫁姿は子を生んだ女とは思えないほど初々しく、その後も夫や姑に従順に仕えた。家督を与五郎に譲った伊三郎はそんないちが、何故藩主から暇を出されたのか訝った。

いちは19歳の時、許嫁がいるにもかかわらず一方的な藩命で正容の側室にされ、菊千代を生んだ。その悲惨な運命を受け入れたいちが、喜々として正容の側室になったお玉の方を見た時、正容を獣のように感じて逆上したのであった。与五郎も伊三郎も、この一部始終をいちから聞いているうちに、いちほど立派な嫁はいないと思った。

平和な日が続き、いちはとみを生んだ。そんなある日、正容の嫡子 正甫が急死した。菊千代が世継ぎと決まり、いちの立場は藩主の母となってしまったために、新納藩の重臣は与五郎にいちを返上せよと命じた。

この人道にそむく理不尽な処置に伊三郎は怒った。これまで笹原家の門閥と格式を守ることにのみ生きてきた伊三郎は、与五郎と共に叛徒になる決心をした。

明け方、上意討ちの一隊が笹原家を襲ったが、拉致されたいちは自ら刃の前に身を投げ出して果て、与五郎もいちに折り重って敵刃に倒れた、伊三郎は狂気のように荒れ狂い、外記らを斬りまくった。

やがて、藩の非道を幕府に訴えようと、とみを連れて旅に出る伊三郎の前に領内の出入りを見張る帯刀が現われた。役目とはいえ、非痛な思いで伊三郎に対峙する帯刀は、伊三郎の豪剣の前に倒れた。

しかし、その伊三郎も追手の銃弾に果てた。その場所鬼神ケ原には、とみの泣き声が藩の非道を訴えるように聞こえていた。




【感想】

たとえどんなに、命令が理不尽なものであっても、封建時代の藩士が主君に逆らうことなど許されるはずも無い。この話自体はフィクションではあるが、この様な事例は少なからずあったのだろうか。

隠居する前まで、藩に忠実に仕え、婿養子という立場から家にも妻にも大人しく従って、数十年の勤めを無事終えた伊三郎(三船敏郎)が、藩からのあまりに身勝手な処置に、遂に怒りを禁じ得ず、しかし冷静に対処しながらも、息子 与五郎(加藤剛)と嫁 いち(司葉子)を殺されての怒りの殺陣が凄まじい。

それは、「用心棒」(1961)、「椿三十郎(1962)、」(1965)とは違う、愛する者を非合理的な理由で、痛め付けられ、終いには奪われてしまい、地中で溜まりに溜まったマグマの様な感情が耐えきれなくなって遂に起こす大爆発であり、胸を締め付けられる様な深い悲しみから出たものであり、心打たれる。

伊三郎が、藩に反旗を翻すのも与五郎といちの夫婦愛に打たれたからであり、最後に望みを託すのは遺児となってしまった孫のとみであり、これは物語の時代背景から武士の物語になっているが、親から子、子から孫に綿々と引き継がれる家族の愛の物語なのだ。

その愛を、セリフでアクションで全身で表現する三船敏郎が素晴らしい。加藤剛と司葉子の深く強い夫婦愛も心に染みる。




【スタッフ、キャスト等】

監督:小林正樹
脚本:橋本忍
原作:滝口康彦の短編小説「拝領妻始末」(1965)
撮影:山田一夫
美術:村木与四郎
音楽:武満徹
殺陣:久世竜
キャスト:
笹原伊三郎(三船敏郎)
笹原与五郎(加藤剛)
笹原いち(司葉子)
高橋外記(神山繁)
笹原すが(大塚道子)
笹原堅物(佐々木高丸)
松平正容(松村達雄)
浅野帯刀(仲代達矢)

上映時間:2時間08分
日本公開:1967年5月27日
ヴェネツイア国際映画祭:国際映画評論家連盟賞
キネマ旬報ベストテン:日本映画第1位
鑑賞日:2018年7月19日
場所:新文芸坐(池袋)



【三船敏郎 主要出演作品】

谷口千吉 「銀嶺の果て」 (1947)
黒澤明 「酔いどれ天使」 (1948)
黒澤明 「静かなる決闘」 (1949)
谷口千吉 「ジャコ萬と鉄」 (1949)
黒澤明 「野良犬」 (1949)
黒澤明 「醜聞」 (1950)
黒澤明 「羅生門」 (1950)
黒澤明 「白痴」 (1951)
森一生 「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」 (1952)
千葉泰樹 「東京の恋人」 (1952)
谷口千吉 「吹けよ春風」(1953)
本多猪四郎 「太平洋の鷲」 (1953)
黒澤明 「七人の侍」 (1954)
稲垣浩 「宮本武蔵」 (1954)
杉江敏男 「天下泰平」 (1955)
杉江敏男 「続 天下泰平」 (1955)
稲垣浩 「続 宮本武蔵 一乗寺の決闘」 (1955)
黒澤明 「生きものの記録」 (1955)
稲垣浩 「宮本武蔵 完結編 決闘巌流島」 (1956)
成瀬巳喜男 「妻の心」 (1956)
黒澤明 「蜘蛛巣城」 (1957)
黒澤明 「どん底」 (1957)
千葉泰樹 「下町 ダウンタウン」 (1957)
稲垣浩 「無法松の一生」 (1958)
黒澤明 「隠し砦の三悪人」 (1958)
稲垣浩 「或る剣豪の生涯」 (1959)
稲垣浩 「日本誕生」 (1959)
岡本喜八 「暗黒街の対決」 (1960)
松林宗恵 「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」 (1960)
黒澤明 「悪い奴ほどよく眠る」 (1960)
黒澤明 「用心棒」 (1961)
稲垣浩 「ゲンと不動明王」 (1961)
黒澤明 「椿三十郎」 (1962)
稲垣浩 「どぶろくの辰」 (1962)
松林宗恵 「太平洋の翼」 (1963)
黒澤明 「天国と地獄」 (1963)
岡本喜八 「」 (1965)
黒澤明 「赤ひげ」 (1965)
岡本喜八 「血と砂」 (1965)
谷口千吉 「奇巌城の冒険」 (1966)
ジョン・フランケンハイマー 「グラン・プリ」 (1966)
小林正樹 「上意討ち 拝領妻始末」 (1967)
岡本喜八 「日本のいちばん長い日」 (1967)
熊井啓 「黒部の太陽」 (1968)
丸山誠治 「連合艦隊指令長官 山本五十六」 (1968)
ジョン・ブアマン 「太平洋の地獄」 (1968)
稲垣浩 「風林火山」 (1969)
蔵原惟繕 「栄光への5000キロ」 (1969)
丸山誠治 「日本海大海戦」 (1969)
岡本喜八 「赤毛」 (1969)
沢島忠 「新撰組」 (1969)
岡本喜八 「座頭市と用心棒」 (1970)
テレンス・ヤング「レッド・サン」 (1971)
中島貞夫 「日本の首領 野望編」 (1977)
熊井啓 「お吟さま」 (1978)
中島貞夫 「日本の首領 完結編」 (1978)
スティーヴン・スピルバーグ「1941」 (1979)
舛田利雄 「二百三高地」 (1980)
山田洋次 「男はつらいよ 知床慕情」 (1987)
熊井啓 「千利休 本覺坊遺文」 (1989)
熊井啓 「深い河」 (1995)






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