黒澤明 「用心棒」 (1961) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

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スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【特報/予告編:「用心棒」は0分00秒から3分58秒まで】





【あらすじ:Movie Walkerよりの引用(→)】

馬目の宿は縄張りの跡目相続をめぐって一つの宿湯に二人の親分が対立、互いに用心棒、兇状持ちをかき集めてにらみ合っていた。

そこへ桑畑三十郎(三船敏郎)と名乗る得体の知れない浪人者がふらりとやって来る。一方の親分 馬目の清兵衛(河津清三郎)のところにやって来た三十郎は用心棒に俺を買わないかと持ちかけて、もう一方の親分 新田の丑寅(山茶花究)の子分3人をあっという間に斬り捨ててしまった。

清兵衛は50両で三十郎を傭った。しかし清兵衛の女房のおりん(山田五十鈴)は強つくばりで、三十郎が丑寅の一家を潰した後で、三十郎を殺して前金で渡した25両と清兵衛と倅の与一郎(太刀川寛)をけしかけた。

これを知った三十郎はあっさり清兵衛の用心棒を断わり、居酒屋の権爺(東野英治郎)の店に居据った。自分の値を吊り上げて、高い値で傭う方に付くにつもりだ。

名主の多左衛門(藤原釜足)は清兵衛に肩入れ、造酒屋の徳右衛門(志村喬)は丑寅に付いて次の名主を狙っていた。そんなところへ、丑寅の弟卯之助(仲代達矢)が帰って来た。短銃を持っており腕も相当だった。

結果、三十郎は丑寅方に付くことになった。丑寅の金の供給源である徳右衛門は、百姓小平(土屋嘉男)の女房ぬい(司葉子)を妾にしていた。小平から博奕の借金のかたにして取りあげてしまったのだ。



【ここから下は、ネタバレ/結末までの記述があるので、映画をご覧になっていない方は、次の写真の下の感想欄に飛んで下さい!】

小平と息子の金助の情ない様子を知って、三十郎は丑寅のもうひとりの弟の亥之吉(加東大介)をだまして追いやった隙に、ぬいを監禁していた丑寅の配下6人を叩き切って、親子3人を逃がしてやるのだった。

最初は、宿場町の争い事を利用して金儲けをしようとしている思い、三十郎を嫌っていた権爺だが、実は情に厚い三十郎をだんだん好きになっていった。

しかし、ぬいが感謝のために三十郎に出した手紙を卯之助にみつけられたため、三十郎は捕えられて土蔵に放りこまれた。ぬいの逃げ場所を吐かせようと、丑寅の用心棒かんぬき(羅生門綱五郎)から地獄の責苦を受けていた。ぬいの居所を知っていると思われていたので殺されずに済んでいるのだ。

三十郎はかんぬきの隙を見て、満身創痍の身体で何とか命からがら、脱走して墓地に逃れた。
丑寅は、清兵衛たちが三十郎を奪還したと思い、卯之助の入れ知恵で清兵衛の家に火を放ち、清兵衛一家を皆殺しにしてしまう。

そこへ三十郎がふらりとやって来た。卯之助が銃を構えるより速く三十郎の手から出刃が飛んだ。そして丑寅達の間を三十郎が駆け抜けると、丑寅達は倒れていた。
権爺に、「おい親爺、これでこの宿場も静かになるぜ!」と言って、三十郎は宿場町を立ち去って行くのだった。




【感想】

セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演のマカロニ・ウェスタン「荒野の用心棒」(1964)が、この黒澤明の「用心棒」の設定/ストーリーをそっくり戴いたことは良く知られているが、黒澤明も、この「用心棒」は、ダシール・ハメットの探偵・ハードボイルド小説「血の収穫(Red Harvest)」(1929)を下敷きにしていることを認めている。

ただのパクりは困るが、東西の両方の文化がお互いに影響し合って、より良い、より面白い作品が出来ていくなら、こんな嬉しいことはないだろう。

今回は4Kデジタル リマスター版シネマスコープサイズ(横2.35:縦1.00比のワイドスクリーン)での再見だったのだが、アクション シーンを含めて、映像がワイドスクリーンをフルに使ってその効果を高めていることが大変良く判る。

また、6人斬り等の伝説の三船敏郎の殺陣(タテ)は凄まじい。24コマ/秒の通常のカメラの速度では、三船敏郎の動きがあまりにも速くて、1コマ、1コマを見ても静止せず動いているらしい。 (本記事末の「三船敏郎の殺陣に関する動画」をご参照下さい。 )

この映画は、黒澤明が東宝から独立して黒澤プロダクションを作ってから第2作目で、第1作の「悪い奴ほどよく眠る」(1960)が、シェークスピアの「ハムレット」を原作にした、黒澤明の文学趣味・芸術志向が出過ぎて興行的に今一つだったこともあり、第2作は絶対に興行的に成功することが求められていた。黒澤明としても、とにかく超娯楽大作を作りヒットさせようとしたらしい。結果は、とてつもなく面白い作品が誕生した!

映画の結末の最後の決闘シーンも、ネタバレになるので書くに書けないのだが、本当は、その面白さ・凄さを今すぐここに書いてしまいたい(笑)

この映画で面白いのは、アクションだけでなく、個々の登場人物の描き分け。三十郎の最大の敵となる卯之助(仲代達矢)だけでなく、居酒屋の権爺(東野英治郎)を始めとする脇役ひとりひとりが素晴らしい。

ここで、個々の役/俳優について語っていくと、1冊本が書けてしまいそうなので、ここでは、下のキャスト欄に書いた役/俳優が全て印象に残ったと書くに留めたい。

台詞も面白ものが多い:
少し例を挙げると、おりん(山田五十鈴)が意気地無しの息子に発破を掛けるために言う、「ひとり殺しても、百人殺しても、縛り首になるのは一回なんだよ!」(笑)
また、刀を取られてしまった三十郎が、権爺のくれた出刃包丁一本を持って、丑寅一家に乗り込もうとして、棺桶屋(渡辺篤)に「そんなもんだけで、どうしようってんだ!?」と言われた三十郎の応え、「刺身にしてやる!!」(爆)

黒澤明の「七人の侍」(1954)の感想の〆でも同じ言葉を使ったが、「これこそが映画!」なのだよ。




【スタッフ、キャスト等】

監督:黒澤明
脚本:黒澤明、菊島隆三
撮影:宮川一夫
音楽:佐藤勝
美術:村木与四郎
監督助手:森谷司郎
撮影助手:斉藤孝雄
製作:田中友幸、菊島隆三
キャスト:
桑畑三十郎(三船敏郎)
新田の卯之助(仲代達矢)
清兵衛の女房おりん(山田五十鈴)
小平の女房ぬい(司葉子)
居酒屋の権爺(東野英治郎)
新田の亥之吉(加東大介)
造酒屋徳右衛門(志村喬)
百姓の小平(土屋嘉男)
名主多左衛門(藤原釜足)
馬目の清兵衛(河津清三郎)
清兵衛の倅 与一郎(太刀川寛)
棺桶屋(渡辺篤)
用心棒本間先生(藤田進)
新田の丑寅(山茶花究)
無宿者の熊(西村晃)
無宿者の瘤八(加藤武)
丑寅の用心棒かんぬき(羅生門綱五郎)
賽の目の六(ジェリー藤尾)

上映時間:1時間50分
日本公開:1961年4月25日
ヴェネツィア国際映画祭:主演男優賞(三船敏郎)・・・ちなみに、現在までに同映画祭で主演男優賞を受賞した日本人は三船敏郎、ただひとりである。
鑑賞日:2018年6月12日
場所:TOHOシネマズ新宿



【午前十時の映画祭事務局オフタイム:14分17秒】






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